| 第一 基本的考え方 |
一 |
経済社会の活性化に向けたあるべき税制の構築
21世紀を迎え、少子・高齢化、ライフスタイルの多様化、グローバル化、情報化、経済のストック化、地球温暖化等の環境問題への意識の高まりなど、経済社会の構造は大きく変化している。とりわけ少子・高齢化は予想以上の速さで進行している。最新の人口推計によれば、出生率は一段と低下し、2006年をピークに人口が減少に転じる。生産年齢人口は今後継続して減少すると見込まれている。また、情報化の急速な進展、グローバル化のかつてない速さでの広がりの中で、世界規模での企業競争はますます激化している。
現在、国民の経済社会の先行きに対する閉塞感が深まっている。少子・高齢化が進展し、生産年齢人口が減少する中で、経済社会の様々な構造変化に的確に対応できなければ、わが国は活力を喪失し、長期的に低迷の道を歩みかねない。持続的な経済社会の活性化を実現するため、広範な制度改革を含む構造改革が急務である。税制についても、その一環として、中長期的視点に立って、あるべき改革の全体像を明確に示し、これを実行していくことで、国民の自信と意欲、国家への信頼を回復させ、経済社会の活性化を図る必要がある。 |
二 |
あるべき税制の構築に向けた視点
経済社会の活性化に向けたあるべき税制の検討に当たっては、引き続き「公平・中立・簡素」の原則(補論参照)を基本とすべきであるが、特に、上記のようなわが国を取り巻く状況を考慮すれば、以下の四つの視点を踏まえることが重要である。
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1 |
.自由な経済活動を妨げない税制 -効率的な資源配分と政策の集中-
わが国は高度経済成長の過程で画一化した経済社会が形成され、政策誘導型の施策が重視された。税制においても特定の政策目的実現のため租税特別措置が活用されてきた。しかしながら、21世紀の世界規模での市場経済化、価値観の多様化した経済社会においては、民主導による市場を通じた効率的な資源配分が従来にもまして徹底されねばならない。税制についても、経済社会の活力が発揮されるよう、個人や企業の自由な選択を妨げず、経済活動に中立で歪みのないことを基本とせねばならない。こうした観点から既存の政策誘導的な税制上の措置の整理・合理化を進めつつ、政策税制は真に有効な分野に集中すべきである。 |
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2 |
.課税の適正化・簡素化 -税制への信頼、社会への参画-
少子・高齢化など様々な構造変化に対応しきれず、結果的に税負担の歪みや不公平感を生じさせている税制上の諸措置を放置した場合には、国民の税制への信頼、社会参画への意欲を失わせ、社会の活力を低下させるおそれがある。社会共通の費用を国民皆が広く公平に分かち合うという観点から、こうした措置の適正化を図っていく必要がある。
さらに、納税者の税制への信頼確保の観点からは、制度面のみならず執行面での適正化に努めることも極めて重要である。この観点から、納税者にとって分かりやすい簡素な税制を構築する必要もある。簡素な税制は経済活動を行う際の予測可能性を高め、納税コストの低下を通じて、経済社会の活性化に寄与する。 |
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3 |
.安定的な歳入構造の構築 -持続可能な財政の確立と将来不安の払拭-
持続的な経済社会の活性化を考えるに当たっては、安定的な歳入構造の構築も重要な課題である。わが国の財政は、多額の長期債務残高を抱え(平成14年度末の国・地方の長期債務残高見込み約693兆円、対GDP比約140%)、債務の累増に歯止めがかかっていないなど国・地方を通じて極めて厳しい状況にある。これが将来世代への重荷となっている。さらに、社会保障制度の改革を行っても、少子・高齢化の進展に伴い、今後、年金・医療給付などの増大は避けがたいと見込まれる。他方、これを賄う租税の現状は、約81兆円の国の歳出額に対して約47兆円の税収(平成14年度予算ベース)に留まっており、租税負担率は主要国の中で最低水準である。社会共通の費用を賄うという租税の役割(財源調達機能)は十分に果たせていない。
このような状況は、財政の持続可能性に対する懸念を通じて国民の将来不安を招く一因ともなっている。経済社会の活力を回復していくためには、こうした不安を払拭することが重要である。このため、必要な公共サービスを支えるに足る安定的な歳入構造の構築が必要である。
