石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年1月29日

(平成28年1月29日(金) 10:34~10:56  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 今日は初めて皆さんの前でお話をさせていただくことになりました。経済財政政策担当を拝命いたしました石原伸晃です。経済政策、特にアベノミクス、この3年間、日本の雰囲気が大きく私、変わってきたと実感してます。
 また、TPP前大臣の甘利先生が本当に御苦労されて、あの難しいマルチの会合を取りまとめられた。そんな中でこの二つの大きな政策、特に「新三本の矢」の一番最初は、私どもがしっかりと考えていかなければならないし、国民の皆さんにとって大変重要だと思いますので、全身全霊を傾けて、この問題に取り組ませていただきたいと思っています。
 私は、この大臣を拝命するまで2年間、党の方の中小企業調査会、小規模零細事業調査会の会長をさせていただいてきました。正直申しまして、内閣ができて1年たって、環境大臣の後ですけれども回らせていただくと、地方に行くと、あるいは、本当に2人、3人、5人以下の小規模零細の方々の会社を回らせていただくと、「おお、石原さん、ちっともアベノミクスは俺たちのところまで来てないよ」、そういう声を多く聞きました。それではいけない。中小企業や、県によっては、5人以下の小規模零細の企業が全雇用の2割、3割を占めているというところがあります。そういう人たちにどうやって光を当てるのかということで、この2年間取り組んできました。その成果が出てきたと私は確信しています。
 先週は熊本に行ってきました。移動中小企業調査会という形で10人ぐらいの仲間とともに幹部の先生と一緒に行ってきて、各業界の方々の話を聞かせていただきました。この2年間中小企業政策で、中小企業庁だけではなくて、いろいろな補助金等々を用意しました。一番びっくりしたのは、ある人口5万の市の方が話しで、交付金を1億円以上活用された。こんな話も聞かせていただきました。
 これからはこの経済の好循環の流れを、これまで以上に多くの方々が実感していただける経済をつくるために、そして、アベノミクスをしっかりと完遂していくために頑張っていきます。
 閣議では、当方に関係する案件はございませんでした。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)まず足もとの景気動向と景気対策ということで御所見を伺いたいのですけれども、今朝方幾つか景気関連の指標が発表されまして、消費、生産、物価等といずれも弱い指標でした。また、マーケットは年明け以降軟調に推移しておりますけれども、こうした足もとの景気動向をどのようにまず御覧になっているかということ。それから、それに対してどのような対策が必要とお考えで、実際どのように対応していきたいとお考えか。
 今、冒頭に経済の好循環の流れをできるだけ多くの人に届けたいという抱負をいただきましたけれども、もう少し具体的にお考えのことがあれば伺えますでしょうか。
(答)労働力調査等、総務省の統計は皆さんすでにお持ちなことを前提にお話をさせていただきます。例えば、よく消費が弱含みではないかという話をされます。昨年の天気を思い出すと夏が早く来ました。夏の国会は長かったのですけれども、割と楽に夏は過ごすことができました。冬も暖かかった。こういう天候の要因というものは、やはり消費の一つの大きな分野である衣料などに大きく影響してくると思います。
 また、原油価格がバレル100ドルになる、あるいは、小売価格が1リットル170円、離島なら200円といった状況の中で、今100円を切っているわけです。もちろんこれは、経済全体には、総じてプラスに働いている。電力料金に影響してきますし、地方で車を利用される方々のコストは下がってくる。そういうことを考え合わせますと、日本経済のファンダメンタルズというのはそんなに変わってないですけれども、やはり様々な外的な要因が影響していると捉えています。ですから、がっくりする必要は全くありませんし、冒頭にお話をさせていただいたように、やっと「アベノミクスがいいよ」と言ってくれる声を、地方で聞けるようになってきましたので、ここからはやはり好循環を更に広めていく。
 指数について、例えば雇用をどう見るとか、あるいは鉱工業生産指数をどう見るとか、個々のことは逆に聞いてください。総じてそんなことだと思っています。
(問)昨日の甘利前大臣の辞任を受けてなのですけれども、2012年の第二次安倍政権発足後、主に政治とお金の問題で閣僚が相次いで辞任しています。この現状をどう見ていらっしゃるかということと、政治の信頼回復に向けて、どのような取組が必要だと大臣は考えていらっしゃいますでしょうか。
(答)甘利前大臣はアベノミクスの司令塔として、本当に素晴らしい仕事をしてきてくださった。内閣でも2年近く御一緒させていただきました。席が隣でしたので、本当に苦労され、TPPは本当に苦労されていて、特に舌ガンを患われて、そのときはしばらく閣議にも出られない。そんな中、海外に出ていって難しい交渉を取りまとめていただいた。ですから、本当に素晴らしい業績を残してくれた。それに恥じることのないように、至りませんけれども、私も一歩一歩積み上げていかなければならないと思っています。
