石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年3月8日

(平成28年3月8日(火) 8:33~8:54  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 一連の地域しごと創生会議でありますが、第4回会合は、来る土曜日3月12日、福岡県福岡市で開催をいたします。政務としては、福岡副大臣が出席をするものでありますが、IoTの活用-インターネット・オブ・シングスですね-IoTの活用、対内直接投資を活用した新産業・新市場作りの取組事例の紹介等々を行いまして、既存企業や産業の潜在力をいかにして引き出すかということについての議論を展開したいと思っておるところであります。
 同時に、サービス生産性の向上に取り組む事例を御紹介し、地域を支えるサービス産業の生産性、よくサービス産業の生産性を上げなければいけないと、トリクルダウンの理論ではなくては、その地域その地域のいろいろな産業の生産性を上げていかねばならないのだという話は定性的にはするのでありますが、実際にどのようにしたら良いのかというようなことにつきましても議論したいというふうに考えております。
 月内にもう一度開催をし、4月には中間取りまとめを行いたいと考えているものであります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)政府機関の地方移転に関連してお尋ねします。消費者庁の長官が、来週から徳島県での勤務を体験的に実験的に行うということが正式に発表されました。課題の洗い出しというような趣旨ということですけれども、どういった観点から今回の実験を行いたいとお考えでしょうか。
(答)来週の13日から17日まで、長官が徳島県に滞在をするということであり、これによって実証的な試行調査を進めているというものだと聞いておるところであります。これをやることによって政府、国にとって、地方、徳島県にとって良い結論に導くことが出来るかどうか、そのための実証でありますので、この場合には河野大臣になりますが、よく連携をしながらやっていきたいと思います。
 昨日の答弁でも申し上げましたが、徳島県というところがいろいろな通信網が発達をしておるということ、あるいは消費者行政というものを熱心に行っているということもあるわけで、実際に長官が行ってみて、一つの指揮命令系統というものがきちんとワークするかどうか、これは必要なことだと思っています。その回線が十分に機能するものなのかどうか、そして、日ごろの業務というものが徳島県においても遅滞なく進めることができるかどうか、それが13日から17日という5日間ですから、5日間の期間をとって、それはいろいろなことが起こるわけで、1日とか2日とか数時間ということでは分からないことがたくさんあるだろうと思っております。ですから、日常業務、あるいはいろいろな突発的な対応等も出来るかどうかについて、これだけの日をとるということには大きな意義があるだろうというふうに思っているところであります。
(問)先日の有識者会議で取りまとめられた基本的な考え方には、国の機関における業務全般について、テレビ会議などで具体的な課題を実証実験で明らかにしていくという方向性が示されましたけれども、消費者庁以外の機関での取組について、今の段階で大臣のお考えをお聞かせください。
(答)これは、もちろん数字としてどれだけテレワーク的なものを行っているかという取りまとめはございます。所管する総務省において、1年経つと急にそれが増えたと、そういうのがあるわけで、数としてどうなのかというのがあるんだろうと思います。これは、そういうテレワーク的なもの全体を推進するのは、所管たる総務省になるわけですが、ただ、数さえ多ければ良いかというと、そういうものでもないだろう。実際にどれだけの会議があり、そのどれだけがそういうようなテレワーク的なもので行われ、それによってどのように効果が上がり、あるいはどのような支障が生じ、というようなことを精査して、今後の政府としてのテレワークへの取組というのを進めていかなければならないだろう。単に何回会議をやって、そのうちの何回をテレワークで行いましただけでは駄目で、それが実際に国の業務としてどうだったんでしょうと、何か支障みたいなものはありませんでしたかというようなことまでやっていかないと次のステップに進まないだろうというふうに思っておるところであります。ですから、そのテレワークの実行状況というようなものをどのようにして把握をし、今後計画的に進めていくかということについては、政府部内で検討しなければいけないと思っております。これは、うちだけで出来ることはではないので、関係省庁でそういうようなことを検討する場を設けることが必要だと思っております。
(問)昨日、国会でも質問があった関連なんですけれども、企業の本社機能移転に関しまして2点だけ教えていただきたいと思います。
 1点は、今まで大臣繰り返しおっしゃっていますが、工場だとかを誘致というものを進めてきたかと思うんですけれども、そうではなくて本社機能ということで、改めまして、今回、本社機能の移転が地方の地域活性化にどうつながっていくかという点をもう一度教えていただきたいのと、政策の1年目で地域再生計画はかなりまとまってきているんですが、これを継続的にやっていくために、地方の減収分、税金の減収分の補塡だけではなくて、政府として今後どのようなことを考えられるか、その点お考えがあったら教えてください。
