茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成29年12月8日

(平成29年12月8日(金) 16:25~16:49  於:中央合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

「新しい経済政策パッケージ」を閣議決定いたしました。
 これは「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として、少子高齢化という最大の壁に立ち向かうための政策パッケージであります。
 「生産性革命」では、2020年に向けて、過去最高の企業収益をしっかりと賃上げや設備投資につなげていきます。
 このため、3%以上の賃上げなど投資に積極的な企業には法人税負担をOECD平均の25%まで引き下げます。更に革新的な技術により生産性向上に挑戦する企業には、思い切って20%まで引き下げ、国際競争で打ち勝てる環境を提供してまいります。
 他方、利益が上がっているにもかかわらず、賃上げ・投資に消極的な大企業には、コーポレートガバナンス改革により説明責任を課すことと併せ、果断な経営判断を促す税制措置も講じてまいる考えであります。
 また、赤字など厳しい経営環境のもとでも積極的に投資にチャレンジする中小・小規模事業者には、補正予算による「ものづくり・サービス補助金」などと併せ、自治体の自主性に配慮しつつ、固定資産税が3年間ゼロとなる制度を初めて創設をいたします。
 これらの税制措置については、与党税調で今精力的に審議していただいているところであります。
 加えて、技術革新を踏まえた「電波」帯域の有効活用など、「Society5.0」時代に対応した制度改革を断行するとともに、革新的なアイデアをビジネスにつなげるため、規制の「サンドボックス」の仕組みを創設し、次期通常国会に法案を提出いたします。
 税制、予算、規制改革。あらゆる政策を総動員することによって、世界で胎動する「生産性革命」を我が国がリードし、4年連続の賃上げの流れを更に力強いものとすることで、デフレからの脱却を目指してまいります。
 一方、「人づくり革命」は、長期的な課題ではありますが、2020年度までの間にこれまでの制度や慣行にとらわれない、新しい仕組みづくりに向けた基礎を築きます。
 第一に、幼児教育無償化を一気に加速します。3歳から5歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化します。0歳から2歳児については、待機児童解消の取組と併せて、今回のパッケージにおいては、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めることといたしました。
 第二に、待機児童解消を目指す「子育て安心プラン」を前倒しをし、2020年度末までに32万人分の受皿整備をします。
 併せて、保育士の確保や他産業との賃金格差を踏まえた処遇改善に更に取り組むこととし、今年度の人事院勧告に伴う賃金引上げに加えて、2019年4月から更に1%の賃金引上げを行います。
 第三に、真に支援が必要な所得が低い家庭の子供たちに限って、大学などの高等教育無償化を実現します。住民税非課税世帯の子供たちに対しては、国立大学の場合はその授業料を免除し、私立大学の場合は、私立大学の平均授業料の水準を勘案した一定額を加算した額まで対応を図ってまいります。
 さらに、給付型奨学金を抜本的に拡充し、学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるような措置を講じてまいります。
 また、住民税非課税世帯に準ずる世帯の子供たちについても、支援の崖が生じないよう、非課税世帯に準じた支援を段階的に行ってまいります。
 第四に、年収590万円未満の世帯を対象とした私立高等学校の授業料の実質無償化を明記しました。これについては、消費税使途変更によります現行制度・予算の見直しにより、活用が可能となる財源をまず確保します。
 その上で、消費税使途変更後の2020年度までに、現行制度の平年度化等に伴い、確保する財源など、引き続き政府全体として安定的な財源を確保しつつ、家庭の経済状況にかかわらず、幅広く教育を受けられるようにする観点から、私立高等学校授業料の実質無償化を実現をいたします。
 第五に、介護離職ゼロに向けた介護人材確保のため、介護職員の更なる処遇改善を進めてまいります。介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について、月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1,000億円程度を投じ、2019年10月から処遇改善を行います。
