鶴保内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成29年1月17日

(平成29年1月17日(火) 11:17~11:34  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 私の方からは、2点、冒頭に申し上げたいことがございます。
 まず一つ目は、先日、1月8日から15日にかけて、科学技術協力推進のため、ドイツ及びスイスに出張に行ってまいりました。その御報告でございます。ドイツでは、ヴァンカ教育研究大臣や4大研究組織のうちの三つの協会の会長と意見交換を行わせていただきました。 最先端の研究を推進する研究現場や「インダストリー4.0」を推進する企業現場等を訪問いたしまして、今後の日独科学技術協力等の在り方等について議論を行ってまいりました。ヴァンカ教育研究大臣との意見交換においては、少子高齢化時代における最適な移動手段の確保やビッグデータ利活用に向けた国民理解の醸成など、両国間に共通の課題が多くあることを踏まえ、日独間における新たな協力枠組みの形成に向け協議していくことを確認いたしました。特に、自動走行システムについて、研究開発の推進に向けた両国の協力に関わる共同声明への署名及び発表を行わせていただきました。今後、今年秋から実施する自動走行の大規模実証実験への参加など具体的な協力枠組みについて、専門家等による協議を進めてまいる所存であります。また、加えて、「インダストリー4.0」の概念を生み出した人工知能研究センターや、その推進の中核的役割を担っている企業、BMWの本社でありますとか、シーメンスの本社といった企業の現場視察をさせていただきました。そこからスイスに向かいまして、スイスにおいては、デルアンブロージオ教育研究イノベーション庁長官及びスイス国立科学財団理事長、さらにはチューリッヒのスイス連邦工科大学の学長とオープンイノベーションや基礎研究の成果を効果的に社会展開するための産学連携の在り方等について意見交換を行い、日スイス間の科学技術協力等について議論いたしました。この度の出張では、第5期科学技術基本計画で打ち出した「Society5.0」の考え方やその実現に向けた取組等を紹介いたしました。おおむね、どの方もこの「Society5.0」の考え方について大いなる興味を持ち、そして賛同いただいたことを御報告しておきたいと思います。今回の成果を活かして、今後の科学技術イノベーション政策の推進に役立ててまいりたいと考えております。長くなりましたが、これが1点目でございます。
 2点目でございますが、沖縄振興についてのパンフレットの作成とホームページの更なる拡充をさせていただいております。まずお手元に配布させていただいております、沖縄振興策を沖縄県民の方々を始め、皆様に広く周知し、理解していただくため、この度、パンフレットを作成いたしました。パンフレットでは、社会資本の整備状況や一括交付金の活用事例、北部地域の振興、税制など各般にわたる振興策について、具体的に理解していただけるように記載しております。 また、これに併せて、以前から御案内を申し上げておりますホームページも拡充させていただきました。具体的には、人材育成の観点から奨学金に関する情報や進学先、資格取得等といった情報について、より一層詳細な掲載を行うとともに、沖縄県のマップを作らせていただいて、そのマップ上の各市町村の部分をクリックすることで各市町村の一括交付金事業のページにリンクできるようにいたしました。これによって、見ている方は、うちの町にどういう事業があって、そしてどう活用すればいいのかということを考えていただくきっかけにしていただければと考えています。これらの情報発信を通じて、一人でも多くの県民の方々に振興策を理解していただいて、暮らしの向上を真に実感していただけるよう、引き続き振興策の周知に努めていきたいと考えております。また、これに併せて、地元の方々とも、まだこういう情報にアクセスできていないがどうなっているかというようなリサーチをしていただくことを関係部局に私の方からお願いしているところであります。今後、こうしたことの意見を踏まえて、これらホームページの拡充もより積極的に進めていきたいと考えておりますので、皆さんの御意見等々もどしどしお寄せいただきたいと思っております。
 私の方からは、以上であります。

