石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年1月4日

(平成28年1月4日(月) 9:54~10:06  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 皆様、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いをいたしたいと存じます。
 既に報道もなされていることでありますが、お正月、1月1日に公表されました平成27年人口動態統計の年間推計、あくまで推計でございますが、平成27年の出生数は、約100万8,000人ということで、前年よりも4,000人増加ということになっておるわけであります。
 仮に-推計値でございますので仮にというふうに申し上げますが-2015年の出生数が前年を上回るとすれば、2010年以来5年ぶりということになるものであります。この動向には引き続き注視をし、政府として、出生率が国民の皆様方の御希望を実現するという形で高まることに努力していきたいというふうに思っておるところでございます。
 以上です。

2.質疑応答

(問)今の出生率の話もありましたけれども、今年は地方創生の施策が計画段階から実行段階へという話になってくると思いますが、もろもろの施策を遂行するに当たって、大臣はどのような点に注意を払って取り組みを進めていかれるおつもりでしょうか。
(答)これは、中央政府と地方政府というものが問題意識を共有し、そしてまた解決へ向けての方向性を共有するということは極めて重要ではないかと思っております。
 大臣に着任以来、いろいろな自治体を拝見し、そしてまた政府からいろいろな施策をお願いし、あるいはいろいろな統計数字というものをお知らせしているわけでありますが、そういうものに本当に敏感にというのか、反応していただける、政府と問題意識を共有して、それぞれの自治体によって状況は異なるわけですから、例えばRESASシステムならRESASシステムというものを使い、地域におけるヒト・モノ・カネの出入りの状況というものを把握をし、さすればどうしたら良いのだろうかということを役所のみならず民間の方、あるいは金融界の方、あるいは学問に携わる方、繰り返すことはいたしませんが、それをやっていただいているところと、そういうところがいまだ十分でないところと、かなり取組に差が出てきているという感じがいたしております。
 もちろん私どもとして、自治体、あるいは地域の方々がこれは使いにくいねとか、これはよく分からないねとか、これは更にこうしたほうが良いよということには機敏に対応していかねばならないと思っておりますが、地方創生ということを進める上において、中央政府と地方政府との連携-連携という言葉は陳腐でどうも良くないのですが-一体として取り組んでいくということが何より重要ではないだろうかと思っております。そこに時間と距離の壁みたいなものがあって、これをどうやって乗り越えていくかということは極めて重要なことだと思っており、年初めからそういうことに留意して取り組んでいきたいと思っております。
(問)今年参院選がありまして、与野党ともに一つ、地方自治の観点でいうと道州制というのが再びちょっと争点になる可能性があるかなと思っております。これについて大臣はどういうお考えを持っていらっしゃいますでしょうか。
(答)それが争点になるかどうか、今の時点では分かりません。ただ、私、道州制担当大臣でもございまして、道州制の目指さんとするものというのがいまだによく御了知いただいていないと思います。
 特に基礎自治体、全国町村会、あるいは町村議長会においては絶対反対だというようなスローガンが昨年の大会でも引き続き掲げられたところであって、道州制の目指さんとするものは何なのだろうかと、出来るだけ身近なものは身近な自治体において行うのだということ、それによって生ずると懸念される事項にどう応えるかということの議論が決して十分ではないと思っております。
 道州制を指向するものとして、これは北海道が今そういう特区として指定をされてやっているわけですが、それが本当に道州制を目指すべき姿というものを特区としていろいろな試行を試みに行うということがなされているかというと、そこはもう一度検証する必要があるのかもしれません。ですから、道州制の是非というものは別として、このことを行うことによって何がどうなるのだということの議論の熟度が高まっていかないと、次のステージには移らないのだというふうに思っております。
