石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年2月10日

(平成27年2月10日(火) 10:06~10:30  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨

 先般の参議院の決算委員会で、政府関係機関の地方移転について、総理から答弁があったところでありますが、もう一度、御説明を申し上げます。

 政府関係機関の地方移転の今後の進め方でありますが、遅くとも今年度末までに、各府省庁が所管をしております研究機関、研修所等のリストを作成をし、道府県に対して方針を説明し、誘致提案の募集を行います。2015年度におきましては、道府県等が地方創生に資すると考えられる政府関係機関について、誘致のための条件整備の案を付して提案を行い、その提案について、まち・ひと・しごと創生本部においてその必要性や効果につき検証した上で、移転すべき機関を決定をし、2016年度以降、その具体化を図るというスケジュールでやってまいります。

 総合戦略におきましては、2014年度内に、各府省庁が所管をしております研究機関、研修所等のリストを作成し、道府県に対して方針を説明し、誘致提案の募集を行うということは盛り込んでいるとおりですが、できるだけこれは前倒しをして実施をしていきたいというふうに考えておるところでございます。できるだけ年度内の早い時期に実施できますよう、公募をスタートさせたいというふうに考えております。

 民間に対しまして移転をということで、税制等々措置をするところでございますが、民間にそういうことを言うからには、では政府は一体どうなんだということがございます。ただ公と民間と当然異なるものでありますので、公については、優遇税制とかそのようなお話には全然ならないのでありますが、これも政府のほうから押売りをするようなお話ではなく、それぞれの道府県がお考えいただいて、こういうものがうちの県にほしいのであると言っていただくということがステップとしてはよろしいのではないだろうかと考えております。私どもとしてそれぞれの機関がどういう機関なのかということをお示しをし、こういうものがございますと。例えば某県は、ではこれをうちの県に来てもらえば、今東京にあるよりもはるかにいい仕事ができます、なぜならば、ということを言っていただくのは、それぞれの地域なのだろうというふうに考えております。「隗より始めよ」という言葉を余り乱発するつもりはありませんが、民間にそういうことを申し上げるからには、政府はどうなんだろうということで、このような考えに至ったものでございます。

