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諮問・答申・報告書等

総論関係


「公平・中立・簡素」の原則について
 
「公平・中立・簡素」の原則については、当調査会がこれまで税制の構築に際して規範的な基準として用いてきたものである。経済社会の構造が変化しようとその重要性は変わらず、引き続き税制の基本とすべきである。


.公平
 
「公平」の原則とは、様々な状況にある人々が、それぞれの負担能力(担税力)に応じて負担を分かち合うものであり、水平的公平と垂直的公平がある。前者は、等しい負担能力のある人には等しい負担を求めるというものであり、いかなる経済社会状況においても変わることのない最も基本的な要請である。後者は、負担能力の大きい人にはより多くの負担をしてもらうというものであり、個人所得課税などの累進構造などによる所得や富の再分配がその役割を担っているが、その程度については、平等感や勤労意欲といった観点から、「機会の平等」や「結果の平等」に対する国民の考え方により選択されるべきものである。
 公的部門が担う所得再分配については、歳出面における国の関与が限られた時代においては、個人所得課税の累進構造等を通じて歳入面を中心に行われていた。しかしながら現代社会において、社会保障・社会福祉制度が充実される中で、歳出面の役割が高まってきている。他方、歳入面について見ると、昭和62・63年の抜本的税制改革や平成6年の税制改革等を通じて、個人所得課税の税率構造の累進緩和等が図られ、負担水準が極めて低いものとなった結果、個人所得課税の所得再分配機能は限られたものとなっている。今後、市場機能が発揮される中で就業・雇用形態の多様化などが所得格差を拡大する方向に働く可能性も考慮すれば、これ以上の所得再分配機能を弱める方向での個人所得課税の見直しには慎重であるべきである。


.中立
 
「中立」の原則とは、税制が、その負担を通じて経済社会に対して何らかの影響を与えることは避けられないが、個人や企業の経済活動における自由な選択をできるだけ阻害しないようにすることである。
 わが国が高度成長期を経て経済大国となる過程において、規格化された商品を大量に生産・消費する経済社会が形成されてきた。その中で、資本蓄積、貯蓄増強、特定の産業育成などのため、税制が政策誘導的に用いられてきた。いわゆる「護送船団方式」に代表されるような政府主導・公的介入による事前規制型の政策が各分野で有効とされ、税制においても、個人や企業の行動を特定の政策目的へ誘導するため、租税特別措置等といった例外的な優遇措置が活用されてきた。その結果、経済活動に対しできるだけ中立であるべき税制に、数多く歪みが存在するようになった。
 21世紀に入り、グローバル化・情報化等が進展し、個人や企業のニーズが一層多様化していく中で、市場を通じた資源配分が従来以上に重要となりつつある。そうした状況の下、政策発動のあり方も、個人や企業が創意工夫を最大限発揮できるよう事後チェック型の手段が求められるようになってきている。税制についても、民主導による市場重視の経済社会を実現するため、個人や企業の自由な選択を最大限尊重し、経済活動に対して歪みのない中立なものとすることが必要である。その結果として、経済の活性化は民間の経済活動により幅広く実現するはずである。


.簡素
 
「簡素」の原則とは、個人や企業が経済活動を行うに当たって税制はその前提条件として常に考慮される要素であることから、税制の仕組みをできるだけ簡素なものとし、納税者が理解しやすいものとすることである。21世紀のあるべき税制の構築に当たっては、前述のように個人や企業の自由な選択を妨げない観点から、税制を経済活動に対して中立なものとするとともに、できるだけ簡素で分かりやすいものとすることが求められる。もとより、グローバル化、情報化・電子化等の進展に伴い、経済取引が複雑化・多様化する中で、租税回避を防ぐためには、税制がある程度複雑なものとなることはやむを得ない。しかし、不断の見直しを行い、極力簡素なものとすべきである。また、簡素な税制の構築により、執行面での対応を含め、納税者の税制に対する信頼を確保することも重要な課題である。

個人所得課税関係


 個人所得課税の税率構造


.わが国の所得税の税負担水準(平成14年度国民所得比4.3%)が極めて低いことの要因として、諸控除の拡充のほか、税率の引下げや税率が適用される所得金額の範囲(ブラケット)の拡大による累進緩和(フラット化)があげられる。
 特に最低税率の適用範囲が累次拡大されてきた(その結果、現在、夫婦子2人の給与所得者の場合、所得税の最低税率が適用される給与収入の最大値をみると、日本では831万円である。これに対しアメリカは389万円、イギリスは170万円、フランスは509万円となっている。なお、ドイツは方程式方式のため、ブラケットの概念がなく、最低税率は20%である)。
 さらに、ブラケット別の適用者数を見ると、納税者(民間給与所得者)の約8割に対して、最低税率である10%のみが適用される状況となっている。しかも、この最低税率のブラケットの広さは、給与所得者の1%に満たない最高税率(37%)適用者も含めて全ての納税者がこれを享受しており、その結果、各所得者層とも主要国に比して低い税負担水準にとどまっている。


