甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年6月19日

(平成27年6月19日(金) 9:10~9:33  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 ありません。

2.質疑応答

(問)TPPについてお伺いします。米国の下院でTPA(貿易促進権限)法案が今回通過したようです。これについての受け止め、法案の中身が先週とは異なっているようですけど、ここの評価についてもお願いします。
(答)前回のTPA法案は、上院ではTPAとTAA(貿易調整支援)がくっついて可決されて、それが下院に下りてきました。下院では、このくっついている法案の、こちらの部分とこちらの部分を、採決を分けてしました。TPA部分は賛成、TAA部分は反対と。これは連結法案でありますけれども、一括採決ではなくて、部分採決をしたわけです。今度は、これを切り離して別な法案として、このTPA法案に消防士の年金の法案をくっつけて、これはどういう因果関係があるのかよくわかりませんが、採決をした。そしたら、10票差で通ったということでありまして、今度は貿易促進権限法と消防士年金法が一体となって上院に行くわけです。いろいろ日米の議会の採決の仕方が違うのだということを実感したわけであります。
 とにかく、上院でもできるだけスムースに可決されて、TPAが実効性を持って、TPPの促進剤になってくれるということを期待いたしております。上院で可決されれば、速やかに二国間の残っている問題の処理が実務として動き出し、そしてCN(首席交渉官)会合が持たれ、その先に閣僚会合が開けるという段取りが見えてくると思います。
(問)上院で可決された場合に、閣僚会合をされて、実質合意、大筋合意について、時期というのが、いつごろが目安と見ていらっしゃいますか。
(答)申し上げましたように、TPA法案が可決をされますと、TAA法案の可決も残っておりますから、TAA法案も遅滞なく可決される。そうしますと、直ちに二国間で前さばきをしなければならない案件について、二国間交渉が加速されると思います。そして、めどがつきつつある中でCN会合が開催され、そして閣僚会合ということでありますから、課題は、二国間で前さばきをしなければならない問題がどれくらい早く処理ができるかによって、その後は、機械的に設置できると思います。
(問)財政健全化についてお伺いします。いよいよ今月末ごろをめどに、それぞれの調整が続いていると思いますが、今後どのような調整を進めていかれるのか。また、大臣が会見でこれまで、歳出上限を置くことは望ましくないということを繰り返しおっしゃられていますが、そのお考えにお変わりはないのかどうかお伺いできればと思います。
(答)これは、経済財政諮問会議として議論して、総理が内閣の方針を発信されたわけであります。それを中間地点においては、プライマリーバランスの対GDP比の赤字幅を、1%程度を目安にすると掲げました。これが具体的な歳出規模で縛ってしまうと、税収の伸びと無関係に歳出が策定される。税収の伸びと無関係に削減額が決まっていくということになります。そうしますと、経済成長をしっかりさせて、財政再建の実現可能性を高めていくというこの方針ですね。財政再建というのは、瞬間風速的には誰でもできるのです。歳出と歳入のつじつまだけ合わせればいいわけですから。しかし、その後、経済が失速してデフレに戻ったら、それから先のつじつま合わせというのは不可能になります。そのことを関係者は認識する必要があります。経済は生き物と言われますけれども、つじつまは瞬間的に合いました、経済は死にましたということにならないということが大事でして、これは経済再生が財政再建の大前提であるということは、安倍内閣発足以来の基本方針です。そのことをよく認識をしないと、つじつま合わせ論で瞬間的につじつまが合いました。以降、全部だめになりましたということにしてしまっては、将来の政府の可能性まで全部台無しにしてしまうことになるということをよく認識する必要があると思います。
(問)今の質問に関連して確認ですけれども、それは現状、財政計画の目標や達成シナリオなどが財務省との間でまだまとまっていないということでしょうか。
(答)具体的な歳出総額、金額を設定しないということにはついては、ほぼ合意ができ上がりつつあります。その間に、どう個別の歳出項目に縛りをかけていくかと、縛りのかけ方の問題で今協議しているということです。
(問)去年の「骨太の方針」ですけれども、「2020年度のPB黒字化」という文言が実は6カ所あったのです。今年、民間ペーパー内を見ていると、「黒字化」という文字が余り実は見当たらないのです。大臣は、作成途中の案を見て、「黒字化」という文字、こちらを見つけているでしょうか。
(答)財政健全化の道筋は、2015年で10年比半減する、PB赤は半減する。2020年、少なくともプラスゼロに持っていく。それから先、プラス幅を拡大し、最終的には、実際ストックベースの債務に対して健全性が保てるようにしっかりしていく、この方針は変わりません。黒字の数を全部数えてはいませんけれども、足したり引いたりすることはすぐできますから。しかし、それは数が増えた、減ったというのは余り重要な問題ではないと思います。要は、日時が示されて、それに具体的なたどり着く手だてが確認されてきているということが大事だと思います。こうなればいいなで終わってしまってはいけないことですから、こうするためにこういう段取りをとっていきますという具体的な手段、手法が明確になっていれば、それは財政再建目標が設計図に落とし込んでいかれているということになるのではないかと思います。
(問)認識がずれているわけではないのですね。
(答)ないです。