 以上であります。

2.質疑応答

(問)今の移転のお話なんですが、公募できる道府県というふうに大臣おっしゃいましたが、首都圏の県というのは、余り移転先としては想定されていないんでしょうか。その辺のお考えをお聞かせください。
(答)いや、別にそれは埼玉県でも神奈川県でも千葉県でも栃木県でもよろしいんでありますが、筑波研究学園都市というものをつくりましたときに、相当の部分が移転をいたしました。今から25年ぐらい前にいろいろな研究機関を移転をしたのですけれども、それはそれなりに効果はあったと思いますが、ほとんどが首都圏に限られておったということだと記憶をいたしております。でも、そこへ勤める人々は、通う先が霞が関から横浜になりましたとか、霞が関から埼玉の某市になりましたとかそういうことで、地方移転という名にそれがふさわしかったかなと。もちろん効果が大きく発現をしたものもありますが、要は家は変わらず、勤務先がちょっと移動しただけみたいなところもあります。ですから、首都の周りの神奈川県とか埼玉県とか千葉県とか、そういうところを排除するものではありませんが、それがどういうような効果を発現するのでしょうかということも含めて、私どものほうで検証させていただきたいと思っております。
(問)関連なんですが、早ければ2016年度というか、2016年度以降に実際に移転の動きになっていくと思うんですが、移転する規模というか、何件ぐらいとかという想定は今の時点でありますでしょうか。
(答)特別に今のところ持っておりません。いっぱい手が挙がれば、それはそれでいいなと思っております。これやってみないと分からないことでありまして、政府関係機関も地方移転するべきだと。それは総論としてはそうなのでしょう。でも、その次になぜここへ来たほうがよりよいのか、あるいは来るに当たっては、土地も要るでしょう。あるいはそこへ人が移ってくるからには、これは民間でも一緒の話なんですけれども、教育環境をどうするとか、いろいろな医療、福祉の関係をどうするとか、それも単に移転すればいいということではなくて、そこの地域へ移転したほうがよりよいのだと。少なくとも今東京にあるものと同等ないし、それ以上の効果があるのだということは、それぞれの地域でなければ分からないことでございます。あるいはその地域にどのような関連の産業があるのか。研究機関とすればいろいろなものがあるわけです、そうすると、全くそれに関係したところが何もないというようなものがぽんと移っても、それはかえってよくないこともあるのかもしれません。それは地域が一番御存じであり、その地域の特性に応じて、こういうものが来たほうがより多くの効果が発現されるのだという御説明は、その地方においてしていただきたいなと、そうあるべきではないかと思っておるところでございます。
(問)移転に関してですけれども、地方に移転した際に、家族を伴って移住することがより効果が出ると思うんですけれども、こうした単身赴任を防ぐという言い方は適切ではないかもしれませんが、これはどのようにお考えなんでしょうか。
(答)そこは、その地域地域がお子さん、あるいは御両親に対して、教育、医療、介護、こういうような体制を整備しますよということだと思います。それは民間でも一緒のお話だと思っておりまして、それがないと、お父さん一人で行っていらっしゃいというようなことが多いわけですよね。いろいろな理由はありましょうけれども、やっぱり教育、医療、介護というようなことが単身赴任の一つの大きな理由になっていると思っております。企業についても答弁で申し上げましたが、税制優遇だけすればいいというものではありませんということだと思っておって、行く側が安心して意欲を持って行けるような環境というものを、受け入れる側においても整えていただきたいということでございます。
(問)移転の対象となるのは、先程研究機関、研修所等いうふうにおっしゃいましたけれども、どういったものを移転するかによって、効果も随分変わってくると思うんですが、「等」というのは具体的にどういったものを念頭に置いていらっしゃるんでしょうか、
(答)「等」と申しましたのは、例えばこの間、石井正弘参議院議員の御質問でいえば、例えば文化庁は京都府にどうなのでしょうね、あるいは復興庁は福島県にどうなのでしょうねという御質問だったと記憶いたしております。文化庁とか復興庁とかいうものは、研究機関、研修所ではございませんので、「等」という言い方は、そういうものも包含した言い方でございます。
 ただ、例えば復興庁でいえば、これはたまたま国会でそういう質問が出たので申し上げているわけで、竹下大臣が預かっておられるところに、私どもがあれこれどこに行けとかあそこに行けとか言うような立場には全くないものでございます。そのため、「等」というふうに申し上げたのでありますし、文化庁は下村大臣が責任を持っておられる文科省の外局でございます。国会との関係、他省庁との調整等々ございます。復興庁の場合には独立した官庁、一元性を伴う、大臣官房を持っているわけでございまして、ではそれごと移せばいいという簡単なお話では全然ないわけで、それをメーンに出すことはいたしておりません。それで「等」ということを申し上げておるのですが、そこは国会との関係、他省庁との調整等々もよくよく勘案をされるべきものであります。