(答)本社機能が東京にあるということによって、東京の一極集中が加速しているのではないかということですよね。世界中で見ても、東京一極集中というのは、首都への一極集中というのはかなり突出している部分があります。その理由って何だろうかというのを考えたときに、それは、18歳で高校を出て大学に入る。そのときにたくさん東京に来て、それがそのまま帰らないということが一番の理由だと思っています。何で東京に留まって地元へ帰らないのかといえば、就職口がたくさんあるからだということになるわけで、東京の一極集中は是正せねばならないという理由は、1年半もずっと申し上げていることですから、ここで繰り返すことはいたしません。そうすると、東京に働き口があるからだということは、いろいろな企業がそこへ集まっている。企業が集まっているというのは、やはり本社機能ということがあるんだろうということに相なります。本社機能なるものは、本当に東京になければ駄目なんだろうか、あったほうが良いのだろうかということを考えたときに、これはコマツ以外にも例はあるんだろうと思います。他の例を挙げないと、余り広範な説得力を持たないのですが、本社機能を移転することによって、より創造的な仕事が出来る、企画ですとか立案ですとか、そういうものというのは、かえって東京にないほうが高いレベルの仕事が出来るのではないか。生産現場に近いほうが、より時代に合った、必要に合った研究開発が出来るのではないかということだと思っています。あるいは出生率が高くなるとか、婚姻率が高くなるとかいろいろあります。
 もう一つは、そうは言ったってと、役所が東京にあるからと、やはり東京に行ったほうが、役所との調整とか情報収集とかそういうことに便利だよねと言うんですけど、本当にそうなんでしょうかということだと思います。それが官民の連携と言えば聞こえは良いが、それが官主導で、民がそれに倣うのようなことになってはいないだろうか。だから、そういうような今までいろいろな、神話とは言わないけれど、東京にあったほうが良いというのが、本当にそうなんですかということをやるために、いろいろな税制も組んでおるわけでございます。ですから、コマツの例が、経団連等で聞いてもそうなんですけど、あれは発祥がコマツだからねと、あるいは坂根さんという非常に才能ある、見識のある、言い方はいろいろありますが、経営者がいたからだよねという、そういう、矮小化とは言わないが、それは特異なケースですよねということになってしまうのを、本当にそうですかという検証は必要なんだろうなというふうに思っておるところでございます。そうしないと変わりませんので。
 東京に一極集中しているのは政治であり、経済であり、メディアですから、この三つの集中というものをどのように変え、更に多様性のある国を作っていくかということは重要なことだと考えております。
 税制についても、昨日御質問がありましたが、まず、拡充型にいたしましても、移転型にいたしましても、この制度を知っていますかというところはすごく大事なことなんだろうと思っています。実は知らないというところはたくさんあるのではないでしょうか。何かそんな制度があるらしいけど、うち使えないものね、関係ないものねではどうにもならないので、この制度を始めるときに、大分わかりやすい、「こんなにお得」みたいなパンフレットは作ったんです。ですけれども、地方に行って話をしてみると、そういうのを知っていますよ、うちもそれで努力していますよというところは余り見ないんです。「こんなにお得」ポスターがあちこちに貼られているというのも、私は余り見たこともないんです。ですから、その制度の拡充も必要なんでしょうけれども、まず、今ある制度をどれだけの人が知っていて、どのように活用しようと思っているかということについての更なる周知の徹底を図らなければいけないと思っています。
 今ある制度が十分周知もされていない状況で更に拡充というのは、やや論理に飛躍があるのではないか。もちろん、あの法律には3年以内の見直し条項というのはあるわけで、それはやらなければいけません。だけれども、見直しをするときには、今ある制度がどれだけ知られているか、利用されていないとすれば、それはなぜなのかということについての認識をきちんと持たないと、国の税金を使う話ですから、何でもやれば良いというものだと私は思わない。やはり実効性を上げていくために必要なことは何でもやるが、その検証を伴わないままに何でもやるということは少し違うのかなと思っております。
(問)匿名のブログで「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログがあって、それが匿名なんですけど国会審議で取り上げられたり、例えば、先日、抗議集会が開かれるきっかけにもなったり、社会現象として広がっています。多分、それは保育園に入れなかったということもしかりなんですけど、少子化対策への不満とか、もろもろの不満というのが多分うっぷんした形で出てきたのかなと思っていて、この社会的現象について、もしお考えというか、どういうふうに御所見があるのかお聞かせください。
