茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成29年12月19日

(平成29年12月19日(火) 10:58~11:21  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 まず私の方から、「平成30年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」の閣議了解について、発表させていただきます。
 お手元に資料をお配りしてあると思いますが、本日の閣議において、「平成30年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」が了解されました。
 平成29年度の我が国経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で緩やかな回復基調が続いており、実質成長率はプラス1.9%程度と、本年7月の内閣府「年央試算」で示したプラス1.5%程度を上回る成長が見込まれます。名目成長率はプラス2%程度になると見込まれます。
 平成30年度の我が国経済は、海外経済の回復が続くもと、12月8日に決定した「新しい経済政策パッケージ」などの政策効果も相まって、雇用・所得環境の改善が続き、消費や設備投資など民需を中心とした景気回復が見込まれます。
 具体的には、個人消費は、労働需給の更なる引締まりの中で、政策の効果もあって賃金が上昇し、今年度を上回る伸びが見込まれます。
 設備投資についても、堅調な企業収益の下、「生産性革命」の取組を通した投資の後押しもあり、今年度を上回る伸びが見込まれます。
 これらの結果、平成30年度の実質成長率はプラス1.8%程度と、内閣府「年央試算」で示したプラス1.4%程度を上回る成長が見込まれます。また、名目成長率は「年央試算」と同様のプラス2.5%程度と見込まれます。
 物価については、景気回復による需給の引締まりの中、消費者物価上昇率がプラス1.1%程度に高まっていくと見込まれます。
 今後の経済財政運営に当たっては、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として取り組んでまいります。

2.質疑応答

(問)今、頂きました経済見通しに関しまして、民需を中心に回復していくという見通し、回復がより足腰の強いものになってきたのかなという印象も受けるのですけれども、大臣の御見解をお聞かせください。それと併せて、仮に実質で1.8%という比較的高い見通しかと、民間なんかと比べると比較的高い見通しかと思うのですけれども、リスクがあるとすればどこにあるのか、それも併せてお聞かせください。
(答)確かに民需が堅調でありまして、我が国経済の現状を見てみますと、個人消費は雇用・所得環境の改善の中で本年4-6月期に前期比0.9%と、高い伸びになっております。また、企業収益が過去最高を更新する中、設備投資、4-6月、7-9月期と、2期連続で前期比1%を超える高い伸びとなっております。また、世界経済の回復が続く中、輸出も増加しているなど、経済の好循環が実現しつつあるわけであります。
 こうした全般的に経済が堅調である状況を踏まえて、今回の政府経済見通しにおいては、実質成長率について今年度、来年度ともに、本年7月の年央試算から上方修正したところであります。
 あえて先行きのリスクということで申し上げましたら、海外経済、堅調ではありますが、その不確実性であったり、金融資本市場の動向等に留意する必要があると、このように考えております。
(問)同じく経済見通しで、お話があったように民需主導の成長が期待されるところで、しかも内外需の寄与度で言いますと、内需主導ということが示されている見通しかと思います。そのこれまで外需主導だと言われがちだったところ、言われてきたところが内需になるということと、あと消費者物価ですけれども、1.1%という1%を超える値ではありますが、年央の試算と比べると少し弱い数字になっております。物価についてどのようにお考えか、よろしくお願いいたします。
(答)平成30年度の政府経済見通しでは、消費や設備投資など民需を中心とした景気回復を見込んでおりまして、力強い賃金の上昇や設備投資が実現することを期待をいたしております。
 政府としては、既に発表しておりますとおり、今後3年間を「生産性革命・集中投資期間」と位置づけて、大胆な政策でこれを実行してまいります。具体的には、3%以上の賃上げなどを行う企業は25%まで、更に革新的な技術に投資する企業は20%まで、法人税負担を引き下げます。また、中小企業の新規設備投資を力強く後押しするため、自治体の自主性に配慮しつつ、固定資産税の負担減免のための措置を講じ、併せて「ものづくり補助金」、これを拡充・重点支援をしてまいります。
 これらによりまして、企業によります力強い賃金アップ、投資を後押しする、また、それによって物価についてもプラスの影響が出る、このように考えてるところであります。
(問)政府経済見通しの中で名目GDPを、来年度564.3兆円と過去最高を見込んでらっしゃいますけれども、政府としましては20年頃に600兆円の達成を目標として掲げられています。先ほどもおっしゃったように、海外経済の不確実性といった課題もあるかと思うのですが、600兆円達成に向けた課題の認識を改めてお伺いできればと思います。お願いいたします。
