鶴保内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年10月21日

(平成28年10月21日(金) 9:25~9:41  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 私の方からは、以前からこの席で申し上げておりましたノーベル賞の大隅教授の受賞にまつわり、今後こういう基礎研究にしっかりとした目を向けていかなければならないという我が国の現状とその対策についての検証を始めましたということを申し上げたと思いますが、中間報告的なものが出てまいりましたので、御報告だけしておきたいと思います。
 もう御多分に漏れず、イノベーションの苗床である「独創的な基礎研究の充実」と経済成長及び「Society5.0」の実現につながる成果の社会実装なども含めた「科学技術イノベーションの促進」の2点を車の両輪として取り組んでおります。ノーベル賞を取られた大隅教授の今回の受賞に至ったプロセスを検証してまいりました。
 結論から申し上げますと、研究費(科学研究費補助金)について、萌芽期にある若手研究者の中から何らかの方法で将来有望な者を見出し、その中から斬新なアイデアを持つ提案を審査、採択するような仕組みを日本学術振興会がやっている科研費以外にも充実、拡充していくことが有効ではないかということや、あるいは若い研究者が比較的早い段階で研究室を主宰し、自らの研究テーマを模索できる環境を構築したり、支援スタッフを充実したり、研究室の立ち上げに必要な研究機器を整備したりすることを可能とする支援策を充実させることが有効ではないかという中間報告がありました。
 後者の方は、大学の運営費交付金等々の改革にもつながる話でもあり、従来から指摘がありますとおり、これらについて引き続き検証を深めていかなければならないと思います。
 私の方からは、この交付金の使われ方について、競争的資金と交付金そのものの中身について検証する必要があるのではないかという指摘はさせていただきましたけれども、これらについてもこれから報告があれば、この場をお借りして、皆さんにまた報告をさせていただきたいと思っております。
 以上であります。

2.質疑応答

(問)科学新聞の中村です。
 今のお話の中でちょっとお聞きしたいんですけれども、一つは、科研費に代わるような若手の本当に萌芽期の研究を支援する仕組み、それが必要だということなんですけれども、それはこれから新たに科研費以外に作っていくという話なのか、科研費を拡充させる、そこら辺の整理はどうなっていますか。
(答)両にらみで考えたいと思いますね。科研費が今、現実にしっかりとした額を確保できているかというと、大体粗々の印象では、まだまだ足りないのではないかという指摘もあります。では、どうするのかということになると、またいろいろな仕組みも考えていかなければいけないかもしれません。まず制度ありきではなくて、これからいろいろな考え方をしていきたいと思っております。
(問)あともう一つは運営費交付金についてなんですけれども、運営費交付金については、大体ざっくり見ると、人件費とほぼ同額になっていて、その中身を検証したところで、中身というよりも、もうちょっと別のところを考えるべきなんじゃないかと思うんですけど、そこら辺はどうでしょうか。
(答)有識者の方々の御意見を賜りながら、そういったことをどうすればいいのかを見てみたいと思います。よく言われる、日本の科学技術予算がどれぐらいあるのかという問に対して神学論争的になっているんですね。どこまでを科学研究費と見るか等々、それらについて各国の様子であるとか、あるいは現場の意見であるとか、これだけ出しているのに、現場では全然まだ足りないではないかという声がずっとあるわけでありまして、では、どうすれば一番最適に分配ができているのかということをしっかりと検証しなければならないということであります。中村記者がずっと言われているとおりであります。
(問)朝日新聞です。
 高江のヘリパッド建設地で、いわゆる「土人」発言というのがありまして問題になっています。これについて大臣のお考え、現状をどう見られておられるのかお願いします。
(答)大変残念な発言だったと受け止めております。詳細について私がコメントする立場にはございませんが、振興を担当する者として、襟を正してこれからも警備に当たっていただきたいという思いであります。
