茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成29年8月4日

(平成29年8月4日(金) 11:24~11:47  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。茂木敏充です。この度、経済再生担当大臣を仰せつかることになりました。記者クラブの皆さんには、今日以降、いろいろお世話になりますが、よろしくお願い申し上げます。
 大臣就任に当たっての基本的な考え方を昨日の夜の官邸での会見の方でお話をいたしました。私の方からつけ加えることはございませんので、それも含めて、御質問等々がありましたら、受けさせていただきたいと、こんなふうに思っております。

2.質疑応答

(問)今後の取組という流れの中で伺いたいのですけれども、昨日の会見を踏まえて、ちょっと私の方から三つ伺いたいのですが、もちろん、これからの話だと思うのですけれども、一つは、目玉の人づくり革命に関して、構想会議で、今後4年間で実行する政策のグランドデザインというお話があったと思うんですけれども、これはある程度、例えば数値目標を設けたロードマップのようなものを考えていらっしゃるのか、あるいは理念的なものなのか、あと4年というのは、これは2020年度というような意味合いで捉えていいのか、もし大臣の中で具体的なものがもう少しあるなら教えてください。
(答)まず、昨日就任したばかりでありますので、細かいことをどこと詰めていることではございません。当面のテーマとして、五つぐらいのことがあるのではないかなということを昨日、お話をいたしました。
 早急にこの構想会議を立ち上げたいと思っておりまして、大体4年ぐらいでのスパンで実行していく政策というものを取りまとめると。そこの中で考えていますことは、恐らくこの会議での議論の進め方でありますけれども、年内には中間報告、取りまとめをしたいと思っておりまして、来年の6月とか半ばまでに、ある意味、最終的な取りまとめを行う。そして、できるものは実行していきますけれども、その後大体3年ぐらい、集中期間で実行するということで、スパンとしては4年ということで考えているところであります。
(問)二つ目なのですが、ちょっと今の話もかぶって恐縮ですけれども、昨日、五つのテーマをやって、範囲が予想以上にびっくりした感じもしたのですが、これもこれからだと思うのですけれども、例えば、社会保障制度の改革とか、あと企業の人材採用の多元化、これは具体的にどんなものが考え得るのか、あと四つ目に挙げられた人的投資というのは、これは教育以外のものを想定されているのか、ちょっとこの辺りも、もし分かればお願いいたします。
(答)昨日も申し上げましたけれども、これまで日本人、何歳が、言ってみると、寿命かということは別にして、そのスパンが延びていると。人生100年時代と言われるような状況になって、若いころ、高校か大学まで教育を受ける。そして卒業して、就職をして、ずっと同じ会社か、もしくは違う会社、何にしても働いて、60歳、65歳で定年を迎える。こういう三つのステージをそれぞれの人が単線的に、そしてまた、一律、一斉に歩んできたと、こういう形から、人生が長くなるわけですから、このステージを行ったり来たりもできる。途中から学び直しもでき、また途中から新しい仕事にも就くと、こういうことができるということになってきますと、当然、ある意味、新卒採用、こういう概念自体というものがだんだん少なくなってくるのではないかなと。優秀な人間を欲しいときに、企業の方も採っていく、こういうのが当たり前の社会というのをつくって、いつも4月に100人単位で、新しい新卒の人が入って、社長の訓示があって、1か月研修をして、それぞれの現場に行って、何年か後には本社に戻ってという、こういう画一的なパターンから、その企業が欲しい人材、それは新卒もいるでしょう。しかし、中堅クラスでマーケティングをやっている人、営業をやっている人、そういった人を採りたいと。また、ITをどんどんやっていくので、ITの専門家を途中から採っていくということもあるのだと思いますけれども、企業の採用というのも、そういった意味で時間に、年齢にとらわれずに多様化をして、またそれがある程度、中高年の人にとっても、多様な雇用の機会にもつながっていく。
