| 平成17年6月17日 |
| 税 制 調 査 会 |
基礎問題小委員会
・非営利法人課税
ワーキング・グループ |
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新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制
についての基本的考え方 |
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は |
じめに
今日、価値観の多様化や社会のニーズの多元化が進む中、公益法人やNPO法人等による民間非営利活動の重要性が高まってきている。他方、現行の公益法人制度については、民法制定以来100余年にわたり見直しが行われていない。実態面でも、主務官庁の許可主義の下、法人設立が簡便でなく、公益性の判断基準が不明確であり、営利法人類似の法人が存続しているなど種々の批判がなされている。こうした諸問題に適切に対処することが喫緊の課題であるとして、これまで、内閣官房行政改革推進事務局を中心に、現行の公益法人制度を抜本的に見直すための検討が進められてきた。昨年12月には、「今後の行政改革の方針」が閣議決定され、「公益法人改革の基本的枠組み」が定められた。現在、既存の公益法人制度に代わる「新たな非営利法人制度」の法制化に向け、具体的な制度設計の検討が進められている。
一方、このような公益法人制度改革の動きに対応して、当調査会においては、平成14年11月に基礎問題小委員会の下に非営利法人課税ワーキング・グループを設置し、翌15年3月までの間、計6回にわたり、新たな非営利法人制度のイメージを念頭に置きつつ、非営利法人に対する課税のあり方等について検討を行った。さらに、「新たな非営利法人制度」の具体化の検討が進められている中、これを受けて、新たな非営利法人に関する課税のあり方や、民間非営利活動を資金面から支える寄附金税制についても、抜本的に検討することが必要となった。
こうした状況を踏まえ、本年4月15日、当調査会は、基礎問題小委員会及び非営利法人課税ワーキング・グループ合同会議を設置して、新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制のあり方についての検討を開始し、以後6回にわたり審議を行った。この「基本的考え方」は、これまでの議論の大要をとりまとめたものである。
この「基本的考え方」は、昨年6月の「わが国経済社会の構造変化の『実像』について」において指摘した「民間が担う公共」の重要性を踏まえ、この諸課題に関して今後の改革の基本的方向性を提示するものである。「あるべき税制」の一環として、「新たな非営利法人制度」とこれに関連する税制を整合的に再設計し、寄附金税制の抜本的改革を含め、「民間が担う公共」を支える税制の構築を目指そうとするものに他ならない。これはまた、歳入歳出両面における財政構造改革の取組みと併せて、わが国の経済社会システムの再構築に欠くことのできない取組みでもあるといえよう。
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一 |
非営利法人に対する課税のあり方 |
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1 |
基本的考え方 |
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イ |
現在、検討されている「新たな非営利法人制度1」の基本的な仕組みは、おおむね以下のとおりである。 |
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[1] |
現行の民法34条法人(民法第34条に基づく社団法人及び財団法人をいう。以下同じ。2)の設立に係る許可主義を改め、法人格の取得と公益性の判断を分離するため、公益性の有無に関わらず、準則主義(登記)により簡便に設立できる一般的な非営利法人制度を創設する。 |
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[2] |
主務官庁制(各官庁が裁量により民法34条法人の設立許可等を行うことを指す。)を抜本的に見直し、主務官庁から中立的に公益性判断を行えるよう、内閣に民間有識者からなる委員会(以下、「第三者機関」という。)を新たに設置する。そして、その意見に基づき、一般的な非営利法人について目的、事業等の公益性を判断する仕組みを創設する。併せて、一定の地域を拠点として活動する非営利法人について、その公益性を判断するため、都道府県に国に準じた体制を整備し、国との間で整合性を図る。 |
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[3] |
新たに創設される非営利法人制度に包含される中間法人制度は廃止する一方、特定非営利活動法人制度(いわゆるNPO法人制度)を含め特別法によって設立される公益法人等は引き続き存続する。 |
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ロ |
このような制度設計に対応して、新たな非営利法人に対する適正な課税のあり方を検討しなければならない。
