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諮問・答申・報告書等

税制調査会委員海外調査報告

税 調 委 員 海 外 調 査 報 告
(地方法人課税関係:アメリカ)

Ⅰ.日程等

1.

 平成10年8月23日~9月4日

2.

張者



一橋大学経済学部
関西学院大学経済学部
事務局同行者 大蔵省主
田近 
林  
税局 
栄治 教授
宣嗣 教授
冨安 自治省税務局 前田)

3.

問先

メリカ) ミシガン州財務省、ハーバード大学(オールドマン教授)、
ミシガン大学(コーラント教授)、現地企業(フォード社)、
クライン氏

Ⅱ.調査対象

アメリカ・ミシガン州)単一事業税

Ⅲ.訪問先における聴取内容の概要

ミシガン州の単一事業税の仕組みと沿革等


 ミシガン州には、単一事業税(SBT=Single Business Tax)の前身と位置づけられる付加価値税として、事業活動税(BAT=Business Activity Tax)が存在していた(1953年創設)。


 1967年に、個人所得課税の導入と併せて、事業活動税に替えて所得課税である法人所得税が導入された。


 その後、1976年に、7つの企業関係税(法人所得税、法人免許税、棚卸し資産税等)を廃止して、単一事業税が創設された。(それゆえ、「単一」事業税といわれる。)


 この単一事業税の導入の理由は、次のようなものであった。

1)

 税収の安定性の確保
 ミシガン州においては、法人所得課税はあまりに不安定であった。導入の翌年度以降、税収の対前年比は、△38.2%~78.6%と大きな変動が生じていた。

2)

 公平性・中立性の確保
 単一事業税導入前の法人所得課税は、法人のみを対象としていたため、企業の形態によって税負担に変動が生じていた。これに対し、単一事業税は、事業を行っている全ての者を対象とすることにより課税ベースを拡大する効果を有するものとして導入された。

3)

 経済成長の促進(資本投資の刺激)
 ミシガン州では、1970年代には、経済が停滞しており、単一事業税において、装備、建物、機械等の資本財の取得について、取得時に即時控除を認めて、企業の資本投資を活発化させる狙いがあった。

4)

 企業関係税の簡素合理化
 7つの企業関係税を廃止して、単一事業税に統合することで、税制の簡素化を図った。

5)

 応益課税の考え方
 単一事業税は、ミシガン州内の事業活動が受ける利益、享受する政府サービスに対して課される税である。


 付加価値のとり方には議論があったが、人々にわかりやすく、企業が慣れている等を考えて、単一事業税は、加算型の付加価値税として導入された。


 単一事業税は、事業所得(連邦所得税の課税対象となる所得)に報酬、減価償却、支払利子等を加えて算定した額に、州間配分率をかけて課税ベースと
する。さらに、その課税ベースから資本取得控除が行われる。


 資本財に対する取得時全額控除(資本取得控除制度)は、当初はミシガン州内への投資額のみを控除することとしていたが、違憲判決を受けたため、全米での投資額を対象とするよう変更された。その後さらに、全米投資額に現行の州間配分率を乗じる方法により、実質的に州内投資を対象とする形となっている。


 資本取得控除が認められていることから、消費型の性格を持つ税と分類される(ただし、基本的には、単一事業税は、ビジネスに対する課税であると説明されている。)が、この資本取得控除は、大企業からの要望により導入された面が強い。


 単一事業税には州間配分率が適用される。この州間配分率は、資産、賃金、売上という3要素の全米に占めるミシガン州の割合を、各要素に付けられるウェイトを用いて加重平均して算出される。


 この3要素のウェイトについては、1991年までは、各要素が1/3ずつとされていたが、その後、資産と賃金のウェイトが下げられ、1997年現在は、資産と賃金が10%、売上高が80%となっている。


 さらに、1999年には、資産と賃金のウェイトをさらに下げて、それぞれ5%とし、売上高のウェイトを90%とすることとしている。(これにより、ミシガン州内の工場で製造し、州外で販売する割合が大きい企業の税負担が軽減される。)


 また、単一事業税においては、零細事業者、労働集約的産業等の各種の企業の税負担を調整するため、様々な調整措置が導入されている。


 税率は、2.3%である。


 収入(売上)25万ドル以下の企業は非課税(申告義務がない)であることもあり、州内の約27万社のうちの約半数が納税をしていない。


 また、単一事業税の税収の約60%は、約2%の企業によって納税されており、自動車産業が占めるウェイトが大きい。




課税の根拠


 単一事業税は、応能原則による(租税負担能力に応じる)租税というよりも、応益原則による(企業が消費した行政サービスあるいは企業の受益による)租税であると考えられている。