 そしてまた、例えば子育て中の女性でもそうでありますし、また、中高年の人も個人差があるのだと思います。子育てと両立をしていくということになると、なかなかフルタイムではできないとか、オフィスではなくて、テレワークで仕事をしたい、こういったことも出てくると。また、ある程度の年齢になりますと、きちんと8時間働くのは難しいけれども、いろいろな経験を若手に教えたりということで、パートで働くことができると、そういった人もいるんでしょうし、そういったことも含めて、労働形態、これも多様化していければと、こんなふうに考えているところであります。
 もちろん、社会保障の分野につきましても、昨日申し上げたように、どちらかと言いますと、高齢者を中心にした給付、こういったこれまでの社会保障制度から、全世代型の社会保障に改革をしていくということが求められていると、こんなふうに考えております。
(問)三つ目ですが、需給ギャップの改善を踏まえて、サプライサイドの強化、潜在成長率の引き上げの重要性はおっしゃったと思うのですけれども、一方で、まだ景気の回復が伴わない、消費がまだ回復しつつあるとはいえ、まだ力強さを欠くんじゃないかという意見もあると思うんですけれども、そういう需要側の刺激とか課題については、どういうふうに思われますでしょうか。
(答)幾つかの課題があると思っているのですけれども、一つは、確かに経済全体、GDPの伸びに対して、消費が力強さを欠いていると、これは事実であると、このように考えておりますけれども、可処分所得は間違いなく増えているわけであります。
 ただ、年代別に見ると伸びが少ないのは30代と、これが典型的になっているわけでありまして、そこら辺、ちょうど子育ての世代でもあります。そういった世代に対する支援策というのは、どういうものがいいのか、こういったことはしっかり検討していかなければならない。働き方改革、同一労働同一賃金であったりとか、長時間労働の是正、こういうのをある意味、こういった若い世代、これの消費性向を上げていくと、こういう形からも効果を持っていくものだと、こんなふうに思っております。
 そういった意味で、デマンドサイドの対策が全く要らないと言うつもりはありません。ただ、今、恐らく最優先なのは、サプライサイドになってくるということで、昨日、需給ギャップの縮小の話を申し上げたところでありますけれども、日本のGDPそのものは、昨年が537兆、過去最高記録に達しております。さらには、企業の収益も68.2兆ということで、これも最高水準ということであります。
 また、雇用の情勢、御案内のとおり、直近の有効求人倍率、1.51という数字ですから、実に1970年代の前半以来、40数年ぶりの高い水準にあるわけであります。
 しかし、その一方で、グラフ等を御覧いただいていると思いますけれども、潜在成長率、これは伸びていないという状況にあるわけでありまして、平たく言いますと、人間の体で言うと、GDPは大きくなっている、体はでかくなっているのですよ。そして、雇用の情勢もよくなっている。体質も改善しているのです。ただ、次のステップにジャンプするための筋力、潜在成長率が、潜在成長力が不足をしていると。これをつけていかなければならない。そのためのサプライサイドの改革を、人づくりの分野、生産性の向上、そして未来投資戦略という形で進めていきたいと、そんなふうに思っています。
(問)私も昨夜の会見から一つお伺いしたのですけれども、財政健全化目標についてです。昨夜、大臣、2020年度の目標値の在り方については、毎年の中間評価でしっかりと検証してまいりたいと思いますというふうにおっしゃいました。
 来年には中間評価をしますけれども、当初の2015年の骨太では、目標の達成が難しい場合には、追加の歳出、歳入改革を行って達成するのだという書きぶりだったと思います。目標値を変える可能性というのはあるのでしょうか。お考えを聞かせてください。
(答)昨日の会見で、私、その部分に言及する前に、2020年度のプライマリーバランスの黒字化目標はしっかりと堅持をしていくと。このため、今後の経済状況や財政再建の見通しなどについて、詳細な分析を行い、何が足りないのか、達成するために必要なポイントは何か、経済財政諮問会議の場でも議論してまいりたい、こういうふうに申し上げておりますので、今まで政府として言ってきたこととそごはないだろうと、このように考えております。
(問)先程の御質問の関連ですけれども、可処分所得の伸びが少ないのが30代、子育て世代であるというお話がありました。こういうところには支援策を検討していくということですけれども、この消費を増やすという意味でも、あるいは出生率、人口減少を食い止めるという意味でも、ここは大事なところなのだと思うのですけれども、支援策というのは具体的にどういったものをイメージされているのか、もう少しイメージを、具体的なものを教えていただけますでしょうか。