 安定財源については、消費税10%への引上げによる財源を活用します。この増収分を教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等と財政再建とにそれぞれ概ね半分ずつ充当することにより、前者について新たに生まれる1.7兆円程度を活用いたします。また、社会全体で子育て世代を支援するとの大きな方向性の中、子ども・子育て拠出金を0.3兆円増額をいたします。
 こうした2兆円規模の政策を断行し、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入することで、我が国の社会保障制度を、お年寄りも若者も安心できる、「全世代型」の制度へと大きく転換していきます。
 また、本日、「平成30年度予算編成の基本方針」についても閣議決定いたしました。「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として、少子高齢化という最大の壁に立ち向かうとともに、基礎的財政収支の黒字化を目指すという目標を堅持し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指すことなど記載をいたしております。
 私の方からは以上です。

2.質疑応答

(問)いよいよ新しい経済パッケージができました。いよいよ実行ということになります。改めて国民に対して、いろいろ特に人づくりなどは、若い世代への負担軽減などもあります。メッセージなどありましたら。
 あと、残る課題というのも御指摘いただければと思います。
(答)この夏から集中的に取り組んでいた第一歩。冒頭で申し上げましたが、この新しい経済政策パッケージは、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として、少子高齢化という我が国が直面をする最大の壁に立ち向かうためのものであります。
 「生産性革命」では2020年に向けて、過去最高の企業収益をしっかりと、賃上げや設備投資につなげていきます。
 また、「人づくり革命」は、2020年度までの間に、これまでの制度や慣行にとらわれない、新しい仕組みづくりに向けた基礎を築いてまいります。
 「人づくり革命」の来年に向けた検討課題としては、例えば、リカレント教育について考えているわけであります。11月30日に開催しました、第3回の構想会議で議論を既にスタートいたしております。リカレントというのは、日本語で「循環する」、「回帰する」という意味でありますが、従来の教育が一方通行というか、若い年代に学校で学んで、その後社会に出て働く。そういう一方向で動いていたのに対して、一度社会に出た人がまた学校で学び直しをして、職場復帰をして、さらに社会に帰っていくという、教育と社会の循環システムの中心となるのが、今回のリカレント教育だ、このように考えております。
 人生100年時代、より長いスパンで個々人の人生の再設計が可能となるような社会をつくるためには、こうしたシステムが必要であり、リカレント教育や学び直し、専門教育の多様なプログラムを雇用保険特会などの財源、これを活用しながら大幅に拡充していきたいと思っております。
 同時に、大学改革、教育改革、これも大きなテーマだと、このように思っております。年明け以降、このような方向で、人生100年時代構想会議において、引き続き議論を重ね、来年前半の基本構想にしっかりと結論を盛り込んでいきたいと、こんなふうに考えております。
(問)個別の項目で恐縮ですけども、私立の高校の授業料実質無償化ですが、財源の表現は、「消費税使途変更による、現行制度・予算の見直しによる活用が可能となる財源をまず確保する。」とあるのですけれども、具体的に今おっしゃれる範囲で、どういったものが想定されるかというのは何かありますでしょうか。
(答)今回、2兆円のパッケージの中で、例えば、高等教育につきましても、所得が低い世帯の子供たちに対しましては、給付型奨学金等、大幅に拡大をするということにしております。御案内のとおり、給付型の奨学金、既にこれまでの予算の枠組みで、今年から一部実行ということになっておりまして、そういった財源の部分が、ある意味、今回のパッケージによって、オーバーラップしてくるというか、その分の財源が確保できる。そういった財源をまずは使って、590万までの世帯、これについて住民税非課税世帯、350万、590万、段階をつけて支援を拡充する。現行の高等学校等の就学支援金の拡充を図っていきたいと思っております。