(答)これは所管ではないので、そのことを前提に申し上げますが、やはりこの匿名の書き込みというのかブログというのか、これは、それがかなり刺激的な表現が使われているわけですね。だから、それはそれとして、でも、そこまで言う状況になぜ陥ったのだろうかということは虚心坦懐(きょしんたんかい)に分析をしなければいけないことだろう。つまり、3月、4月というのは就職であったり、転勤であったり、いろいろなことが変わる時期なわけですね。保育園に入れる、入れないの通知ってかなりぎりぎりになって来る。そこで入れたなら結構なことだが、入れないとすると、いろいろな計画が齟齬(そご)を来すわけですよね。それをどうしてくれるのかということもあるんでしょう。
 地域によって聞いてみると、例えば、何々市ということで見れば、全体で見れば充足していないわけではない。ただ、保育所はあるんだけど、自分が行きたいところとすごく遠く離れていて、何々市の中にはあるんだけど、それってちょっと辛いよねという例も聞いております。それは行政の中の裁量で出来ることなんですけれど、問題は、ずっと国会で指摘されているように、保育士の方々の所得はなぜ上がらないか。それは、介護士もそうなんです。それを上げていくステップがどのようにして行われるのかということについて、これは政府としてお示しをしなければならないことなんだと思っています。
 もう一つは、私、政調会長や幹事長をしておったときに、そういう保育の関係の団体の集会にも何度も出たことがあるんですけれど、潜在保育士って60万人ぐらいおられるわけですね。ライセンスを持っているけれど、保育の現場に出ていないという方が60万人強だったと思います。そういう方々が、なぜ保育の現場に戻らないかということについては、やはりかなり精度の高いきちんとした調査というのが必要なのではないかということをそのころ申し上げたことがございました。もちろん所管は厚生労働大臣ですから、私があれこれ申し上げる立場にはありませんが、それが保育の団体の方々の内部でやった調査と、実際に自治体とか国がやった調査にやや齟齬(そご)があったような気がしております、これは私の記憶ですが。
 なぜ60万人以上もライセンスを持った人がいるのに現場に戻っていただけないんでしょうねというのは、いろいろな理由があるんだと思います。だから、その理由をきちんと究明しないままにああだのこうだの言っても始まらなくて、収入を上げていかねばならない。では、それだけで済むのかというと、別の理由もあるのではないかということは、塩崎大臣の下でいろいろと精密に分析、検討されておられることだと思いますし、内閣として、そういうような表現の如何はともかくとして、そこまで非常に厳しい状況にある方々にお答えをする責務があるのだなと思っております。所管外ですが、そのように考えております。
(問)完全に所管外でまた恐縮なんですけど、憲法改正について、次の参院選で、要は、主要なテーマとして訴えるべきかと、争点としてですね、そこに何かいろいろ議論があるみたいで、例えば、一部の方は、主要な争点にすべきじゃないと、要は、経済がメインで訴えるべきだという意見もあったりしています。ただ、自民党の結党以来、憲法改正について党是として掲げてきたわけで、首相が在任期間中にしたいと言っていれば、本来、参院選の争点になるのかなとも思うんですけれども、その主要な争点として訴えるべきかどうかについてお考えがあれば。
(答)それは党として決めることで、閣僚があれこれ言う話ではありません。ただ、政調会長や幹事長をやっていたときに党の公約、それまでは、ともすれば、一番後ろに少し書いてある。忘れていませんよみたいな形で少し書いてあるというのが多かったんですが、やはり我が党の立党の原点を考えれば、日本国がサンフランシスコ条約が発効し、主権を回復したのであるからしてと。主権を回復していないときの憲法と、主権を回復した後の憲法は、それは違わなければおかしいでしょう。価値観は別として、主権を回復した後の憲法というのは、それにふさわしい憲法があるのは当たり前のことであってというのが立党の原点なわけですよね。そうすると、それは立党の原点であるからには、それは公約の一番最初に掲げるべきではないかというお話をいたしました。
 今はそれからかなり時代が過ぎて、どの条文を変えていくのかということについては、やはり党で議論がされることだと思います。ですから、党で議論をした中で、例えば、憲法全条文について、もちろん自民党は改正草案を持っているのですが、全条文セットで仮に発議が行われた、3分の2が仮に取れたとして、そうなったときに、国民としてすごく困るんじゃないでしょうか。何条の改正には賛成だけど、何条には反対だみたいなことは当然起こり得ることであって、そうすると、やはりフルセットで国民投票にかけるというのは、ちょっと技術的にも難しいことかもしれません。
 それは、マニフェスト選挙で意外とそこの限界というのは見えたところがあって、マニフェストをずらっと書きますけど、ここは賛成だけど、ここは反対というのはあるわけですが、例えば、民主党なら民主党が勝ったときに、これは国民からこのように全てが信任されたのだとおっしゃった閣僚もおられたけれど、それってちょっと違うのではないかという話があのころありました。それと一緒で、どこを国民に問うのだろうかということを、参議院選挙は夏、間違いなくあるわけですが、やはりそれがないままに問うということはどうなんだろうかねというお話が党内にはあるのかもしれません。だから、これはすぐれて党が決めることでありますから、政府の立場であれこれ申し上げることでは決してありませんけれど、やはりフルセットではなくて、どの条文はどうなんでしょうねという形で問うことになるんだろうねというところまでは党の議論は行き着いておったという記憶はございます。

(以上)