(問)関連ですけれども。これは自治体から公募ということで、例えば人気の機関が複数自治体から手が挙がって、偏った場合に、かなり政治的な判断に最後はなるかなと思うんですけれども、そうした場合にどう最終的に判断されるんでしょうか。その選考の過程についてどうお考えでしょうか。
(答)それはまだこれから制度設計をするものですが、そこは政治的な判断が行われて、より効果が高いところがそれよりも高くないところに劣後するというようなことは、間違ってもあるべきだと思いません。なぜそこに至ったのですかということがきちんと説明できる体制をつくらなければ、これはかえっておかしなことになると思っております。そういう政治的な思惑のようなものを排除をして、あくまでその地域へ移転したほうがより効果が発現するということが、客観的に示せるようなやり方でなければだめだと考えております。制度設計はこれからです。
(問)「総合戦略」のことについてなのですけれども、補正予算が成立しまして、これから各自治体で予算化されまして、それから今年は統一地方選がありまして、議会の日程も早まっているところが多いです。これから都道府県、市町村で具体的な議論が始まるところに来ているのですけれども、改めてこれから地方で、「総合戦略」についてどういう議論を深めてほしいか、考えを聞かせてください。
(答)先般来、地方創生フォーラムというのを行い、近畿あるいは九州地方、四国地方で開催し私が参りました。明日は、中国地方は副大臣に行っていただきます。また、一昨日、日曜日、秋田県において東北地方も平副大臣にお願いしたところであります。
 どこも大勢の方にお集まりいただきました。また、本日か昨日か、到着しておるかと思いますが、中央でやりましたいろいろな説明会もDVD化をいたしまして、自治体に発送したところでございます。
 まず「総合戦略」というものは何なのだと。何もぴたっと一致をしなくてもいいのだけれども、国が出した「総合戦略」に対応する形、やはり国の「総合戦略」と「地方版総合戦略」というものに整合性があるべきだという認識を持っていただく。そして国がつくった「長期ビジョン」、あるいはKPIに対応するものであっていただきたい。そこにおいてはKPIを設定し、そしてPDCAサイクルがワークし、なおかつ「産官学金労言」の体制というものができるべきなのだという話がまず総論としてあって、地方議会において、執行部に対して、どのような「総合戦略」を考えているのか。それぞれの会派でいろいろな御質問があると思いますけれども、我が会派としては、こういうようなKPIを設定するべきではないかと考えている。あるいはPDCAサイクルを有効にワークさせるためには、こうあるべきだと思っている。「産官学金労言」の体制をつくるにはこうあるべきだと思っているというような議論が、2月議会で交わされることを期待しています。いつかの御質問にもお答えしましたが、別に現職に有利だということを企図としているものではなくて、公平の観点から、今はもう議会でもケーブルテレビなどでどこでも見られるようになっていますので、その対抗される方が、「いや、私ならこうあるべきだと思う」というようなことが議論されればと思います。これは副大臣も同じお考えかと思いますが、あちらこちらの地方創生フォーラムに行って、本当に大勢の方が集まっていただける。本当に有意義な議論が交わされる。
 私、昨日、東京の三多摩の我が党の議員さんがお集まりの会でもお話をしてきましたが、「なるほどこういうことなんだ」というのが首長さんのみならず、議員さんにもだんだん浸透しつつあると思っているのです。
 やはり御指摘のように、県議会や市町村議会において、そういう議論が交わされる。そしてまたそれを経た上で、統一地方選挙が行われるということは、実に有意義なことだと思っておりまして、御指摘は多分タイトな日程の中でということもあろうかと思いますが、さればこそ、昨年末に国の「総合戦略」、そして「長期ビジョン」を発表し、そして解散の直前に創生法というものを成立させたということで、私どもとして、もちろんまだまだ努力の余地はありますが、これはどういうものなのかということを御理解いただく。理解したところは、これは大変なことらしい。まさしく自治体の力、知恵、議会の知恵、力、これが試されるのだなという、そういうような強い認識を持っていただいているところは、着実に増えていると思っております。
(問)すみません、話が戻って恐縮なのですが、地方移転の件なのですけれども、先程各府省庁からリストをあげさせるということでしたけれども、これ、各府省庁がそれぞれ独自に移転できると判断したものをあげさせるのか。それとも意図に関わりなく、全ての該当する機関をあげさせるのかということと、それを普通にやるとできない理由ばかり先行して、なかなか難しいのではないかと思うのですけれども、そこをどう御覧になっているかと。変な話、ノルマ的なものは何か考えていらっしゃるのかなということをお聞かせいただければ。
