石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年7月10日

(平成27年7月10日(金) 8:52~9:14  於:合同庁舎8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 週末、北海道へ出張の予定であります。11日土曜日は日本最北端稚内市で講演とシンポジウム、翌12日午前中は、これは就任以来言っていることですが、北海道には村立高等学校、町立高等学校というのが存在をしておりまして、そのうちの一つであります、おといねっぷ美術工芸高等学校を拝見するということになっております。ここは人口800人の村なのでありますが、毎年全国から40名もの高校生が入学をするという非常にユニークな学校でありまして、音威子府村民の方々の相当部分がこの高校の関係者であるということであります。また、国会情勢が許すようなことであるならば、12日午後から13日午前中にかけて夕張市に参りたいと考えております。
 夕張市は全国唯一の財政再生団体でありまして、非常に厳しい状況の中で、若い新市長がコンパクトシティの形成、新たな産業の創出などに積極的にチャレンジをしておるわけであります。地方創生との関係もございまして、何としてもこの夕張市は見たいと思っておりました。夕張市に参りますことで現地の視察並びに現場でのいろいろな実践をしておられる方々、そういう方々のお話をお伺いをし、厳しい環境に置かれた地域の今後の在り方について施策を検討する上にプラスにしたいなというふうに思っておるところでございます。
 以上です。

2.質疑応答

(問)週末の出張なんですけれども、特に夕張市なんですが、大臣、財政再建という意味では、海士町にも訪れまして、今回、夕張市を訪れるわけですけれども、この両自治体を比較されていろいろ考えられると思うんですけれども、改めてこの出張の意義と、特に夕張は自治体職員も不足していて非常にマンパワーも足りていない自治体かと思うんですけれども、こういった現実をどう捉えて政策に生かされるお考えですか。
(答)夕張市はかつては炭鉱のまちとして栄え、ピーク時は人口が12万になんなんとしておったということであります。それから炭鉱の閉山、急速な人口減少等々が起こり財政破綻をしたわけでありますが、炭鉱として栄えたまちが閉山によって厳しい状況に置かれているというのは何も夕張市だけではない、ほかにも九州にもそういう地域はあるわけであります。夕張がこのような状況に陥ったというのは、いろいろなリゾート開発等々ございました。あるいは自治体の不適切な財政状況の把握、発表の仕方もございました。
 地方創生というものを考えるときに、もちろん自治体の頑張りということで総合戦略をお願いしておるわけでありますが、国としてこういうような自治体に対していかなる支援をすべきなのかということであります。
 海士町の場合には、ほかと変わらず公共事業が減る、あるいは交付税が減るというような状況の下でどのようにしてその町を創生していくかという、ある意味全国共通なテーマがあったわけですが、それだけにその取組は非常に価値があるものだと思っていますが、夕張は少し事情が違うのだと思っております。この急速な人口減少の中において、延びきったインフラ、公共住宅でありますとか、あるいは、それを支える道路、下水道等々、コンパクトシティという観点からどのようにしてそれを集約化していくか、その合意形成をどうするかという問題とともに、夕張市でもう一つの問題は、お医者さんが1人しかいないという時代があったわけで、医療をどうするかということがあります。コンパクトシティというものを考える上において、自治体でどこまででき、国としてどのような支援をするのかという観点も、この夕張市を考える際に加味されようかというふうに思っております。実際に行ってみないと分からないところってたくさんありまして、できるだけきちんと事前に資料を通読をして視察に備えたいと思っておるところでございます。
(問)話題変わって恐縮なんですが、自民党の参院が選挙制度改革をまとめて、大臣御出身の鳥取県、島根県、併せて高知県、徳島県の合区案をまとめました。一方で、該当4県の議員が合区反対ですとか、採決時に党議拘束を外すことを求めているということですけれども、改めて大臣の御所見をお願いいたします。
(答)この問題の出発点は、日本国憲法上、衆議院、参議院に何らかの機能の分化、あるいはその議員選出方法について記述があるわけではない。国会議員は全国民の代表者であるという記述があるのみでございます。論理上は衆議院が一票の格差を1対2で収めるのならば、全国民の代表者たる参議院もそうあるべきではないかというような考え方が最近主流であって、過去の判決は、1対3以上でも許容していたものがありますが、近年の最高裁判決はそのような流れだとは承知をしておりません。そうしますと、やはり憲法を頂点といたします我が国の統治機構法体系の中にあって、この問題は避けては通れないのだろうと思っております。憲法上の要請というものは、可能な限り満たすような努力を我々立法府の人間としてしなければならない。では、その手法として合区というものが唯一絶対の回答かといえば、それはそうではないかもしれない。あまり議論が成熟したとは思えない状況で合区というものが取りまとめられたことに対する参議院のいろいろな考え方、当該区の方をはじめとしてあることは事実だと思っております。これは参議院のお話だからねとか、あるいは鳥取県、島根県、高知県、徳島県の問題だからねということに矮小化すべきものだとは考えておりませんで、そういうような観点から合区というものに、今言われております当該県としてはなお納得をしていないという状況だと思います。
