石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年2月26日

(平成28年2月26日(金) 8:55~9:22  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 本日、厚労省をはじめ関係府省と連携をし、各地域の働き方改革に向けた取組を支援する「地域働き方改革支援チーム」を立ち上げます。第1回の会合は本日であります。配付資料にメンバー等を記載いたしております。このチームの有識者の方々にも積極的に地域に出向いていただき、各地域における働き方改革の検討取組を進め、その成果を地方版総合戦略の改定に反映していくことを推進するものであります。
 あわせまして、各地域においてどのように地域の少子化分析や対策の検討を進めることが出来るかにつきまして具体例を示しまとめた「地域少子化対策検討のための手引き(第1版)」及び「地域少子化・働き方指標(第2版)」を公表いたします。非常に大部、手引は166ページ、指標は332ページというものでありまして、皆様方に御面倒ですのでこの場では配付はいたしません。これは後日、ホームページに掲載をさせていただきます。まち・ひと・しごと創生本部のホームページでありますので御覧いただきたいと存じます。
 このことは昨日の委員会における発言でも申し上げたとおりでありますが、全国全ての地域を仔細(しさい)に見てみますと、少子化の状況でありますとか、あるいは通勤時間、いろいろな状況、そういうものが全く違うということであります。ですから、平均初婚年齢にいたしましても、出生率にいたしましても、明日、鹿児島県伊仙町のフォーラムにも出席する予定にいたしておりますが、一番高いところと一番低いところで全然違うわけであって、これはそれぞれの自治体で北海道から九州、沖縄県までみんな同じ法律が適用され、みんな同じ国の事業が適用されているわけですが、これだけ違うというところを見ると、国全体の政策とともに地域別のそのような働き方についての改善というものをしていかなければならないのではないか、これを改革と言っているわけですが、そういうことが極めて肝要であると。自治体においては、例えば静岡県のように、非常に先駆的な取組をしているところもある。あるいは兵庫県なんかもそうであります。ですから、それぞれ有識者の方々、あるいは政府も地元へ出向いて、それぞれの地域とよくお話をしながらやっていきたいというふうに思っておるところであります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)冒頭、お話しありました「地域働き方改革支援チーム」についてなんですけれども、大臣がお話しされたように、地域ごとの平均初婚年齢ですとか、出生率が違うために、そこをどう改善するのかというお話で、これまでも地域ごとに独自の子育て支援策とかそういったものは自治体が既にやっているわけですけれども、なかなか、さはさりながら、出生率が向上していかないという課題がある中で、どこにそういう子育て支援策とか以外に、どういったことが更に施策として出来るというふうにお考えなんでしょうか。
(答)先ほど申し上げましたが、鹿児島県伊仙町は、これ徳之島にあるんです。皆様方も行かれた方、御存じの方もあろうかと思います。ここは出生率も高いし、あわせて長寿の町としても有名です。昔、泉重千代さんという世界最高齢、ギネスに載りました、これギネスは今、ちょっと訂正というか、ギネスから消えているんですが、何にしても世界一長寿の方と言われるのを輩出した―輩出という言葉が良いかどうか分からない―そういう島です。ここの町長さんは、大久保さんとおっしゃる方ですが、お医者様です。県会議員を経て町長になられた方ですが、この方は全部の集落をずっと回られて、伊仙町の財政というのはこうなっているのだと。高齢者の方々にこれだけ、あるいは子育て世代にこれだけ、子供たちにこれだけ、こういうようなお金の使い方をしているのだということをずっと説明をされたんだそうです。そこにおいて、高齢者の方々から、いや、こんな話は初めて聞いたと。町民だよりか何かには載っているはずなんですけれども。そうであるならばと、もっと若い世代、子育て世代、あるいは子供たちにそういう財政をシフトさせてもらいたいというようなお話が高齢者の方々からあったと。
 似たようなお話は海士町でも聞いたことであります。やはり若い世代、あるいは子供たちに対して、財政的にどのように配分をしていくかということは大事なことなのかもしれないと。それはその中身はいろいろあるんだと思います。例えば医療費であるとか、あるいは保育料であるとか、あるいは住宅支援であるとか、生み育てやすい環境とは一体何だろうかということで、そういうような政策が打たれているものだと承知をいたしております。
