| (制度の沿革) ・ 我が国においては、明治20年に所得税が創設されて以来、明
治民法の家族制度と連動して、同居家族の所得を全て合算して
累進税率を適用する世帯合算非分割課税制が採られていた。
戦後、シャウプ勧告は家族制度の改正を背景として合算課税
方式の廃止を勧告し、所得税の課税単位は昭和25年から基本的
に個人単位課税に移行した。その際、納税者の恣意による所得
の分割を防ぐ等の趣旨から、
[1] 扶養親族の所得の合算課税
[2] 資産所得の合算課税
[3] 家族専従者の労働報酬の事業主の所得への合算課税
の3つの例外が設けられたが、昭和26年度の改正では、[1]及び
[2]が主として税制の簡素化の観点から廃止され、また、昭和27
年度の改正では、[3]の例外措置として青色事業専従者控除制度
が設けられた。その後、昭和32年度の改正では、多額の所得を
得ている世帯について資産所得の合算課税が復活されたが、こ
れは昭和63年の抜本改革時に廃止された。また、昭和42年度の
改正で青色事業専従者控除について、いわゆる完全給与制が導
入されている。
・ 現行法では、[3]の例外だけが基本的には維持されているが、
これが実際に適用されるのは給与以外の対価(地代、家賃等)
に限られ、給与に関しては、青色申告者の事業専従者について
は限度額なしの完全給与制が、白色申告者の事業専従者につい
ては事業専従者控除が認められている。
このように、シャウプ勧告以降の我が国所得税制は、個人単
位課税の方向を徹底してきていると言える。
(主要諸外国の制度)
・ アメリカ所得税採用とともに個人単位主義がとられたが、州
によって財産制度が異なり、夫婦別産制の州と共同財産制の州
とが存在していたことを背景として、1948年に(単一税率
表の下で)個別申告と共同申告(二分二乗方式)の選択適用が
認められるに至った。
その後、夫婦世帯については二分二乗方式による負担軽減効
果があるのに対し、夫婦世帯と同様に扶養親族を有する独身者
(寡婦等)にはこのような効果がないことが問題となり、寡婦
等に対する負担の調整を行うため、独身世帯主用の税率表が設
けられた(1951年)。
しかし、その後も、独身世帯主以外の独身者が既婚者よりも
不利に扱われているという批判があったことや、夫婦には共同
生活による規模の利益が生まれることを考慮すべきとの考え方
から、1969年には、従来の基本税率表を夫婦個別申告用と
し、それよりも低い水準に税率を設定した独身者用税率表が新
設された。
これと同時に、夫婦個別申告用の2倍のブラケットを持つ夫
婦共同申告用の税率表が作成され、二分二乗の利益を保存した
まま税額計算の簡便化が図られた。
これらの改正の結果、現在、税額表は4種類となっている。
・ イギリス
所得税創設以来、夫婦合算非分割課税がとられたが、既婚女
性の税務におけるプライバシーと独立性、結婚に対するペナル
ティの問題等を考慮し、1990年から個人単位課税に移行し
た。
・ ドイツ
二分二乗方式と個人単位課税との選択的採用となっている。
・ フランス
家族除数方式(N分N乗方式)を採用している。
<配偶者特別控除>
・ 所得金額が 1,000万円以下の納税者が、生計を一にする配偶
者で所得金額が76万円未満(給与収入では 141万円未満)であ
る者を有する場合には、配偶者特別控除として、その配偶者の
所得金額に応じた一定額を所得控除することができることとさ
れている。
・ 配偶者特別控除は、配偶者の所得金額の増加に応じて逓減し
ていく消失控除の仕組みがとられている。
・ このように、消失控除の仕組みをとる配偶者特別控除が創設
されたことにより、パートで働く配偶者の収入が一定額を超え
ると、夫婦合わせた税引後手取り収入がかえって減少するとい
う「手取りの逆転現象」(いわゆる「パート問題」)は、税制
上解消された。 |
○ 累進税率の下で世帯単位での
合算課税の仕組みを採ることに
ついては、以下のような側面が
あることについてどう考えるか。
・ 合算非分割制とする場合に
は婚姻に対するぺナルティ的
な効果を持ち、
二分二乗制のような合算分
割制とする場合には、同一の
所得を有する単身者と既婚者
を比べた場合、一般的には既
婚者に有利となるというよう
に、
婚姻の有無により税負担の程
度に変動が生じる。
・ 同一の所得を有する世帯間
(共働き・片働き)ではの税
負担は同じとなる。
・ 専業主婦が新たに就労した
場合などの追加的所得に対し
て配偶者の所得に応じた限界
税率が適用される。
○ 一方、累進税率の下で個人単
位課税の仕組みを採る場合には、
以下のような側面があることに
ついてどう考えるか。
・ 同一の所得の単身者と既婚
者を比べた場合、配偶者に係
る控除がなければ、一般的に
は、同一の税負担となる。
・ 片働きと共働きを比較した
場合、同一の所得を有する世
帯では、配偶者に係る控除が
なければ、一般的には共働き
の方が有利となる。
○ 世帯に対する税負担のあり方
は、課税単位の採り方のみでな
く、人的控除のあり方、税率構
造、さらに給与所得控除のあり
方とも関わる問題であり、総合
的な観点から議論していく必要
があるのではないか。
○ 配偶者控除と基礎控除、扶養
控除といった人的控除の組み合
わせのあり方についてどう考え
るか。
○ 課税単位や配偶者に係る控除
のあり方は、各国毎に区々であ
り、関連する社会制度や歴史的
背景の影響を色濃く受けている
ことについてどう考えるか。
○ イギリスをはじめとするいく
つかの先進諸国で、近年、世帯
単位課税から個人単位課税に移
行する動きが見られたことにつ
いてどう考えるか。
○ 配偶者控除・配偶者特別控除
は、所得がない、あるいは所得
の少ない配偶者がある者に対し
て税制上相応の配慮を払うもの
であると考えられるが、これら
が女性の就労インセンティブに
影響を及ぼしているのではない
かとの指摘についてどう考える
か。
○ パート収入については、給与
所得控除の最低保障制度等によ
り一定額まで非課税となるとと
もに、さらに配偶者控除、配偶
者特別控除により、世帯主の税
負担も軽減される扱いとなって
いることについてどう考えるか。 |