選考結果報告全文・黒川 清 野口英世アフリカ賞委員会座長

 天皇皇后両陛下、TICAD御出席の各国首脳及び国際機関の長の皆様、御列席の皆様、

 野口英世アフリカ賞委員会を代表して、選考の概要と受賞者の業績についてご報告します。

 まず、選考の概要は以下の通りです。昨年、全世界から寄せられた推薦に基づき、永井美之理化学研究所新興・再興感染症研究ネットワーク推進センター長を主査とする医学研究選考委員会、山田忠孝 前ビル&メリンダ・ゲイツ財団グローバルヘルス部門会長を座長とする医療活動選考委員会が、それぞれ三件まで候補を絞り込みました。

 この結果を受け、本年二月、野口英世アフリカ賞委員会にて、医学研究部門はロンドン大学衛生・熱帯医学大学院学長のピーター・ピオット博士、医療活動部門はマケレレ大学感染症研究所所長のアレックス・コウティーノ博士が受賞者に最もふさわしいとの全会一致の結論を得、総理に推挙し、本年三月、総理により受賞者が決定されました。

 つぎに、受賞者の業績を御報告します。

 ピオット博士は、一九七六年にアントワープの熱帯医学研究所で研究を開始し,その後は活動の拠点をアフリカに置き,HIV/エイズやエボラ出血熱等の感染症の研究を行ってこられました。同時に、ピオット博士は、傑出した論文発表の一方で、UNAIDS 事務局長として国際的な場での精力的な役割を通じてなど、HIV/エイズに対する国際社会の関心を喚起してきました。

 このようにピオット博士は,アフリカの現場での研究と国際的な政策立案の双方に携わってきた類い稀な人物として広く知られています。

 つぎに、コウティーノ博士の業績をご紹介します。

 コウティーノ博士は、二〇〇一年から二〇〇七年まで、アフリカで長く活動を続けている「エイズ支援機関(TASO)」の事務局長としてリーダーシップを発揮し、多くの人々が参加するHIV/エイズの予防、治療・ケアの仕組みを構築し、これをアフリカで広く適用できるモデルとして普及させました。この過程において、コウティーノ博士は、HIV感染者自身が主体的に関与する取り組みを世界に先駆けて実践しました。

 コウティーノ博士の取り組みは、多くの人々の命を救い、その取り組みのモデルは、現在世界的に広がっています。

 最後に、野口英世アフリカ賞の選考に関わった全ての者を代表して、受賞者お二人に対し、心よりお祝いを申し上げます。