石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年2月9日

(平成28年2月9日(火) 9:00~9:21  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日の閣議で、当方に関係する案件はありませんでした。

2.質疑応答

(問)実質賃金についてお伺いします。昨日発表された毎月勤労統計調査では、2015年の実質賃金が4年連続のマイナスとなりました。なかなか個人消費の回復につながるという環境ではないと考えますけれども、大臣はこの結果についてどう受け止めているのか。あわせて、今後春闘が本格化しますけれども、更に賃上げに向けて環境整備などについてどうお考えかお聞かせください。
(答)毎月勤労統計調査がおっしゃったような状況であることは承知しています。実質賃金は前年比でマイナス0.9%ですが、実質賃金の減少については二つのことが考えられます。国会で総理も答弁されており、私も答弁しているのですが、デフレ脱却に向けて物価は上昇しているということ。もう一つ、景気回復により、有効求人倍率を見ても、就業者数を見ても、雇用が増加する中で、パートで働く方の数が増えています。あるいは定年退職してある程度の給与をもらっていた方が、一度辞めた後働かれているので、賃金が下がるわけです。ですから、1人当たりの賃金というものは低く出る。そういう背景はあると思います。
 名目賃金で見ると、前年比は0.1%増、2年連続でプラスです。基本給を示す所定内給与で見ると0.3%増というのは、10年ぶりの数字です。いずれにしても、総理が国会で答弁されておりますが、総雇用者所得で見る方が、よりマクロの分析になるのではないかと思います。次の春闘でしっかりと賃上げにつなげていくことが消費を喚起する上で非常に重要です。
 先般行われました経団連と連合のトップ会談では、経営側から名目GDP3%成長への道筋も視野に置きながら、各社の収益に見合った積極的な対応を図るという前向きな考えも示されておりますので、しっかりと見守ってまいりたいと思います。
 政府もいろいろやっています。賃上げ促進税制、これは24年度ベースで刻みをすごくなだらかにしました。税額控除1割というのは、税制の世界ではかなり思い切った試みです。賃上げ分の一割を税額控除する制度です。2,000億円を超える規模で減税になっているということは、賃上げをやってくださっている企業、これは中小企業も含めてですが、それだけあるということの証ではないかと認識しています。
(問)外為市場で円高は進んでおりまして、現在1ドル115円台という状況にあります。年度末が近づく中で企業業績への影響ということも懸念されると思うのですけれども、大臣はこの現状についてどう受け止めていらっしゃいますか。
(答)原則として為替相場については、これまでもコメントは控えさせて頂いていますが、一般論として言えば、円安に振れて設備投資が図られるという方向は日本の経済にとってはプラスです。けれども、そうではない状態が出てきている原因を考えますと、外的な要因が主ではないか。原油安もバレル30ドルを切る、切らないということになっています。こんなことは1年前の想像の外の世界です。あるいは中国を含む新興国の景気の減速といったものも思った以上です。また、アメリカがゼロ金利から昨年、一歩踏み出したのですが、原油価格の低迷によってシェールガスの部分が必ずしもうまくいっていない。そういういろいろな要因があって、投資の行き先として比較的安全であると投資家が考えているところに資金が回るという、一般論にのっとった行動が顕在化していると見ることもできるのではないでしょうか。
(問)2点お伺いします。
 1点目は日銀のマイナス金利政策についてです。マイナス金利の導入決定からもう1週間余りたちましたが、一時円安株高に振れていたのがもとに戻り、更に円高が進んでいます。マイナス金利には副作用もあると言われていまして、実際預金の金利なども下がっていますが、この状況についてまずどうお考えになるのかというのが1点。
 もう一点は、消費税増税の判断の時期についてです。昨日内閣官房参与の本田悦朗さんがBS日テレの番組で、消費税増税は凍結するべきではないかという発言をされました。今回の10%の増税では軽減税率も導入され事業者負担もありますので、かなり早めの判断が必要かと思われますが、増税する、しないの判断はいつごろまでにするべきとお考えでしょうか。
(答)今回の日銀のマイナス金利政策は、従来の量と質に加え、0.1%のマイナス金利を加えたものです。ボリュームは10兆円から30兆円、限られた部分に限定されている。デフレ脱却に向けての強い決意の現れであったということは間違いないと思います。金利水準が低下するという表面的な効果はもう出ていると思います。それによって期待されることは、設備投資が増加するなど、そういう結果に現れるわけですが、まだ1週間ですので、金利水準の低下という表層的な結果が出ている段階と認識しています。現時点としては、もうしばらく、その1段先の効果がどうであるかということを見守っていくということが肝要なのではないかと思っています。
 2点目の消費税の増税についてですが、本田参与がテレビで何とおっしゃったかというのは、拝見していないのでコメントを差し控えさせていただきますが、前回法律から景気判断条項をとりました。ということは、麻生内閣のときに起こりましたリーマンショックや、あるいは菅内閣のときに起こった東日本大震災、そういうようなものがない限り、来年4月に引上げを行うことになるというのが法律的な、一般的な解釈だと思っています。その中で、軽減税率を導入することによって影響があるというお話です。就任の会見のときにお話をさせていただいたのですが、私は、大臣に就任する前まで1年半近く、党の中小企業・小規模事業者政策調査会の会長として全国を回ってまいりました。中小業者の方々はインボイス制度が事務負担になるということで反対の方が多かったと思います。その一方で、税の公平・公正性を担保する上ではインボイス制度は必要だという方も大勢いらっしゃいました。ですから、軽減税率を導入するときに、いきなりインボイスを導入するのではなくて、経過期間をとらせていただきました。また、補正予算、あるいは予備費などを使いまして、これは1,000億円のオーダーで、レジの改修やソフトの改修など、あるいはB to BだけではなくてB to Cも入るわけですので、事業者の方々の負担の軽減に万全抜かりなく、これは中小企業庁が中心になって、とらせていただいている。ですから、導入のときの大きな混乱はないものだと考えています。