 その道州制、これは国会でも答弁をしていることですが、道州制が出来なければ地方創生が出来ないという考え方に私は立っておりません。地方創生というのは、今の行政のシステムというものを前提にしてやっておりますが、だから道州制の議論は等閑視して良いのだということにはならないと思っております。地方創生は地方創生として、今のシステムのまま強力に進めていきながら、別途道州制の議論の熟度を高めるということは、やはりやっていかねばならないものだと思っております。道州制というものは、それぞれの政党において選挙の際も掲げられているものであって、そのことの進捗というものは、まず議論の熟度を高めるというところから進めていくべきものだと考えております。
(問)経済政策についてお伺いします。
 安倍政権は、地方や中小企業に行き渡るトリクルダウンというものを掲げていますけれども、一方で、このトリクルダウンに関して最初は肯定していても、最近はそれを否定する識者の声も聞こえてきます。トリクルダウンを待っているほうが悪いという意見もある中で、大臣からご覧になって、地方においてそういったトリクルダウンが進んでいるかということと、あと、今後地方創生における経済政策をどのように進めていけば良いとお考えでしょうか。
(答)政府として、そのトリクルダウンの理論がこれから先の経済を活性化する、GDP600兆円の中核をなすものだというようなことを今まで言ったとは承知をいたしておりません。確かにトリクルダウンの理論、シャンパンタワーのような、そういうふうにして、ザーッと上から注げば下のほうにその効果が伝播していくということを決して否定もしません。ただ、従来の経済のモデル、つまり親会社があって、それの中小下請というようなものが地方に立地をして、中央の景気が良くなれば、それがやがて波及していくのだというかつてのモデルと、今日の経済のモデルはかなり異なっておって、世界を相手に商売をしている、主に製造業、冨山さん風に言えばグローバルの経済と、それと重複する部分はもちろんないではないが、かなりそれとは切り離されたローカルの経済というものは、トリクルダウンの理論がそのまま当てはまるものではないだろうということだと思っております。
 いわゆる経済の好循環というものをもたらすためにトリクルダウンが全てなのではなくて、ローカル経済の生産性というものをどのようにして高めていくのか。この暮れ、某民放の番組に出演をして-お台場のほうにあるテレビ局でありますが-なるほどと思ったことが随分ございました。M&Aというものをどのようにして行っていくのか、単に規模さえ大きくすれば良いというものではない。そしてまた、それが今までの親会社からの下請という形から脱皮していくので、新しい物事を新しく作り出していくというふうに変わっていくのだ、あるいは、多能工というのでしょうか、一人の人が幾つかの仕事が出来ていく、そういうスキルを会得するということによって作業の平準化をなしていくのだ、それによって生産性を高めていくのだ等々、単にトリクルダウンの理論ではない、そういう中小企業の取組というものが全国あちらこちらにおいて実践をされている。
 それは、例えば岡山県のスーパーの例なんかもそうですが、今まで欠品-お客さまが求めているものがない-ということは、スーパーマーケット業界にとって最大の悪なのだと言われていたのを、そうではないだろうと。欠品があったって、それで良いのだと。そこの時間に来て、最も新鮮なものをお客様に提供することによって売れ残りをゼロにする。そのことによって、さらに価格を下げてお客様に対するサービスというものを向上させ、そして残渣というのでしょうか、いわゆる食べ残しみたいなものを最少にしていくのだとか、そういう新しい取組というものが地域によってそれぞれ独自のものが行われているというのは、極めて立派なことだというふうに感銘を深くしたところであって、そういうものはトリクルダウンの議論とは関係のないお話なのでございます。
 そういうふうに、地域においてそれぞれの業態に見合ったいろいろなイノベーションというものが行われている。そして、それが消費者の支持を強く受けているということは、新しい経済の在り方というものを指し示す意味において大きな意義を持つものだと思っております。ですから、トリクルダウンという理論を、これが正しいとか正しくないとか、そういう議論は議論でしていただいて構わないんですけれども、地域における企業の取り組み方というものは、そういう学者先生の難しい議論とは別に、地域において実践的になされているということだと思っております。

(以上)