石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年3月22日

(平成28年3月22日(火) 9:27~9:48  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 本日、閣議の前にまち・ひと・しごと創生本部を開催し、政府関係機関移転基本方針を決定いたしました。
 今回の政府関係機関移転の取組は、東京一極集中是正の観点から、東京圏を除く道府県からの提案を踏まえ、有識者会議の御意見を承りながら検討を進めてまいったものであります。
 まず、研究機関、研修機関等の地方移転につきましては、地域の研究機関等との連携を図ることで移転により地方創生に役立ち、かつ研究機関等としての機能維持・向上も期待されるものとして、23機関を対象に50件の全部又は一部移転に関する方針を示しました。
 この方針を踏まえ、移転する機関ごとに道府県、府省庁及び関係者が共同で平成28年度中に移転の取組について具体的な展開を明確にした5年から10年程度の年次プランを作成することといたしております。
 中央省庁の地方移転につきましては、危機管理業務や国会対応業務等に留意しつつ、執行業務等については出来る限り現場に近いところで業務を実施することが適当であるとの観点から、7機関についての方針を取りまとめたものであります。
 具体的には、文化庁については、国会対応業務等の機能確保を前提といたしました上で、地方創生や文化財の活用など新たな政策ニーズ等を含め機能強化を図りつつ、数年内に全面的な移転を行うことにいたしました。このため、関係者が参加をする、仮称でありますが「文化庁移転協議会」を設置し、8月末をメドに移転に係る組織体制の概要を取りまとめ、年内をメドに具体的な内容を決定いたします。
 消費者庁につきましては、執行業務等について現在進められているICTの活用による試行等を行い、移転に向けて8月末までに結論を得ることを目指しております。
 総務省統計局につきましては、統計データ利活用に関する業務について実証実験を行い、8月末までに結論を得ることを目指します。
 中小企業庁、観光庁につきましては、提案を踏まえ、地方の経済産業局や地方運輸局のワンストップサービス化の推進を図ることにいたしました。
 特許庁につきましては、提案を踏まえ、「独立行政法人工業所有権情報・研修館」について、近畿地方のワンストップサービス化を推進いたします。
 自民党の御提言や有識者会議の御意見を踏まえ、今般の取組を先行的実施として位置付けつつ、国の機関における業務については、ICT等をも活用した実証実験に政府全体で取り組みます。
 御提案いただきました道府県をはじめ関係市町村、対象となった機関や関係府省庁、更には有識者会議の委員の各位におかれましては、長期間にわたり濃密かつ真摯な御議論をいただき感謝を申し上げる次第であります。
 次に、地方創生人材支援制度、シティマネージャーと言われているものでありますが、派遣市町村と派遣人材の両方のマッチングを行いました結果、平成28年度におきましては58の市町村を対象として国家公務員42名、大学研究者3名、民間人材13名を派遣することといたしました。
 特徴でありますが、全体で見ますと派遣を希望する市町村が減ったのに対し、同程度の規模で派遣出来ることから、平成27年度と比べ市町村への派遣希望に応えられた割合が増加した点、当たり前の話なんですけど。国家公務員につきましては、定員管理が厳しい状況にあり、派遣出来る人数にも限りがある中、各府省庁に最大限の努力をしていただきました。結果として、平成27年度と同じく42名を派遣いたします。民間人材につきましては、常勤での派遣を増やすべく募集対象を拡大いたしましたところ、平成27年度の4名を上回る5名を常勤で派遣をするということになりました。
 派遣される方々につきましては、派遣市町村におきまして地方創生関連施策の推進の中核を担い、市町村長や役場の職員、住民の方々とともに汗を流して当該市町村における地方創生を推進していただきたいと、かように考えておる次第であります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)政府機関の移転についてなんですけれども、当初はかなり省庁側から移転に対してネガティブな意見が出ていたようですけれども、それにもかかわらず文化庁の移転を決め切れたことについてはどう評価されますでしょうか。また、文化庁が京都に移ることによってどういった機能の向上が国と地方にとって期待出来るんでしょうか。
(答)当初は、極めてネガティブ、ごくごく一部にとどまるのではないかというような憶測というものもあったことはよく承知をしておるところであります。今回こういうことに至りましたのは、総理を長といたしますところのまち・ひと・しごと創生本部というものが大きな役割を果たしたと、なかんずく総理の強い決意があったということだと思っております。また併せまして、文部科学行政に通暁した馳大臣の強いリーダーシップがあったということ。加えまして、京都市のみならず京都府の政・財・官というんですかね、あとは京都大学をはじめとする学問、京都は学問の府でもありますので、そういう京都を挙げてのこのことに対する取組があり、そうであるならばというような意識が役所の側にも醸成されたという面もあったのではないかと思っております。
