鶴保内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年10月4日

(平成28年10月4日(火) 9:16~9:35  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 本年、ノーベル生理学・医学賞を東京工業大学の大隅良典さんが取られました。心からの敬意と祝意を申し上げたいと思います。大隅さんの受賞は、一昨年から3年連続での日本人による受賞であるということで、なお、自然科学系における日本人の単独受賞としては29年ぶりの快挙だということであります。もう皆さん御存じだと思います。 今後こういった慶事が続いていきますよう、イノベーション創出を阻害しているような制度、仕組みを徹底して見直すなど、課題解決型内閣府のスローガンの下、優れた人材の育成・確保やイノベーションの源泉として基礎研究の推進に向けた大学等の改革、さらにはオープンイノベーションによる研究成果の社会への展開促進など、関係府省をリードして進めていきたいと思います。たった今、私からも、こういう事例が、今回のノーベル賞受賞の候補者の方々も含めて、どういった研究が最もこういう賞に結び付いているか、またどういった環境がこういう賞に結び付いているか、を検証しようじゃないかという話をしてまいりました。それを通じて問題点を洗い出して、しっかりとフォローアップしていきたいと考えております。
 もう一つ、この中(の記者)にも来ていただきましたが、一昨日、京都出張へ、国際科学技術関係大臣会合、STSフォーラム(科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム)に行ってまいりました。
 23か国の科学技術大臣等と大臣会合をさせていただき、我が方から「Society5.0」の考え方を紹介いたしました。あるべき社会の姿を提示し、考え、そこからイノベーション、科学技術の発展を考えていくという意味の「Society5.0」については、多くの国々から賛同をいただいたところであります。また、この京都訪問を機会に、島津製作所(上田輝久社長、田中耕一シニアフェロー)と京都大学・山中伸弥先生のiPS細胞研究所を視察させていただきました。なお、それに先立って京都大学では、山極壽一総長とも人材育成の重要性等について意見交換も行わせていただきました。またこの出張の成果を活かして、政策を強力に推進していきたいと思います。
 台風の被害状況についてはもう報道のとおりでありますから、あえて申し上げません。
 以上であります。

2.質疑応答

(問)科学新聞の中村です。
 昨日のノーベル賞の受賞を受けて、大隅先生が、自分の好きなこと、興味を持ったことができることが大事だと。今、若者たちの置かれている環境はそういう環境ではないと。そういう環境というか文化を醸成していくために、大臣としてはどういうふうにしていったらいいとお考えでしょうか。
(答)その問題意識がものすごくありまして、今ここでこれがという答えが分かるぐらいだったら、すぐにそれに取りかかっているんです。はっきり申し上げて、関係部局とも今議論してきたところですけれども、そういうことを大っぴらに許していいですよと、何でもやって結構ですと、社会に役立つか役立たないか分からないものであっても、どんどん好きにやってくださいと言えるほど、この社会、今この国の財政状況はおおらかではありません。したがいまして、この社会の中で、どこまでを許し、どこまでを基礎研究の分野で醸成していくだけの余裕があるのかをしっかりエビデンスベースで検証しようじゃないかということを提案しております。
 具体的には、過去に出してきた論文等々の引用件数等々を見ながら、何年ぐらいそれがかかっているかとか、あるいは、なぜ国立大学での研究ではなくて、今回のように花を開いたと言われている部分、大隅さんのお言葉を借りれば、研究法人に移ってからそういうことができるようになったという話がありましたけれども、それがどうしてなのか等々、御本人も含め、また多くの研究者、それ以外の研究者なんかのお言葉も取材をしながら問題点を洗い出したいと思っています。
(問)今のことに関連して、例えばイギリスなんかの場合は、日本よりも投資が少ないけれども、論文数とか基礎研究の成果が高いと。ドイツもそうなんですけれども、ヨーロッパとか、あるいはアメリカの費用対効果でみたいなのは高いんですけれども、そういった国々との大きな違いって、大臣の感覚としてはどういうふうな。
(答)それは以前申し上げたと思いますけども、外へ出ていかない、内向き志向の方が多くなったというのもあるんだろうと思うんですね。海外の研究者との共同研究であるとか、海外の研究と軌を一にしたような研究をしていっていないというところは、論文の引用数なんかはそういうところにやっぱりあるんじゃないかなというふうには思います。