今後、持続可能な財政の確立に向けて、21世紀初頭のできるだけ早い時期にプライマリーバランスの均衡化を達成することが求められる。このため、歳出面での徹底した改革を強力に進めることが不可欠であるが、租税負担水準の引上げは不可避である。
現下の経済事情から租税負担率の引上げ自体が当面の課題になり得ないにしても、税制改革の推進に当たってはこの方向性に反しないことが最低限必要である。仮に経済社会の活性化のために真に有効な措置として減税を行う場合であっても、そのことが財政の悪化を招くことのないように、具体的な増税と一体として措置すべきである。 |
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4 |
.地方分権と地方税の充実確保
地方税は、地域における行政サービスの経費を地域住民がその能力と受益に応じて負担し合うものである。このことから、応益性を有し、薄く広く負担を分かち合うものであること、さらに、税収が安定したものであることが望ましい。また、自主的な課税を行いやすい税体系であることも重要である。
一方、地方税の現状は、地方の歳出規模と地方税収入が乖離しているほか、個人、法人とも税負担をしない者の割合が大きく地方税の応益的性格が損なわれかねない状況になっており、また、特に都道府県の税収は極めて不安定である。
そのような中、わが国の構造改革の重要な柱として、地方分権を推進し、自立した国・地方関係を確立し、活力と個性のある地域社会を実現していくことが求められている。地方の自律性を高めるためには、市町村合併の推進や地方歳出に対する国の関与の廃止・縮減などによる地方行財政の効率化を前提に、地方公共団体が一層の情報開示を進め、受益と負担の対応関係を意識しつつ自らの責任と判断で地域のニーズに応じた行政サービスを実施できるよう自主財源を中心とした歳入基盤を確立することが必要である。
このためには、地方税の現状を望ましい姿に改革することを目指し、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を構築するとの観点から、地方税の充実確保を図ることが重要となる。 |
三 |
あるべき税制が目指す方向
これまで課税ベース拡大、税率引下げといった「広く薄く」の観点から、昭和62・63年の抜本的税制改革以降、消費税の創設・充実を図る一方で、個人所得課税の累進緩和、法人税率の引下げ等を実現してきた。こうした中、上記の視点から今後のあるべき税制を考えると、その改革の主な方向は以下のとおりである。
個人所得課税については、累次の減税の結果、税負担水準が極めて低いものとなっており、基幹税としての機能を回復する必要がある。同時に、経済社会の構造変化に対応するため、諸控除の見直しなどを図る必要がある。
法人課税については、経済のグローバル化が進展する中で、企業の自由な活動を妨げない中立的な税制の構築を基本とすべきである。同時に既存の租税特別措置の大幅な整理・合理化を進めつつ、経済社会の活性化の観点から真に有効な措置を集中的・重点的に措置する必要がある。
消費税については、世代間の公平の確保、経済社会の活力の発揮等の観点から、今後、その役割を高めていく必要がある。制度に対する国民の信頼感を高めるべく適正化を図り、税率水準の見直しを図ることが課題である。
相続税・贈与税については、富の再分配という機能、少子・高齢化や経済のストック化の進展を踏まえ、最高税率を引き下げつつより広い範囲に適切な負担を求めるべきである。また、生前贈与の円滑化の観点から、相続税・贈与税の調整について一体化を図る必要がある。
また、地方税の改革の方向については、地方税の充実確保の一環として、国と地方の役割分担の見直しを踏まえ、国庫補助負担金の整理・合理化や地方交付税の財源保障機能のあり方の見直しと併せて、税源移譲を含め国と地方の税源配分のあり方について根本から見直すべきである。その際、国・地方それぞれの財政事情や個々の自治体に与える影響を考慮に入れる必要があろう。国・地方を通じる税負担の水準について再検討することも必要である。
地方税の応益性の確保のために、個人住民税における所得割の諸控除や均等割の見直し、法人事業税への外形標準課税の導入、固定資産税の安定的確保、課税自主権の尊重などの対応が考えられる。
こうした措置を着実に実施に移していくことにより、所得・消費・資産等の間でバランスのとれた税体系に配意しつつ、21世紀初頭において国民皆が広く公平に負担を分かち合う観点からあるべき税制を構築し、持続的な経済社会の活性化を実現していくことが課題である。 |