そもそも法人税は、事業の目的や利益分配の有無にかかわらず、収益及び費用の私法上の実質的な帰属主体である事業体がその納税義務者とされるものであり、この点は営利法人も非営利法人も同様である。こうした考え方の下、非営利法人に対する課税に係る具体的な課税ベースについては、各々の非営利法人に関する私法上の仕組み(残余財産の帰属の態様等)や事業目的、活動の実態等を総合的に勘案して適切に設定する必要がある。 |
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2 |
「公益性を有する非営利法人」に対する課税 |
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(1 |
) 公益性の判断
今般の制度設計においては、公益性を有するにふさわしい規律のある非営利法人の受け皿となる仕組みを構築するため、以下のような方向で検討されている。 |
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[1] |
非営利法人の目的、事業等の公益性について、(i)積極的に不特定多数の利益の実現を図ること、(ii)残余財産の帰属者は国等の一定の範囲に限定されること、(iii)公益的事業の規模は法人の事業の過半を占めること、(iv)同一親族等が理事等に占める割合を制限すること、(v)必要な範囲を超えた過大な資金等が内部留保されないこと等、できる限り裁量の余地の少ない明確な要件を設定し、これに照らして「第三者機関」が非営利法人の公益性を判断する。 |
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[2] |
「第三者機関」において、公益性を有すると判断された非営利法人(以下、「公益性を有する非営利法人」という。)に対して、事業報告書等の定期的な提出、一定期間ごとの公益性の有無の確認、公益性判断の取消し等、事後チェックのための監督上の措置を講じる。 |
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[3] |
さらに、「公益性を有する非営利法人」に対して、適正運営の確保のために適切なガバナンスを求めるとともに、国民一般に対する情報開示の強化を図る。 |
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このような公益性判断の仕組みや事後チェックの担保措置を前提とする限り、「公益性を有する非営利法人」については、「第三者機関」による公益性の認定をもって、法人税法上の公益法人等として取り扱うこととすべきである。 |
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(2 |
) 課税上の取扱い
「公益性を有する非営利法人」に対する法人所得課税上の取扱いについては、その事業活動の公益性に鑑み、現行制度同様、基本的にすべての収益を非課税とすることが適当である。
ただ、当該法人が行う事業活動の実態は極めて多様であり、収益を得ることを目的とする営利法人と同種同等の事業活動が行われる場合もある。これを含めてすべての事業活動から生じる収益を非課税とすることは営利法人との間で著しくバランスを失することになる。このため、「公益性を有する非営利法人」においても、現行制度と同様、営利法人と競合関係にある事業のみに課税することとすべきである(収益事業課税)。 |
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3 |
「公益性を有する非営利法人」以外の非営利法人に対する課税 |
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(1 |
) 基本的方向
「公益性を有する非営利法人」以外の非営利法人は、「新たな非営利法人制度」の下では、準則主義(登記)により簡便に設立できる。利益分配を目的としないものの残余財産の帰属の制約がなく、事業内容の制限もない法人と位置付けられる。このため、例えば、同窓会のような「会員からの会費を活動の原資として専ら会員共通の利益を目的とした共益的事業活動を行う非営利法人」から、「その事業活動が営利法人と実質的にほとんど変わらない非営利法人」に至るまで、様々な態様の非営利法人の設立が予想される。
かかる多様な実態を踏まえると、これら非営利法人に対する課税を一律の取扱いとすることには無理がある。これら非営利法人の組織運営や事業活動の目的・内容等の実質面に着目しつつ、これに対応した適正な法人所得課税のあり方を検討する必要がある。 |
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(2 |
) 課税上の取扱い |
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イ |
非営利法人のうち「専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人」とは、典型的には、会員からの会費を原資として、それが会員向けの共益的事業活動に専ら費消され、会員がその潜在的受益者になることが想定される法人である。このような法人の場合、実際には、会員からの会費の収入時期と支出時期とのタイムラグにより一過性の「余剰」が生じることは避けられない。しかし、このような「余剰」への課税は当該法人の活動実態に照らし必ずしも合理的とは考えられない。かかる観点から、会員からの会費について非課税とする方向で検討することが適当である。
