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諮問・答申・報告書等3 新しい土地状況と土地税制(1) 土地をめぐる状況 バブル崩壊以来、土地をめぐる状況は大きく変貌してきています。バブル期に急騰 した地価は、平成3年以降下落に転じ、平成8年度税制改正における土地税制の総合 的見直しの後も、下落を続けています。特に大都市圏の商業地では、地価の大幅な下 落により、バブルの部分は解消されつつあります。 こうした地価下落を背景に、投機的な土地取引は鎮静化しつつあります。また、最 近、都心部の商業地では、好条件の土地とそうでない土地との間で価格動向に二極化 の傾向がみられ、収益価値を反映して地価が形成されつつあることが伺えます。以上 のような最近の動きは、従来の土地本位的な経済システムにも変化が生じてきている ことを示唆しているように考えられます。 こうした流れの中で、政府は本年2月に「新総合土地政策推進要綱」を閣議決定し、 土地政策の目標の重点をこれまでの地価抑制から土地の有効利用の促進へと移してき ています。 近年の地価下落は、国民経済的にはプラスの効果も生み出してはいるものの、その 下落が急激かつ継続的であることから、「バブル崩壊の清算」の長期化による問題が 生じてきています。バブル期の過剰投資の後遺症として悪化した企業や金融機関の バランスシートの改善は思うように進まず、企業経営を圧迫し、不良債権問題を長期 化・深刻化させ、金融システムへの不安を生じさせています。 (2) 不動産の証券化等 こうした不良債権問題に対処するためには、不動産の流動化を促進することが重要 な政策課題となってきています。その際、新たなスキームを創設し、不動産の証券化 といった直接的な方法で対応するのが有効ではないかと考えます。こうした考えから、 現在、特別目的会社(SPC)を活用して不良債権の担保資産を含む不動産を流通さ せる新たな仕組みが検討されています。不動産が不良債権の担保となっている場合に は、それを証券化することで不動産の現保有者にキャッシュフロー(売却代金)が 発生し、これにより債務を返済することが可能となり、不良債権の処理、バランス・ シートの改善に資すると期待されます。こうした新しい枠組みに税制も適切に対応し ていくことが求められています。 アメリカでも、不動産の証券化による流動化スキームを活用することにより、広く 一般投資家による不動産投資がなされる環境が整備され、不動産市場が活性化してい ます。わが国においても、不良債権の処理を進める上で、こうしたスキームが大きな 役割を果たすことを期待します。 (3) 現行の土地税制をどう考えるのか イ 現行の土地税制は、土地の公共性など土地基本法の基本理念に基づき、長期的・構 造的な視点から作られました。「土地税制のあり方についての基本答申」(平成2 年10月)においては、次の2点を土地税制の考え方の基本に据えています。 1 「土地に関する税負担の適正・公平の確保」により、資産格差の拡大に対処し、 勤労所得等に対する税負担とのバランスを図る。 2 「土地政策の一環としての税制」という観点から、土地の資産としての有利性の 縮減、投機的土地取引の抑制、土地の有効利用の促進を図る。 この考え方の底流にあるのは、所得・消費・資産等のバランスのとれた税体系の構 築、わが国経済の土地本位的な体質の改善、高コスト構造の是正という視点です。わ が国の地価水準は主要諸外国と比較すればなお高く、国民意識の中には「土地神話」 が残っているのではないかとの指摘もあります。 このように現行の土地税制は土地基本法の制定を受けて設計されたものであり、そ の基本的枠組みの変更に当たっては、十分な検討が必要です。ただ、前述したような 現在の土地をめぐる動向が金融システムや経済全体へ与える影響の大きさなどにかん がみれば、緊急の措置として、思い切った対応策を検討すべきであるとの意見が出さ れました。 上記のような視点に立ち、土地税制についての平成10年度税制改正における取組み について検討しました。 