石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年5月22日

(平成27年5月22日(金) 8:49~9:09  於:合同庁舎8号館S106会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 地方創生推進を目的としたイベントを集中的に開催するということをスタートさせております。
 今週月曜日に「丸の内×限界集落」を行いました。多くの方の御参加を得て盛況裏に終わったところでありますが、明日の土曜日には、「日本創生のための将来世代応援知事同盟サミット」が岡山県で開催をされます。これは私も参加をするものであります。
 24日の日曜日、東京ビッグサイトで、平成27年度卒業見込み、今度卒業する人たちですね。そういう学生さんを対象とした日本最大級の就職説明会イベント「マイナビEXPO」が開催されるということであります。私も地方で働くことをテーマとするトークセッションに参加をしたいと、このように思っております。
 また同日、移住・交流情報ガーデンにおきまして、地元で恐縮でありますが、「とっとり移住フェア」というものが開催をされます。地方居住について移住経験者の方々とパネルディスカッションを行うことになっております。
 来週27日の水曜日、民間主導の地方居住推進に向けた国民会議が開催され、更に5月31日の日曜日、東京に在住の方に対しまして、地方居住の魅力を発信することをテーマとする「地方創生フォーラム」が東京ミッドタウンで開催をされるところであります。
 イベントを開催することを通じて更にこの地方創生に対する取組ということが国民的な機運として高まるということを目指してまいりたいと思っております。
 以上です。

2.質疑応答

(問)昨日、岐阜県と富山県の両知事が来られて、知事会の提言を大臣に提出されましたが、両知事、交付金の話とかに関してですが、財政健全化の議論があるのは当然なんだけれども、新型交付金を仮に作ったとして、一方で交付税が仮に減らされるとか、そういうどっちかができるから何かを削るということがあっては困るということを非常に強調されていたんですが、新型交付金の制度設計も含めて交付税との関係とか、この辺、大臣はどのようにお考えでしょうか。
(答)ともすれば、お話が、どちらを削ってどちらへ持っていってと、そういうことでは困るの、困らないのという話になるわけですが、かねてから申し上げておりますように、新型交付金とは一体何なんだということです。新型交付金の意義、そしてその制度設計というものがまず一番最初になければならないのであって、最初からあれを削って、ここへ持っていったら幾らできるとか、そういうお話だと私は思っておりません。
 昨日、両知事にもお願いをしたのは、新型交付金というのは補助金でもなく、地方交付税でもなく、地方単独事業でもないカテゴリーになるわけですが、それがなぜ必要なのか、それを行うことによって、例えばKPIの実現とか、あるいはPDCAサイクルの運用とか、そういうものが、このお金があることによって更に実現にはずみがつき成果が出るということがまずあるべきだろうと。だから新型交付金というのは必要なのだというお話から始めないで、最初からそういう財源の話をしてもしようがないということはお互いよくわかっているお話です。岐阜県知事も富山県知事も中央での行政経験も豊富で、財源論も、そしてまた国の立場も自治体の立場もよくわかっている人たちですので、新型交付金の設計、意義について、本当にお互いにいろいろな意見交換をしながら、まずその意義、制度設計というものを作り上げようということでありまして、そうするとこういうものが必要だよね、そうするとこれぐらいのお金が要るよねという話になって、そこから財源論の話になるわけで、最初から財源論の話とか規模の話とか、そういうことは私はロジックの立て方としていかがなものかなと思っております。
(問)大臣、先日の衆院の特別委員会で、この新型交付金の意義についての答弁で、地方が「稼ぐ力」をつけることが鍵になるというような趣旨のことをおっしゃっていましたけれども、この「稼ぐ力」ということについて、もう少し詳しく説明いただけますか。
(答)これは語感としてどうなのだろうと。「稼ぐ」、何だか銭が全てみたいな感じにとられると困るんですけど、地方自体がいろいろな取組を行うことによって経済が活性化をする。そしてまた、自主財源たる税収が増えていくということは極めて大事なことであって、国からの補助金、交付金、要するに、最初から国からお金が幾ら来るんでしょう、国からのお金が切れたらそれもおしまいです。それがなくなったらもうだめですという話ではなくて、例えば、いつもこの例を出して恐縮だが、海士町の「春香」という岩がきについて考えれば、最初に岩がきを冷凍して、そしてそれが1年前の物であっても2年前の物であっても生とほとんど遜色ないという、そういう冷凍の技術のセル・アライブ・システム、CASというんですが、これを導入するに当たっては農林水産省の補助金を入れたわけです。