.このような現在の税率構造については、次のような問題点がある。

(1)

 大多数の納税者が最低税率(10%)のみに分布するという現在の税率構造は、主要国の中でも特異であり、税負担の「空洞化」をもたらす要因となっていること

(2)

 経済の基調変化により、今後、物価や実質賃金の大きな上昇が想定しにくくなっている中、緩和された累進構造の下では、財源調達機能の改善が予想し難いこと

(3)

 近年のわが国の所得分布の状況は、かつてのような平準化の動きは見られず、今後、就業・雇用形態の多様化などが所得等の格差を拡大する方向に働く可能性を考慮すれば、引き続き、税体系における所得税の所得再分配機能の重要性は軽視し得ないこと

 したがって、わが国所得税については、最低税率のブラケットの幅を縮小することが今後の選択肢として考えられる。


.税率の水準についても、上述の問題点を踏まえれば、これ以上の引下げは適当でない。これに関連して次の点に留意する必要がある。

(1)

 「諸控除の見直しによる課税ベースの拡大にあわせ、税率を引き下げる」との議論があるが、次の理由により、実現は困難である。

[1]

 わが国所得税は、累次の減税により、税率の引下げが先行し、既に最低・最高税率ともに主要国に比して低い水準となっている。その一方、課税ベースの拡大が課題として残されていること

[2]

 財源調達や所得再分配など、基幹税として本来果たすべき機能の回復が求められていること

[3]

 諸控除の見直しに伴う税負担の変化は、いわば適正化の結果であり、かつ、個々人への影響は様々であることから、税率の変更でこれを相殺することは適切でなく、かつ、不可能であること

(2)

 特に最高税率の引下げについては、諸控除の見直しにより、所得の多寡を問わず多くの者が税負担増を分かち合うこととなる中で、限られた高所得者層のみに税負担軽減を図ることとなるので、「広く公平に負担を分かち合う」との理念に照らし、国民的な理解が得られるかという問題がある。

(3)

 いずれにせよ、諸控除の見直しに当たっては、真に必要な配慮は引き続き行わなければならない。また、急激な変化を避け、段階的に行っていくことは重要である。


.個人住民税については、地域社会の費用を住民がその能力に応じて広く負担を分任するという独自の性格(負担分任の性格)から、所得税よりも緩やかな累進構造となっている。また、納税義務者の約6割が最低税率(5%)のみの適用となっている。
 個人住民税についても、地方税の基幹税としての財源調達機能等の発揮の観点から考えれば、税率の引下げは適当ではなく、また、最低税率のブラケットの幅を縮小することが今後の選択肢として考えられる。
 なお、3で述べた諸点は、基本的には個人住民税においても留意すべきである。


 「二元的所得税」と金融税制の「一元化」
 「"貯蓄から投資へ"という金融のあり方の切り替え」をも踏まえ、株式譲渡益課税について、利子との均衡にも配慮しつつ税率を引き下げる等(平成15年1月)のほか、当面の優遇措置が講じられている。また、老人等マル優制度が段階的に縮減されることとなっている。
 こうした中、金融資産からの所得に対する課税に関し、北欧諸国で採用されている「二元的所得税」の考え方や金融税制の「一元化」の是非について議論がある。


.「二元的所得税」について

(1)

 「二元的所得税」の考え方は、資本は労働よりも流動的であることを前提として、「勤労所得」に対して累進税率を適用する一方、「資本所得」に対しては「勤労所得」に適用する最低税率、更には法人税率と等しい比例税率で分離課税するものである。これにより、資本取引への課税の効率性、中立性や、生涯を通じた税負担の水平的公平性の確保等が図られる点で望ましいとする。
北欧諸国でこの考え方が採用された背景としては、[1]民間貯蓄が低水準であった、[2]インフレ率が高かった、[3]小規模開放経済の下において、高水準の社会保障を支えるべく、金融資産などの流動的な源泉からも歳入を確保する必要に直面していた、[4]負債利子が控除され課税ベースが大きく浸食されていた、などがあげられている。

(2)