 出生率はそれで良いんですけれども、人口ということで考えると、子供は生まれるんだけれども、それが大学に行くときにどっと出ていってしまうということになると、子供は生まれるが人口は減るということが起こるわけで、これはそうすると、働き方改革において働きやすいところですよと。この間、四日市市のベンチャーサミットで申し上げたことですが、仕事は東京で作ると。しかし実際に仕事をするのは地方であると。そういうようなやり方もあるのではないか。クラウドソーシングみたいな、そういうようなものも活用もできるだろう。働きやすい環境を作っていって、子供がたくさん生まれましたと。そして、そういう人たちが出ていかないような政策というものも、地域によっていろんな取組がございます。例えば海士町のような、伊仙町のような事例は、他にもたくさんあると思います。
 静岡県がやっているのは、静岡県下をブロック別に分けて、状況はどのようになっているかというのを把握、分析をすると。加えて、これはどこかで御紹介したいと思いますが、静岡県下の全市町村において、県庁がそれぞれの町はこうなっていますと。熱海市はこうですと、沼津市はこうですという。「ふじのくに少子化突破戦略羅針盤」というのがありまして、これはこんな感じで、例えば焼津市ならどうなっているでしょうか。御殿場市ならどうなっているでしょうかという、ものすごくいろんなデータを分析をして、大部のものではなくて、どこも見開き1ページなんです。そこがどうなっているかということを示して、皆さんで考えてくださいね、県も支援しますよというような体制に静岡はなっているわけで、私はこれ、すごく感心して見させていただきました。ですから、そういうところに有識者あるいは政府の職員も入って、一緒に考えようよということです。全国で一番子供が生まれるのは伊仙町ですというのは意外とみんな知っているんだけれども、では、どういう取組をしているのかというところまできちんと分析をしたことがない。またそれを、良い例というのは全国展開していきたいわけで、そういうことをやっていきたいなというふうに思っています。これが決め手だというのが分かれば苦労はしないのであって、だから、昨日の地方創生特委の所信発言の中で、知恵は現場にこそあると申し上げたのは、そういう意味で申し上げました。
(問)今日公表された国勢調査で、日本の人口が初めて減少に転じたということがデータで明らかになったんですが。それと詳細に見ると、東京一極集中が進んで、過疎地の人口減少というのがより深刻化しているということで、先ほどの働き方改革の話とも絡むと思うんですけれども、この受止めと今後の展望というのを伺いたいと思います。
(答)これは今朝8時半に出たものでありますので、これからよく分析をし、検討しなければいけません。多分こんなことになるだろうなとはみんなおぼろげながら思っておったわけでありますが、やはり平成22年と比べまして94万7,000人減少だと。0.7%減少だということですけれども、94万7,000人というのは鳥取県が一つなくなった以上の話であり、年平均では18万9,000人減っているのだということになります。これは大正9年にこの手の調査が始まって以来、初めて減少しましたということなので、それなりにインパクトのある数字かなというふうに思います。
 地方創生というものが本格的に始まりましたのは平成27年度からでございますので、実際にこの数字を踏まえて、先ほど申し上げました働き方改革を通じて、どのようにして出生数を上げていくかということだと思います。これは47都道府県で見ると、出生率だけ上げても特に18歳でどんといなくなり、そして東京に行った人が2割3割しか帰ってこないということになると、せっかく子供がたくさん生まれても、その県はどんどん人口が減るということになりますので、そこは働き方改革のお話なんだろうと思っております。
 私はこの週末も岡山県和気町、津山市、美作市と参りますが、やはり地方版総合戦略の中で、それぞれの市、町、村、そこがいったい人口をどうするんだと。出生率をどうするんだということをミクロの世界で突き詰めて考えているというところに大きな意義があるんだろうと思います。もちろんマクロはマクロで動くわけですが、ある面、マクロはミクロの積上げみたいなところもありまして、移住者を一杯受け入れるのはそれはそれで良いんですが、結局一種ゼロサム的なところがございます。そうすると、やはり出生率を上げ、流出を防ぐということなんでしょうし、東京の出生率が際立って低いということを考えたときに、やはり東京が過密であるということも理由の一つなのかもしれません。ですから、東京の一極集中を是正するというのは、東京から人がいなくなればそれで良いということではなくて、結果として東京の出生率だって上がっていかなければいけないわけですから。そういうそのプラスサムというのか、そういうことを目指していくがために、全国1,718市町村がそういうことを分析をして考える。そして、一つの町、一つの村だけ分析しても仕方ないので。良いところと、うちの町、うちの市の手法は、どこが違うんだという分析は、実は今まで余りやったことがない。そういういろいろな手法ですね、これを全部の自治体が共有する。つまり、うちの市はこうなんだけど、うまくいっている青森県の何とか市は、あるいは宮崎県の何とか市はどうなんだろう。手法全部並べてみたところで、何が違うんだという発想は今までしたことがないんです。それをやることによって、新たな気付きというのは必ず出てくる。問題の解決というのはそういうことではないのでしょうか。