(問)賃上げ・投資に積極的な企業への支援ということで、税負担の水準25%、それから革新的企業技術の場合は20%と、水準を上げて、力強い表明がありましたけれども、この意義を改めてお伺いしたいのと、もう1点、サンドボックスの方ですが、規制改革ということで、全庁横断的な推進体制のもとでというふうにパッケージにありますけれども、これをどのように促していくのか、改めてお願いします。
(答)冒頭にも申し上げましたが、3%以上の賃上げなど、投資に積極的な企業については、法人税の負担を、OECDの平均の25%まで引き下げる。考えていただきますと、数年前までは日本の法人税の実効税率30%を超えていたわけであります。それが、5%以上下がっていくと。さらに、革新的な技術によって、生産性向上に挑戦する企業には、思い切って20%まで引き下げると。国際的に全く遜色のない、国際競争で打ち勝てるような環境をつくっていけると考えておりまして、これはちょうど今、攻めに転じようと思っている企業についても、また、それを逡巡している企業についても、政府としてもこういった取組、しっかりと進めていくと、明確なメッセージになると。そういった企業に対する背中を押すことができるのではないかなと、こんなふうに考えております。
 それから、サンドボックスですね。民間によります新たな技術、そしてビジネスモデルを社会実装していく上で、本格的に今、事業として許容できるルールを時間をかけてつくり、それで初めて事業を解禁すると。多分、これまでのやり方というのはそうであった。確実に全部のデータが出そろってから、そういったルールをつくると。それでは変化の激しい国際的な競争に後れをとってしまうことになるのではないかなと考えておりまして、そのため、規制のサンドボックス制度、これを今回、新たに創設することによりまして、まずやってみると。こういう、チャレンジを許容して、そこから様々なデータが集まってまいります。そういったデータを収集・分析することで、ルールづくりを行うと。実証による政策決定、こちらにかじを切っていきたいと思っております。
 これによって、行政のルールづくり、これも時代にあったスピーディーなものへと変革をして、人工知能、ロボット、IoTなど、第4次産業革命のイノベーションの社会実装を、自動走行などの重点分野を中心に、世界に先駆けて進めていきたい。来年の通常国会には、法案を提出する予定であります。
 ちなみに、来年は戌(いぬ)年であります。英語でドッグイヤーと言いますと、犬の大体1年が人間の7年に当たるということから、非常に変化のスピードが速い。このことをドッグイヤーと、こういうふうに言うわけでありますが、そういった変化のスピードの速い時代に、日本としてもしっかりと対応できるようにはしていきたいと、こんなふうに考えております。
(問)この2兆円の政策パッケージの中で、幼児教育のところについては、一部については今回、全てを決めることができずに、年明けに設置する専門家を踏まえた会議の場で検討するということになっていますが、この専門家の声を反映する検討の場というこの会議体のメンバーの構成について、現時点ではお考えになっているものについて教えていただきたいのですけれども、有識者や政府側のメンバーなどで具体的なメンバーについても、お考えがあれば教えてください。
 また、この会議についてですけども、この会議の置く場所ですが、政府の人生100年構想推進室の下に設置するのかどうかという点。あと、また会議をいつくらいから始めるのかということについても教えていただければと思います。
(答)この会議については、できるだけ早く立ち上げたいと、このように思っております。重要なのは実態だとそんなふうに思っておりまして、メンバーはこれから人選をいたします。そして、現場の声等々も丁寧に聞けるような形をしっかりとつくっていきたい。全面無償化いたします。その上で、認可外等々について、どこまでの範囲というのを対象にしていくかと、このことについて制度の安定性であったり、公平性、こういったことも考えながら、最終的には来年結論を出したいと、こんなふうに思っております。
(問)2点お伺いします。
 まず、「生産性革命」の部分ですけれども、先ほど利益を上げているのに、設備投資や賃上げに消極的な企業には果断な経営判断を促す税制措置を行うというお話がありましたけれども、これ具体的にどういったことを想定していらっしゃるのかというのを教えてください。
 もう一つ目が、「人づくり革命」の方で、幼児教育の無償化ですけれども、幼児教育の無償化、今回盛り込まれましたけれども、待機児童対策をより重視するべきではないかという声が多方面から上がっていると思います。32万人の受皿を整備するというふうに言われていますけれども、ほかの調査ではもっと88万人というデータもありまして、足りないのじゃないかというような批判の声もありますけれども、それについては大臣のお考えをお願いいたします。