 他省庁につきましても、例えば消費者庁の取組というのは、これまた今まで申し上げたことと共通をいたしますが、徳島県の非常に強い意欲というものもあった。消費者行政に通暁した河野大臣のリーダーシップというものもあった。これは、他の中央省庁のみならず関係機関等々につきましても、当該省庁あるいは当該大臣のリーダーシップもあり、そしてまた地元の方々の要望というものもありということで、それがうまくマッチングをした部分は多々あったのではないかというふうに私は考えております。
 この文化庁の京都への移転というのは、もう本当に長年にわたって京都からの御要望でございました。今回このような議論を通じるに当たって、現在と同等というのは、それは当たり前の話で、今よりも下がるようなことはあってはならないと。多くの文化財というものが所在をする、あるいは古い都であるがゆえに、日本文化というものを体現をしている関西圏、なかんずく京都というところに全面的に移転をすることによって日本の文化行政、文化財行政というものが更に充実をしていくということを期待をいたしております。
 従来、日本においては、例えば文化財というものは保護の対象であって、それをいかに活用するかという観点が欠けていたのではないか。大事に保護するということは大事だけれども、それは当然のこととして、その文化財が持っている歴史的な意義というものを更に広く国民に共有していただくためには更に工夫があるのではないか。あるいはそれを活かして内外の多くのお客様を集め、日本の文化、文化財に対する認識を高めていただくということは、インバウンドも含め観光にとって重要なことではないか。更には、文化行政全般にわたって京都という地で文化行政というものを、この東京中枢の永田町、霞が関という地域は非常に日本全体から見ると、それは必要性はあるんですけれども、現場に遠いということはあるわけで、京都という本当に文化の象徴のようなところで、新しい環境の下でより良い文化行政、文化財行政というのが展開されるということを私は強く期待をしているものでございます。
(問)政府関係機関移転の研究機関、研修機関等の地方移転について3点お聞かせいただきたいんですけれども、1点目が、この対象が23機関50件という規模なんですけど、この規模について大臣の評価をお聞かせいただけますでしょうか。
 東京一極集中是正の観点からということだったんですけれども、今回の研究機関、研修機関の地方移転がどのように東京一極集中の是正につながるのか、大臣のお考えをお聞かせいただきたいということと、もう一点が、今後、地方移転の継続も含めて、今後に向けた意気込みも含めて一言お願い出来たらと思います。
 以上です。
(答)研究・研修機関がこれだけの規模になったということです。これも、道府県から御提案をいただき、そして、それぞれにおいて相当に濃密な議論を行い、精査を行った結果としてこのようなものになりました。私は現時点においてこれだけの規模というのは相当の規模感になったと思っております。これも多くをもって貴しとなすというわけではなくて、それが移転をすることによってどのような効果を生ぜしめるのかということに力点を置きました。何でも良いから地方にたくさん出せば良いということではなくて、いつも申し上げているように、そこにおける学問の集積あるいは産業の集積、それとコラボレーションすることによって相乗効果をもたらすということを狙っているものであって、そういう観点からは、これで十分だと申し上げるつもりは全くありませんが、一定の評価がなし得るものだというふうに私自身は思っておるものでございます。
 これが一極集中の是正にどれだけ寄与するかというのは、実際にこれが移転をすることによって、その地域に新たな学問の発展があり、あるいはそこにおいて新たな産業の発展がありということがそれぞれの地域においてどれだけ効果を現すかということにかかっているのだと思っております。だから、移したから一極集中が是正されるのではなくて、それぞれの地域にそれぞれが移る、あるいは機能が移転をする、あるいは機能が拡充されるということによって何が起こるかということで、検討するに当たっては、その点をかなり詳細に議論をいたしました。結果として一極集中の是正に寄与するものであると考えております。
 それから、今後の見通しですが、今ここで一区切りがついたので、これから文化庁の移転に向けた協議会をワークをさせる、あるいは消費者庁統計局の実証実験というものをやるということに当面は力点を置いていきたいと思っております。
