石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年1月27日

(平成27年1月27日(火) 11:04~11:22  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨

 お待たせしました。

 第2回養父市国家戦略特別区域会議を先程終了したところでありますが、本日は、認定申請を行う区域計画案を議題として議論したところであります。

 この件につきましては、農業生産法人に係る農地法等の特例等の計10の事業を盛り込み、議論いたしました。議案のとおり総理大臣宛て認定申請を行うことを決定した次第であり、本日午後開催予定の第11回国家戦略特別区域諮問会議の御意見を聞いた上で、認定の手続きを速やかに進めることになります。

 また追加すべき規制改革項目についても併せて議論を行い、市長から4つの規制改革の提案がありました。今後実現に向けて、関係省庁と協議を進めることになります。

 以上です。

2.質疑応答

(問)今日、会議に出席されていた新鮮組の岡本社長がいらっしゃると思うのですが、新鮮組の岡本社長に期待する点、役割はどうお考えでしょうか。
(答)岡本社長は、何のためにこれを行うかというと、その地域における方々に所得をもたらすことであるということを強調しておられたと記憶しております。
 すなわち、日本の農業地域や、中山間地というのは、非常にいろいろな条件が整っている。いろいろなインフラが整っているので、そこにおいて、企業が参入することによって地域に雇用をもたらし、地域に所得をもたらすということでありました。日本の農業というのは、私もその分野に携わって長いのですが、自作農主義といいますか、自ら耕作する者というようなことがかなり徹底しており、企業参入というものが阻まれてきた点があります。
 そうであるがゆえに、いろいろな資源を生かし切れずで、中山間地の衰退というものが現出しているわけであって、それを今回の新鮮組等々の取組によって、変えていくことができる、そのチャレンジだと思っております。
 ただ、企業が参入さえすれば、中山間地は活性化するかというと、そんな簡単な話ではなく、さらにいろいろな課題があると思いますが、熱意を持って、国としてもその熱意は踏襲したいというふうに思っております。
(問)特区ではないのですけれども、地方分権改革の農地転用のことでお尋ねしたいのですけれども、今、見直し案が与党プロセスに入っていますけれども、分権と農地の確保というのに、かなり両方バランスをとることに配慮した案というふうにお見受けしておりますが、大臣としてどういうところに心を配られたのかということを教えていただきたいのと、あと、分権が進むとするならばですが、自治体のほうにも、かなり農地確保の責任が出てくるのかなというふうにも考えておりますが、その辺についてもお考えをお聞かせ願えればと思います。
(答)これは御指摘のとおりでありまして、現在、与党との調整を進めているところでございます。その調整状況は御案内のとおりであって、いかにして農地というものを確保するのか、それは国として、自給率と言おうが自給力と言おうが、そういうものの維持、向上というものを政策として掲げている以上は、国の関与というものが全くなくていいというお話にはならないであろう。そしてまた、地域の状況というのは、地域の方が一番よく知っているのであろうということです。
 では、どのようにして優良農地を確保するのかという点において、国あるいは自治体間の調整メカニズムをどのようにしていくのか。また、農地転用というものは、極めてテクニカル、難しい話であって、そういうような場合に、自治体が判断に迷うようなことがあってはならない。
 今回の件は別に規制を緩めようとか、そういうお話では全くないのであって、権限を自治体に移譲するということになりますが、そこはいかなる責任を負うのか、そしてまた、いかなる知見を与え、そしていかに国あるいは都道府県との連携を図っていくか等々、かなりそのあたりに意を用いたものでございます。
 やはり見識、能力のある自治体、市町村というものに権限が移っていくということになりますけれども、そこにおいて適正な判断がきちんと行われるということが極めて肝要なことであって、私としては、国の責任というのは、そういう面においても果たされねばならないものだと考えております。
(問)特区の関係に戻りますが、本日、会議資料4にも出ているのですけれども、参加された方の中で、農業生産法人について役員要件や出資要件について、更なる緩和が必要であるとの提案もなされておるようなのですが、この点については、大臣の御見解はいかがでしょうか。
(答)これは、いろいろと試行錯誤を重ねながらやっていくことになります。これから決定することになりますけれども、今回の養父市の取組、それだけでも相当の前進だというふうに考えております。
 私もこの議論は農林水産大臣当時、随分、農地法の改正をめぐって答弁をしたことでございますけれども、一方において、では農地というものがきちんと保全をされるのか、そこにおいていかなる抑止力が効くのか。そういう場合に行政において、もちろん議会の関与の下にですが、例えて言えば、罰則を設けるとか、あるいは農地を買い取るとか、そういうことがある得るわけです。そういうふうに要件を緩和するということ自体、私は全く否定をいたしません。そうあるべきものだと思います。
 しかしながら、それが世の中、性善説ばかりに立っていても議論はできないので、そうではなかった場合にいかなる抑止力が機能し、いかにして農地が保全されるかということと、一方において冒頭の御質問にありましたように、これだけいろいろな宝の山というか、そういう日本の中山間地なるものを雇用と所得の場として、再生するということのはざまにあって、この議論は進めていくべきものだと思っております。
 まず、これから先のいろいろな規制緩和に当たっては、今回のスタートというものが、どういうような成果をもたらすのかということをきちんと見るということが肝要かと存じます。
(問)特区のうち、配付資料の3ページにある区域計画の変更内容の説明の中で、3番に今回の実施が特区に及ぼす経済的、社会的効果という記述があるのですけれども、これの意図するところを教えていただきたいのですが、例えば地方創生特区の指定等の話もありますけれども、養父の取組をそういう地方創生特区と位置づけるという意味合いで書かれているのか、どうなのでしょうか。