(答)まず、前者の方からでありますが、利益が上がっているにもかかわらず、賃上げ投資に消極的な企業、これについては先ほども申し上げたように、コーポレートガバナンスの改革により、説明責任を課すと。これと併せて、果断な経営判断をしていただくような税制措置、例えば今あります様々な租税優遇措置であったりとか、そういうことについてやはりここは考えなければいけないなという形でありまして、そこでディスインセンティブと言いますか、私は多分果断な経営判断をしていただけると思っておりますので、大きな懸念を持っているということではありませんけれども、こういった、やはり措置も必要だろう、こんなふうに考えているところであります。
 それから、もう一つ、その幼児教育に関しまして、保育の受け皿、そちらが優先課題ではないかなと。我々としては、保育の受け皿、その子育てプランについては、もう来年から前倒しで実際に進めるということにしております。
 一方、この幼児教育の無償化につきましては、消費税の引上げ、これが2019年の10月ということでありますから、2019年から一部実施、2020年にフルスペックということでありまして、タイミングを御覧いただいても、そういった優先順位を踏まえながら対応をしているということでありますし、さらには、保育士の処遇改善につきましても2019年の4月から、こういったことで考えております。
(問)今、後段のこととも関係するのですけれども、待機児童解消は前倒しで行う。それで、その後から無償化が来るので問題ないという御説明だったかと思うのですけれども、そもそも32万人の待機児童解消のための加速プランというのは、まだ無償化の話が出る前にできたプランで、当然無償化ということになると、また事情が変わるのではないかと。特に、認可外のところはこれから議論がまだ引き続き続くということですけども、認可の方はどの所得層の方でも無償になるということになると、認可の方がいいと。今は認可外にいるけど、認可の方がいい、あるいは幼稚園に通わせているけど、それだったら認可保育所に入れたい、そういうニーズも出てくるのではないかと思うんですけれども、そうなったときに、今の32万人のままで本当に待機児童がゼロになるんだろうか。もっと需要が掘り起こされたときに、そのことにはどのように対応するのか。その辺のお考えを教えてください。
(答)まず、私は順番としてこういう順番で進めますということを申し上げましたが、だからいいんだと、この子育て安心プランが、だからいいんだとは一言も申し上げておりません。
 その上で、「子育て安心プラン」をつくるに当たりましては、女性の就業率、今、73%、これが80%まで引き上がってくる、こういった想定も置きながら、実際に32万、こういう積算をさせていただいているところであります。
 同時に御案内のとおり、全面無償化をすると。これにつきましては3歳児から5歳児、これを対象にしております。そして、3歳児から5歳児につきましては、既に9割が幼稚園、保育園等々に通わせている、こういった事情も勘案しながら、全体的な今回のパッケージをつくらせていただいた次第であります。
(問)再度ちょっと確認ですが、今御質問した後半のところは、要は、今9割の方って大臣おっしゃいましたけど、9割の方が幼稚園なり認可外も含めてどこかに入っていらっしゃるのだけれども、無償化することによってその動向がまた変わるのじゃないかということをちょっとお尋ねしたのですけど。
(答)その前段で、73から80%と、こういう、何て言うか、増加が見込まれることも勘案して、32万という数字が積み上げているというお話をさせていただきました。
(問)1点だけ。幼児教育の無償化で、2019年4月から一部スタートとあります。首相は以前、5歳児の無償化を2019年度と発言をされたこともありましたけれど、この一部無償化、先に先行する部分というのは現状どういうところだと決まっているところはあるのでしょうか。
(答)まだ決まっておりません。例えば、2019年、恐らく10月に消費税を引き上げるということになりますと、10月からでその年の3月まで半年でありますけど、税収として上がってくるのは恐らく半年分は上がってこない。実際にそういうことになるわけでありますから、そういった中で、優先的にやることということはこれから、若干時間ありますので、そこの中で考えていくことになると思いますが、一般的に言いますと、3歳児、4歳児、5歳児全て無償化をするわけですけれど、5歳児はすぐに6歳児になってしまいます。3歳児はすぐには6歳児には次の年にはなりませんから、そういったことも当然考えていくことになると思います。

(以上)