2.質疑応答

(問)科学新聞の中村です。
 ドイツ出張についてお聞きしたいんですけれども、ドイツは、ここ10年ほど、研究開発力で言えば、ぐんぐん右肩上がりに伸びていると。日本はなかなか停滞気味だと。そういう状況にあって、実際ドイツの研究現場を見られてこられて、日独に何が違うのか、大臣としてどのようにお感じになったでしょうか。
(答)重要な御指摘だと思いますが、言いにくい話ではあるんですけれども、ドイツで最も私が感銘を受けた、個人的に印象を受けたことは、資源のないドイツにとって国家運営をしていく上で人材が命なんだと。そして、その人材を育てていく科学技術の環境整備を国民全体の総意として進めていくべきものなんだと。言葉を変えて言うと、これはある意味、政治決断として進めていかねばならないんだと考えているというお話を幾つかの幹部の方からお聞きいたしました。
 我々の国でも、そういう思いを持って進めていくことが一番肝要なことではないかと思います。ともすると、予算について制約的な意見がまず先行するこの状況でなかなか進め難いところはありますけれども、我々の今ある状況、そしてまた今後我々のこの国が進んでいくべき道を果敢に議論して、国民の皆さんと一緒に考えていく結果、こういう科学技術の振興にもつながっていくものだと考えています。
 まだまだその議論が足りないのではないかと考えました。
(問)日刊工業新聞の冨井です。
 日独間の自動走行に関してお聞きしたいんですが、協力、協定みたいのを結ばれたということだと思うんですけれども、具体的にどのようなところで協力していくのかという、何かちょっとイメージを教えていただければと思います。
(答)具体的、技術的な事項については、それぞれ現場で今後協議をしていただけるものだと思いますが、その現場間の協議を進める意味でも、政府がこれを主導、相協力してやっていくんだということを声明することに意味があるだろうと私どもは考えております。
 ドイツの大臣ともここは一致したところでありますけれども、先程申しましたとおり、我々日本とドイツは置かれた状況はよく似たところがあると。資源のない国で科学技術を先行させて、そこからイノベーションを図り、そして国の富を得ていく。なおかつ、世界の幸せに寄与する国家でありたい。こういう思いは、両国の共通する思いであるということでありますから、ここは最も先行的な実施が期待される自動走行の分野において、まずは我々その思いを共有しようではないかということが1点であります。
 加えて、御存じのとおり、IoT時代を見越して私たちが決めていかなければならないセキュリティの分野でありますとか、それぞれの科学技術のデファクトスタンダードのようなもの、こうしたこともにらみながら、日本とドイツと、そしてアメリカ等々の科学技術先進国が相協力して、進めていくわけでありますけれども、まずは私たち日本とドイツの間でこういう雰囲気醸成をしていく必要があるのではないか、そういう意義があったと考えています。
 BMWの本社にも行かせていただきましたけれども、実証実験等もそれぞれが今こういう方向で進んで、こういうふうにやっていこうと思っているというようなことも意見交換しましたので、これらについて、今後、私たちの国はこういうふうに考えているけれどもどうだというようなすり合わせが進んでいくことを期待しています。
(問)もう一点別件なんですけれども、今週の日曜日、15日にJAXA(宇宙航空研究開発機構)が民生部品を使った超小型ロケットの「SS-520」4号機というのを打ち上げたんですが、それが失敗したというところで、大臣の所感をお聞かせ願えますでしょうか。
(答)失敗したこと自体は大変残念なことであると思います。ただ、以前も申し上げたこともありますが、失敗をバネにすることにこそ科学技術の進歩があるんだと思います。
 今回も、単なる失敗というよりも、野心的に民生部品を積極的に使って、より安価なロケット打ち上げを実証しようではないかという試みの結果ということでありますから、この結果を踏まえ、しっかりとレビューをしていただいて、今後のロケット打ち上げの飛躍、発展につなげていただきたいと考えています。
(問)朝日新聞です。
 この週末に、宮古島の市長選が投開票されます。保守、革新とも分裂している注目の選挙になっているんですが、大臣、どんな点を注目して御覧になられているか、お願いします。
