山本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年8月4日

(平成28年8月4日(木) 11:04~11:35  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。このたび内閣府特命担当大臣を拝命いたしました山本幸三でございます。どうぞよろしくお願いします。
 私の担当は、地方創生、規制改革でございますが、また、内閣の担当として、まち・ひと・しごと創生、行政改革、国家公務員制度担当も行います。仕事の中身等は、詳しいことは皆さんも御存じだと思いますので申し上げませんが、地方創生担当と規制改革担当を一緒にやるということで、これは非常に意味のある担当にさせてもらったなと思っておりまして、いわゆる特区と規制改革がつながると、これを一人の大臣の下で一緒にやるということで、いわゆる旧アベノミクス3本の矢の成長戦略のところですね、そこを是非実績が上がるように頑張れよということかと思って、しっかりやっていきたいなと思っております。
 また、地方創生が少し陰に隠れてきたのではないかというように言われておりますが、そうではなくて、地方が元気にならない限り、アベノミクスは成功したとは言えないということだと思っておりますので、アベノミクスを安倍総理とともに始めた私としても、これをしっかりと地方に隅々まで行き渡らせるということができるように、実績を上げていくことが大事だと考えて全力を挙げていく中、タブーにも挑戦していきたいなというふうに思っているところでございます。また皆さん方から御質問があればお答えしながら、そういうことにも触れていきたいと思います。

2.質疑応答

(問)政府機関の移転についてお聞きしますが、地方創生の取組で、文化庁、消費者庁、それから総務省の統計局、中央省庁だとその辺りですけれども、移転に向けていろいろ検証などされていて、8月、今月の末までに具体的に対応をお考えになられるかと思うんですけれども、この政府機関の移転については、大臣どのように意義についてお考えになっていて、どう取り組まれるお考えか聞かせていただけますでしょうか。
(答)この点については、もう既に基本方針は決まっておりまして、地方に移転して成果が上がるものであれば、それは大いに進めるべきだし、また、実験して問題もあるということであれば、それは改めて、ではどうしたら両者の要請を満たすことができるかということを考えていくということでありまして、いずれにしてもこの8月末までに、そうした検証結果を受けて各省がそれなりの結論を出し、また私どもと相談しながら、最終的な決定といいますか、方針を打ち出していきたいというふうに思っております。
(問)地方にはアベノミクスの果実が行き渡っていないとよく言われていますけれども、大臣、地方創生担当大臣として地域の経済活性化に今後どう寄与していきたいか、今大臣がお考えのことがあればお願いします。
(答)そういう声をよく聞きます。聞きますが、私も自分の地元を回っていて感じるのは、効果が目に見えているところとそうでないところのばらつきがあるなという感じをしております。
 例えば私の地元の北九州市の工業団地なんか回ってみて、中小企業の状況を聞きますと、忙しくてしようがない、そういう具合になっておりますし、とにかく人が足らない、募集してもとても来てくれないというような感じで、ここはある意味で効果がはっきりと出てきているかなという感じがいたします。正にそれが、雇用の数字の面で有効求人倍率が全府県で1を上回ったというようなことの象徴だと思いますけれども、一方で中心商店街を回ってみると、シャッター街が依然としてまだ有るというようなところ、あるいは飲食店など商売している人から見ると、お客は決して増えていないというような感じを言われます。
 そういう意味では、私は、はっきりと着実に効果はある程度出ていると思いますけれども、そうじゃないところは他方であるということも事実なので、これをどこまで持っていくことができるかということにかかっています。基本的には、私は、みんなが効果が出てきているなというふうに感じるようになるのは、やっぱり賃金が曲がりなりにも毎年少しずつ上がっていくという状況が広範に見られるようにならないと、それはなかなか難しいなというふうに感じております。これからは、やっぱり賃金上昇をどう地方の地域にも作り上げていくか。賃金が上がってくることによって消費も増え、投資も増えという好循環につながるわけですから、そういう環境をどう作るかが勝負だというふうに思います。