(問)マクロの部分、東京一極集中の是正ということは重要だということに絡むんですけれども、政府機関の地方移転についてなんですが、先日来、文化庁の京都府への全面移転といった報道がなされています。
 基本方針の政府決定というのは3月ということなので、今検討途上だと思うんですけれども、その意気込みを改めて聞かせていただきたいのと、話せる範囲で現在の検討状況を教えていただければと思います。
(答)これは昨日の分科会でも御質問が出たことなのです。これは相模原の本村議員から、ちょっと今のやり方はひどいのではないかみたいなお話もありました。
 ですけども、やはり地方から提案がなければ、こういうことにならなかったと思うのです。それぞれ地方から、なぜこれがうちなのかということを提案をするということは、その町にどのような産業が集積し、どのような学問が集積をし、その町のみならず、近隣の自治体とあわせてどのような集積があり、ということを考えた上で、これを移転してほしいというわけですね。そうなって、中央の側もそうなんだろうかと。本当にそちらの方が日本全体のためになるのだろうかという、そういうような考え方が出来たんだと思います。
 ですから、地方から言わせるのはおかしいのであって、それは中央が率先して行うべきではないかというお話に、私は全く説得力がないとは言いませんが、やはりこういうやり方をしたことによって、はじめて動いたのだというふうに思います。
 これは何度も申し上げていることですが、民間に本社機能の一部移転というのを政府はお願いをしている。しかし、その政府は何にも動きませんであれば、それは範を示すというか、そういうことにはならない。説得力も何にもないということだと思います。
 もちろん行政ですから、民間企業ではないので、営利を目的にしてやっているわけではありませんから、北海道から九州沖縄まで津々浦々同じ行政が展開されなければいけないので、公平性を維持した上で、なおかつその行政のスキルが上がるかどうかということを目指しております。
 やはり、中央省庁があると、そこにいろいろな産業が集まるというのはあるわけですよね。どうしてもそれはある。何で東京に来ましたかっていうと、何々省が近いからというような理由が必ず出てくるわけです。
 ですけど、物理的に近いということだけが理由なのだろうか。これだけテレワークが発達をし、交通手段が発達したとするならば、必ずしも東京になくてもそれは良いのではないだろうか。むしろ、行政は現場に近い方が、やはり東京は一種そのユニークなというか、他の県とは違う面を持った自治体ですので、むしろ現場に近い方がいいということもあるかもしれない。あるいはテレワーク、通信、交通網の発達ということもあるでしょう。やはり過度な一極集中というのは故なしとしないのであって、そういう中央省庁が移転をしていくことによって、民間に対して率先垂範(そっせんすいはん)ということもあるのでしょう。
 この仕事をするようになってからのコマツの小松市への移転、これが何で他に波及しないんだろうかということを考えたときに、それはやはり坂根さんというユニークな経営者がいたから、ということになりかねないわけですね。やはり政府も動くんだと。そうであれば、やはり我々ももう一度、本社機能は全て東京になければいけないのかということを仔細(しさい)に検討する、そういう動機付けにもなると思っています。
 この文化庁について申し上げれば、文化財の多くが関西圏、なかんずく京都府に集中しているわけで、そこへ移ることによって、いわゆる保護主体であった文化財行政が、保護と活用両面を見ていくということに変質を遂げて、日本全体の文化財行政、またそれを活用した内外のお客様の誘客ということにつながっていくというような効果も期待されるのでしょう。ですから、今回いろいろなことを検討しているのは、それがどのような効果があるか、日本全体にとって、ということを中心に考えていることでありまして、このことによって、新たに地方への人の流れ、仕事の流れそしてその行政の変革というものが出来たら良いなと思っています。
(問)そうすると、文化庁の全面移転ということは排除しないということでしょうか。
(答)これはまだ決まってません。
 3月末日までということで、末日にとは言っていませんが、そこまでに、まち・ひと・しごと創生本部で議論をし、方向性を決定するということです。
 新聞にはいろいろな活字が躍っていますが、それがもう決まりということではございません。決まりは飽くまでまち・ひと・しごと創生本部において決定するものでございます。
(問)国勢調査に関連してなんですけれども、今回国勢調査で政令指定都市も北九州市や神戸市、堺市など減少に転じたところがあります。
