![]() |
![]() |
![]() |
諮問・答申・報告書等二 平成10年度税制改正の課題1 経済構造改革と法人税制改革(1) 法人税制改革をなぜ実施するのか わが国が経済構造改革を進めていくに当たっては、様々な分野での規制緩和を通じ て新規産業の創出や企業活力の発揮を促していくことが重要です。法人課税について も、経済活動に対する税の中立性を高めることにより企業活力と国際競争力を維持す る観点から、税率と課税ベースの両面にわたる検討を行ってきました。こうした視点 に立った法人課税の見直しは、主要先進国においても、既に実施されてきたところで す。 (2) 税率の引下げ わが国では、法人課税の表面税率(調整後)を5割を下回る水準まで引き下げるた め、昭和63年前後の抜本改革で法人税の基本税率を37.5%としました。この結果、先 進諸外国の法人税率との格差はかなり縮小してきていますが、わが国の国税、地方税 を通じた法人課税の表面税率(調整後)は、 49.98%と他国と比べてなお高いものと なっています。そこで、この法人課税の表面税率(調整後)を更に引き下げることに より企業活力や産業の国際競争力に配意するため、平成10年度税制改正では国の法人 税の基本税率をアメリカの水準程度に引き下げることが適当であると考えます。あわ せて、中小法人に対する軽減税率や公益法人または協同組合等の税率についても引き 下げることが適当であると考えます。また、地方税においても、課税ベースの適正化 を勘案しつつ、法人事業税の税率を引き下げることが適当であると考えます。 (3) 課税ベースの適正化 他方、法人課税の課税ベースは、昭和40年に法人税法の全文改正が行われて以来、 全般的な見直しは行われていません。その間、経済社会の変化や国際化の進展の中で、 新しい経済取引の出現や、税制における公平・中立・透明性などの要請の一層の高ま りがみられるようになってきました。法人課税の課税ベースについては、このような 時代の変化や税制に対する要請に対応した見直しが必要となってきています。 具体的には、当調査会においては、保守的な会計処理の抑制、会計処理の選択制の 抑制・統一化、経費概念の厳格化など「法人小委報告」に示された課税ベースの見直 しの考え方を基本として検討を続けてきました。この結果、引当金の廃止・縮減を行 うとともに、建物の減価償却方法や収益計上基準の選択制の抑制、上場有価証券の評 価方法の見直し、役員報酬の損金算入の適正化、租税特別措置・非課税等特別措置の 整理・合理化などを実施することが適当と考えます。 (4) 課税ベースの適正化と税率の引下げ 課税ベースの適正化により得られる財源は、税率の引下げにあてていくことができ ます。 なお、現在の厳しい経済状況にかんがみ、税負担を更に軽減していくべきではない かという強い意見があります。また、中小企業等に対して配慮する必要があるのでは ないかとの意見がありました。 今回見直される課税ベースの項目の中には、引当金の縮減など財源としては一時的 なものがあります。これらの見直しについては、税負担や企業活動に大きな影響を及 ぼすことから、激変緩和のためにある程度の期間を設けていくことが必要です。また、 その際には、財政構造改革期間との整合性を念頭に置くことが適当です。その期間後 の減収については、経済構造改革や財政構造改革の進展状況をみながら、総合的に検 討していくことが適当であると考えます。 (5) 地方法人課税 今回の法人課税の見直しにおいては、地方の法人課税についても検討を加えました。 地方公共団体にとって重要な財源となっている法人事業税については、その税の性格 などから、従来から、外形標準課税の問題が議論されてきた経緯があります。 事業税が外形基準によって課税されることとなれば、事業税の性格が明確になると ともに、税収の安定性を備えた地方税体系が構築されるなど、地方分権の推進に資す るものと考えられます。また、これに伴い、法人課税の表面税率(調整後)の引下げ や赤字法人に対する課税の適正化にもつながるものと考えます。この場合において、 具体的な外形基準については、利潤、給与、利子及び地代等を加算した所得型付加価 値など、引き続き幅広く検討することが必要と考えます。その際、中小法人の取扱い や税負担の変動、他の地方税との関係などの課題についても検討すべきです。 地方の法人課税については、平成10年度において、事業税の外形標準課税の課題を 中心に総合的な検討を進めることが必要です。 (6) 今後の改革の方向 今回の改革は、法人税の基本税率を国際的な水準まで引き下げることを中心に検討 が行われました。