 単一事業税は、企業の付加価値を課税ベースとすることに特色がある。この付加価値は、例えば州のような行政区域内の事業活動の量を表す指標であり、さらに事業活動の量は企業が消費した行政サービスの量を表す指標である。




地方財政に占める重要性


 1997年度においては、単一事業税の税収額は2,406百万ドルであり、ミシガン州税収額の12.7%を占める。


 最近、州の税収に占める単一事業税の割合が低下してきている。これは、他の税目の増税や好況による個人所得税の増収などによるものである。


 とはいえ、20億ドルを超える税収は、州にとって大きな財源である。




評価


 法人所得課税から単一事業税への変更は、税収の安定化に貢献している。


 単一事業税は、付加価値税であり、その課税ベースが広い(利潤、賃金、支払利子、減価償却等から構成される。)ため、企業の生産管理に影響を与えにくい。すなわち、あらゆる生産要素(労働力、資本、機械)に対して一律に課税することになるため、労働や資本等の相対的コストを変えることがなく、生産要素の利用に関する企業の選択に影響を及ぼさない。また、多少の税率変更で一定の規模の税収が確保できるという側面もある。


 資本取得控除の存在により、大きなメーカーなど、資本投資を行う企業にとっては、都合がよい税制である。


 また、利潤への課税に比べて、税負担額が企業にとって予測しやすいという利点もある。


 一方、労働集約型企業や、利潤が十分あがらない中小企業等にとっては厳しい税であるとの批判がある。なお、この点については、超過報酬控除や粗収入(総売上)控除、代替税、その他、各種の特例措置が創設され、一定の負担の調整が図られている。ただし、こういった特例措置の導入は、一方で、税制の複雑化や課税ベースの浸食、一定部分の所得課税化などの影響をもたらしている。


 州間配分率については、その算定が売上に重点化されていることに対して、賛否両論がある。
   

税 調 委 員 海 外 調 査 報 告
(地方法人課税関係:フランス・ドイツ・オーストリア)

Ⅰ.日程等

1.

 平成10年9月5日~13日

2.

張者



一橋大学経済学部
一橋大学法学部
事務局同行者 大蔵

水野
省主税
弘光 教授
忠恒 教授
局斎須 自治省税務局 川窪)

3.

問先

ランス) 経済財政産業省、パリ商工会議所、内務省、
マリニ氏(上院議員兼コンピエーニュ市長)、パリ市

イツ) 連邦大蔵省、商工会議所、
ノルトライン・ヴェストファーレン州内務省

ーストリア) 連邦大蔵省、ウィーン州税務局

Ⅱ.調査対象

ランス) 職業税

イツ) 営業税

ーストリア) 賃金総額税

Ⅲ.訪問先における聴取内容の概要

[フランス]

フランス職業税の仕組みと沿革等


 職業税は、仏革命でできた「パテント」と呼ばれる税(職種毎に市町村に対し納める税)に代わるものとして、1975年に導入された。


 職業税は、課税対象を、資産(賃貸料相当額)と給与(支払い給与全体の18%)の合計額としている。資産の賃貸料相当額については、不動産は役所のデータベース上の賃貸料相当額を用い、機械設備は購入額の16%とされる。


 職業税の税率は、市町村議会の決める税率・県議会の決める税率・地方(region。以下レジオンという。)の決める税率・商工会議所の財源となる税率の合計である。フランスには、36,000の市町村、8,000~10,000の市町村の集合体、95県、28レジオンがあり、50,000もの地方公共団体によって税率が決められる。(その結果、合計税率は、6%~36%となっている。)


 1975~80年の間は、税率は国が決定していたが、地方分権の流れの中で、1981年に税率を決める権限が市町村に移譲され、翌82年には県やレジオンにも税率を決める権限が与えられた。


 その後、地方公共団体による税率引き上げが行われる一方で、企業負担の軽減のために、国(法律)によって、納税額の上限制度や控除措置が導入された。国が法律で導入したこれらの措置による差額は、国によって補填されている。


 具体的には、納税額の上限(各企業の付加価値額の3.5%を納税額の上限とする制度)や、16%の一律控除(全納税義務者について、算定した課税標準額から一律に16%を控除する制度)などの制度が設けられている。その他にも、地域振興のための特別措置もある。


 こういった国からの補填は、地方公共団体がその任務を果たすにはそのための財源が必要である一方で、地方の任務や税法を決めるのは国であるということから、国が差額の負担を行っているものである。また、フランスの場合には、市町村長である者が国会議員の身分を併せ持つことが多いという背景もある。