 甘利前大臣の政治と金の問題については、私も記者会見を拝見させていただいたのですけれども、会見で甘利前大臣が述べられたことに尽きるのだと思います。
 そして、冒頭御質問があったとおり、ファンダメンタルズは変わっていないですけれども、株価が年初来乱高下したり、バレル当たり30ドルを切ったりするような事態は、誰も予測できなかったと思います。国民の皆さん方も不安に思っていらっしゃると思います。しかし、アベノミクスはしっかりと成し遂げていきます。冒頭申しましたように、全国津々浦々の方々が「よくなったな」と思っていただけるような状態をつくるために、私ども安倍内閣は一丸となって進んでいきますので、その政策の成果をもって、御理解をいただきたい。今はこんな気持ちです。
(問)甘利前大臣の辞任に関連してお伺いいたします。
 甘利前大臣は建設会社からの金銭授受を認めた上で、昨日辞任を発表されました。大臣に関しても以前大臣を務めていらっしゃいましたが、そのときに大臣室や事務所で直接金銭を受け取るようなことはあったのでしょうか。
(答)そういうことはございません。
(問)大臣は石原派の会長を務めていらっしゃいます。森山大臣に続いて会長自ら大臣に就任されました。派閥の会長としての御意見というか、御所感をお願いいたします。
(答)誤解をされたら困るのですけれども、派閥というのは昔の派閥とは全く持つ意味が変わってきているということは政治部の方は御存じだと思います。
 私も御縁がありまして、近未来政治研究会という政策集団を率いらせていただいて、その中で政策提言を行ってきました。各政策分野に強いメンバーがそろっています。今、森山大臣の例を出されましたけれども、森山大臣は農政に大変通じた方です。あるいは、厚労分野に強い方、ドクターが近未来政治研究会には2人います。あるいは文教に強い方もいる。学校を経営されている方もいる。その仲間の中で培った政策を党に、また今は国政で、安倍内閣で2人の閣僚として共に仕事をさせていただいております。派閥などそういうものに関係なく、私たちは日々国家国民のために尽くしているつもりです。国家国民のために、政治があるということを忘れずに、これからも2人で、また安倍内閣全体として頑張っていきたいと考えています。
(問)大臣は野党時代の自民党幹事長のときに、谷垣総裁を支えていらっしゃって、社会保障と税の一体改革に深く関わっていらっしゃった。ややもすると、アベノミクスは財政規律をあまり省みないというか、そういう姿勢を指摘されることがあるのですけれども、今のアベノミクスに対する甘利前大臣の路線に対して、基本的には継承されるということでいいのか。社会保障と税の一体改革の路線というのは、このアベノミクスと整合的であるとお考えになっていらっしゃるのか。その辺の見解を教えてください。
(答)後段の税と社会保障の一体改革については、軽減税率の財源をまだ決めていない。そこを捉えて多分御質問されていると思います。御存じのことだと思いますけれども、3党合意の時、私は幹事長でした。総合合算制度、これは4,000億円程度の規模です。給付付き税額控除、あるいは軽減税率。消費税というのは、年収の低い人にとって負担が重くなります。消費性向の問題で、所得分位が第1の方々、住民税を納めてない世帯で言いますと、消費税の負担が重くなります。ですから、それをこの3つの方法のどれかで解消していこうというのが3党合意です。
 私ども自民党と公明党の連立政権は、軽減税率という制度、ヨーロッパで付加価値税の割合が高い国々でおよそ8割ぐらいが実施しているこの制度をとらせていただきました。
 これも御質問の中に多分あると思うのですけれども、最初は生鮮食品だけだという議論でした。生鮮食品ですと、味噌などは駄目なわけです。醤油も駄目になる。では、加工品まで軽減すると今度はボリュームが増えてくる。では、外食をどうする。ヨーロッパでは酒類を除いて、外食を除いて、今の食料品プラス飲料という形が大体スタンダードの形です。ですから、この案をとらせていただいた。そういう意味においては、3党合意の枠の中に私は入っていると思います。
 2兆8,000億円の社会保障の充実分、これを減らすということは全く考えておりません。そこでこの質問になると思います。なんで今、財源を決めないのだという話ですけれども、これは来年4月1日が消費税10%への時期です。そのことを考え合わせると、それまでに恒久財源を確保するということを明確に書かせていただいておりますので、穴が開くことはない。毎回どこかからお金を持ってくるようなことはないと考えています。
 その意味では、アベノミクスと税と社会保障一体改革の離反というものは、私はないと、そういうふうに解釈しております。
(問)昨日、総理から何か御指示があったのかどうかということと、それからTPPについて、担当されるのかと思うのですけれども、その辺の答弁が、国会の審議が本格化するのですけれども、その辺についてのお考え、意気込み、その辺を教えてください。