(答)昨日申し上げた人づくり革命、相当幅広い分野に及ぶという形でありまして、まず申し上げたのは、誰でも、いつでも教育の機会がある。また、高齢者であっても、再雇用に向けたリカレント、また、一時、子育てで仕事を離れた保育士さんだったりとか看護師さんが、子育てが一段落をした段階で、また新しいシステムが恐らく病院でも入っているのでしょう。そのシステムに慣れてもらうための、そんな時間のかからないようなリカレント教育、こういったことを行っていくということもあると思いますし、それに伴って、高等教育、これの改革というものも必要になってくると思っております。そういった教育の負担を減らしていくと。さらには無償化を進める、こういった議論はもちろんあるわけでありますけれども、その一方で、そういう新しい形の人材づくりということになってくると、受け入れる側の企業の在り方、これも問われるわけでありまして、これからは全てが一括採用、新卒採用の時代ではないと、こういった企業側の取組も促していきたい、こんなふうに思っておりますし、恐らく、国の支援策というものを、単純に教育費用だけの問題ではなくて、いろいろな研修であったりとか、そういった分野にも及んでいくのではないかなと、そんなふうに思っているところであります。
 さらに、例えばハローワークと、こういったものを見ても、今は現役世代を相手にしている。こういったハローワークで本当にこれからの雇用情勢に対応できるのだろうかと、こんなことも恐らく今後の課題としては考えていかなければいけないのではないかなと、そんなふうに思います。
(問)人づくり革命ということなんですけれども、大臣が考えていらっしゃる人づくりのモットーみたいなものがあれば教えてください。
(答)モットーということではありませんけれども、昨日も若干申し上げましたが、単線型の、言ってみると、学んで、就職をして、そして引退をするという単線型から、複線型で、あらゆるステージ、また、違ったパスというか、違う道に行けるような人生を選べると。そして、選ぶに当たっての負担というのがないと。ハードルが低い、もしくは後押しをしてくれる人がいると。こういった社会をつくっていくということなのではないかなと思います。
(問)2点あるんですが、関連しますので、併せてお聞きします。
 1点目、デフレではないが、脱デフレができていないという状況が長く続いていまして、諮問会議等では、民間議員からは脱デフレ状況を検証すべきだという声も出ています。これは言ってみれば、アベノミクスの検証ということにもなると思うんですけれども、これを今後どのように進めていくべきか、お考えがあれば、教えてください。
 併せて、19年10月の消費増税というのが予定されていますが、現時点での茂木大臣のお考えをお聞かせください。
(答)まず、後者については、昨日就任したばかりですので、この後、全体の状況を見ながらよく考えていきたい、後者についてはそう思っています。
 少なくとも、我々が4年間、アベノミクス、大胆な金融緩和、機動的な財政運営、そして、民間投資を喚起する成長戦略、こういったアベノミクスを進めることによりまして、20年間続いてきたデフレ、この脱却、これに向けたチャレンジというのは、一歩一歩進んでいると。デフレではないという状況が生まれつつあると、つくり出せていると、このように今考えております。
 ただ、その一方で、外部的な要因、これが、ある意味、予想物価上昇率、下落ちしている部分もあるわけでありまして、これは昨年の日銀の総括的な検証でも、一つは、原油価格の下落の問題、そしてまた、新興国経済の減速と、そのもとでの国際金融市場の不安定な動き、こういった点も外部要因としてたしか挙げられていたのではないかなと、こんなふうに思うわけでありまして、状況は改善してきている。ただ、やるべきことはまだ、そういった外部要因等々の影響もあるというのが現実でありまして、政府、日銀、しっかりと連携をしながら、あらゆる政策、これを総動員して、デフレの脱却、そして、力強い成長、こういったものをつくっていきたいと思っています。
(問)会見の中でもありました、リカレント教育についてちょっとお伺いしたいんですけれども、これまで、生涯学習といった考え方、日本にもあったのかなと思うんですけれども、それから、職業的な側面を進めたものがリカレント教育なのかなというような認識をしておりますが、こうした考え方を普及させていくに当たって、重要な課題の認識などがあればお聞かせください。