(答)名目GDP、我々が政権に復帰する前は500兆円、これを割り込んでいたわけでありますが、直近2017年の7-9月期に、過去最高の549兆円まで50兆円以上拡大をしたわけであります。来年度につきましても、民需主導の景気回復によりまして名目成長率は前年度比2.5%程度、そして名目GDPは564兆円程度に拡大すると見込んでおります。
 政府としては、2020年頃におっしゃったような形で名目GDP600兆円経済を実現すると、これを目指しておりまして、このために「人づくり革命」、「生産性革命」を車の両輪として日本が直面する少子高齢化という壁に立ち向かい、潜在成長率の引上げを図っていくことが極めて重要であると思っております。
 先ほども今後3年間を「生産性革命・集中投資期間」、このように位置づけるという話を申し上げましたが、この中で三つの目標を掲げております。一つは生産性の年2%の向上、二つ目に2020年度までに設備投資を10%増、更には来年度以降3%以上の賃上げと、これら三つの目標の達成を通じて名目GDP600兆円、実現していきたいと考えております。
(問)ちょっと経済見通しの話から離れるのですけど、今日午後、「人生100年時代の構想会議」があって、「人づくり革命」の中間報告がまとまると思うんですが、差し支えなければどのような内容になりそうか、また、それに対する受け止めとか今後のことを伺えればと思います。
(答)ちょっと受け止めは、まだ提示をしてその結果によりますけれど、いずれにしても本日午後2時半から4回目の「人生100年時代構想会議」、開催する予定でありまして、今日が年内最後の会議となると。これは第1回目のときから申し上げておりましたが、年内には中間報告ということでありますので、今日、中間報告の案を提示をして議論を進めたいと思っております。
 12月の8日の日に政府として「新しい経済政策パッケージ」、閣議決定いたしましたが、このパッケージの第2章、これが「人づくり革命」に関わる部分でございまして、これまでの構想会議での議論を踏まえて、策定をしたものであります。
 中間報告、このパッケージを更にベースとして有識者議員からのこれまでの御意見や今月の11日に意見交換の場、これも設定をさせていただきまして、そこで出された御意見、御指摘はできる限り盛り込んで肉付けしたものにしてあります。
 結果的には、政策パッケージの「人づくり革命」の部分が、量で言うのもあれですけど10ページだったと思うのですけれど、それが今回の中間報告は16ページという形になっておりまして、さらにこれまで会議等で使用しました色々なデータにつきましても、19ページだったと思いますけれど、参考資料として付ける予定であります。
 具体的には幾つかの内容、追記をしておりますが、一つは考え方です。人生100年時代には単線型ではなくマルチステージの人生を送るようになる点、こういった点を追記をいたしましたし、生涯にわたる学習であったり、スポーツ、文化芸術活動、地域コミュニティ活動などに関わることも個々人の人生や社会を豊かにすることに触れて、多様な人生設計を「人生の再設計」をどう可能としていくかが人生100年時代の大きなテーマであるということを明示をいたしております。
 また、少子高齢化社会において、経済社会の活力を維持していくためには人材の質を高めることによって潜在成長率を引き上げていくことが必要であると。つまり、「生産性革命」との関係といったことも明示をいたしております。
 また、具体的な事例等も入れまして、米国におけます有名な「ペリー就学前計画」の具体的な内容などを追記をいたしまして、幼児教育の重要性を強調させていただきました。
 また、待機児童の解消と、これが重要であるということで、我々はそのように申し上げているのですけれど、どうも待機児童の解消か、それとも無償化かと、こういう決して二者選択ではないのですけれど、そこら辺をきちんと丁寧に説明をしたいということで、「子育て安心プラン」の内容及び今回前倒しをすると。さらに、幼児教育の無償化よりスタートの時期は早めると、こういったことも含めた内容を待機児童の解消策の内容、より詳細に記述をいたしております。
 また、高等教育につきましては、最終学歴が高校卒業の場合と大学卒業では生涯賃金に大きな差が存在すること、収入の低い世帯と高い世帯では大学進学率にかなりの差があることについてデータを加え、所得の低い世帯に対する高等教育での支援の必要性を強調いたしております。
 そして、真に支援を必要とする家庭の学生が生活の不安なく学業に専念できる環境の整備が重要でありますので、現行の給付型奨学金、今年から始まりまして来年度拡充ということでありますけれど、それでも支援する学生数、更には給付額が少なく、その支援の抜本的拡充が必要であること、こういったことも強調いたしております。
 ここまでが年末にまとめた中の幼児教育の無償化、更には高等教育の無償化、待機児童の解消等に関わる問題でありまして、残された課題、特にリカレント、大学改革があるわけでありますけれど、リカレント教育につきましては、来年夏に向けて検討の視点として、各議員からお出しいただいた意見も踏まえまして、4点ぐらい。一つは、キャリア教育の充実が必要であること。第二に、教育プログラムの開発・実施に当たっては、地域や産業界との連携を強化すること。第三に、大学だけではなくて既存の教育産業であったり、企業の新規参入によって学び手が学習方法を選択できると、こういう体制を整えること。そして四つ目に、受講者にとってのメリットの見える化、さらには中途採用の拡大と人材採用の多元化、これが求められていること。こういったことを検討の視点として書き加えさせていただきました。