 一方、税率の面から職業税の税負担が過重にならないようにするための措置として、各団体で決定できる税率は、全国平均の2倍を超えてはならないという制度、及び、地方公共団体が職業税の税率を引き上げる際には、住民税などの他の税目の税率の引き上げ率以上に上昇させることはできないという制度が設けられている。


 また、フランスの職業税については、1996年から、納税額の下限の制度(当該企業の付加価値の0.35%の額を税額が下回った場合には、差額を企業が申告して支払う)も導入されている。


 フランス政府は、1999年の予算法案の中に、職業税の改革案(給与総額への課税を5年間で撤廃する案)を盛り込んだ。この法案は、1998年の10月~12月にかけて国会で審議される。


 この法案に対しては、1)地方公共団体の税収減により中央への依存割合が高まる(地方に決定権のある財源が減る)こと。2)その改革によって得をする団体と損をする団体が生じること。3)地方公共団体の企業誘致意欲が減退すること。などが問題点として指摘されている。


 この法案は、長引く失業問題に対して、労働時間の削減によって雇用の量を増加させようという政府の政策を企業側に受け入れさせるための交換条件という意味合いもある。




課税の根拠


 企業の存在がその立地する地方公共団体にとって負担になるという観点から、収益のない企業に対しても職業税が課されていると理解されている。なお、市町村が職業税を徴収している実質的な理由は、国が所得及び消費への課税をしており、それと税源を分けあうという観点から、地方では物への課税を行ってきたということ、及び、現実の問題として、税収の安定性という地方の要請に沿っているということであろうとの説明もあった。


 パリ市から、市は、赤字企業に対しても出費をしているので、それに対して企業が負担をするのは当然であろうとの説明があった。




地方財政に占める重要性


 職業税は、96年に1394億フランの税収を上げており、地方の直接税の税収のうち49%を占め、地方の歳入全体の18.2%を占める、地方公共団体にとっては重要な財源であり、また、税率を自由に決めることができる税である。




評価


 地方公共団体にとっては、職業税は、税収が安定しており、課税対象が広く、企業の事業拡大に伴って税収も増えるというメリットのある税である。


 地方公共団体にとっては、職業税は、財政と経済界の唯一の繋がり(職業税があるから企業誘致に熱心になる)であるとも理解されている。


 一方で、職業税は、豊かな地方公共団体が税率を引き下げ、貧しい団体ほど税率が高くなるということの結果、地方公共団体間の不均衡をもたらしているとの批判もある。


 納税者(企業)側からは、制度が複雑であることや地域間の税率の差が大きいことなどのほか、収益・業績と関係なく課税されること、人件費の上昇を招くこと等について批判が強い。


 職業税については、その課税対象を企業の創出する付加価値に変更すること、職業税を一つのレベルの地方公共団体(例えば、市町村)に特化させること、市町村の集合体毎に税率を定めていく方式を導入して市町村間の税率のバラツキをなくすこと等、種々の議論があるが、結論が得られていない状況である。

[ドイツ]

ドイツ営業税の仕組みと沿革等


 ドイツには3段階の政府があり、連邦と16州、14,500の市町村からなる。これらに共通の税(共同税)と各レベルに固有の税が存在する。営業税は市町村の固有税と位置づけられている。(ただし、その税収の一定割合が、市町村から州及び連邦に納付されている。)


 ドイツの営業税は、かつては3種類の課税物件(収益・資本・賃金)があったが、1980年には賃金総額に対する部分が、1998年には営業資本に対する部分が整理され、今日では、営業収益に対する課税となっている。


 営業税収入(1998予算)は、西(旧西独地区)では286億マルクで市町村の総収入の12.8%だが、東(旧東独地区)では27億5千万マルクで5.4%となっている。これは、東西の企業の収益力の差を表している。なお、ドイツ統一から1997年までは、営業税は、西では収益と資本に課されていたが、東では収益のみに課されていた。


 営業資本に対する課税の部分は、従前の営業税の税収の中で比重の小さい(480億マルク中の80億マルク程度)ものであったが、その代替財源として、1998年から、売上税収の2.2%が市町村に配分されることとなった。具体的な各市町村への配分の基準については、調整中であるが、最終的には、法律によって規定される。また、この改革の際、ボン基本法の改正が行われ、経済活動に関する税で市町村が税率を決めうる税を保障することが基本法に新たに明記された。