ロ 地価税については、地価抑制という目的を達したので廃止すべきではないかとの意 見がありました。これに対し、地価税を廃止することは、土地の低未利用を温存する こととなり、土地の有効利用という政策目的に逆行することから適当ではないとの意 見がありました。 また、地価税には、 1経済のストック化が進む中で資産に適正な負担を求めていく 必要があること、 2現在の固定資産税の負担水準は地域ごとにバラツキがあり、土地 の資産価値に応じた負担を求めるものになっていないことなどを考えると、資産課税 として一定の意義があるものと考えられます。 地価税の負担については、最近の経済情勢にかんがみ、当面の緊急措置として税負 担の水準に一定の調整を加える余地があるのではないかとの意見がありました。また、 前述したようなバブル崩壊の後遺症として生じている現下の状況に対処するため、当 面の緊急措置として、地価税の適用を一定期間停止(いわゆる凍結)してはどうかと の意見がありました。 今後、地価税をどう考えていくかについては、土地政策の方向を踏まえ、土地税制 全体の中での位置づけを明らかにしながら、検討を進めていくことが適当ですが、現 在の土地基本法を前提とする限り、少なくとも廃止は適当ではないと考えます。 ハ 土地譲渡益課税については、土地税制改革以降も、年々の土地をめぐる状況を考慮 し、累次の見直しを続けてきました。しかしながら、ここに至ってもバブル経済の後 遺症は依然として続いており、この際、土地の有効利用の促進や土地取引の活性化の ために、以下のような緊急の措置をとってはどうかとの意見がありました。 1 個人や法人の土地譲渡益に対する課税を思い切って軽減するとともに、資産の買 換え特例についての要件緩和を図る。 2 投機的な土地取引を抑制するために、バブル経済期において特例的に導入された 諸措置については、もはや土地投機の動きは鎮静化していることから、これを見直 す。 ただし、こうした措置をとるとしても、税負担の公平の観点から、勤労性所得との 均衡に配慮すべきであるとの意見がありました。また、譲渡益課税の中で課税ベース からはずれる特別控除や軽減税率についてもあわせて検討する必要があるとの意見が ありました。 ニ 固定資産税については、平成9年度より、負担水準の均衡化を図るための措置が講 じられています。平成12年度以降の税負担については、同年度の評価替えの動向及び 負担水準の状況や市町村財政の状況等を踏まえた上、さらに負担の均衡化・適正化を 進める措置を講ずることとされており、そのための検討を進めることが必要です。 また、納税者の理解と信頼を確保するため、評価に関する情報を開示するための路 線価の公開、納税者自身が課税内容を確認することができるようにするための課税明 細書の送付等、納税者に対する情報の開示を更に進める必要があります。 4 その他 (1) 課税自主権の尊重 地方分権を推進する観点から、地方公共団体の課税自主権を尊重し、各地方公共団 体が、住民の意向を踏まえつつ、自らの判断と責任において地方税の運用を行い得る ための制度を拡充していくことが必要です。このため、平成10年度においては、法定 外普通税の許可制度を廃止して、国との合意(同意)を必要とする事前協議制に改め、 新たに法定外目的税を創設するとともに、個人の市町村民税の制限税率や固定資産税 等において標準税率を超える税率で課税する場合の国の関与を廃止するなど所要の措 置を講じることが適当です。 (2) 帳簿書類の電子データ等による保存 適正公平な課税を実現するためには、帳簿書類(法人税などの会計帳簿や決算関係 書類等)の記録の確実性や永続性が確保される必要があります。そのため、これまで は、納税者がコンピュータで会計処理を行い、会計記録を電子データで保存している 場合であっても、紙の形で保存しなければならないこととしていました。 しかし、情報化が進展し、コンピュータで会計処理を行う納税者が増加するととも に、取引のペーパーレス化も急速に普及しつつある中で、いつまでも帳簿書類につい て紙の形で保存することを求めることは、現実的でないばかりでなく、納税者に過度 の負担を強いることにもなりかねません。 