 我々は衆議院議員ですけれども、やはり同じ地域から選ばれているということからするならば、その点についてなお問題点なしとしないと思っております。これは閣法ではございませんので、内閣として決定するということであれば、今後、大臣の立場として内閣の決定というものに従わねばならないし、それが成就されるように努力をしなければなりませんが、議員立法ということからすれば、今申し上げたようなことになろうかと存じます。
 やはり仮に合区ということになったとしても、その対象県から国会議員が出ないということはあってはならないということだと思いますし、冒頭申し上げましたように、憲法に由来します問題であるだけに、これは私は前から言っているのですが、自由民主党の憲法改正の議論の中で、この問題があまり詰めて論ぜられたわけではございません。憲法改正というものが具体的な政治日程として取りざたされている状況において、やはりこのことについて党としてきちんとした成案を得るべきではないかと思っております。
 以上申し上げましたことは閣僚として申し上げているわけではなく、一議員として申し上げておるということは付言させていただきたいと存じます。
(問)合区の話で関連してお尋ねしたいんですけれども、今、大臣がおっしゃられました、議論が成熟ということについてなんですけれども、この合区の話を取材していきますと、結局、1票の格差が、4倍とか3倍になるとか2倍になるとかという、単なる数合わせでしかないとも思っております。合区の該当区域に暮らしている者からしますと、今回の議論は、定数のこととか比例のことについても話題にならずに、単に人口が少ない地方に対する狙い撃ちのようにも感じております。今は、その前に衆議院と参議院、二院制として国会で果たす役割とか、そもそもの議論こそ今すべきではないかというふうに考えているんですが、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)というようなことを申し上げたつもりなのです。ただ、民主主義であります以上、1人が2票以上持ってはならないというのは私は大原則だと思っているのですね。
 例えば、憲法改正の発議を行うという、国会議員として最も重要な役割がございますが、憲法改正という極めて国の根幹に関わることを1対4とか、そういうような格差がある下で発議していいんだろうかということは、私は20数年前からずっと感じていることであります。地方の発展というものは、もちろん議員の数もございますが、そこはいろいろな、今やっている地方創生もそうですし、今までいろいろな政策によって、この地方をどのようにして衰退からそれを食い止めるかという施策は行ってまいりました。ですから、議員の数だけが全てだということだとは思っておりません。やはり世界中に二院制をとっている国はたくさんありますが、上院というものを、日本でいえば参議院ですが、それを地域代表として定めるというやり方は当然あるものだろう。そこに職能代表という者も入れるかどうかということになります。そうしますと、世界のいろいろな議会を全部知っているわけではありませんが、第一院と第二院、あるいは上院と下院、何と言ってもいいんですけれども、それがほとんど同じ機能を果たしているという二院制をとっている国は極めてまれであろうというふうに考えております。
 衆議院において小選挙区比例代表並立制が採用されましたことによって、さらに衆議院と参議院の選挙のやり方は近似してきた。参議院は間違いなく3年に1回選挙があるわけで、衆議院だって最近は2年に1回とかそんなことになりました。そうすると、毎年選挙やっているというような話になりますよね。そこにおいて同じような選挙のやり方で同じような役割を果たす院が二つあって─ということが国の在り方としてどうなのかという根源的な話は私はなされてしかるべきものだと思っております。
 では、参議院のほうが地域代表であり、解散総選挙がないとすれば、そういうふうに地域代表であるということと、解散がなく6年間任期は保障されているという特性を生かして、いかなることが参議院として衆議院に優越すべきなのかというお話は当然あるべきものでしょう。やはりそもそものお話をきちんとしなければいけないのではないか。そうしないと、どうしても選挙区のエゴであるとか何とかそういうようなお話に、これまたお話が矮小化されてしまうという危険性を私自身は感じておるところであります。我々、当該県の人間も、地域の利益だけ考えて言っているのではない、当然のことで、今の日本国憲法上、議員は国民全体の代表者ですから、そういうことは我々は心せねばならないことだと思っています。ただ、現状として、鳥取県、島根県だの高知県、徳島県だのというところがどんどん人が減っているということは事実でございますので、やはりそこにおける政治力というものをどのようにして担保するかという観点も、地域エゴととられないように私どもとして注意をしながら発言をしたいと思います。