(答)最初の御質問についてお答えすれば、それは各省庁の意向に沿って、ここは出せる、ここは出せないみたいなことではなくて、それぞれの全省庁が持っている関係機関は、悉皆的に全て出していただくということでございます。
 それを見て自治体が、「ああ、それであるならば」と関連する企業群というか、産業というか、それがうちにあるのにとお考えいただく。もともとそれが候補にも上ってこなかったでは、地方の知恵も何にも出てくるものではございません。ですからそれは網羅的、悉皆的に出すということでございます。
 ノルマとかいうものを課すつもりはございません。遊びでやっているわけではないので、本当にそれが国民生活に資するものであると、あるいは地方創生に資するものであると。平成の初めにそういうことをやったときとは、また状況は随分変わっているわけです。首都への一極集中というのは更に進んでいるということがあります。あるいはITの飛躍的な進歩によってテレワークとか、そういうものが相当に可能になった。何しろ平成の初めから30年近く経っているわけで、あちこちに新幹線も走り、あちこちに飛行機も飛んでいるわけで、そこは、事情は全く変わっているのだと思います。
 ですからその新しい時代に即応した、そういう分散・移転というものが、正に地方からアイデアが出てこなければだめだと思うのです。中央から「はい、これ、どうですか」「これを受け入れてくださいよ」ではなくて、地方の側から「これはうちに来たほうがいいよ」という、それもやはり地方の創意工夫だと思っております。ノルマを課すつもりはございません。
(問)農協改革ですけれども、昨日、政府与党とJAのほうで合意しましたが、地方創生の観点から農業の振興は非常に重要になりますけれども、大臣、今回の案をどのように評価されているかと、地方創生に資するようにしていくには今後どのようにしていくべきかをお伺いします。
(答)これはもう長年の懸案であったわけで、私が政務次官や副大臣をしておった当時ですから、もう20年も前のお話。そのころから農政の課題というのは、農地をどうするかということと、農業団体をどうするかということなのだという認識は、強く関係者の間では持っておったところでございます。
 しかしいろいろな事情があり、今まで抜本的な改革というのはできないできた。私が農林水産大臣のとき、農地法は第1条も含めて、いわゆる自作農主義というものをどうするかということですが、そのときに改正を見ましたが、農業団体については、いろいろな事情があり、今日まで抜本的な改革というものが実現しないままに推移したということです。
 もちろんこれはまだ公明党の御審議を経て御了解をいただかなければ、政府与党の案ということにはなりませんが、総理あるいは西川大臣、あるいは党においては、林さんや斎藤さんや吉川さんや、そういう方々の決然たる意志と地道な調整の上に、こういう案が現状のようになっているということは、長く農政をやってきた者の一人として、極めて画期的なことだと思っております。
 これから実は条文化をどうするかということになるわけで、私個人の認識から言えば、農水大臣のときに、地域マネジメント法人というものがあってしかるべきではないか。これはいつもお話ししているとおりです。市町村合併によって、そういう地域をフォローする力というのは、かなり落ちつつあるというのが現実でございますので、地域マネジメント法人というものをつくり、そこにJAというものがどういう形で参画するかということで、立法の準備作業を始めたところで政権が変わってしまったわけです。
 また、自民党の政調会長のときに、参議院の公約をつくるに当たって、JAこそ地域の担い手というふうに書きましたのは、まさしくそういう含意があってのことでございます。そうすると産業組合、職能組合としてのJAと、地域組合としてのJAというものをどう考えるか、その構成員というのは誰であるべきなのか、協同の理念というのは何なのかということについて、実は私はそこが本質論だと思っておりまして、そういう問題に知悉された方々、あるいは関係の方々で精緻な議論が今後行われ、それが条文改正という形になって上がってくるのだろうと思います。
 准組合員の問題については5年間ということが付されているわけでございますが、農業協同組合法第1条にいうところの「農業者」というのは一体誰なのだろう。地域組合としてのJA、あるいは産業組合としてのJAというのはどういうものなのだろうというのは、かなりそもそも論のお話なのですけれども、実はそこが議論の本質だと思っていまして、西川大臣あるいは農水省の方々も、そういうことはよく御存じのことでございます。地域においてJAが果たしている役割、何かネガティブな面ばかり言われますが、やはりポジティブな面を、これから先どのようにして制度として位置づけるかというお話が、今後、重要になるのかなというふうに思います。

(以上)