こうした新しい時代の流れに対応し、納税者の帳簿書類の保存の負担軽減を図るた めに、記録段階からコンピュータ処理によっている帳簿書類については、電子データ 等により保存することを認めることが必要であると考えます。 その際には、コンピュータ処理は、痕跡を残さず記録の遡及訂正をすることが容易 である、肉眼でみるためには出力装置が必要であるなどの特性を有することから、適 正公平な課税の確保に必要な条件整備を行うことが不可欠です。 また、電子データ等による保存を容認するための環境整備として、EDI取引(取 引情報のやり取りを電子データの交換により行う取引)に係る電子データの保存を義 務づけることが望ましいと考えます。 (3) 揮発油税、軽油引取税等 揮発油税、軽油引取税等の現行暫定税率については、国道・地方道の整備状況、新 たな道路整備五箇年計画の策定状況、財政構造改革の推進等を踏まえた取扱いが必要 です。 道路特定財源制度については、自動車重量税に係る従来からの歳出面での取扱いを 含め、限られた財政資金を有効に活用するため、その制度の是非に踏み込んで検討す る必要があるとの意見が多く出されました。これに対し、受益者負担の観点と道路整 備の必要性等から、なおその制度を維持する必要があるとの意見がありました。 一般に、特定財源制度は、特定される公共サービスの受益と負担との間にかなり密 接な対応関係が確認される場合には、一定の合理性を持ちますが、他方、それが資源 の適正な配分を歪め、財政の硬直化を招くものであることから、その妥当性について は常に吟味していくことが重要であります。したがって、この問題については、今後、 これらの意見や諸外国の例を参考にして、財政需要の優先度や財政の資源配分機能の あり方を考えながら、引き続き幅広く検討していく必要があります。 (4) たばこについての税制上の措置 政府・与党の財政構造改革会議から国鉄長期債務及び国有林野累積債務の処理方策 のスキームが提案されています。これに対する当調査会の考え方を示せば以下のとお りです。 本処理方策の是非については、当調査会において、なお一層の歳出削減努力を図る べきではないか、自動車重量税の使途の見直しで対応すべきではないか、政府保有株 式の活用により賄えないかなど、様々な意見が出されました。また、仮に税負担を求 めざるを得ない場合でも、一般会計の歳入歳出全体の中で議論すべきであり、特定の 事項の処理に特定の税目をあてることは好ましくないとの意見も多く出されました。 他方、国鉄及び国有林野の債務の処理は先送りの許されない問題であり、何らかの 対応をせざるを得ないとの指摘もありました。特殊なし好品であるたばこに係るたば こ税については、当調査会はかねてより、その課税方式が従量税によっており、価格 の上昇とともに税負担割合が低下する傾向にあること等から、随時負担の見直しを行 い、適正な税負担水準の確保に努める必要性があることを指摘しています。このため、 可能な限りの財源確保を行った上で、なお新たな歳入確保が必要な事態であれば、こ の考え方に基づき負担の適正化の範囲内で税負担増を求めることは、財政構造改革を 推進すべき観点からはやむを得ないものであることは理解できるとの意見がありまし た。 これに対し、たばこに対する税負担増については、2年連続の価格引上げの要因と なり消費減を招くことになるが、それほど税負担の適正化を図らねばならない緊要性 がないのではないかとの意見や、特定の物資を対象とした税負担増は税制全体のあり 方として望ましくないのではないかとの意見がみられました。 いずれにせよ、仮にこれを行う場合には、臨時・異例の措置であり、これまでの国 と地方のたばこ税の関係を基本的に変更するものではないことから、特別税の形式を 採らざるを得ません。なお、この場合、たばこに対する全体的な税財源配分が国に偏 った形のものとなることから、今後、このことを十分念頭に置いて、地方税源の充実 確保に努めることが必要であるとの強い意見がありました。 |
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