それがなければこれは動かない。だけれども、これから先、全国に売ることによって、やがてそれが雇用を生み、所得を生みということになっていくわけで、そういう補助金とかがあるけれど、それを使って何を実現しようとし、どのようにして税収を増やし雇用を増やしていくのかと、そういうストーリーが私は必要だと思っております。ですから、いろいろなものを作ることに意義があるというような箱物は、どちらかというと優先順位としては劣後するというのはそういうことであって、そういうものを作りました、雇用が生まれました、所得が生まれました。何年か経つと、それはほとんど使われておりませんというようなものよりも、先ほどの、例えば岩がきの事例のようなものがそれから先継続的に経済としてワークをし、「稼ぐ力」になっていくという、そんな感じで申し上げております。
(問)世界遺産の件についてお尋ねしますけれども、先日、韓国の朴槿恵大統領がユネスコの事務局長と会談しまして、「明治日本の産業革命遺産」の登録に反対する姿勢を伝えていらっしゃいます。今日午後には外務省で日本と韓国の協議もあるようですけれども、この問題について、大臣、改めてどのように御認識されていますでしょうか。
(答)ユネスコの事務局長というのは、本来これに直接関与する立場にはいないわけでありますから、そういうような意向を伝えるということにとどまっていたのかなというふうに思います。
 それはそれとして、非常に重要な隣国である韓国がどういうような立場で物を言っているのか、そのいろいろな背景は何なのか、そういうことを私どもとして、もちろん聞く耳持たぬという姿勢ではなくて、韓国がどういうふうに考えてこのような主張をしているのか、そして、韓国の外交を支えている韓国世論というものがどのようなものであるのか、それに対して我が国がどのようにして誠実に説明をし、真剣に理解を求める努力をしているのかということは、結果がどうあれ我が国としてはそうあるべきものだと思っております。多くの国々が世界遺産委員会の委員国として参加をし、基本的にコンセンサス方式ということになっているわけですが、日本国が誠実に真剣にこの問題に取り組み、韓国の理解を得るべく努力をしていると。もちろん私どもの主張というものがなぜ正しいのか、なぜ1910年ということに区切っているのか等々、我が国の方針を変えるとかということを申し上げているわけではありませんが、我が国が本当に韓国の理解を得るべく誠心誠意努力をしているということは多くの国々に御理解をいただく必要があるということだと思います。
(問)今の関連なんですけど、そうやって日本が努力している中で、今日、事務当局の話合いがある中で、そうやって韓国の大統領がこの問題を、いわゆる政治問題化するような発言等をしていること自体については、大臣、どのようにお考えでしょうか。
(答)政治問題化しようと向こうはしていると。私どもとしては、これがなぜそのような世界遺産としての価値を持つものであるのかという、その政治戦というものに私どもが妙に巻き込まれることがないようにしていかねばならない。しかし、韓国はこれを政治問題化しようとして、そしていろいろな方策を展開しているわけで、私どもとして必要なのは、先ほど御質問にもお答えしたとおりですが、日本として政治戦に巻き込まれることはないけれど、日本が韓国に対してどのように誠実に接しようとしているか、巻き込まれないということは、そういうような努力も必要になると思います。同じ土俵に上がることは決してしない。しかし、韓国の民主主義によって選ばれた大統領が、そういうようなことを強く主張している。国民の支持という正統的なプロセスによって選出された大統領ですから、それがやっておられることに対して、日本として誠実に対処していく。そこはもう政治的な争いに巻き込まれることはない、巻き込まれてはならない。しかし、同時に、韓国に対しても日本は誠心誠意対応しているということがまた多くの共感を得るために必要なことだと、私自身はそのように考えております。
(問)衆議院の特別委員会でも議論になっていたんですが、過疎化が進む地域の学校の在り方についてなんですけれども、総合戦略アクションプランの中でも、こういった小規模校の維持に関しては、この取組を支援したいと書いてあるんですけども、具体的にこれからの施策だとは思うんですが、大臣の中では、こういった小規模校、統廃合が進む中で、どのように維持すべきだとお考えになられますか。