(答)今回は、国家戦略特別区域ということで指定しているわけで、地方創生特区とはまた別の議論でございます。これはそこに記述がございますように、「効率的、先進的な生産に取り組む」ということで、農家の方々が、高齢化が進む中にあって、つくったらJAに出して、それでおしまいということであれば、六次化というものは行われない。そして六次化を行うというのは、そのこと自体が自己目的ではなくて、いかにして農家の所得を増やすか。付加価値を上げ、コストを下げ、という意味での所得というものをどうもたらすかということでございます。
 と同時に、農業者自らも農畜産物の利用拡大に取り組むというのは、そういうことによって、農家の所得が増えるということです。そして所得が増えることによって、今、高齢化が進んでいる中にあって、農業の人口構成というものがサステナブルになる。サステナビリティを取り戻せるか。それだけもうかるのだったら、「跡継ぎやろうね」とか、それから昔からあるお話で、やはり言い方は変なのですが、私が最初に議員になったころに農林部会で交わされていた議論は、もう30年近く前のことですけれども、サラリーマン的農業者というのですか、背広を着て出勤したい、背広を着て帰りたいというようなことで、私、「へえ」と思った記憶が今でも鮮明にあるのですが、新しい雇用形態、あるいは新しい農業者のライフスタイル、そういうものが出てくる可能性というのはあるのだろうと思っております。
 ですから、今回の取組というものが、今までの農地、農業者についての考え方を変革する、そういう要素を含んでいると思っておりまして、そういう位置づけだと私は理解しているところでございます。
(問)大臣、先週末ですけれども、鹿児島県を視察されまして、地域活性化に自主的に取り組む「やねだん」というのを御覧になったかと思うのですけれども、こういった視察を今後、どう地方創生の取組に生かされていくのか、簡単にお伺いできればと思います。
(答)これはやはりどのように多くの集落あるいは自治体に、こういう例があるということを知っていただくことが必要なのだと思います。総合戦略の主体は、いつも申し上げておりますように、基礎自治体たる市町村なんだというふうに言っているんですけれど、この市町村と集落との関係をどう考えるかというのは、私にとって一つの課題を与えられたと思っております。
 これからあちらこちらでこの手のフォーラムというものをやり、副大臣、政務官、あるいは補佐官と手分けをしてあちらこちらの視察を行うわけですけれど、やはりこういういい事例というのが、「それはたまたまいいリーダーがいたからだ。」ということだと、もうどうにもならんわけですよね。どうやってそれを普遍化していくか、一般化していくかということは大事なことだと思っております。我々、大臣にしても、副大臣にしても、政務官にしても、補佐官にしてもそうですし、官僚たちもそうですが、そういうような実例を見るというのはとても大事なことだと思っておりまして、上からの押しつけという言い方はいかんが、やはり地方創生なるものは、ボトムアップであって、国は情報面、財政面、人的な面でそれをバックアップする、やればできるんですよということを我々が実感を持って実績を伴った形でこれから展開するためのいろいろな視察あるいはフォーラムの展開でありたいと思っております。
(問)関連なんですが、大臣、やる気のある取り組んでいる市町村とそうでない市町村に差があってはいけないとおっしゃっていますが、今の質問によって、基礎自治体対象に「総合戦略」をつくって交付金を与えますけれども、その中で、やる気のある集落と、やる気のないというとあれですけれども、取組が遅い集落とにどのように差をつけていくかというのは今のお考えで。
(答)やる気がないところがあるというのを前提にして物を申し上げるのはいかがなものかと思うのですが、いろいろなところを見ていて、やはり自信と誇りと熱意だと思います。ああ、もうだめだというふうに諦めているところが、そういう事例があることを知ってエンカレッジされるというのか、やればできるんだと思うところが私はたくさん出てくるような気がするのです。京都府においてもそうだし、あるいは熊本県においてもそうなのだけれども、紹介される事例というのは、やはりその地域における自信と誇りと、そして情熱というのか熱情だと思うのですね。私もいろいろなフォーラムにいろいろな仕事をして出ているのだけれども、正直言って、この間の九州・沖縄ブロックの地方創生フォーラムというのは実に充実した、実に啓発される会だったというふうに思っております。多くの集落にそれを伝えるということは我々にとって必要なことだと思っていまして、全国町村会長からも、そういう事例を紹介するような、そういうようなシステムをつくってくれというような御要望もございました。やはりそういう感動する事例というのは人を動かすんだと思うんですね。「やねだん」の豊重さんが言っていたのは「人を動かすのは金じゃない」。金がないからそんなことを言っているわけじゃなくて、「人を動かすのは金じゃないんだ、やはり感動なんだよ」というのは全ての人を動かすのに大事なことだと思います。
(問)所管外で恐縮なんですが、イスラム国による日本人人質事件から1週間経ちました。大臣、所管外ですけれども、今後、政府はどのようにして取り組んでいかれるべきか、お願いします。
(答)いわゆるイスラム国と言われている組織ですね、それを我々政府として、国として扱うようなことを申し上げているわけではありませんので、「いわゆる」ということを申し上げますが、政府の取組というものに対して、国民の皆様方の御理解と御支持をいただくということが極めて重要なことだと思っております。もちろんいろいろなお考えがございましょうし、我々はその御理解と御支持をいただくために更なる努力をしなければいけないのでありますけれども、国論が割れているということは、このような行為を行う組織に対して非常に好都合になるんでしょうね。だから、一貫して我々の政府が取っておりますのは、このようなテロは断固として許さないし屈するものではないということと、人命第一ということを、これを、どうやって両立させるかということで懊悩(おうのう)しているわけだけれども、このような政府の取組に対して、国民の多くの方々の御理解、御支持をいただくべく我々は努力をしなければならないし、それがそのような組織に対して我々が国際社会とともに対応していく一番大事な要素だと考えております。

(以上)