 ただ、今、大隅さんのお話は、ちょっとそれとは質が違うのかなと。本当に役に立つかどうかまで分からない、本当の意味の独創的な研究をするというのは、その時代には多分見向きもしなかったような分野なんじゃないかなと。そのことについておおらかにそれを許す研究環境というか、そんなものが今の日本でどれだけ保障できるのかというのはちょっと問題があるんじゃないかなというふうには思っています。
(問)ついでにもう一つ。例えば、アメリカとかヨーロッパの研究費なんかの構造を見てみますと、日本でいうと、いわゆる基金のような形で、年度を越えたり自由にできるようにしている。日本の場合は、補正予算にしろ何にしろ年度をがっちりやって、一部科研費(科学研究費補助金)なんかは基金化していますけども、それ以外については、何というか、使い切らなきゃいけない。戻すにしても、いろいろな事務手続大変だ。財政のシステムとして、日本だけが非常に特異なシステムをとっているんですけども、こういうことまで大臣は切り込んでいかれていくんでしょうか。
(答)直接その言葉のお答えになるかどうか分かりませんが、山中先生のところで、何かお役に立つことはないかという話をしましたら、1年単位の予算になっているものだから、多くの職員が有期雇用で1年ごとに契約を更新して、いつ首を切られるかというか、そんな気持ちにならないとも限らないという話を承りました。これは構造的な問題なんだろうと思います。今それを精査しておりますけれども、それではやっぱり腰を落ち着けて、一生のテーマとして研究に没頭するということにはならないだろうと思いますから、ある程度のタームは必要なんではないかなというふうには個人的には思っております。
(問)化学工業日報の伊地知です。
 今月1日から特定研発(特定研究開発法人)が発足してスタートを切りましたけれども、改めて3法人への期待を伺えればというふうに思います。
(答)一番の期待は、3法人ができたからには、それぞれの法人の連携を密にしていただくということではなかろうかなと思います。オールジャパンで様々なイノベーションの種を総合的に構築していくということが何より今大切な時代になってきておりますから、これら3法人を核にして最先端の技術融合を是非成し遂げていただきたいということが一番の期待であります。
 それ以外には、それぞれが触発しながら、例えばNIMS(物質・材料研究機構)では非常に広報に力を入れておられる。産総研(産業技術総合研究所)は、やはり御多分に漏れず出口志向の大変知見を持っていらっしゃる。そして理研(理化学研究所)の方は、「Society5.0」じゃないですけども、イノベーションコーディネーターといったかな、科学技術の研究の前にこういう社会を作らなければいけないという考えの下にそのコーディネーターを作ろうとしておられる。まだこれははっきり言ってまだ動いていないようですけれども。こういうそれぞれの特色を生かして、出口や理念や、そしてその手法といったものを、その3法人がお互い知見を分かち合うことによって大きなものができるんじゃないか。
(問)イノベーションデザイナーでしたか。
(答)確かイノベーションデザイナーですね。そういうことを私は一番期待をしております。
(問)(毎日新聞・梅田記者)
 IR(統合型リゾート)についてなんですけれども、今国会での審議等、ちょうど議論が盛り上がってきているところもあるんですが、沖縄で候補地で上がっていることも踏まえて、大臣として一応どう思われるか伺えますか。
(答)IRの議論が進めば、もっと具体的に沖縄からも要望があるんだろうと思うんですが、今までのところ、要望はないわけではもちろんありません。ありませんが、いつまでにどうしてくれという話ではもちろんありませんので、私どもとしてはしっかり国会の議論も注視しながら進めたいと思います。
 以前この場で申し上げたと思いますが、IRといってもいろんな種類のものがございます。ビルの一室でやるものもあれば、大型のIR施設と同時にやっていくカジノ施設なんかも、当然そこに含まれてやっていくというものはありますから、これらについてどういう道筋が一番適当なものなのか、沖縄にとってIRをこれから地に足の付いたものにできるかどうかを考えながらやっていかなければいかんなと今のところは思っております。
 沖縄の話でいいんだよね。IR全般論ですか。
(問)全般で。
(答)全般ならば、これから国会の議論を進めてからとしか言いようがありません。
(問)フジテレビ、和田でございます。
