石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年5月10日

(平成28年5月10日(火) 8:58~9:15  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 少し長くなりますが、冒頭幾つか申し上げます。
 まず、米国出張についてであります。5月5日、ワシントンD.C.のDMOでございます、Destination D.C.を訪問いたしました。国ごとの特徴を踏まえた詳細なマーケティングに基づくきめ細かな観光プロモーションについて話を聞き、意見交換を行ったところであります。また、緊急事態管理庁FEMA及び国土安全保障省DHSをそれぞれ訪問いたしました。FEMAの米国における位置付け、米国における緊急事態の対応等について先方の話を聞き、意見交換を行ったものであります。
 6日は、これは政務になりますが、随分報道もあったようでありますが、笹川平和財団USA第3回年次安全保障会議におきまして、「日本の国益と国際的役割」についてお話をしたものであります。
 前段は地方創生のお話でございまして、これからの我が国の政策のキーワードは持続可能性と多様性であるということ。そして、それにおいて米国における普遍性というものは維持されるべきものであるということを申し上げたところであります。このことは地方創生におきましても日米関係においても同様だという趣旨で発言をしたものであります。
 その後、住宅都市開発省HUDでカストロ長官と面会をいたしました。熊本地震に対する支援への謝辞を申し上げますとともに、今後の高齢化社会問題への取組、あるいは災害復興について意見交換を行ったものであります。
 その後、ワシントンD.C.から車で約1時間ぐらいだと思います。ライダーウッドというCCRCを視察をいたしたものであります。これは見なければ分からないのですけれども、実際CCRC、もちろん我が国において「ゆいまーる那須」でありますとか、「シェア金沢」でありますとか、そういうものは見てまいりましたが、東京ディズニーランドとほぼ同程度の広大な場所であります。そこに高齢者の方々2,400人が住まっておられると。働いている人も1,200人だか1,300人だか、そういう方々が働いておられるというような極めて大規模なCCRCであります。百聞は一見にしかずというものでありまして、なるほどこれがアメリカのCCRCというものかということが非常に新しい発見というか、今まで見たことがないものを見るというのは、それなりに大変な新鮮な驚きをもってこれを拝見いたしたものであります。
 そこにおいて、施設の中をずっと見てまいりました。また、その後、もちろん国籍は米国だと思いますが、日本人の入居者の方々7名、全て女性でありましたが、お話を承ることがございました。入居者の方々は平均年齢が80歳代と比較的御高齢であります。また、何を富裕層というかというのはまた議論のあるところですが、比較的豊かな方々を対象としている等々、私どもが考えております日本版のCCRCとは異なる面もございますが、極めて印象的であったのは日本人の女性の方々とお話をしておって、こういう発言がありました。「ここは天国である」と。「仮に天に召されて天国なるものに行くことがあったとしても、これ以上のものはない」と。「今、自分が暮らしているこのCCRC以上のものがあるとは思えない」と。また、「生まれ変わったらば、ここで暮らしたい」ということを本当に確信を持ってお話をされておりました。
 実際日本の高齢者の方々のいろんな施設、働いておられる方々は本当に懸命に働いておられるわけですし、そこでお暮らしの方々も、そこにおける暮らしというものを満足しておられるかどうかは一人一人聞いたわけではありませんが、現状考えられることを政府としても、また経営者としても、あるいは自治体としても、努力をしているわけでありますが、このアメリカのCCRCというのは本当にいる人みんなが笑顔である。車いすに乗っておられる方も、歩行が困難な方も、みんなが笑顔であり、そしてまた、働いている人たちも生き生きと働いているということに強い印象を受けたものであります。今後、日本版のCCRCを設計するに当たりまして、極めて参考になるものであったというふうに思います。
 翌5月7日、ニューヨーク市内のマディソン・スクエア・ガーデン、ブライアント・パーク、この二つを視察をいたしたものであります。マディソン・スクエア・ガーデンというのは御存じかと思いますが、ニューヨークの駅の真上にございます。東京駅の真上にというのか、そこにあるというような、そういうようなイメージを持っていただければよろしいかと思いますが、このマディソン・スクエア・ガーデンはスポーツ、エンターテインメントを兼ねました民間の複合施設が町の中核となり地域経済の活性化に大きく寄与しているというものであります。これも日本では見られないものでございました。もちろんさいたまスーパーアリーナですとか、横浜アリーナですとか、あるいは日本武道館ですとか、そういうものはございますが、考え方が相当に違っているという、そういう強い印象を受けたものであります。
 その後、ブライアント・パーク、これは日比谷公園の4分の1ぐらいの面積でございますが、ビジネス改善地区、Business Improvement Districtの制度を用いまして周辺の不動産所有者から資金を集めて、公園を中心として、そのエリアの維持管理などを行い町のにぎわいを創出しているというものであります。ここは30年ぐらい前はとても恐くて、このブライアント・パークには入れないと、非常にすさんだ、犯罪の多い地域でありましたが、そこがBIDの制度を用いて市民の憩いの場に変わり、にぎわいの創出に寄与しているということにも強い印象を受けたものであります。伊藤補佐官の下でやっておりますが、エリアマネジメントの推進方策について6月末までに中間取りまとめを行うということになっております。この中間取りまとめにも大いに参考になるものというふうに考えております。今後とも関係省庁と連携し、取組を推進してまいりたいと思っております。
