鶴保内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成29年5月12日

(平成29年5月12日(金) 9:37~9:52  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 私の方から、3点御報告を申し上げたいと思います。
 本日から明日にかけて、国会の日程など諸般の事情が許せば、愛知県名古屋市を訪問いたしまして、名古屋大学及び名古屋ガイドウェイバスを視察して参りたいと思います。名古屋大学では、世界トップレベル研究拠点の「トランスフォーマティブ生命分子研究所」、産学官連携の拠点である「ナショナルコンポジットセンター」などを視察するほか、ノーベル物理学賞受賞者の天野浩先生の研究室も訪問する予定であります。また、明日は、バス高速輸送システム、いわゆるBRT(Bus Rapid Transit)の積極的な実現事例であります「名古屋ガイドウェイバス」を視察させていただきます。御存じのとおり、沖縄等々でもこうしたBRTの活用ができないものか検討している最中でありますので、有意義なものになると考えております。
 二つ目、宇宙産業ビジョンについてでございます。本日15時から開催予定の宇宙政策委員会宇宙産業振興小委員会において、「宇宙産業ビジョン」が取りまとめられる予定であります。日本総合研究所の高橋理事長を座長に、精力的に検討が進められ、私自身、何度か委員の方々と直接議論もさせていただいておりました。本日も委員会で審議されますので、個別の内容についてはコメントを控えますが、宇宙利用がビッグデータ、人工知能の活用といった新しい流れとも符合している分野であるというメッセージが出るものと期待しております。
 三つ目、新たな交通環境実現に向けたロードマップの作成でございます。沖縄の渋滞を一日も早く解消するため、昨年11月に有識者懇談会から取り組むべき施策について提言を頂きましたが、これをフォローアップするため、「沖縄の新たな交通環境創造会議」を本年1月に設けまして、各施策を一層スピードアップするための方策を検討してまいりました。本日、国、県、市町村、交通事業者等が取り組むべき施策の内容とスケジュールを示したロードマップが取りまとめられましたので、御報告を申し上げます。このロードマップは、観光客にも住民にも利用しやすい交通環境を実現するための関係機関の共通の指針とアクションプランとなるものであると同時に、渋滞ボトルネック対策や基幹バスの導入、バス網再編などを「早期効果実現課題」として六つを選定し、優先的に取り組むこととしております。なかでも、基幹バス構想については、これを更に高度化・加速化するため、自動運転技術も含めた最先端の技術を活用した次世代都市交通システム(Okinawa―ART)の導入に向けた検討会を新たに設置することといたしました。今後、こうした新たなチャレンジも進めてまいりたいと考えております。
 私の方からは以上であります。

2.質疑応答

(問)科学新聞の中村です。
 名古屋出張では、ITbM(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所)とか天野先生のところとか、ベンチャーの支援についても視察されるかと思うんですけれども、大臣として今の日本の抱えるベンチャー支援についての問題点とか、その辺の問題意識をどのようにお持ちでしょうか。
(答)とても2分や3分、この会見の場でお話ができないぐらい大変重い問題だと思いますし、簡単に申し上げるということすらできないぐらいなのですが、幾つかの問題点をまず整理したいと思います。
 そもそもベンチャー支援ができない理由は何か、そもそもベンチャーに向けてやろうという気概を持った若い世代が育たないのはなぜなのか、そして、思った方々がその思ったとおりの成功事例がなぜ生まれないのか、また、成功事例が生まれた時にベンチャーを温かく迎え入れるような社会にするにはどうすればいいのか、そうした人たちをまたアクセラレートする人材をどう育てるべきなのか、もう論点は多岐にわたるものでありますので、これらについて一つ一つ解決をしていくべきなんだろうと思います。