 政府がこれまで連携中枢都市とか、定住自立圏とか、都市のこう、拠点となる都市に集中的に投資したりして、そこにダム機能を持たせようという政策をされて、取り組まれてきたと思うんですけれども、もはやそういった大都市でもダム機能を果たさなくなってるんじゃないかという見方もあります。これについて大臣どう思われますか。
 あと済みません、もう一点。
 今日、二・二六事件から80年になるので、事件の背景には地方の貧困というのもあったとされております。大臣、もし現代の教訓などがここから読み取れるものがあればお聞かせください。
(答)御指摘のように、北九州市ですとか、堺市もそうかな。人口減少に転じたところがございます。
 他方、増加しているところもあるのであって、一概に政令市あるいは県庁所在地でも人口が減っているからダム機能はもはや機能しなくなっているのだという決め付けは、私としてはなかなか躊躇するところでございます。
 ダム機能というのは、やはり中枢都市といいますか、政令市とか県庁所在地で止めようと。それが東京まで行ってしまうのを止めようということなんですけれども、その機能が果たされてるかどうかというのは、地域によってかなりの差があるのだろうというふうに思っております。
 ですから、そのダム機能なるものが連携中枢都市圏等々を通じて果たすことが出来るようにしていかねばならない。私自身は、例のダム機能論というのはかなり有効な議論だというふうに考えております。ダム機能を果たしているところと果たせていないところ、果たせていないとすればそれは一体なぜなんだろうか。ですから、例えば北九州市というのは、かなり早くからそれに気が付いていて、水を使ったビジネスですとかそういうものを新たに起こしているわけですね。
 だから、ダム機能論は、ダム機能は果たしているのだというふうに強弁をするのではなくて、果たせていないとすれば一体何が問題なんだろうかということも、この数字が出てくるのは地方創生の取組が始まってから初めてなものですから、地方創生のいろいろな取組の中で、新型交付金あるいは総合戦略等々、このダム機能というものの発現のためにどうしたらいいかということは自治体においてお考えをいただくべきことだというふうに考えております。
 今日は二・二六であります。
 やはり、地方の貧困ということがああいうことをもたらしたということもありますし、経済の行き詰まり感というものが、軍に対する期待を集めたということがございます。
 やはり、軍人というのは非常に使命感と言うか正義感というか、軍人に限ったことではありませんが、ですから軍人に多くの期待が集まったということだと思います。当時、農村の女性の身売り的なことも随分と報道されました。やはり、経済の格差、特に地方の貧困ということが原因の一つであったということは私自身承知をいたしておるところであります。
 やはり、軍というものは何だろうか。あそこで二・二六を起こした将校たちは、いざとなれば国の形を変えるのが軍の役割なのだという考え方、私は決してそのような考え方に立っていませんが、そういうような思いもあったんだろうと思っております。
 ですから、文民統制というものをきちんと確立をするということとともに、経済の行き詰まりによってそのようなクーデター的なものが発せられないようにシビリアンコントロールを徹底する、それは文民統制の主体は飽くまで選挙によって選ばれた政治家が主体でございます。官僚は選挙によって選ばれておりませんので、文民統制の主体たる政治家をサポートする役割は担いますが、文民統制の主体ではございません。
 ですから、政治がどれだけきちんと統制ができるか。それはいろいろな軍事に対する知識に通暁(つうぎょう)しているということが大事だと思います。そして、信頼を得るということが大事だと思います。それと、貧困、格差というものをもたらさないように常に配慮をする。この二つが両々あいまって、あの二・二六というようなものの再来を防ぐということは、我々が歴史の教訓から学ぶべきところであると考えております。
(問)昨日、政府機関地方移転に関して自民党の地方創生実行統合本部の方が提案を安倍首相の方にいたしました。
 その中では、全省庁が対象で、中央からいわゆる地方へ提言、提案をするという、政府とまたちょっと違う提言になっていましたけれども、それについて受け止めをお願いいたします。
(答)これは党則に基づく総裁直属機関として、地方創生実行統合本部が提案を総裁にされたものであって、私自身がお答えする立場にあるかどうか分かりませんが、今回我々が3月末までに方向性を決定するというお話と、国全体の行政機関に係るものというのは少し場面が違うんだろうと思っております。
 私どもとして当面、3月末までにまち・ひと・しごと創生本部で決定するということに力を尽くしてまいりたいと思いますし、鳩山本部長を初めとする皆様方がそこから先を見据えて、これから先、国全体の行政がどうあるべきかということは、政府全体としてこれを受け止めて、対応方針を決めていくべきものだと思っております。その二つが矛盾するということは決してございません。

(以上)