(答)これまでいろいろ報道ぶりの中で、自衛隊の基地問題等々についての話がよく出てきていますが、私もこれは個人的には経験しておりますけれども、選挙というものがワンイシューのみで判断されるものではないと。御本人の人格、識見はもちろんのこと、それ以前に、特に現職であれば、そこに至るまでの市政等々、市民からの信頼度等々もいろいろな意味で加味されるものだと思います。
 そういう意味では、冷静に判断していただけるものだと思いますが、私たちもこれをしっかり注視して、その結果を踏まえてこれからの振興策に役立てたいと考えています。
(問)仮に、もし現職の方が敗れた場合に、陸上自衛隊の配備に与える影響について、大臣はどう御覧になっておられますでしょうか。
(答)自衛隊について私の所管ではありませんから、それを何とかしろとか、どうしようということをここで申し上げる立場にはないわけですけれども、これも一般論ですけれども、国として私どもがこれをやりたい、また、やらせていただきたい、そしてまたやるべきだ、また、やればどうだ等々思いがあって、その地域の皆さんと交渉する場があるのであれば、それは選挙の結果に関わらず、その後の対象となる方とじっくりと話をしていくのが筋ではないかと考えています。
(問)もう1点なのですが、この選挙戦について党本部の方から現地に行ってほしいという応援要請があるのかどうか、また、大臣として入られる御意思があるのかどうか、お願いします。
(答)まだそれはありません。また、あった時に考えたいと思います。
(問)可能性としては。
(答)可能性はどうでしょうね。分かりません。
(問)日経新聞の猪俣と申します。
 ロケットの話に戻らせていただきます。今回、経産省の予算があって実現した実験だったわけですけれども、もちろん原因究明はまだなんですが、今回、民生品に問題がなかったとしても、やっぱり打ち上げに失敗している以上、民生品の利用実績というのは証明できないもので、実際にロケットに標準装備されるにはまだまだ実験を繰り返さないといけないと思うんですけれども、内閣府として、経産省に、予算以外で支援し得るのかどうかというところをお伺いできますでしょうか。
(答)個人的にはどんどん進めたいと思いますが、これは当然予算の制約もある話でありますから、私どもが主導してでき得るか、それから、民間の方もどういうインセンティブ、モチベーションがあるか等々、総合的に判断して進めていきたいと考えています。
(問)共同通信です。
 北方領土の関係で1点お伺いします。北方四島へのビザなし渡航の関係で、一部報道で北海道の中標津空港から択捉、国後に空路を活用して行うことを政府が検討しているという報道もあったんですが、検討状況を把握されている限りでいかがでしょうか。
(答)私もそれは気になって、出張の間の報道であったものですから、帰ってきまして、いろんな話を聞いている限りでは、まだその事実は決まったわけではないという情報であります。
 個人的にはという前提ではありますけれども、いろんな形で島民の方々が現地へ行きやすくする等々の方策があること、それをまた検討していくということについては、私は賛成でありますけれども、まだその交渉がしっかりできているとか、そういうふうになるという話は情報としては入ってきておりません。
(問)話変わるんですが、もう1点だけ。昨日、在日米軍属の補足協定が署名されて、即日発効されたと。これは昨年の沖縄県であった米軍属による殺人事件を受けた再発防止策の一環だということなんですが、今後、日本側による裁判の対象が拡大するということになりますが、大臣としてこれをどう評価されていますでしょうか。
(答)一歩前進。とにかくいろんな事情を勘案をしながら進めていっていただきたいと思います。それはいろんな意見もあるだろうと思いますけれども、私も、この地位協定の補足部分について進めていただいたことを歓迎したいと思います。
(問)北海道新聞の佐藤です。
 先程の北方領土のビザなし訪問の絡みで、現状のチャーター船を使った訪問について、何か問題点を感じていらっしゃるところが大臣としてあれば教えてください。
(答)まだ今、具体的な検討に入っていないというのが実情でありまして、率直に申し上げてそこまで考えが至っていない状況なんですね。できれば、そういうこともこれから具体的に考える時が来てくれればいいと思います。
 本当に大変申し訳ありませんが、現状で私が言えるのはその程度であります。

(以上)