 ただ、一遍にどれがその決め手になるのかを考えているうちに時は過ぎていきますから、やれることからもうすぐにでもやるというのが当初の予定でありますので、まずは7月にこういうアクセラレータの人材育成のための会を設立したいと思っております。今、その努力を水面下で急ピッチで進めておりますので、是非とも御期待をいただきたいと思いますし、また、御協力も賜りたいと思います。
(問)朝日新聞の永田です。
 沖縄についてお伺いしますが、15日で日本復帰から45年となると思いますが、弊紙が沖縄県の有権者へ行った世論調査で、「沖縄と本土には格差がある」と答えた方が81%、その中で一番問題なのは「所得」と答えた人が半数近くいらっしゃるという結果が出ています。経済振興を担う担当大臣としての御所感をお伺いいたします。
(答)その結果は重く受け止めなければならないと思います。我々としてもその認識は共通したものであるということは、まず申し上げておきたいと思います。
 1人当たりの県民所得については、いろいろ議論のあるところではありますが、決して全国でトップレベルであるというわけにはいかない状況だと思いますから、まずは、私たちはこうした状況を打破するために様々な施策を打ってきているということは、もうこの席で何度も申し上げているとおりであり、御理解をいただいていると思いますが、一つはこうしたことを脱却できるような自立的経済をつくっていく、沖縄県の産業をいかにして振興していくかを考えていく、そして、それを支える人材を沖縄県、そしてまた、内外の人材を広く募っていく、育てていくという仕組みを私たちとしてはつくっていきたいということに尽きるんだろうと思います。
 ただ、少しだけ申し上げると、地方の所得が低いのは、これはどこも実を言うと同じでありまして、特に沖縄が低いのか、その辺りもつぶさに見ていかなければならないと思います。そういう状況を踏まえた上で、沖縄がそのパイオニアとして、そういう地方の所得が低い状態を脱却し得る最高の存在になるような仕掛けを是非とも野心的に考えていきたいと考えていますので、またこの辺については御協力を賜りたいと思います。
(問)今、野心的仕掛けというお言葉がありましたけれども、先日、翁長知事が大臣のところを訪問されました。本年度の沖縄振興予算は執行率が低いということで事業を絞った結果、予算も200億円削減されたということですけれども、今年度の執行率は90%近くあるというデータもあるんですけれども、この現状を今、大臣としてはどのように受け止めていらっしゃいますか。
(答)執行率が上がることは、大変歓迎すべきことだと思いますし、しっかり実効的な予算を組めるように県とも協力をしていきたいと思います。
(問)日経新聞の猪俣です。
 「宇宙産業ビジョン」についてお伺いしたいんですけれども、先程人工知能と組み合わせてというお話がありましたけれども、衛星のデータを活用して、他のビジネスに生かすというような分野について、そもそも今、日本が世界でどのような立ち位置にあると思っていらっしゃるのでしょうか。
(答)ビッグデータの活用については、その活用する仕組みと、そしてまた、活用するストレージの保存の仕方等々のインフラ整備に加えて、そのデータを利用していく人材の育成というものもあるのだろうと思います。
 特に1番目、2番目の方は比較的進みつつある状況だろうと思いますが、3番目の人材育成については、世界的に見て、世界のトップレベルから見て立ち遅れているのではないか、立ち遅れるおそれがあるのではないかと思っておりますので、これらについて急ピッチでサポートする仕組みを今、考えている最中であります。
(問)あと、ビッグデータの活用先なんですけれども、自動運転とかが分かりやすい例だと思うんですけれども、特に大臣として期待していらっしゃる活用先のビジネスとか分野というのは、どういうものがありますでしょうか。
(答)個人的に言えば色々なものが思い付きますが、これらのこと個人的な話をまずしておくと、例えばビッグデータを使って先の渋滞対策にできないかとか、観光の人の動きをどうするこうするという話もあるでしょうし、農業分野や一次産業の分野に色々な応用が利かないか等々のことが考えられます。