 したがって、私の所掌ではありませんけれども、賃金をしっかりと上げると、最低賃金も上げる、あるいは企業に賃上げを要求するというようなことは非常に大事なことであり、そういうことを規制緩和や、あるいは特区なんかを活用して、この私の分野でも貢献出来ないかなというようなことをこれから考えて取り組んでいきたいと思っているところであります。
 いずれにしても、デフレの脱却あるいは地方へのアベノミクスの効果の浸透というのは、そこにかかっていると私は思っておりますので、個人的には、物価安定目標というより、次は賃金上昇目標みたいな話の政策で全省庁挙げて頑張るくらいのことが必要かなと思っております。これは正に、これから働き方改革が大事になるというところでもありますので、そういうことを念頭に置きながら、私の分野での施策を頑張っていきたいと思っています。
(問)今、賃金上昇が大切であるということをおっしゃいました。それと、所掌される中でも、規制改革や特区等を通じて貢献できればというお話でしたが、例えばどんなようなことが出来そうかというイメージ、何かお持ちでしょうか。
(答)規制改革のことですか。全部やっちゃおうと思っています。
 特区でまだまだ岩盤規制と言われているところ、いろいろございますが、そういう中で、一方で民泊の議論も行われてきたりしております。したがって、特区では逆にその分野でも、もっと従来よりも進めようというようなことも考えられるでしょうし、それから働き方改革に関連して、労働規制がかなりあって、日本の場合なかなか法律も通らないというところがありますが、これは一般的な、全国に通用するところではなかなか通らないところありますが、特区では早くやっちゃえというぐらいのことを考える。あるいは外国人材の登用とか、そういうことについての規制についても、特区はどんどんできるという、そういうことなんかを是非取り組んでいきたいなと思っておりまして、規制改革の担当所と地方創生、特区の担当所と会議を是非一緒にやるぐらいの感じで進めていければなと思っているところであります。
(問)もう一点お願いいたします。
 地方創生のためにも、デフレ脱却が重要であるという認識をお持ちだと思いますが、デフレを脱却するスピードといいますか、2%の物価上昇を目指していくスピード、期限に関してはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
(答)日本銀行は2年をめどにと言っていましたが、もう2年半たったのにできていない状況で、ちょっと延びつつありますね。この辺は、是非、日本銀行にその2%目標達成というのを早くやってもらいたいというふうに思っております。
 デフレ脱却がどういう形をもって言えるかというのは、いろいろ定義がありますから難しいんですけれども、日本銀行が一応来年度中には1%後半という予測を出しておりますから、それは是非達成するようなマクロの面での政策をとってもらいたいなというように思います。
 一方で、先程申し上げたように、デフレ脱却がなかなか進まないことの大きな要因は、賃金がなかなか上がらないということでありますので、賃金を上げてもらうような要請も必要だし、それから制度的に最低賃金とかいうことを考えていく政策も必要じゃないかなと思います。ただ、これは私の所掌自体ではありませんので、そういうことを厚労大臣とも相談しながらやっていきたいなと思います。
 よく、最低賃金を上げたりすると中小企業経営者は大変だという議論がありますが、実は今はそういう議論は経済学界では逆転いたしまして、むしろ逆だと。アメリカの実証研究によっても、賃金を上げたら企業の収益が減って経営が大変になるかというと逆だったというのが出ております。何でかというと、労働市場というのはほかの市場と違いまして、人間が関係していますので、賃金を上げると従業員の士気が上がるんですね。モラルが上がる。離職率も減る。そういうことによって企業の生産性が向上して、むしろ企業はもうけて収益は上がるというような実証結果も出ております。したがって、私は、企業経営者もそういう物の考え方を組み込んでいただけるような、そういう啓蒙というのも必要じゃないかなというふうに思っております。単純に賃金を上げたら経営が出来なくなるという状況じゃないんだということですね。
 これはマクロ経済全体としても、雇用が良くなって、賃金が上がってくると生産性も上がるんですね。みんな忙しくなって頑張る。そうすると生産性が上がるわけで、ところが需要がないと、でれでれとずっと働くしかないというようなことで生産性は上がらないということですから、そういうことが非常に大事だというふうに思います。