(問)沖縄側からは、本土側の人権意識を問題視する見方も出ていますが、それについてはどうでしょうか。
(答)人権問題というのは、私、長らく携わってきました。党の人権問題調査会の事務局長をさせていただき、人権擁護法案なんかも推進してきたものでありますから、その経験から申し上げて、これを人権問題だと捉えるかは、言われた側の感情に主軸を置くべきなんだと思います。したがいまして、県民の感情を傷つけたという事実があるならば、これはしっかりと襟を正していかなければならないと考えておりますから、殊更に我々がこれは人権問題だというふうに考えるのではなくて、今後こういうことが、果たして県民感情を損ねているかどうかについて、しっかり虚心坦懐に、つぶさに見ていかなければいけないのではないか。人権問題一般論としての議論の中にも、大変それは重要な論点としてありました。あなたがそれをすることによって県民というか発言をされた代表者の気分をやはり害していますよということを肩を叩いて言ってあげることが一番必要なのではないかということが一般論としてはありました。したがって、今回も、もし人権問題として取り上げられることがこれからもあるならば、それはしっかりとフォローをしていかなければならないことだと思っております。
(問)最後に1点なのですが、この問題に関連して、何か今後御自身でアクションをとられたりとか、考えておられることは何かございますか。
(答)特にございません。
(問)化学工業日報の伊地知と申します。
 科学技術にちょっと戻らせていただいて、先ほどのお話の件なんですけれども、科研費以外にもJST(科学技術振興機構)の創造戦略でさきがけとか、昔から若手、萌芽期の支援というのがいろいろとある、既存の制度としてもあるということで、一つは、それを拡充するというのが具体策かなというふうに思うんですが、それ以外に新たな何かファンディングとか制度を作るべきかという、今の段階で大臣がどういうふうにお考えか、あれば。
(答)なかなか今の段階で言いづらいんです。というのは、さっき申し上げたとおり、現状に対してどれぐらいの不満があり、不自由さがあるかをまず検証するべきだと、私は常々この場で申し上げておりますが、予算に関わる話ですから、無尽蔵に何でもいいですよ、自由におやりくださいと言うほど財政状況は豊かでは、自由があるわけではありませんので、ちゃんと効果の上がるように、エビデンスに基づいた費用配分を心掛けねばならないと思っております。そのいわゆるエビデンスをこれからどれだけ積み上げていくかという段階ですから、こういうふうにしなければならないということを予断をもって今申し上げるべきタイミングではないと思っております。
(問)ただ、エビデンスということなんですけれども、非常に分かりやすくて、一定の評価ができると思うんですけれども、萌芽的な独創的というのはなかなかエビデンスで評価できるものではないわけですよね。これは昔から言われていることだと思うんですけれども、この人に託そうとかというのってなかなか難しい部分なわけですよ。逆にエビデンスというのは難しいんですけれども、気概とかそういうところにどうしてもいってしまうような部分があるんですけれども、そうすると、なかなか税金投入というものの理解がとれないということの、痛しかゆしのところがあると思うんですけれども、その辺は如何でしょうか。
(答)だからこそ、今この中身を精査するべき必要があるのではないかというふうには思っております。萌芽的ということを今の仕組みの中で誰がどういう基準で判断しているのか、ということをしっかり検証していく必要があるのではないかという気持ちも含めて、まずはこれから現状の在り方を見ていきたいということであります。
(問)もう一段階食い付きたいと思うんですけれども、来年度の予算という中、今、概算が各省から出てきてということで、そこに間に合うような検討をするのかということだけ食い付きたいと思うんですけれども、如何でしょうか。
(答)できればそうしたいと思いますけれども、横目で事務方の顔を見ておりますと、厳しいなということですね。表情に出ておりますから。私の今の立場としては、徹底的にそれは急いでやってくれということを申し上げておりますし、これからもそうしたいと思います。ちょっとお約束するにはまだ早いかなと思いますけれども。