 それから、本日10日でございますが、「第5回まち・ひと・しごと創生担当大臣と地方六団体の意見交換会」を開催いたすものであります。17時から8階の特別大会議室において行います。これは地方創生に関します重要課題に国と地方が連携・協働して取り組むため、政務4役が地方六団体の長の方々から直接御意見を頂くものでございます。平成26年9月に第1回を開催してから、今回で5回目ということに相なります。まち・ひと・しごと創生基本方針を策定するものでございますが、そこに向けましてそれぞれの六団体の長の方から御意見を承り、これを反映をしていきたいというふうに考えておるものであります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)訪米でアメリカのCCRCを視察されてきたということなんですけれども、日本人女性が、ここは天国という発言があったということで、具体的に何が利用者の満足度につながっていると感じたのかということ、それを日本版CCRCにどう反映可能かということをお願いします。
(答)それは日々やることに事欠かないということだったと思います。2,400人の方々が暮らしているわけですが、いろんなサークルが二百数十あるということでありました。日本人女性の中にはお琴の先生もおられましたし、あるいは今でもアメリカの議会図書館で、かつては正職員だったんですが、ボランティアとして働いているとか、サークルがたくさんあると。自分の好きなことが好きな人とやれるということ。そしてまた、地下鉄もありますし、おられる方々ほとんどが車をお持ちで車を運転している。80代の女性でも私、毎日運転しているわみたいなことでありましたが、ワシントンD.C.が車で行けば1時間弱ですので、そこでいろんなことが出来る。いろんなサークルがある。毎日毎日やることがたくさんあって充実した日々だという感じでした。そうおっしゃったのはほぼ80代の女性です。最高齢の方で、90歳という方もいらっしゃいましたが、矍鑠(かくしゃく)としてという言葉が適当かどうか分からないが、本当に人生を楽しんでいるということでした。
 そこのスタッフの方々も、そこにおられる方々の人生を楽しくするために一生懸命働くんだということで、時々私、講演で申し上げることがありますが、長久手市の吉田市長が「きょういく」と「きょうよう」のまちづくりだと。きょう行くところがある、きょう用があると。自分が自己実現をする、そういう場所と時間がそこにはあるということで、CCRCを作るに当たって、現役の人生というものをリタイアした後も本当に自己実現が出来る、日々、本当に充実している、そういうようなものをどうしたらつくれるかということは非常に大きな課題であるというふうに認識しておりますし、また、それが現実に存在するということに非常に大きな気付きを得たものでございます。
(問)今のCCRCの関連なんですけれども、かなり大規模なものだったということで、そこがいろんなサークル活動がたくさんあったりとか、ボランティアとして働いたりという、規模がある程度可能にするということもあるかと思うんですけれども、日本版を整備するに当たって、そこの規模と質のバランスというのはどういうふうにお考えなのかということと、今の設計では自治体のほうが地域再生計画を作って、そこに国が計画を認めていくという形になってくると思うんですけれども、入居者の生活の質というのも地域再生計画を認める上で大きく関わってくることになるんでしょうか。
(答)第一点については、楡周平さんの「プラチナタウン」というのをお読みいただいた方もおられると思いますが、そこにおいて非常に大規模なものが構想されていたと。主人公の町長さんの言を借りれば、大きな高齢者向けのテーマパークを作りたいんだということでした。やはり一定以上の規模というものがあることによって、そこにいろいろな出会いがあり、そして集まりがあり、そして、いろんな人生の発現の場所、そのためには一定以上の規模は必要なのかもしれないということでございます。しかし、それを絶対的な要件としているわけではございませんけれども、私自身がなるほどねと思ったのは繰り返しになりますが、数が多いことによっていろんな楽しみの人生の充実の場がたくさんできるということですし、いろんな出会い、例えば100人だとすれば、それは100人が悪いといっているわけではないけれども、100人のお付き合いしかないと。それが2,000という規模になりますと、いろんな人といろんなお付き合いが出来るということだと思います。そうすると、そういうものを実際に我が国でやっているところはないのであって、もちろん民間でそういうことを施行しているところはありますが、あれほどの規模のものはないのであって、どうやってそれぞれの方々の生きがいを作っていくかということと規模というものをどう考えるか、そこはいろんな議論をこれからしていかねばならないものだと思っております。
 それぞれの自治体がいろんなことをお考えになるわけですが、そこにおいてこの規模の問題、そして運営をどうしてやっていくのか。アメリカのCCRCというのは今回初めて知ったのですが、相当に古い歴史を持っておって、一番最初のものは19世紀にもう既に出来ておったということであります。それからいろんな試行錯誤を繰り返し、最初はもっと富裕な方向けのものだったそうです。今回視察をした場所というのは、そういう会社が運営をしているものですが、そこは全米でCCRCを経営している中では3番目か4番目の規模のものだったというふうに承知をいたしておりますけれども、そこの経営者の人が、富裕層ではなくてもっと一般の方を対象としたものを作りたいということで、廃校になったある大学を買い取って、そこにCCRCを作ったというのが、いわゆる超富裕層ではない、そういう方向けのCCRCを作る端緒だったそうです。
 そうすると、今回のCCRCにおいて地方における大学との連携ということも考えているわけですけれども、どういう形で運営が出来るのか、そこにおいて税とか補助とかいうものはどうあるべきなのか等々、合衆国と我が国と税制も違いますし財政の仕組みも違いますが、よくこれを精査をして、どのような形でCCRCを作り、どのような形で人生の充実を期するかということを自治体の方々とも議論したいと思っています。いずれにしても、これは見なければ分からないものなので、是非皆様方の会社もワシントンに支局をお持ちだと思います。行って御覧になってみて、またいろんな御意見というものをお聞かせいただきたいというのが私からのお願いでございます。

(以上)