(問)現時点で大臣補佐官を置く考えはおありでしょうか。
(答)今考えています。それは幾つかの分野で出来ればなと思っていますが、もう一つ私がやりたいと思っているのが、行政改革の分野で行政事業レビューとか当然やりますが、そのほかに是非私としてやりたいのが、政府における経済統計の整理統合です。各省がそれぞれの統計を持っていて、全く調整がとれていません。その結果、日本のGDP統計というのは、どこまで本当に信用していいのか分からない、そういう状況になっておりまして、これは早くその点についての整理統合、統一というものを図っていかないと、世界の水準におくれて、しかも本当の経済の状況がつかめないということになりますので、麻生大臣が一回、経済財政諮問会議で問題提起して、消費についての数字がいろんな統計で違うじゃないかというような、非常に意義のある指摘をされまして、私はもうそのとおりだと思って、それから問題意識を持って、この分野についてちょっと勉強もしておりました。
 そういうことをやるためには、その専門家を補佐官としてやってもらいたいし、それから地方創生についても、各地域のいろんな実例を知っていて、どういうふうにしたら地方創生のプログラムができるかという専門家も知っていますので、そういう人に知恵を借りたいなというように思って、これから考えていきたいと思います。
(問)基本的には民間から登用されるというお考えですか。
(答)そうですね。
(問)ちょっとくだけた質問で恐縮なんですけれども、大臣、今日すごく派手なネクタイをされておられますが、何か込められた意味があれば教えてください。
(答)これは、私の通常のスタイルであります。大体赤を基調にしているんですけれども、23年前当選したときに、最初に国会で質問に立つときに、私の地元出身のNHKのカメラマンがいまして、その方が、質問するときにちゃんとカメラで撮ってあげるから、ネクタイは絶対赤にしなさいよとアドバイスを受けましてね、テレビカメラ映りがいいというのが赤だそうでありまして、それ以来、だんだん赤が高じていろんな赤のネクタイをするようになっています。まあ、たまには他のもしますが、アメリカのトランプさんを見てもほとんど赤でしょう。アメリカ大統領就任式に行くと、大統領、副大統領は必ず赤のネクタイですね。そんなことです。
(問)農業分野の規制改革についてお伺いします。
 農業分野では、前の規制改革会議の提案が発端になった形で、今、酪農の指定生乳生産者団体制度の抜本的な改革とか、農業生産資材の引下げといった課題がありますけれども、この秋にまた議論が本格化していくと思いますけれども、一部の業者に期待の声は高いと思うんですけれども、一方で、生産者団体から懸念の声もかなりあると聞いています。与党内でもいろんな意見がありまして、そういった意見が割れる問題について、大臣どのようなスタンスで臨まれるかということと、あと規制改革会議の後継組織について、一部、現場の多様な意見が反映されていないんじゃないかという声もありますけれども、この後継組織についてどう考えるかの2点、お願いいたします。
(答)後継組織については、今既にある程度の準備ができておりまして、人選等も含めて早急に結論を出して発足させたいというふうに思っています。しっかりした見識をお持ちの方に持ってもらいたいと思いますし、改革の意欲のある方々にお願いしたいなと思っています。
 農業分野、確かに難しいところがあるんですけれども、だからといって従来の農業のやり方をやっていたら、私は日本の農業は潰れると思っています。したがって、もうこの際、抜本的な改革をやっていかないと農業はもたないというふうに思っていまして、そういう意味では、一時的に生産者は大変だということが起こるかもしれませんけれども、長期的に消費がどんどん減っちゃって売れなくなってしまったら、それは元も子もないわけでありましてね、私は当選したときから、農業分野については一貫した考え方を持っておりまして、それは日本の農業を生き残らせるための唯一の施策は、農政を直接所得補償方式一本に変えるべきだと。いわゆるヨーロッパでいうデカップリングですね、それ一本に変えるべきだと。そして、市場価格の決定に全てを委ねるということにしたほうがいいと。