今後は、事業税における外形標準課税の検討が法人課税の表面税率 (調整後)の議論にもつながることを念頭に置きながら、法人課税の表面税率(調整 後)のあり方について検討を進めることが適当と考えます。さらに、他の税の引上げ によって法人課税の表面税率(調整後)を引き下げていくことを検討する場合には、 所得・消費・資産の税体系のバランスの中に占める法人課税の位置づけについて議論 を深め、国民の合意を経て結論を得る必要があります。 (7) その他の検討課題 租税特別措置・非課税等特別措置については、当調査会において、それらが特定の 政策目的を実現するための政策手段であり、税制の基本原則の例外措置であることか ら、その徹底した整理・合理化が適当であると提言してきました。例えば、これまで の答申で指摘してきている事業税の社会保険診療報酬に係る課税の特例措置の見直し について、検討することが必要です。 連結納税制度については、企業の分社化を促進する視点などから、その導入を求め る意見があります。それに対して、わが国の法人税制は、商法などの現行諸制度を基 礎に、法人ごとに課税することを基本としているため、同制度はこのような基本的考 え方の変更につながることから、慎重に検討を進める必要があるという意見もありま す。したがって、連結納税制度については、今後、企業経営の実態や、商法等の関連 諸制度のあり方、さらには、租税回避や税収減の問題といった諸点を踏まえつつ、引 き続き検討を深めていく必要がある課題です。 なお、法人課税について課税ベースが適正化され、表面税率(調整後)の引下げが 行われる状況の下で、個人所得課税の税率構造などについて、最高税率のあり方を含 めて国民的な理解を得ながら、更に議論を進めていく必要があると考えます。 2 金融システム改革と金融関係税制 (1) 金融システム改革を税制としてどう受け止めるのか 21世紀を目前に控え、マーケット・メカニズムを最大限に活用し、資源の最適配分 が実現される金融システムを構築していくため、金融システム改革の取組みがはじま っています。 金融関係税制については、従来から金融資本取引の特徴に配慮した税制の構築に努 めてきましたが、今回、フリー(市場原理が働く自由な市場に)、フェア(透明で信 頼できる市場に)、グローバル(国際的で時代を先取りする市場に)の三原則の下で 進められる金融システム改革を税制としても受け止め、以下のような観点から時機を 失することなく対応していくことが求められています。 [1] グローバルな資金シフトが容易となり、金融資本取引の「足の速さ」が増してい ることを受けて、金融関係税制の税制全体の中での位置づけを検討していく必要が あります。 [2] フリーの原則の下、新しい金融商品・取引が出現してくることに対応して、各種 金融商品に対する課税のあり方を検討していく必要があります。 [3] フェアの原則に関連し、税負担の公平確保、租税回避行為の把握・防止が重要と なります。 金融システム改革への税制面での対応として、まず、政府は、当調査会における審 議を受けて、今秋、平成10年4月からの改正外為法への緊急の対応策を講じました。 今回、当調査会は、総合的な改革がはじまっている金融・資本市場に関する税制等に ついて検討を行いました。 (2) 取引課税(有価証券取引税、取引所税)と株式等譲渡益課税 イ 金融システム改革を推し進め、効率的な資本市場を整備していくことは重要な政策 課題であり、その流れの中で証券税制のあり方を考えていく必要があります。有価証 券取引税と株式等譲渡益課税は、理論的には別の税ですが、同じ株式の移転に伴う課 税として密接な関係にあり、ともに平成8年度税制改正において2年間の時限的措置 が講じられているため、今回、証券税制全体の中で検討を行いました。 金融のグローバル化が進む中で、市場取引は取引コストに対してより敏感になって きており、委託手数料、取引課税を含めた全体的なコストが国際的に高い水準にある と、取引自体が海外にシフトしてしまう可能性があります。金融システム改革を推進 し、金融・資本市場を活性化させるという観点から、取引課税を廃止してはどうかと いう問題提起がなされています。 こうした問題提起を受けて、金融小委においては、取引課税が取引に与える影響、 取引課税の意義、諸外国の制度等について全般的な検討を行いました。