 自民党のほうからは、これに止まることなく国の行政の在り方全般も含めたこれから先の取組という御提言もいただいていることでもあり、これで終わりというわけでは全くない。しかし、これから先、例えば二次募集というかそういう具体のことが今決まっているわけではありません。その文化庁の移転とか消費者庁統計局の実証実験とか、これだけでも膨大な作業を伴うものであります。あるいは研究・研修機関の移転でも膨大な作業を伴うものであって、まずこれをきちんとやり切るということではないでしょうか。また、これから先は国の行政全般も含めて更により良きを目指していくということで、今具体なことが決まっているわけではございません。
(問)文化庁移転についてお伺いします。今回、「全面的な移転」という表現を使われていますけれども、これは長官が京都へ来る、あるいは東京はいわゆる省庁の地方事務所というような認識でよろしいのかどうかということと、もう一点は、移転のこれから詳細、組織改編を含めてこれから検討ということですけれども、現在での異動の規模感がもしあればお伺いできますでしょうか。
 ちょっと先ほどとも関連するんですけれども、大臣いつも、企業の地方移転を推進するためにも、範を示すための政府機関移転であるとおっしゃっていましたけれども、今回のこの文化庁全面移転と、あと2省庁の検討ということで、それは今後の流れを作る結果となられたとお考えなのか、その辺の反応を。
 すみません、同じ移転の質問なんですけど、自治体主導による手挙げ方式を採ったことの是非についてお伺いしたくて、例えば有力政治家が地元にいる自治体が強かったとか、今回の一連の流れを振り返って改めて手挙げ方式、自治体が主導して行うことの是非についてお願いします。
(答)全面的と申し上げましたのは、やはり国会対応ですとか在京公館、日本にありますいろいろな大使館等々ですね。それから海外対応のような文化の交流というのは極めて大事であります。むしろ東京に残置したほうが、より日本全体のためであるというのがあるのではないか、そういうものは、より日本全体のためだという観点から残しておくべきものというのがあるのではないかというふうに思っておりますが、これはそういうものに限定されるのであって、それ以外のものは全面的に移転をする。だから、言葉の遊びみたいですけど、国会対応とか対外対応とかも含めてのが「全面」、それは残しておきますけどほとんどいきますよというのが「全面的」と、こういうニュアンスで御理解をいただければと思っております。
 規模感はそれから出てくるものでありまして、これが9割とか8割とか定量的に申し上げるものではありませんが、ほとんどという感じで御理解をいただければ良いのではないかと思っておりますが、また詳細は文化庁、文科大臣のほうにお尋ねをいただきたいと存じます。
 これからの流れはどうなるかということですが、やはり移ることによってよかったじゃないかということがどれだけ出てくるかだと思います。逆の面もあろうかと思います。要するに、移ったことによって今までの行政の推進に支障もなく、更に新しい行政というものが展開出来たということが生まれてくることによって、より流れは加速をするものだと思っております。これで範を示すとか、隗より始めよとかいろいろな言葉があるんですけど、これが何だみたいなことであれば、やはり政府の本気度が問われたと思っております。ですから、これは本当に関係の皆様方に心から感謝を申し上げ、今後、移転したことによって良かったねということが起こるべく私どもとしても注意をしていきたいと考えております。
 手挙げ方式についてですが、私、今振り返って思うのですけれど、手挙げ方式であったがゆえにここまできた面もあったのではないだろうかと。地方が手を挙げられたことに対して、こちらとしてきちんとお応えをしなければならないというのは、この方式を採りましたときから申し上げてきたことでございました。もちろん地方が政府関係機関がどんなものなのか知らないで手を挙げてくれなどというのはひどいではないかというようなこともありました。私も最初から出来るだけ詳細な情報はお渡しするようにと、そしてまたお問い合わせには丁寧に答えるようにというふうに指示をしてきました。これはそもそもそういうやり方が良いかどうかの問題で、地方から手を挙げていただく場合には詳細な情報をお届けするというのは当然のことでございます。足らざる点はまた直していかねばならないと思います。
 有力な政治家がいたからどうかというのは関係ないと思います。やっぱりこれはそういう問題ではないだろうと。国全体の行政というものを考えたときに、うちにこれを、とか幾ら言われても、それは国民のためにある行政ですから、そのようなお話にはならないということは良識ある国会議員各位はみんな知っているのであって、そういうことがあったと私は思いません。ただ、御助言とか、あるいは地方の熱意というものを更にエンカレッジするとかそういうことはもちろんありました。それは口利きとは全く性質を異にするものだったろうと思っています。有力政治家がいたからどうのこうのということは御指摘は当たらないのであって、時々委員会で総理の地元にとか大臣の地元にということがございましたが、そういうことを考慮に入れたことは一切ございません。

(以上)