 というのは、これまでの農業政策というのは、供給量とかをいじって価格を操作することによって補助金とかでやってきたわけですね。だけど、価格を維持したからといって、では農業がよくなるかというと、消費が減っちゃうわけですから、需要のほうを無視してしまったらどんどんじり貧になるだけであって、農業は衰退していきます。今、その状況が起こっているんだと思いますけれども、そういう時に産業保護政策をするというのは、経済理論的に唯一認められるのは直接支払制度、直接補償制度なんですね。
 私は、民主党政権は私のアイデアをとったんじゃないかと思ったぐらい、良いことやるなと思っていたんですが、彼らが完全に分かっていなかったのは、それを価格に関係させちゃった、直接支払いを。だからだめなんです。価格に関係させない広さとか条件とかで基準をつくって、そして支払いをして、あとは自由ですよというふうにやれば、最低限の所得は得られますから生き残るところは出てくるし、それ以上にやりたいという人はどんどん広げて競争に勝っていくということが選択できるわけでありましてね、私、ずっとそれは言っているんです。
 最初は、農業団体の人たちは、何言っているんだという話でしたが、最近は、悪くないなという感覚ですね。それをやれば、あらゆる規制、農業についての保護政策というのはどんどんなくしていくことができると私は思っておりまして、これは農水大臣の所管でありますから、是非、山本有二新農水大臣としっかり相談しながら、小泉進次郎さんにも言ったんですけれども、まだ彼もよく分かっていないみたいで、是非農水部会で発言してくれと言っていましたけれども、なかなか出られなくて出来なかったんですけれども、これから有二さんと、二・三コンビで少しそういうことを変えていくようにしたいなと思います。そうじゃないと、将来の日本の農業はありません。
 生乳問題についても、いろいろ問題がありますが、これはある程度の議論がされておりまして、また与党内の議論も踏まえながらやっていきたいと思いますが、基本的な物の考え方は、私は農業政策についてはそう思っています。だから、生き残れるように最低限の補償をするよ、だけどそこから先は市場経済で行くんだと。
 それから、会社経営でいいじゃないかという議論を私は昔からしていまして、農家の人たちは、農生連の会合とかでもずっと言っているんですけれども、非常に抵抗が強いんですね。だけど、会社員になって土曜日、日曜日休んで、給料をちゃんともらえたらいいじゃないかと言ったら、それもそうだなと言う人が結構増えてきましたね、最近ね。税金の心配もないしということで、問題は、勝手に農地を処理されたら困るでしょうという話ですが、そこは当然ですから、そういうことはないようにするという形で、しかし会社経営としてのいろんな知見を活用してやっていくというほうが、必死で市場開拓したり頑張っていきますから、そっちのほうがいいんじゃないかと個人的に思って、経産副大臣のときに全国でそういう農業でやっているところないのかなといったら、宮崎県の都城の食品会社でしたが、宮崎県、あそこは、米は出来ないんですけど、野菜を中心にやるんですけど、完全に企業経営で成り立っています。
 ただし、かなりの大規模でないと出来ないということでありまして、その人が言っていましたけれども、15ヘクタール以上あったら、全国どこでも自分は成功させる自信があると言っていましたけどね、どんなことをやるかといったら、大体、農業学校を出たやつは使い物にならぬと、一番良いのは商業学校を出てきた人が良いんだと、経済学部出てきた人。彼らに軍隊用のパソコンを与えて、朝、作業に来たら入るときに全部データを打ち込んでいく。で、過去15年間ぐらいの天候とかいろんなデータがあって、いつ種まきをしたら良いかというのは、もうデータで出てくる。それからセンサーで、地中に、アルカリ性が幾らとか何とか、そういうのを分析するやつを入れておきましてね、そういうのを分析して、いつ種まきしたら良い、いつ何をしたら良いというのが大体出てきて、それに応じてやると。全部パソコンで管理して、農薬はどの農薬を幾ら使いましたと全部管理する。そういうことができる人間が一番良いと。で、ちゃんとやっていますね。
 農業も、やっぱりそれぐらいのところまで行かないと、本来の日本の産業を支えるようにならないんじゃないかなと思っていましてね、そういうことができると、日本はすごい農業大国になり得ると私は確信しています。だけど、多くの兼業農家というか、零細農家がありますから、そういう人たちにも最低限の所得を補償するという形の政策がまずあって、安心した上でそういう方向に持っていくということがいいんじゃないかと思います。
 ちょっと所管を外れてしまいましたけれども、個人的な見解で申し上げます。

(以上)