(問)今の選挙制度のことなんですけれども、この選挙制度の問題は、関係各党もやはり利害関係が絡んで合意形成に非常に時間がかかる案件だと思うんですけれども、また自民党内でそもそも論から議論を始めますと、来年に予定されている参議院選挙などに果たして間に合うのかというようなことにもなっているんですけれども、大臣のスケジュール感というのはどういったこととをお考えでしょうか。
(答)私は、御指摘のように、そもそも論というのはそもそも論であるだけに、非常に時間がかかることだと思います。ただ、時間がかかるからといって議論を始めなくてもいいというのは、それは本末転倒な話であって、私どもが若いころ、衆議院の選挙制度改革をやっていたときに、自民党の選挙制度調査会あるいは政治改革本部-政治改革本部は今は亡き伊東正義先生が本部長でいらっしゃいました。後藤田正晴先生が代理だったと思います。選挙制度調査会長は羽田孜先生であったと思いますが-そこで、衆議院の選挙制度だから参議院は関係ないという話ではなくて、全議員参加の下で、本当に何年かにわたって侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論があったと記憶をいたしております。やはり自由民主党というのはそうあるべきではないのかなと、党員の一人として思っております。
 来年間に合うかというと、周知期間もございますし、また、候補者の選定もございますので、相当の困難を伴うということは念頭に置かなければなりません。そうすると、どうせ来年に間に合わないんだからという話ではなくて、もうその次の選挙というのは4年後には来るわけですよね。そうすると、4年後まで視野に入れて、とにかくきちんと成案を得るんだというと、何を言うかと、公明党さんもあるのだと。自民党は衆参で3分の2を持っているわけではない。そのとおりです。でも、そこは3分の2を持っていないんだから議論しないということではないのではないでしょうか。それが党の党利党略を超えて国家のために必要なことであるということであれば、それはほかの党の賛同も得られるということを最初から捨象(しゃしょう)してお話をすべきものではないと私は思っております。
(問)選挙制度の関係なんですが、昨日、合区の対象県選出の議員から、「地方切り捨て」という言葉が結構聞かれました。合区対象県も今、地方創生の取組を一生懸命やっておられるんですが、地元への説明も余りしっかりとしたものがないまま、昨日、合区の合意というものがなされたわけですけれども、この地方創生の取組に影響があってはならないと思うんですが、大臣のその辺のお考えというのはどのようにお持ちでしょうか。
(答)ですから、地方創生担当大臣という閣僚の立場でこの問題に余り発言するのは適切ではないと思っているので、一議員としてというふうに先ほどから申し上げております。当該県の議員は竹下大臣であり、山口大臣であり、中谷大臣でありということで、不思議なことに、それぞれの県から一人ずついるということになっていますが、やはり閣僚の立場というものを考えたときに、あまり「閣僚として」という発言は慎まねばならないと思います。地方創生という観点からすれば、今度の地方創生というのは、あくまで主役は47都道府県であり、1,718の市町村であるということだと思っております。しかし、その地方の政治力というものは減殺されるということイコール定数削減反対ということになるかどうか、そこは気を付けてお話をしなければならないと思っています。
 それから、これはいつも我々が悩むところで、憲法上の要請の1対2を満足するということと、そして地方の発展というのをどのようにして考えるか。政治改革の長い流れの中で、国会議員というのは国全体の代表者なのだと。地域の発展は地域の方々になるべく権限も財源も人材も地方に持っていき、国会議員の数によって地方の発展が左右されるということはあるべきではないというふうに私自身は思っております。極めてこれを言うのは地元でも厳しい話であることは百も承知をいたしておりますが、地方分権の本旨というのはそういうものではないのか。本来、知事あるいは市町村長あるいは地方議会というものが地方の発展に対して責任を負う、そういう形での地方分権というのは、その観点からも進められなければならないと思っております。
 国の大事を決定しますときに、やはりあまりに票の格差があるということになりますと、そこで決められた国の意思というのが国民の意思と乖離をする、そういうことは避けていかねばならないというのは国家として当然のことだと思っております。ただ、そういう議論をこれから先、していかねばならないのであって、来年、参議院選挙があるというときに、そんな議論を全部すっ飛ばして、とにかく人口は少ない順から鳥取県、島根県、高知県、徳島県、この4県が合区なのだという議論に対して、地方切り捨て論というのが出てくるというのは、やはり問題の設定の立て方、そしてまたそれぞれの地域の方々にきちんと納得してもらう手法、それを更に我が党として国民の皆様、特に当該県の皆様方にお示しする責任があると思っております。

(以上)