 一方、この考え方に対しては、[1]「資本所得」を「勤労所得」より軽課することは垂直的公平の観点から問題があること、[2]個人事業主や小規模法人の事業収益を「勤労部分」と「資本部分」に分割することに伴う技術的な問題があること、[3]「勤労所得」と「資本所得」とは本質的に異なるものではなく、また、取引形態を操作し、所得分類を変更する可能性もあること等が指摘されている。また、わが国と比較すると、[4]当時の北欧諸国の経済情勢は、貯蓄率等の面で、現在のわが国と異なること、[5]北欧諸国においては、「資本所得」、「勤労所得の最低税率」、「法人税率」がほぼ同じ30%前後で構成されており、わが国とは著しく異なること等に留意する必要がある。

(3)

 当調査会は、わが国所得課税のあり方について、包括的所得税論の立場に立脚しつつ、総合課税への移行を目標としてきた。同時に、金融関連では、所得捕捉体制の問題から、現状では総合課税を基本に一部は分離課税を認めることが現実的としてきている。「二元的所得税」の考え方については、総合課税の前段階と捉え得るのか、また、今後これが北欧諸国に止まらない流れとなるか等について、これから検討を要するものと考える。


.金融税制の「一元化」について
 
わが国の金融税制について、「一元化」して課税すべきという意見がある。「二元的所得税」の考え方がこうした意見に援用される場合もある。金融税制の中立性や簡素性の確保は引き続き重要な課題であるが、「金融所得」といった所得分類を新設し、「金融所得」内での損益通算を可能とすることについては、以下の問題点がある。

(1)

 「金融所得」の新設については、

[1]

 その具体的な範囲、他の「資本所得」と区別することの論拠、商品ごとの所得の性質等の差異、事業体レベルにおける課税との関連をどう考えるか等の問題がある。なお、「二元的所得税」は、あらゆる所得を「勤労所得」と「資本所得」に2分して課税するという考え方であり、北欧諸国における「資本所得」には、金融収益のみならず、土地譲渡益、不動産収益、事業所得(投資収益部分)などが含まれる。

[2]

 現行の所得分類は、所得の法的性格のほか、所得金額の計算方法が異なることを前提に構成されている。利子がそのまま「利子所得」となる一方、株式等の「譲渡所得」は譲渡価額から取得費等を控除する必要があるなど、所得金額の計算方法は金融商品毎に異なっており、現行法上の「所得分類」として、これらを一括した新たな分類(「金融所得」)を設けること自体に特段の意義は見出せない(「二元的所得税」を採用している北欧諸国でも、「資本所得」の中で金融商品毎に所得金額の計算方法が異なっている)。

(2)

 「金融所得」内での損益通算については、

[1]

 株式取引に伴うリスクの軽減に資する反面、株式譲渡損益は発生時点に裁量性・操作性があるなどの点で、利子や配当とは異なるほか、税負担を意図的に軽減し得るとの側面もあり、他の所得との損益通算を可能とすることは必ずしも適当でない。総合課税を採用している主要国においても、他の所得との損益通算は基本的には認めておらず(注)、「二元的所得税」を採用する北欧諸国でも、利子や配当などとの損益通算の取扱いは区々となっている。

[2]

 株式譲渡損と利子との通算を認めるためには、現在、源泉分離課税の対象とされている利子所得を申告課税に変更する必要がある。これについては、利子課税の基本的な問題として、国民経済的な観点からの検討や、適正な所得捕捉を行うための納税者番号制度や新たな調書制度の導入が課題となる。

(注

)株式の譲渡損失と他の所得との損益通算については、イギリス、ドイツ、フランスでは認められていない。アメリカでは土地の譲渡損失と合わせて3000ドル(約37万円)に限定されている。


.制度の簡素化等
 
金融税制については、金融取引の高度化等を反映して複雑化せざるを得ない面もあるが、広く一般国民に関係するものであるため、課税の公平・中立と並んで、制度の簡素性に配慮すべきである。「二元的所得税」や「一元化」の議論も、税制の簡素化の必要性と基本的な方向を同じくするものとも考えられる。
  また、度重なる税制改正により課税関係が頻繁に変更されることは、投資や商品開発の前提を不安定にする可能性があるほか、租税回避行為の誘因となりかねない。今後の金融税制の見直しに当たっては、課税の公平・中立・簡素の基本原則に加え、制度の安定性も重視すべきである。
  さらに、金融商品が多様化・複雑化する中で、金融税制のあり方を考えるに当たっては、納税者番号制度が存在しないことが一定の制約要因となっていることは否定できない。資料情報制度の充実とあわせ、金融資産からの所得に係る執行体制の整備について、具体的な検討を促進することが必要と考える。

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