(問)時事通信です。
 先ほどの「土人」に関する発言のところで、人権問題として取り上げるかどうかについて、県民感情が損なわれているかどうかを見ていかないといけないというふうに大臣おっしゃいましたが、現状、県民感情が損ねられているかどうかはまだ判断できないというふうにお考えですか。
(答)ここはすごく問題なんです。人権に関する法整備をしようとした時も大論点でありました。これは我が国の一般論ですが、制度上、これを肯定的に誰かが判断する機関を作ろうじゃないかという動きもありましたし、また、それをすると言論の自由及び社会の自由度というのが著しく損ねられるんじゃないかという論争に今もなっています。したがいまして、私は今のこのタイミングで、これは間違っていますよとかいう立場にもありませんし、また、正しいですよということでもありません。自由にどうぞというわけにもいきません。したがって、今の御質問に私が答えられるとするならば、これはつぶさに見ていかざるを得ない。私は個人的にそれが主たる判断の大きな要素になるんだということだけ申し上げておきたいと思っています。
(問)(NHK・奥住記者)
 話が行ったり来たりで恐縮なんですけど、科学技術の話で、今、中間報告が出てきたということで、最終報告みたいなもののめどと、いわゆるペーパーか何かにして報告書みたいな形で出すのか、どういう形で出されるのを想定しているか教えてください。
(答)できるだけ早くと先ほど申し上げましたが、やはり予算に関わる話ですから、予算の策定あるいは運用に応用できるようなタイミングでなければ意味がないのではないかと思っております。ただ、ここもちょっと弱気になって申し訳ないんですが、最終報告として出すからには、こうあるべきだ、こうするべきなんだ、また、それを今できなくても最初は第一歩としてこういう取組から始めていくんだというところまでやらなければ、これは役所としては何の意味もない報告になってしまいますので、そこまで積み上げていくには、ある一定の時間というのはやはり必要になってくるだろうと思いますから、繰り返しになりますけれども、できるだけ早く急いでやっていただくことを私は部局にも伝えております。
(問)(科学新聞・中村記者)
 中間報告なんですけど、中間報告自体は何か紙に作っていったりはするんでしょうか。
(答)作りますか。
(事務方)簡単に。
(答)では、作らせましょう。
(問)あともう一つ。先ほど税金が、予算が、財政状況が厳しいから足りないと。一方で、現場では金が足りないと。例えば、アメリカとかEUとかのファンディングを見ても、ファンディング機関に一回落とした時点で予算上は決算して、そこでファンディング機関から、年度を超えてファンディングができるような仕組みをとっている。なのに、日本の場合は科研費だったら基金化という形でやったんですけれども、そういう形でやると、一時には財政的に厳しくなるけれども、あとは平坦化すると。ただ、他のいろいろな基金、農業とかいろいろなところで問題になる基金がいっぱいあって、行革的にはそれはけしからんという。だから、全体のバランスでは基金なんてけしからんよね、そこに出した時点で決算するなんて国会軽視でけしからんよねとなるんですけれども、投資を本当に効率化しようと思ったら、一回そこにやった方が合理的に使えるようになるかとは思うんですけれども、例えばそういうような全体的な財政構造の在り方についても言及されるんでしょうか。
(答)結果的にはそうせざるを得ないでしょうね。提案という形で留まる可能性もありますが、大学の自治という問題もありますし。
 これから現場の話を聞くために、来週月曜日に大阪大学にも出張させていただこうと思っております。その際、西尾総長とも懇談をさせていただこうか思いますが、大学の現場、研究の場とかそういう予算の使い方とか、そういったことをつぶさに聞いて、もちろん大阪大学だけが全てではないんですけれども、いろいろな人のお話を聞いた上で判断したいと思います。
(問)(フジテレビ・和田記者)
 中間報告がせっかく発表されたので、なるべく早く出していただいた方が、間の抜けたものにならないかと思います。
(答)(事務方を見て)そっちを向いて言っているからね。ありがとうございます。

(以上)