(答)生涯教育の捉え方というのはいろいろあると思うんですけれども、生涯学習、そこの中には、本当にそれが実学につながるものも多いのですけれども、例えば、定年をされた方が新しい趣味を持ったり、この例えば定年以降の長くなった期間を、何かのやっぱりやりがいみたいなものを持ちながら過ごしていく、こういう形が生涯学習の大きな部分を占めているのではないかなと思うわけでありますけれども、一方でリカレント教育、正にリ・カレントなのですね。現在にするということですから、先程申し上げた看護師さん、非常に優秀な能力を持っていて、資格も取って、病院の現場で働いていたと。結婚されて、子育てをしている。5年間スパンがあったと、あいてしまった。その人がまた看護師の仕事を、現場に戻るというときに、その病院の恐らくコンピューターシステムが変わっているのだと思うのです。それから、チーム医療のやり方も変わっているのだと思のんです。ただ、基本的なスキルは持っているわけです、その看護師さんは。それが、現場が新しくなったというか少し変わった。ある意味、その現場に合わせられるような研修、恐らくそれは1か月とか2か月と、そういう単位のものであると思いますけれども、そういったものが受けられるような形をとっていくと。
 既に今年から3年計画で、大体年間8,000億円かけて人材投資のための予算、これは労働特会の方から持ってきているわけでありますけれども、使うということにしておりまして、こういった分野のリカレント教育の研修というのは無料で受けられると、こういう形をとっております。さらには、小さなお子さんをお持ちだったら、そういった保育施設があるような研修機関、こういったものもつくるということもやっておりまして、そういういろいろな研修の場があると。自分が学び直しの場があるということによって、リカレントもそうでありますし、そうでなくて、スキルアップをする、さらには新しい資格を取ると、こういう機会も増やしていきたい、そんなふうに思っています。
(問)今の質問に関連してですけれども、高等教育に昨日触れていらっしゃいましたが、例えば今、人口減の中で、地方大学の低迷なども言われておりますけれども、そういったところを活用されるお考えがおありかということと、恐らく人づくりについて、有識者会議のようなものを立ち上げられるのではないかと思うのですけれども、もしその名称でありますとか、立ち上げの時期等に何かお考えがありましたら、お聞かせください。
(答)まず第一の質問、地方大学等々の今後の在り方ということですけれども、とてもいい質問です。二、三か月後にもう一回聞いていただいたら、非常にいい答えができるのではないかなと思っております。もちろん視野に入れながらやっていきます。
 二つ目でありますけれども、立ち上げの時期は、今月中には立ち上げたい、そのための人選に早急に入りたい、そんなふうに思っているところでありますけれども、正にこれから立ち上げるわけでありますから、それ以降のことはちょっと今の段階ではまだはっきりは見えていないという形でありまして、名前、これは意外と重要なんです。いい名前があったら教えていただければ、考えてみます。
(問)昨日、安倍総理が会見の中で、司令塔ということを言われていました。かなり期待もかかっていらっしゃると思うんですけれども、そのことに対する受け止め、決意といいますか、意気込みと、あともう一つ、すみません、昨日の記者会見の中で、日欧EPAの関係で対策について評価を検討していきたいというようなことをおっしゃられたかと思うのですけれども、これから正に考えていかれることだと思うのですけれども、そういった酪農家だとか農家への対策という部分で、どういうことを具体的に考えていらっしゃるのかというのを一言お願いいたします。
(答)日EUについて昨日お話ししたのは、これはTPPについても経済評価、これを出して、こういう形になりますと、これを国民の皆さんにもお示しをしたわけで、日EUにつきましても、大枠合意をしたわけでありますから、その経済効果というものは、しっかり国民の皆さんに説明をしていきたいと、同時に国内対策、こういったものを進めていくわけでありますけれども、正に今、大筋合意を踏まえて、本格的な具体的な詳細な詰めに入るわけでありまして、今後、並行しながら、必要な国内対策、強い農業をつくっていく、そして、再生産可能な農業をつくっていく、そのための万全の対策、こういったことも期していきたいと思っているところであります。
 昨日の総理の会見、拝見をいたしておりまして、最初に「この内閣は経済最優先で、何か茂木さんが何とか」と始まったので、責任があるんだなと。しっかり頑張りたいと思います。

(以上)