甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年8月25日

(平成27年8月25日(火) 9:12~9:30  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 私からは特にありません。

2.質疑応答

(問)世界的に株式市場で値下がりが続いております。今日、東京市場、先ほど日経平均株価が1万8,000円を割れたということですが、円相場も円高です。市場の状況、日本経済への影響をどのように御覧になっていますか。
(答)中国発、世界同時株安の状況になっております。日本におきましても株が売られ、安全資産として円が買われています。ということは、裏を返しますと、日本のファンダメンタルズがしっかりしているということの評価の表れでもあると思うわけです。円が現況下で資産として安全であるということは、日本経済がしっかりしていないと、そういう評価は得られないということにもなります。
 日本経済もアメリカ経済もファンダメンタルズはしっかりしておりますし、全体としては景気回復基調でずっと推移してきました。そういうことを踏まえて、冷静に市場の推移を見つめていきたいと思っております。
 中国におきましても、明るい材料はあるわけであります。冬季オリンピックが決定いたしました。これに向けてのインフラ整備計画もいずれスタートすることと思っておりますし、消費拡大・刺激のための何らかの策も、中国政府は恐らく検討されているのであろうと思います。
 いずれにいたしましても、世界経済の基盤について揺らいでいるわけではありません。冷静な対処が必要であると思っております。
(問)関連するのですが、ということは日本政府として、現時点で何らかの経済対策、株価対策のようなものは必要とはお考えではないですか。
(答)安倍内閣の秋の陣は、経済に再び軸足を置くということを申し上げてまいりました。好循環をしっかり回していくということ、投資について民間企業が思い切って踏み込んでいくこと、そのための環境整備をしていく等々を、官民対話を中心に展開していくということであります。
(問)今回の株安をリーマンショックの再来だと懸念する声も上がっていますが、リーマンショックと比較したときに、大臣は今回の世界同時株安をどう見ていますでしょうか。
(答)リーマンショックでは、世界的に経済のインフラである金融についての世界同時不安というものが広がっています。今回の場合は、中国の株価のバブル、つまり10か月間で2.5倍に株価が上昇した。それに対して調整局面がどの時点かであるということが、かなり急激に現れているということであろうと思います。中国政府もこれに対応すべく、適切な措置を今後ともとられていくと思いますし、何よりも不安が拡大するということが、不安が更なる不安を呼ぶということになりますから、経済の足元をしっかり評価して、冷静な対応が必要だと思っております。
(問)マイナンバーについて、前回の閣議後会見の中で、年金部分等の対応については、二つの検証結果を見ながら判断ということでしたけれども、その後、もう一つの第三者委員会の検証結果が公表されまして、それに対しての受け止めと、改めて年金番号への連結など、法案への影響があればお願いいたします。
(答)内部調査報告も第三者報告も、ほぼ共通しているように思います。仕組みとしての対応が必要なことと、それから内部規律に対する問題の両面です。システムとして改善すべき点とメンタルとして取り組んでいく点という二つが指摘をされているのだと思います。
 やはりシステム自身を、個人情報をインターネットから遮断するということについては、直ちに対応ができる問題であります。メンタルな部分という精神構造を、より責任あるものにしていくということについては、申し上げましたように、内規、内部規律の規律違反に対して厳罰に処すということ、併せてこれはモラルの問題でもありますから、そこは厳しい対処をしていくことであろうと思いますし、そういう対策が順次とられていくと思います。その状況を見まして、マイナンバーに対する年金部分をどう扱うか、同時進行で行くか、若干のタイムラグがあるかについては、今後判断をしていきたいと思います。
(問)株安、円高の話に戻るのですけれども、政府としては冷静に対応ということですけれども、日銀が追加緩和すべきというマーケット関係者の見方もあるんですけれども、大臣はどのようにお考えになりますか。
(答)それは、日銀が主体的に判断をされることであろうと思います。
(問)昨日の参院予算委員会で安倍総理が、日銀の2%物価目標に対して、原油価格が下落する中で達成は難しいという発言がありました。大臣、これに関してどうお考えかお示しください。
(答)それは、そのとおりであると思います。日銀の物価安定目標は、(CPI)総合でどのくらいを目指すかということだと思います。その大きな要素を占めているものが、半分以下に下落しているということは、当然、CPIに与える影響も大きいわけでありますから、それを無視した場合には、原油価格が戻ってきたときには、むしろインフレをどう抑えるかということと闘わなければならないということになっていきますから、そこは総理の答弁どおりでいいのではないかと思います。