併せて、「専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人」といっても千差万別であるため、このような課税の取扱いとすべき非営利法人を判定するための具体的基準のあり方等について検討を行う必要がある。 |
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ロ |
また、「新たな非営利法人制度」の下では、「公益性を有する非営利法人」でも「専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人」でもない非営利法人も存在する。これについては、利益分配を目的としていないものの、実質的に給与やフリンジベネフィットという形で利益分配を行ったり、解散時に残余財産の帰属という方法により利益を分配したりすることが可能である。さらに、事業内容にも特段の制限がないため、実質的に営利法人と同種同等の事業活動も行いうる。このような法人の特性や実態等を踏まえれば、これに対する課税については、非営利法人、営利法人という法人形態の選択に対して中立的になるように、また租税回避手段としての濫用を防止するため、営利法人と同等の課税とすべきである。
さらに、こうした非営利法人については、相続税等の租税回避に濫用されるおそれがあることから、現行の公益法人等に関する租税回避の防止措置をも考慮し、適切な措置を検討する必要がある。 |
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4 |
公益性判断の変更があった場合等の取扱い
「新たな非営利法人制度」の下、「第三者機関」が「公益性を有する非営利法人」に対する事後チェックによりその公益性判断を取り消した場合、当該法人は、「公益性を有する非営利法人」という資格を失い、通常の非営利法人に移行することになる。この場合、当該法人の財産には税制上の優遇措置によって蓄積されてきたものが含まれている。このため、営利法人との課税のバランスや租税回避の防止の観点から、取消事由の発生時点に遡及して優遇措置を取り消すとともに、優遇措置により蓄積された財産に対し一定の課税を行うといった何らかの税制上の措置を講じるべきである。
併せて、「専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人」の場合についても、これと同様の検討を行う必要がある。 |
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特別法に基づく非営利法人等との関係
今般の公益法人制度改革は、民法34条法人と中間法人に代えて、「新たな非営利法人」を制度化するものであり、「特別法に基づく公益法人等」(学校法人、社会福祉法人、宗教法人、NPO法人等)の私法上の位置付けの変更は予定されていない。加えて、「公益性を有する非営利法人」との課税上のバランスを考慮すれば、これらの法人に対する課税については、当面、現行と同様の取扱いとすることが考えられる。ただし、後述のように公益法人等に共通する課税上の諸論点について見直しを行う場合には、制度の整合性に配慮した検討を行うべきである。
地縁団体や管理組合法人のように、「共益的事業活動を行うことを目的として特別法に基づき設立される法人」については、その実態を踏まえつつ、上述の「専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人」の課税上の取扱いと整合性が確保されるよう検討する必要がある。
「人格のない社団等」については、収益及び費用の実質的な帰属主体として一定の団体的性質を備えていることを踏まえ、これを法人とみなして収益事業からの所得に対して課税されている。人格のない社団等には、公益的活動や共益的活動を行うような団体から、営利的活動を行う団体まで様々なものがある。「新たな非営利法人制度」の制度化に伴って、営利目的のものでなくても法人格取得の途が開かれるため、法人格を取得して「非営利法人」に移行することが少なからず想定される。このような事業体の選択に税制が歪みをもたらすことのないよう、人格のない社団等に対する課税について、営利法人や非営利法人との課税のバランスや租税回避の防止の観点から、その実態に配意しつつ、そのあり方の見直しを行う必要がある。 |
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6 |
地方法人課税
今回新たに制度化される非営利法人に対する地方法人課税については、法人所得課税としての法人住民税法人税割及び法人事業税所得割は、原則、法人税と同様の取扱いとすべきである。また、法人住民税均等割については、現行制度と同様、「公益性を有する非営利法人」が収益事業を行わない場合は最低税率により、また当該法人が収益事業を行う場合は法人の規模に応じて課税することとし、「公益性を有する非営利法人」以外の非営利法人については、営利法人との均衡等を考慮し課税することが適当である。 |