(注) (注)金融小委報告(抄) 『取引課税の廃止は、他の金融・証券市場改革とあいまてば中長期的には市場 にプラスの効果をもたらし得るところであり、金融のグローバル化が進む中で市 場取引が取引コストに対してより敏感になってきていることや、現下の市場の動 向にかんがみれば、金融システム改革を強力に推進していく政府の意思を明らか にするためにも、政策的な見地から、その具体的なスケジュールはともかく、思 い切って廃止の方向を示すべきであるとの意見があった。これに関連して、株式 等譲渡益課税について申告分離一本化といった適正化が実現されない中で取引課 税のみを廃止することは適当でないとの意見があった。 これに対して、金融のグローバル化に伴い所得の捕捉が困難になっていく中で は、取引課税にはむしろ税体系及び税収面から一定の意義が認められるところで あり、税率水準次第では現実の取引への影響も少ないことから、取引課税を廃止 するのは適当ではないという意見があった。また、金融グローバル化の進展等を 踏まえて、取引課税の税負担の軽減を検討する場合にも、金融システム改革全体 の動向を見極め、税収面からの費用対効果を検証し、株式等譲渡益課税の適正化 状況を踏まえていく必要があるとの意見があった。』 当調査会では、金融小委での議論をもとに、現在の金融動向・経済情勢、財政構造 改革との整合性、税制改正全体の中での位置づけなどを考えながら、更に検討を加え ました。 ロ 取引課税については、それが株式等譲渡益課税を含めた証券税制全体の中で果して きている役割を考慮に入れながら、金融システム改革を推進し、市場の活性化を図る という政策的な観点や、金融グローバル化に伴い金融取引の移動可能性が高まってい ることを加味していく必要があります。こうしたことから、平成10年度税制改正では、 取引コストの一部を構成する有価証券取引税や取引所税の税負担を軽減することが適 当です。 ハ また、取引課税の今後のあり方については、株式委託手数料の自由化をはじめとす る金融システム改革の進展や資本市場の活性化の状況、取引態様の変化、株式等譲渡 益課税の適正化の状況、財政状況などを総合的に勘案しながら検討を行い、廃止を含 めた見直しを行っていくことが適当であると考えます。取引課税を廃止する場合には、 株式等譲渡益課税について申告分離一本化といった適正化を行う必要があると考えま す。 ニ 株式等譲渡益課税については、現在、源泉分離課税方式と申告分離課税方式の選択 制となっています。この点についても、金融小委報告をもとに検討しましたが、当調 査会としては、源泉分離課税方式は廃止し、申告分離課税方式に一本化することが適 正化の方向であると考えます。ただ、現在の証券市場の状況等に政策的に配慮すれば、 直ちに源泉分離課税方式を廃止し申告分離方式に一本化するのは適当でないという意 見がありました。この場合でも、当調査会は、課税の適正化に向けて、少なくとも源 泉分離課税の税率等の見直しに努める必要があると考えます。また、地方税における 課税の適正化に努める必要があります。 (3) 金融システム改革に伴う新しい措置などに関する税制 このほか、当調査会は、金融小委報告をもとに、ストック・オプション、金融持株 会社、特別目的会社、会社型投資信託に関する税制について検討しました。 ストック・オプションの一般化に伴い、所要の要件を満たしたストック・オプショ ンについては、適正な課税の確保の視点に立って、その一般化の趣旨がいかされるよ う、課税繰延べ等適切な課税方法を検討する必要があると考えます。 金融持株会社に関する税制については、いわゆる「三角合併方式」による銀行持株 会社の創設に伴い、銀行の株主が銀行持株会社に対して行う現物出資に係る譲渡益に 対する課税等が発生します。これについては、「三角合併方式」の設立形態を考慮し つつ、銀行以外の法人が持株会社を創設する場合などとの課税の公平等の考え方に基 づきながら、適切な対応を図ることが望ましいと考えます。 特別目的会社(SPC)や会社型投資信託に関する税制については、法人段階で課 税をどうするか、投資家への課税をどうするかなどを検討しなければなりません。そ れぞれの制度が具体化されていく中で、税負担の公平等の観点を考慮に入れて、その 趣旨がいかされるよう適切な対応を図ることが望ましいと考えます。 また、生命保険料控除・損害保険料控除、課税繰延べ、老人マル優など、従来から 当調査会で見直しについて指摘してきている項目についても、金融システム改革の下 では、金融商品間、各業態間の課税の公平性・中立性の要請からの見直しについて早 急に議論を進めていく段階に来ています。 なお、個人住民税が非課税となっている株式等譲渡益や割引債の償還差益などの課 税の適正化を図るため、利子割方式も参考にしながら検討する必要があると考えます。 |
| |||