(答)甘利前大臣が、これはかなり難しい交渉だったと思います。私も党の総合農政調査会の顧問をしていたのですけれども、途中経過が何も入ってこないのです。最後に出てきて、重要5品目以外のものでも我々が全く知らない驚くようなものがあったことは事実です。しかし、それに対して、それをつくっている農家の方々が、不安に思うことのないようにという手当ては、27年度の補正予算の中にも入っていますし、新しい、これから予算委員会で議論をされます、本予算の中にも入っているわけです。こういうものをもって、国民の、特に農家の方々の不安というものを払拭していくと、そういうことになると思います。
 そういうことをきめ細かく国会の場で、「こういうものについてはこうなります」と、説明していく必要があります。そしてTPPついて私は若干誤解されているような気がするのです。TPPによって、これまでの守りの農業から日本のいいものを外に売っていくことができます。先程、熊本のいろいろの産業界の方々とお話ししたことを紹介しました。そういう地方の中小・零細企業でも、例えば包丁とか、有名ですけれども眼鏡とか、本当にびっくりするようなものあるのです。ただ、それを単独で海外で販路を築いて売るということはなかなか難しい。けれども、今度は農商工連携ということを書かせていただいております。新輸出大国です。そういうものを柱として、TPPによって域内の経済全体をかさ上げしていこうと。TPP参加国はGDPレベルで言ったら3100兆を超えるわけです。人口で言っても8億ぐらいになるのですか。参加国は12カ国ですけれども、もう既にフィリピンが入りたい、タイが入りたいと、そういう話が出ています。そうしましたらまた広がります。もう日本は車の関税はとっくの昔になくなっている。しかし、意外に知られていないのですけれども、例えば背広をアメリカに輸出すると、私もこれは知りませんでしたけれども、3割ですよ。10万円のものが13万円、1,000ドルのものが1,300ドル、これは大きいです。こういうものがなくなるわけです、一つの例ですけれども。それによってビジネスチャンスが広がります。個社の例ですけれども、ある地方のワイシャツ屋さんがニューヨークでワイシャツを売っていて、すごい人気です。ただ、値段は高いわけです。この値段が下がる。これもよく出ますけれども、一例はタオルです。昔はアメリカの綿製品というのはすごいクオリティーで、鹿の子のシャツなんて高かったですけれども、今は日本のタオルのクオリティーの高さを、世界の方々が認めるようになりました。また、農業の分野についても、和食が世界遺産に登録されました。今すごいブームです。インバウンドだけではなくて外国でも、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、どこでも日本食がブーム。こういうところにチャンスがある。日本の少子高齢化社会。誰もが経験したことのない社会の中で、経済を好循環に導いていく一つの大きなツールが、私はTPPだと思います。それを前大臣が本当に苦労されて大筋合意、そして来週には協定の調印式というところまで来たわけです。これを国会の論戦を通じてこういうふうになるのだと、決して日本の農産物がつくれなくなるようなことではないのだと、そしてまた、中小企業の方々も海外に展開するチャンスがあるのだということを説明していきたいと、こんなふうに考えています。
(問)今お話にあったTPPの調印式ですが、石原大臣は御出席にならないというようなことも聞いておるのですが、実際そのあたりどうされるのか、御出席されないとしたらどなたが出席されて、それは日本にとってどう影響があるのかないのか、どう御覧になっているのか教えてください。
(答)甘利前大臣がここまで御苦労されて取りまとめたものです。メンバーも甘利前大臣と旧知の方ばかりですので、甘利前大臣が出席していただければどんなによかったかと思いますが、それを言うのはせんないことですからもう申しません。そんな中でさっきも申しましたとおり、この事態によってアベノミクスが停滞するのではないか、経済・財政はどうなるのだという不安を、国民の皆さんが感じていらっしゃることは、昨日テレビのニュースを見ていても明らかだと思いますので、そういうことにはならないように、ともかく補正予算を通していただきましたので、本予算をしっかりと審議をしていただいて、28年度の97兆円の予算を一日も早く通すということが、一つの大きな命題です。
 そんなことを考え合わせますと、予算委員会が来週スタートしたときに、特に私は途中でこのように就任したわけですので日本を離れていいのかと、そういう思いを持っていることは事実です。その場合は、しかるべき方に出席していただいて、甘利前大臣が取りまとめていただいたこのTPP協定に日本政府を代表してサインしていただくことになるのだと思います。人選についてはこれからいろいろ、今もやっておりますけれども、関係者の方々と相談をさせていただいて、決定していくと思います。

(以上)