 ノーベル賞関係はもうほとんどお話出たかと思うんですが、少しかみ砕いた形で、素人なものですからお伺いしたいんですが。例えば、これから検証されるというようなお話もありましたが、独創的な研究の重要性というのは論を待つまでもないと思うんですが、私、仮に予算面も含めて独創的な研究に力を入れるということが日本の科学技術全体のレベルアップにつながるのかどうかもよく分からないんですが、限られた予算という中で、これから調査研究をされていく中で、例えば科学技術イノベーションあるいは科学技術全般の方針ですとか、あるいは予算付けみたいなところにも影響が出てくるような性格のものとお考えでしょうかということが一つと、そもそも、なかなかムーブメントは起こりませんが、女性からも受賞者が出てもいいのではないかと思ったんですが、如何でしょうか、2点。
(答)後半部分は全くそのとおりだと思います。言われてみれば、日本からはまだないはずですから、女性が取っていないのは、取れないのではなくて、何かがやはりちょっと足りない部分があるんだろうと思いますので、それも冒頭申し上げたとおり、エビデンスベースで理科系研究者の女性研究者の割合でありますとか、生活でありますとか、そんなものもしっかりと、それこそ研究・調査をしていかなきゃいかんなと思います。
 それから一つ目ですけども、予算額と今の独創的な研究との関係みたいなのは全く無関係ではないと私は思いますよ。これによって確かに少しそういう独創的な研究にも目を向けていこうじゃないかという風潮は生まれていくんだろうというふうにも思います。思いますが、先程中村さんのお話にもありましたとおり、私としても何もかもがうまく全部できる予算状況では到底あり得ないので、かといってあまりにも出口志向過ぎているという御指摘もやはりありますから、具体的にどこまで何年経てば論文から引用されるような実用化に向けての、世の中の貢献度、注目を浴びるようなものになってくるのかとか、そういったものをしっかりもう一回見直すべき時が来ているんじゃないかというふうには思います。
 問題は、一番私が個人的に気になっているのは、大隅教授の言われた言葉で、これ実際に言われたかどうか検証しなきゃいかんのですけど、「東大ではできなかった」という話ですね、これは何を意味していたのかというのは私も気にはなっています。
(問)ちょっと下世話過ぎて恐縮ですが、やはり女性の場合って学者の絶対数が少ないというのが多いんですかね。きっと優秀な方はおられるんだろうとは思うんですが。どんな御認識をお持ちですか。
(答)女性が。
(問)いやいや、受賞者がいなくて、絶対数が。
(答)絶対数は少ないでしょう。
(問)研究者が少ないというのは大きいんですかね。おそらく優秀な方はおられると当然思うんですが。
(答)圧倒的に女性は少ないと思います。これはCSTI(総合科学技術・イノベーション会議)の原山(優子)先生あたりが本も書かれてずっと言われておられますが、圧倒的に絶対数が少ないというのが一つ。
 それから、やっぱり女性の研究での期間での、やっぱり結婚、出産、いろんなこともあるんだろうと思うんですけれども、それに対するキャリアサポートをしっかりしているのかみたいなことは、ちゃんと私たち見ていかなきゃいけないのではないかなと思いますね。
(問)(科学新聞・中村記者)
 今の検証のお話なんですけれども、出口がないものだと、ずっと検証というのは続けなきゃいけないんだと思うんですけれども、どこかしらデッドラインを決めないと、それはなかなか。今のまず第1弾のデッドラインとしてどのくらいのことを想定されていらっしゃいますか。
(答)今日それを指示するのを忘れましたね。ここへ来るのに必死で、急いで。でも、おっしゃるとおりです。これからどれぐらいで出せるか一遍検討させます。かといって、やっつけ仕事で、えいやと決め打ちでやったって何の意味もありませんから。エビデンスベースというからにはちゃんとしたエビデンスが欲しいじゃないですか。しかも、それを国民の皆さんが、そういうものならば、この時期までは我慢をしてあげようと。我慢という言い方が適当かどうか分かりませんが、皆さんがそうおっしゃる言葉ですから、我慢をしようというような思いになっていただけるように、これはしっかりとした研究、そういう意味での調査をしたいと思いますので、ちょっとお待ちください。
(問)(日本経済新聞・猪俣記者)
 今の検証の話なんですけれども、今の想定ベースでもいいので、どういった組織をどの部門に作るのかとか、そういった想定はされていますでしょうか。
(答)これは科学技術部門を、組織替えなんかわざわざしなくても、我々内閣府でするべき一番の仕事ですよ。「ノーベル賞良かったね、そしてこれからも頑張りましょうね」と言うだけだったら、これは文科省が一番の所管をしておられるわけですから、そこはやっていただいて、私たちとしては、何が良かったのか、そして何が悪かったのかということをしっかり検証するということですから、その科学技術に関する全ての部署がこのことに当たるべきだと思っております。
(問)外部の方なんかも呼ばれますか。
(答)場合によっては。さっきも言ったとおり、大隅さん御自身にも御意見や御感想を聞いてみたいなと思います。

(以上)