※ 


ボン
 「


基本法第28条第2項
市町村に対しては、法律の範囲内において、地域的共同体の全ての事項を、自己の責任において規律する権利が保障されていなければならない。市町村組合もまた、その法律上の任務領域の範囲内において、法律の基準に従って、自治権を有する。自治権の保障は財政上の自己責任の原則を含む。この原則は、経済力に関連する税目の税率決定権が市町村に保障されることを含む。
」 
(※下線部が追加部分)


 州や市町村は、売上税収の一部の配分を受けられることとなった点とボン基本法の改正を評価している。


 営業税については、州の税務署が課税標準額を決定し、乗数(税率)は市町村が決める。納税は市町村に対して行われる。




課税の根拠


 地方公共団体が整備した基本的インフラを事業所が利用していることに対して負担を求めるものと理解されている。なお、実際には、古くから存在している税なので、課税に関する理論的根拠を議論する以前に、地方にとって必要な財源であるということが重要であるとの説明もあった。




地方財政に占める重要性


 1997年においては、営業税収は486億マルクであり、市町村の最も重要な財源となっている。これは、連邦が得ている所得課税の収入438億マルク(法人税326億マルク、所得税111億マルク)と同じ規模に達する財源である。




評価


 市町村にとっては、営業税は、以下の点において重要である。1)税収が大きいこと。(ノルトライン・ヴェストファーレン州では、年に100億マルクに上る。)2)乗数(税率)を市町村が決めるため、財源の自主性が市町村にあること。3)営業税の存在により、市町村が企業の誘致に積極的になること。(この点については経済界と共通の評価が与えられる。)


 ただし、市町村にとっても、景気の変動による税収への影響が大きいことや、特定の企業の業績が当該市町村の財政に大きく影響するようになっているという問題点がある。


 納税者(企業)側からは、各種の所得のうち、事業所得のみが、営業税と法人税とで二重に課税されているという批判がある。


 また、各種の特別措置によって営業税負担が大企業に集中し、それが経済界内部の不公平感を生むと同時に、市町村が税収との関係で、大企業寄りの企業誘致策をとるようになるという問題も指摘されている。


 現在の営業税に替えて付加価値税(収益、資本、総賃金などの合計に課する税)を導入すべきだという議論もあるが、当面、実現性のある案とは考えられていない。

[オーストリア]

オーストリア賃金総額税の仕組みと沿革等


 オーストリアの賃金総額税は、ドイツと同様な営業税(収益・資本・賃金を対象)から、1985年に営業資本に関する部分が、1993年に営業収益に関する部分がそれぞれ整理され、1994年から、賃金総額に対する税となっているものである。


 1994年からは、名称がKommunalsteuer(直訳すると「市町村税」。一般的にはこの新税を旧税同様に「賃金総額税」と訳しており、以下においても「賃金総額税」という。)とされている。また、この時、税率が2%から3%に引き上げられるとともに、事業の範囲が拡大されて、自由業、農林業、不動産賃貸業も課税対象に含められている。


 賃金総額税の課税標準は賃金総額(フリンジ・ベネフィットや現物給与も含まれる)であり、原則として控除項目はないが、身体障害者を雇用している場合の賃金、企業内年金、退職金などは控除対象となる。非課税措置もほとんどないが、国鉄や公立福祉施設には例外措置がある。


 賃金総額税は、市町村に申告納税される。国の税務署の役割は、税収帰属に争いがある場合などに限られる。


 オーストリアの賃金総額税は、フランスの職業税やドイツの営業税とは異なり、その税率は、法定された一定税率(3%)とされている。




課税の根拠


 従前の営業税と同じように、新しい賃金総額税についても、事業者がインフラを使用していることが課税の根拠と考えられている。




地方財政に占める重要性


 賃金総額税は、地方税収入の47%を占めており、市町村の財源として最も重要な位置を占めている。




評価


 市町村にとっては、賃金総額は隠しにくいので調査し易い。つまり、賃金総額税は、執行し易く、税収を上げやすい税である。(この税については殆ど脱税はないだろうとのこと。)


 市町村で独自に税額を把握し、徴収できるため、分割をめぐる争いが発生しない。


 賃金総額に課税することにより、市町村は、企業誘致に積極的になる。


 一方、賃金総額税は、賃金へのサイドコストとなるため、国際化が進展する中、企業立地や企業活動の活発化を推進するうえで、社会保険料などとともに、そのサイドコスト縮減のためのターゲットとされ易い。


 今後の改革の必要性については、賃金総額税に替えて、付加価値税を導入しようという考え方も出されているが、現時点では、実現性のある案ではないと紹介された。

(以 上)


[続きがあります]

 
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