(問)アベノミクスに引きつけて株安を考えたいのですけれども、アベノミクスは、一つは資産効果で、株高などを通じて個人消費等々が増えていくという回路が一つと、それから円安が発生することによって輸出が増えるということを期待していたのですけれども、中国の変調によって輸出はかなり厳しい状況になるのかということが1点と、資産効果もやはり株価が下がれば影響を受けるのではないかと思うのですが、この2点の回路がこれからも機能し続けられるのかということについて、大臣の御見解を伺いたいと思います。
(答)資産効果による消費の拡大というのは、確かにそのとおりです。しかし、これはあくまでも経済が進展していく連鎖の火付け役の役割であります。本来の姿は、企業業績が上がって内部留保を拡大し、それが賃金改善につながり、そして消費の拡大を起こし、それが企業業績を更に伸ばしていくという、これが経済の本来の姿です。デフレで凍りついている氷を解かす役割で、資産効果は起爆剤の一つにはなろうかと思いますが、巡航速度を支えていくということの主役ではないと思っております。
 輸出につきましては、よくJカーブ効果が現れていないということを言われますけれども、日本企業の輸出に対する、あるいは利益の取り方に対する戦略が変わってきているのだと思います。為替が安くなると、輸出価格を下げてシェアを拡大していくというやり方から、輸出価格はそういじらないで利益を確保していって、その利益をもとに投資を考えていくというように、企業の戦術が転換してきているのであろうと思っております。要は、それによって得られた利益を体質改善、企業の体質強化、そして新たなフロンティア開発に向けてどう使っていくかだと思います。
 生産性を上げるための投資については、今日、明日できることであります。未来投資については、基礎から実用化、市場化までをつなげていく国のシステムと合わせて機能していくようにしていかなければならないと思います。そういう意味では、いよいよ未来に向けての投資が動いていくように、アベノミクスで掲げています大きな柱、イノベーション・ナショナルシステムが具体的に動いていく。あるいはイノベーション・ナショナルシステムの医薬品、医療機器部門を切り離したAMED(日本医療研究開発機構)、これが基礎研究から実用化までを一気通貫でつなげていくという役割を果たします。これらの機能が稼働していくことと併せて投資を進めていくという方向性が、しっかりフォーカスが合っていくということが大事だと思います。
(問)そうすると、現状ではいわゆる好循環といいますか、日本経済の実体経済に対する動きは、今のところ限定的だと見ていらっしゃるということでしょうか。
(答)限定的にしなければならないと思います。投資家、企業経営者が過度に自己防衛に走って、内部留保をとどめ置くということにだけきゅうきゅうとしていると、事態はいい方向には行かない。ここで踏み出して、自らの体質強化とフロンティア開発に向けて、勇気ある一歩を踏み出していけば、それは好転していくということでありますから、政府としてもそういう環境をしっかりつくっていきたいと思っています。
(問)現状では政府が一部に、官邸周辺の人も補正予算みたいなことを言っている人がいるのですけれども、そういうお考えは今のところはないということですか。
(答)補正予算、経済対策は、必要なときに必要なだけということになるわけでありますけれども、アベノミクス秋の陣は、再度経済に軸足を置いていくということは、これは間違いありません。そういう中で大事なことは、民間経済を活性化していくということであります。つまり官主導経済は、あくまでも火付け役にすぎない。民主導の経済にどの時点で本格的に移行できるかということであります。
 アベノミクスの第一弾、第二弾はいわば金融で、財政出動で氷を解かす役割をやってきました。民間の、国家経済をはるかに上回る大きな規模の経済をどうやって動かしていくかということを取り組んできているわけでありますし、それが少しずつ動き始めていますから、この動きを止めないということが極めて大事だと思っております。
(問)市場に対しては、このような形でファンダメンタルズがしっかりしているので冷静になるように呼び掛けられているということですが、とりあえず今はそうすることで市場が自分で落ち着きを取り戻すことを待つ。何か他の国と協調したり、いろんな形でもう少し具体的な行動をとるというよりは、まずは説明して、市場が落ち着きを取り戻すのを見守る、そういう理解でよろしいでしょうか。
(答)日本としては、日本経済の足腰の実力をしっかり評価してもらうということと、それから今まで取り組んできました好循環に向けての動きを加速していくということだと思います。そのために政府がとるべき手だても当然あります。官民対話を通じて政府側への要請もあります。例えば法人税であれば、従来のプランを更に前倒しして進めてくれというような要望があるかもしれません。それにどう応えるのか、あるいは細かい税制に関しても、経営側と政府との対話の中でいろいろな環境整備の策が出てくるのだと思います。   できることはしっかりやっていきたいと思います。
(問)天津の状況についてどのような認識を持っておられるか。非常に混乱がまだ続いているような感じにも見えるのですが、日本側から中国と、やれるようなことがあるのか、あくまで中国に任せて事態を改善してもらうということなのか、どのような御認識でしょうか。
(答)あの種の事故への対応策、あるいは収拾策について、技術的な点での支援等々、協力要請が中国側からあれば、日本は積極的に対処してまいります。現時点で中国から日本に対するどの種の協力要請があるかということは、まだ私は把握をしておりません。

(以上)