鶴保内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成29年5月9日

(平成29年5月9日(火) 9:26~9:40  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 私の方からは2点、報告を申し上げたいと思います。
 まず1点目は、イスラエル出張の御報告をしたいと思います。
 5月2日から6日にかけて、科学技術・宇宙・IT分野における協力等の推進のため、イスラエルに出張してまいりました。現地では、3月の日本での会談に引き続き、アクニス科学技術大臣と会談をいたしまして、「両国の科学技術・宇宙・IT分野の取組が、Society5.0の実現を始め、両国の経済成長、社会の課題解決、国民の利便性向上に資すること」、「人材育成、関連ビジネス、産業振興の観点も踏まえつつ、今後も継続的に意見交換をすることが重要」との認識の下、3年ぶりに「日・イスラエル科学技術協力合同委員会」を東京で、年内に開催することを合意いたしました。また、先方のチーフサイエンティストや当方の総合科学技術・イノベーション会議有識者議員など、有識者も交えた政策対話の開催、宇宙分野でのJAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)とイスラエル宇宙庁との連携強化についても、併せて検討していくことといたしました。さらに、両国のベンチャー育成支援等を加速させるために、合同委員会の開催に併せてIoT、AI、データ利活用などの分野で、官民からなる意見交換の場を設定することを検討することといたしました。このほか、サイバー関連企業団地(サイバースパーク)、イスラエル航空工業(IAI)、テクニオン・イスラエル工科大学、これは建国前に設立されたイスラエルで最も古い大学なのだそうでありまして、などを訪問・意見交換をいたしました。今回の訪問では、「イスラエルがイノベーションの産業化に野心的であること」、「ニーズ・オリエンテッドで、課題解決型の技術開発に積極的に取り組んでいること」、これは驚くほどニーズ・オリエンテッドであります、「若者の起業に関するモティベーションが高まるような企業支援制度を積極的に整備していること」、「教育の面も含めて軍の存在による技術開発への影響が大きく、さらに失敗することを厭(いと)わない国民性が、イノベーションを生み出しやすい土壌を与えているということ」を、目の当たりにしたところでありまして、我が国において科学技術・IT・宇宙政策を推進するに当たり、イスラエルで得た知見を活用してまいりたいと思います。これ(資料)は署名文書の覚書の全文でございます。また、必要とあらば、資料は配布させていただきたいと思います。
 引き続いて2つ目「S-Booster 2017」についてでございます。一部報道でもありましたけれども、3月21日に、新たな宇宙ビジネスアイデアコンテスト、「S-Booster 2017」を発表いたしましたが、最終的に4社からスポンサーの応募がございました。具体的にはスカパーJSAT、三井物産、ANAホールディングス、大林組の4社でございます。民間資金を活用した新しい宇宙政策の進め方として、画期的なアイデアの発掘を行うことができればと考えております。詳細は、宇宙開発戦略推進事務局にお問合せいただければと思います。