(問)またTPPに戻すのですが、アメリカ議会が今月下旬に休会にまた入ってしまう。そうすると、休会の前に可決されればおっしゃっているとおりのことになると思うのですが、休会に入ってしまった後、また再チャレンジというようなことになると、それは更に先に延びていくことになるのですが、これはかなりまた厳しくなると思うのですけれども、その辺、なかなかアメリカ政府が粘っているわけですが、かなりだんだん押せば押すほど厳しくなっている状況だと思うのですけれども、その辺、大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
(答)意外とアメリカの国会は休みが多いですね。アメリカの議会のワークライフバランスが適切なのか、日本の議会が働き過ぎなのか、多分後者だと思いますが、それぞれ国の議会のあり方の問題ですから、余り口を挟む問題ではないと思います。ただ、休みに入る前に問題が処理されれば、それは日程上、それから先の工程が楽になってきます。ですから、上院でいろいろな動議が出されています。動議が可決されれば、極めて短時間に採決が行われるということでありますので、そういう動きを注視していきたいと思っております。
(問)大臣、先ほどアメリカ議会でTPAが遅滞なく可決されれば、その後二国間の残された課題の前裁きというか、閣僚会合の前裁きを二国間の協議をすると。これは日米に関して、TPA、TAAが可決されれば、直ちに日米の残された課題について協議に入ると、そういうことをおっしゃられているということで理解すればよろしいでしょうか。
(答)そうです。日米間では、それほど深刻な課題は残されていない、あるいは残っていたとしてもうんと少ないと思います。私が気になる大きい課題はあるのですけれども、これは日米間では事務折衝をして、それで解決できれば、二国間閣僚交渉の必要性はないか、あるいはあったとしても、それを確認する程度で済むのではないかと思います。ただ、事務折衝で残されている大小の課題が全部処理できるかどうかは、正直まだわかりません。ただ、少なくとも閣僚会議まで含めれば、それはそんなに延々と時間をかけなくとも解決が図れるのではないかと思っています。
 それよりも、やはり知財の関係が日米間の残されている課題よりも大きな課題だと思っておりまして、そこの解決に日米が協力して、特に日本が間に入って対応するという、そういう環境を早くつくった方がいいと思います。
(問)TPPに関連して2点ですが、一つは、今回、下院を通過したわけですけれども、アメリカは自分たちの果たす責任や役割もしっかり認識しているという御発言、御説明は前にありましたが、そういう意味では特に自信があったというか、別にそんな心配していただとか、一安心だとか、そういうような感じではなくて、安心して見ておられたという感じなのか、それとも、やはり一安心ということなのでしょうか。
(答)アメリカ議会が、特に国際的視野に立って考えていただいている方々は、TPPの重要性、アメリカが東アジアに存在感、位置づけを確立するという意味でも大きな枠組みであるし、この枠組みが、従来の関税の自由化の枠を超えてルール、投資や、あるいは政府調達等々、WTOで処理し切れないレベルまでスタンダードをつくっていくということになるわけですが、それをしっかりと認識している方々は、ここでアメリカが原因で21世紀型の新しい枠組みが崩壊するようだと、アメリカ自身の威信に関わるという危機感は持っておられたのだと思います。ですから、そういう認識があれば、最後まで努力をされるだろうとは思っておりました。ただ、どういう方法でやるのだろうかということに関しては、ちょっと私の想定を超えているいろいろやり方があるのだということを認識いたしました。
(問)関連ですけれども、昨日の夕方のぶら下がり取材でもありましたが、日本としては、もし通らなかったらばとか、漂流してしまったらとか、そういうことはとりあえず考えないで、次回以降、できれば成立させてもらって、閣僚会談の方に持っていって早く妥結させるか、もうそこだけに焦点を当てていて、次善策、もしだめだったら成長戦略をこうやるなど、そういうことはとりあえず今は念頭にない、そういう理解でよろしいでしょうか。
(答)はい。アメリカの対応が、事と次第によってTPPが漂流してしまう、その原因になってしまうのではないかという不安がなくはなかったのですけれども、このTPPの従来の通商交渉の枠を超えた価値観、プレゼンスそのものをアメリカがきちんと認識すれば、自身の足元の問題に過度に足を取られることなく、大局的視野で進んでくれるという認識はありました。
(問)先ほど大臣の発言で、日米間ではそれほど深刻な課題は残されていないということでしたけれども、前回4月にフロマンと会談したときも、まだ米の問題などは、数字の差もかなりあったり、自動車協議でもまだ未解決の問題は多数抱えているという認識だったと思うのですが、その後協議が進んでいるという意味なのでしょうか。
(答)日米間で問題がないわけではありません。大小取り混ぜた未解決部分があります。大の部分については、正直言って非常に憂慮、日本側が憂慮しております。それについては、事務折衝で解決が図れるか否か、私は事務方を督励しておりますけれども、そこはまだ断定ができません。二国間の閣僚交渉に委ねられるという可能性もあります。ただ、そのことによってTPPが漂流してしまうというようなことにはなりません。
(問)それでは別件ですけども、今日一部報道で、マイナンバー制度を使って医療費控除の領収書を不要にするということが2017年度をめどに進めるという一部報道がありましたけれども、現在の検討状況を伺えますでしょうか。
(答)週明けにも具体的な話が出てくると思います。いずれにしても、社会保障・税、そして災害対策、災害対策のときに政府が交付する補助金等々を、これはどういうところを対象にするか等々を図るときに、公的なデータの突合というのは必須になってくるわけでありますが、マイポータルにそれぞれの医療費のデータが上がってくる。そうすると、所得データとあわせて自動的に、今まで紙の領収書を用意して申告するという必要性は、当然電子処理されるわけですからなくなってくるということは、このマイナンバーの制度の基本的な利点になっていくと思います。

(以上)