(答)国としても昨年末に、単に統合ありきではないと考え方を整理しているところです。しばらくその運営を停止するけれども、休校という形にして、そこがやがて再開されるために努力をしようとか、そういういろいろなバリエーションを設けて、自治体が選択をする、その選択に対して支援をしていくということだと思っております。私自身は、やはり小学校とか中学校とかそういうものがなくなったところで、地域が活性化したという例を寡聞(かぶん)にして知らないので、やはり学校というのは基本的に残すべきものだろうと思っている。しかし、財政的にどうしてもそれが立ち行かないということになったとするならば、例えば、休校になった学校でも、例えば何とか町立何とか中学校とか、何とか村立何とか小学校というものに対するアイデンティティはやはりすごくあると思うんです。そうすると、休校ではあるけれど、その校舎を使って、そこにおけるいろいろな地域のコミュニティ活動が行われる。あるいは、小学校とか中学校があるところ、あったところですから、「小さな拠点」足り得るところだと思いますね。そこにおいて、例えば夏休みとか春休みとか土曜、日曜に子供たちが集まる。あるいはそこにおいていろいろな、例えばコンビニですとか、あるいは移住する人のお試し施設であるとか、それをどうやってこれから活用し、地域創生の考え方から言えば、やがてそこにまた学校ができるというのが大事なことだと思うのですね。これは海士町のみならずいろいろなところで取り組んでいることであって、徳島県の伊座利という集落があります、小さな漁村集落ですけれど、そこも本当に人が全部合わせても200人いないような小さな集落にどうやって外から子供あるいは親御さんを呼び込んでいくかということ。学校を統廃合したとしても、そこのインフラをこれから先どうやって活用するか、それはなくすとかなくさないというのは自治体の判断で、国が地方の財政を捨象して、統廃合はけしからんという立場にはないわけです。それを使ってどうやって地域を再生していくのかということに学校のインフラ、あるいはそこの人たちの気持ち、子供たちのアイデンティティの共有、そういうものを生かしていくべきじゃないかなと思います。
(問)冒頭の「とっとり移住フェア」のお話に何らかの関係はあるのかもしれないんですけど、大臣の御地元の鳥取県に週末、ついに大手コーヒーチェーン店が出店されるそうで、「スタバはないが砂場はある」、それを言ってきた御地元としては、今、平井知事をはじめ大層盛り上がっていらっしゃるようで、その盛り上がり振りへの御感想と、こうした今の盛り上がりをどのように活性化に生かしていけるかなど、もしございましたらお聞かせください。
(答)別にスターバックスがないからその地域はだめだとかそんな話ではないが、やはり平井知事の「スタバはないがスナバはある」という、あの言葉のインパクトが大きかったんだろうというふうに思います。ただ、非常にローカルな話で恐縮だけれども、鳥取において戦後何十年と続いてきた老舗の喫茶店が1年ぐらい前に閉じてしまいました。スタバが来たぞというのが大盛り上がりになるのは、それはそれでいいんですけど、それを逆手にとって、これだけ鳥取県の存在感を発信するというのはいいことです。いいことなんだけども、日本国中同じようにスタバがあります日本国中同じようなコンビニチェーンがあり、日本国中同じような量販店があり、どこへ行っても同じものがありますねというのは、それなりに価値のあることだけど、そこに行かなきゃないもの、そこに行かなければ会えない人、そこに行かなければ享受できないサービス、「今だけ、ここだけ、あなただけ」というのは、それはまた別途やっていかなければいけないものなんじゃないでしょうか。鳥取県にスタバがない、もう二度と鳥取には行かないという人が本当に出現するかというと、私はそれはそんなにいないんだろうと思うんですね。だから、私も鳥取で育っていて、大手ハンバーガーチェーンとか大手フライドチキンチェーンとか、そういうのが来たときは正直言ってうれしかったですよ。鳥取にもマックが来たんだとか、鳥取にもケンタッキーが来たんだとか、別に特にそういうような社名を挙げることに意味はありませんが。それはうれしかったことは事実なんです。だけども、やはり「今だけ、ここだけ、あなただけ」というものをやはり考えていくということが、私は地方創生としては一つのポイントなんだろうねというふうには思いますが。
(問)関連ですけど、では、じゃあ、もうこのまま「スタバはないけど砂場がある」と言い続けたほうがよかったかなというところもおありですか。
(答)という意見は鳥取県の中にはあります。私がいいとか悪いという話では全然なくて、立場にもないし、だから、どうしてもスタバが欲しいな、スタバのコーヒー飲みたいなという人がいれば、それはそれであっていいことじゃないでしょうか。だから、スタバがあるとかないとかそういう問題じゃなくて、そういう一つの現象を逆手に捉えて情報発信をするという、その知事の発想力は私はすごく敬意を表するものであります。ただ、地方創生の本質は、そこに行かなければないもの、会えない人、会えないサービス、そういうものがないと、交通網の発展ということがかえってストロー効果みたいなものを誘発してしまうことになりはしないだろうか。やはり高速があり、高速鉄道があり、飛行機があるということは、それを使ってもっと魅力的なところへ行くことも可能にするわけであって、だから、交通網さえ整備されれば、その地域が発展するというのは全然間違いであって、それを作るとともに、そういうような魅力というものを併せて作っていく。私、地方創生としては、そちらの議論というものを決して看過すべきではないし、個人的にはそちらのほうが重要だと思いますけど。

(以上)