 ただ、これを私どもが考えて様々な機関に協力を要請するというのではなく、こうしたアイデア・知見を民間主導で切り開いていくことこそが重要なんだろうと思いますので、そういう意味において、S-NET(スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク)や、S-Booster(宇宙ビジネスアイデアコンテスト)というような民間発のアイデアがより応用的に実装化ができるようにしていく場を我々としては設けているつもりであります。是非、そういう機会に積極的に皆さんに参加いただいて、御意見を賜り、また、問題点を提案していただき、そして、それらを受ける形で私たちとしてはしっかり施策に反映していきたいと思っております。
(問)沖縄タイムスの上地です。
 先ほど質問にも出ました県民意識調査の中で、自治権について強い権限を持つ特別な自治体にする方がいいという回答が51%ありました。4月に行われた憲法審査会の中でも、参考人の先生方が沖縄の自治権については強化した方が良いというような意見が肯定的に出されましたが、大臣として沖縄の自治権についてどのように他県と比べて強化する方が良いのかどうか、それとも他県並みで良いのかという、どのようなお考えでしょうか。
(答)一般論としてですけれども、自治権というのは、全国的に見て、より自治が強まっていく、地方分権が強まっていくというのが流れではなかろうかと思います。沖縄の、特に自治体の権限を強めるべきかという問いに関しては、これは沖縄の皆さんがどう考えるかということに私は尽きていくのではないかと思います。様々な歴史的経緯も踏まえ、そういう思いを持っていらっしゃる方々もたくさんいらっしゃることも事実、私も感じておりますし、また、沖縄が自立的経済を期する上で、アジアの国々、そしてまた、日本政府としっかり連携を取っていくべきなんだということを考えている方々もたくさんいらっしゃる。こうした様々な意見を総合したものが、やはり自治体の意思として決定していくものだと思いますので、ここで私がこうするべきだということを、思いはないわけではありませんが、コメントは差し控えさせていただくというのが適当かと思います。
(問)時事通信の中嶋と申します。
 今回の沖縄と内閣官房の明治150年事業の絡みについて伺いたいと思います。沖縄には琉球王国があり、明治12年に沖縄県として日本国に組み込まれたわけです。この沖縄からすれば、明治150年の事業というのは、かなり捉え方が難しいものなのではないかと私は推察します。
 大江健三郎さんの「沖縄ノート」からの引用になりますが、かの福沢諭吉は当時の琉球処分官の松田道之に対して、「日本政府は琉球を取て自ら利するに非ず、琉球人民を救うの厚意なり」としたためています。こういった上からの啓蒙的な考え方に沿って琉球処分があり、併合があり、その後の近代化政策が行われてきました。そして、御存じのように沖縄戦の歴史があり、占領統治があります。こういった明治150年事業には、明治以降の歩みを次世代に残すという趣旨がございますが、この施策というものが沖縄にどのように受け入れられるとお思いか御所見を伺いたいと思います。
(答)大変難しい御質問だと思いますが、そういう御意見もあった時代もあったのだろうというのが私の世代での、これは所感です。沖縄を啓蒙する、これは今、私たちの、少なくとも私の頭の中にこれっぽっちもそんな気持ちはありません。沖縄の方々と共につくり上げていくんだという気持ちで一杯であります。
 なお、そうでなければ何ものも進まないというのが何度も何度も強調しているところでありまして、沖縄というところの歴史的経緯の様々なことがあったことを無視するわけにもいきませんし、それを理解しないつもりも全くありませんが、私たちは新たな沖縄、新たな地方、新たな日本の在り様を考える上で、沖縄というものを最もその先進的な地域にしていきたい、その思いに尽きるということだけは強調しておきたいと思っています。
(問)この明治150年事業との絡みについては、如何でしょうか。
(答)そのスタートの地点で、そういう思いの中でやってきたことを否定するものではありませんし、それをより沖縄主導で、沖縄の方々の思いに寄り添う形で発展的形態にしていくのが我々の使命だと考えています。

(以上)