(問)円高でなくて株安についての大臣の受け止めをお願いいたします。背景等をどのように御覧になるのか、この先どうなるのかということとをお願いします。
 また、日本企業はこれまで企業が過去最高の収益を上げてきましたが、12月決算を見ますと相当内容が悪化してきております。この背景をどう御覧になるのかお願いいたします。
 3つめですが、日銀の先日のマイナス金利政策が、株・為替の世界では必ずしも効果を上げていないという見方がありまして、特に株式市場では、金融政策はそろそろ限界に来ているのではないか、もはや解散や消費税率引上げの先送りぐらいの大きなニュースがないと、もうポジティブに反応しないという見方も出ているのですけれども、御所見をお願いします。
(答)先ほど為替に関する質問のときにお話ししましたが、現行の株価についてはコメントを差し控えさせていただきます。ただ、マーケットを注視しているということを、お話しさせていただきます。
 その背景は、先ほどの為替に関する質問への回答の中でお話ししたように、バレル30ドルというのは、1年前にはなかなか想像できなくて、50~60ドルになるのではないかというのが大方の見方ではなかったかと思います。そして中国経済の減速というものをどう見るのか、そこのところも不安定要素です。
 また、産油国にお金が戻っている、すなわちオイルマネーが外に出ていかなくて内に戻っている。資源価格の下落は、鉱物を産出して国のなりわいを立てているような国にとっては、数字で見ると大きく影響している。
 国内要因は、アベノミクスの効果というものは、トレンドで言うと全く変わっていなくて、日本経済のファンダメンタルズは依然確かなものと認識しています。もちろん景気ですから、上昇局面にあっても小さなでこぼこはありますので、過剰な心配はしていません。
 ただし消費に限って言うと、暖冬などは意外に効いています。70年ぶりの暖冬で、今年は1月10日ぐらいまでは非常に暖かだったのが、その後雪害が起こるといった、予想の範囲を超えた天候でした。昨年の夏も思い返してみますと、国会をずっとやっていましたけれども、余り暑くありませんでした。そうしますと消費部分で冷暖房、衣料、あるいは飲料品、こういう身近なところで影響が出るというようなこともあるのではないかと思っています。
 いずれにしても、冒頭お話をしたとおりマーケットの状況を、注視していくことに変わりはありません。
(問)昨日日銀の政策決定会合の際の議事録が公開されまして、その中でマクロの面で、実体経済への効果の割に、市場機能や金融システムへの副作用が大きい。効果と副作用のバランスを欠いていて、今、市場の方で実際に副作用のほうが大きいのではないかという意見があります。これを一般国民に置きかえてみますと、ゆうちょが昨日貯金の金利を引き下げたりとか、そういった悪影響といいますか生活に関わってくる部分が、出始めているのですけれども、ポジティブな面は先ほど大臣から、設備投資や時間を見ていこうという話がありましたけれども、こういった国民の不安、悪影響の部分に関しては、どのように捉えられていますでしょうか。
(答)金利水準に表層的に現れているというお話をしました。それによって二次的な影響がどうであるか、すなわち投資が増える、あるいは金利が下がることによってお金を借りやすくなる、その裏では預金者の方々の金利が当然少なくなる。それがどういう影響があるかというところまでは、まだ現れていないのだと思います。
(問)預金を預けている人にはそういう不安もあるかもしれないけれども、様子を見ていってくださいということでしょうか。
(答)金利が下がるという不安なのだと思います。しかし、今の金利動向は0.0に2や3がくっついてくるという水準であると、国民の皆様は、当然預金を預けていますので知っています。国民の皆様がお預けになっている金利はマイナスにはならないだろうと日銀総裁がおっしゃっていました。私もそのとおりだと思います。そんな中でこれから国民の皆様がこれについて御評価をいただく、その二次的な影響が出てくるという状況ではないでしょうか。
(問)大臣はテレビ局の出身でいらっしゃるので関連があると思ってお聞きします。
 昨日の衆議院の予算委員会で民主党の奥野総一郎議員が、安倍政権に批判的とされるキャスターが番組降板をするということを指摘した上で、電波停止が起こり得るのではないかと指摘したところ、高市総務大臣が、政治的に公平であることを定めた放送法の違反を繰り返した場合に、行政が何度要請しても全く改善しない放送局に何の対応もしないとは約束できない、将来にわたり全く可能性がないとは言えないと述べたという答弁があったのですけれども、この答弁がかなり波紋を呼んでいまして、マスコミ人としてはかなり強い表現だと思っているのですけれども、テレビ局出身の大臣としてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、コメントがあれば教えてもらえますか。
(答)その話は今初めてお聞きした。日本の良いところは、自由である、民主主義国家である、そして言論の自由が保障されている。そして法治主義である。法のもとにみんな平等であり、法によってこの社会が成り立っている。私は高市総務大臣が何と言われたかは分かりませんが、そこの部分は理解されていると思います。

(以上)