 また、大学改革につきましては、第一に、社会の新たなニーズに柔軟に対応できるカリキュラム編成に外部の人材が関わる方策を検討することと。さらには、カリキュラムの編成だけではなくて、実際の教育に関わる外部人材の積極的な活用を検討すること。三つ目に、4割強の私立大学が現在定員を満たすことができない、こういう状況を踏まえて、今後大学の連携統合を可能とする枠組みの整備に向けた検討が必要であることと、こういったことを今回の中間報告では記載をいたしております。
 また、大学教育の質の向上については、第一に、各大学の役割、そして特色、強みの明確化を一層進めること。さらに第二に、米国の学生と比べた場合、我が国の大学生は学習時間が非常に短い、若しくは学生によってはほとんど授業以外で勉強していない、こういう状況でありまして、学習成果を可視化する客観的な評価が求められること等々を記載をいたしております。
 こういった形で、幼児教育無償化などの具体的な政策を抜き出した形の政策パッケージに対して、今回のが中間報告と。これはこの構想会議でこれまで様々な御意見を頂きました。そういった中から具体的なデータであったりとか、理念、考え方、こういったものを追加をしたものであります。
 有識者議員の皆様には、この中間報告案、既にお配りをしてございます。最終的には、この中間報告案に対して本日会議で出された御意見などを加える形で最終的な修正を行いまして、数日以内に最終的に中間報告、これを決定することとしたい。そして、中間報告決定次第、公表させていただきたい、こんなふうに考えております。
 ここで中間報告が終わると。そして、来年の夏に向けて、更に検討が必要な項目につきまして検討を深めまして、当初お話ししているとおり、夏までに基本構想、これを取りまとめ、人生100年時代の政策のグランドデザインというものをお示ししたいと、このように考えております。
(問)見通しの方にちょっと戻ってしまって、1点細かい点で恐縮ですけれども、私が見ていて感じたのが、国民総所得の伸びがGDPに遜色ない伸びになっていると、17年度、18年度については。16年度はちょっとその点ではGDPほど伸びていないという姿になっているので、17年度、18年度の望ましい姿になっているという意義について、私から見れば望ましいということなのですけど、大臣の受け止めを教えていただきたい。
(答)大変有り難い御指摘なのですけど、多分統計上の問題が大きいのだと思います。御案内のとおりGDP、これは一国経済が国内で生み出す付加価値、これであるのに対しまして、GNI、国民総所得と、これは国民の所得を示す指標でありまして、GDPに海外から受け取る利子であったりとか配当所得等を加えた形になるのがGNIであります。
 平成28年度につきましては、円高によりまして配当等の円建ての受取額、これが減少したことなどからGNIがGDPを下回る伸びとなったと考えております。これに対しまして、29年度、30年度につきましては、海外の直接投資額、これも伸びております。海外からの所得が増加するなどによってGDPとGNIの双方について同程度の成長率となる、このように見込んでいるところであります。
(問)経済見通しの点で、今回、実質2%、名目3%という政府の目標には達していないわけですけれども、これに対する受け止め、今後の達成に向けた意気込みというようなものを改めてお聞かせいただければと思います。
 それとちょっと話が変わって恐縮ですけど、TPP対策でちょっと質問をさせていただきたいと思います。
 昨日、北海道知事が茂木大臣に十分な予算確保、また丁寧な説明、毅然とした今後の通商交渉の3点を要請に伺ったと思います。私たち、途中で退席してしまって茂木大臣のコメントがお聞きできなかったものですから、改めて高橋知事の要請に対してどのようにお答えになったのかということと、また、高橋知事、一次産業関係者からの不安の声も代弁されていたと思いますが、その受け止めについて教えてください。
(答)前者については既に先ほどお答えしたとおりです。
 それから、高橋知事の点につきましては、TPPの大筋合意、日EU・EPAの交渉妥結を受けて、昨日、御要請に来ていただきましたが、必要な予算の確保を含めた万全な対策を講じてほしい。また、農業を始め関係者への迅速かつ丁寧な説明を行ってほしいと、こういうことが要請の中心だと思っておりますが、私の方から、先月改定された「総合的なTPPと関連政策大綱」に基づきまして、今年度補正予算案及び来年度当初予算案の編成作業を今、行っているところでありますけれど、国産チーズなどの成長産業化に取り組む生産者がその力を最大限発揮できるように、農林水産業の体質強化策と予算も含めて万全な対策を講じていく。また、関係者の皆さんに対しても丁寧な説明、しっかり現地での説明会等も含めて行っていきたい、こういうお話をさせていただきました。
(問)現地での説明というのは北海道も想定していらっしゃるということでしょうか。
(答)はい。

(以上)