2.質疑応答

(問)科学新聞の中村です。
 先ほどのイスラエルの出張で得たことを生かしたいと。ただ、イスラエルは、例えば移民が多くて、失敗を恐れないという国民性であるとか、軍がユーザーになって、最先端技術をどんどん使うとか、あるいは兵役義務があって、その中で若者が軍事研究にも携わるとか、いろいろ背景がかなり日本とは異なると思うのですけれども、イスラエルの、例えばどの点を、日本の政策に生かしていきたいのか。その辺について教えてください。
(答)先ほど少し発言しましたけれども、驚くぐらいニーズ・オリエンテッドな国なんです。
 (資料に)点滴灌漑(てんてきかんがい)と書いてありますが、農業のネタフィム社(ハイテク農業)に行かせていただいた時に見せていただいたものは、以前、皆さんと一緒に新潟へ出張させていただいた時に見たものと、よく似ているのです。
 この技術はほとんど日本と遜色ないものであります。私がここに行ってきて驚いたのは、この点滴灌漑を自動的に、しかもその状況をセンサーでスマホに流すという仕組みをつくっているのですが、これをつくるまでの間に要した期間というのが、4年か5年だというのです。日本でそれをやり始めた時に、私が聞いた限りでは、もっとそれ以上に掛かっていたような気がいたします。
 しかも、ネタフィム社の仕組みが世界中に広がっているのです。やはりこれは、我が国としては危機感を持って当たらねばならないということです。世界を実験場にしながら、そのデータを蓄積している、そしてまた世界中の知見を瞬時に集め得る努力をしているということを、私たちもしっかりこれを学んでいかなければいけない。
 それから現場で、このテクニオン(イスラエル工科大学)でもそうですし、それから個人的にお世話になった方々にも、繰り返し繰り返し問うてきたのですけれども、やはりイスラエルでのインキュベーションシステムは、システムということもさることながら、そこに国民的理解が、ものすごく危機感がある。「我が国はNeighbor is all enemyだ。」という言い方をしていましたけれども、技術立国をしていかなければ国が立ち行かないのだという、その危機感の下、国民全体でやはり支えていかなければいけないという、その雰囲気が醸成されていて、取りも直さず成功した方々は、特に科学技術のインキュベーションに対しては、温かい目を持って、お金で投資をしたりとかいう部分がものすごく熱いものがあるのだという話をしておられました。
 ですので、今度、我々としても、それを参考にしながら、夏にはサイエンスIMF(科学技術イノベーション・マッチング・フォーラム)と言われるものが、マッチングという名前が良いかどうかは分かりませんが、いわゆるアクセラレーターを育てようという会をしようということ、何度もこの場でも申し上げてまいりましたけれども、そんな時に、是非このアクセラレーターやインキュベーターと言うのでしょうか、こういう方々に来ていただく時には、どうしたら彼らが、お金を出しやすくなるのか。また、彼らの側から中小企業、ベンチャーを育てるための障害はどこにあるかを現実に聞いて、そこから私たちは政策をつくっていかなければならないと考えたところであります。
 イスラエル最古だと言いましたけれども、テクニオンの大学ができた時、最初から相当力を入れて広く海外からの企業等々にも声を掛け、様々な投資を、努力をしているとも聞いてまいりました。
 日本の大学も、最近になってそういうこともしておるようでありますけれども、こういう努力の積み重ねが、やはり今、ここに来て少しインキュベーションの力の差になってきているのかなと感じた次第であります。
(問)朝日新聞の永田です。
 総理が自衛隊の存在を(憲法)9条に明記するという考えを、自民党総裁という立場で発言され、党内や国会で改憲議論をするということを指示されましたけれども、大臣、党員としてのその受け止めというものをお聞かせ願えますか。
(答)総理もその後、記者会見等で強調されておられたとおり、総裁としての発言という前提であったと思います。
 同じように、私も党員としてというか、政治家として、お答えするべき問題なのであろうと思います。
 従来から、個人的には、私は改憲をするべきであるという立場でありました。その線に沿って申し上げるならば、それが9条であるかどうかは、私は議論があるところであろうと思いますが、間尺に合わない憲法の中身について、やはり時代と、それから国民の意識に沿った形で一日も早く、改憲を成し遂げるべきなのではないかという意識においては、変わりはありません。
 総理が9条を特に取り上げたというふうに、全文、私も見ておりませんから、はっきりしたことは分かりませんが、そういう認識ではなかったのではないかとも思っております。
 したがいまして、今後の議論をしっかりと見守りながら、私もこれに参加すべき時が来れば、しっかりと議論についていきたいと思います。
(問)日経新聞の猪俣と申します。
 S-Boosterについてお伺いしたいのですけれども、今回の4社の業種、様々ですけれども、この顔ぶれで決定したことについて、どういう印象をお持ちでしょうか。今後の宇宙ビジネスについて、どういう良い影響がありそうかということを、大臣の見解としてお伺いしたいです。
(答)日本を代表する大手企業の方々に御参加いただいたという印象であると同時に、国民の多くの方々も、このS-Boosterのアイデアにしっかりと注目をなさっておられるのだと思います。
 私どもとしては、この期待に応えるべく、ここが終わり、あるいは到達点やそしてまた中間点というのではなくて、これからがスタート地点なのだという意識に立って、しっかりサポートもしていきたいと思います。
 また、逆に、大手企業であるからこそ、良い面もありますけれども、それ以外の日本国中に散らばっているクラスター産業の知見を結集していくことも、これから必要になってくるのではないかとも思います。
 主にそれを今回、スポンサー企業として、参加頂けなかった部分の方々にも知恵と、そしてまたアイデアを出していただければと考えております。参加を募っていきたいと思います。
(問)今回がスタート地点だということなのですけれども、来年度以降もこういった取組、継続していかれるということについては。来年以降も同じようにコンテストをされる御予定がありそうでしょうか。
(答)もちろん、そのつもりで頑張りたいと思います。

(以上)