甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年5月20日

(平成27年5月20日(水) 9:10~9:30  於:合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 本日公表いたしました2015年1-3月期のGDP速報では、実質成長率は前期比年率2.4%と、2四半期連続のプラスとなりました。その要因といたしましては、個人消費や設備投資、住宅投資といった民需の項目が増加したこと、海外経済の緩やかな回復を背景として輸出がプラスに寄与していることなどが挙げられます。
 また、名目成長率は、原油価格下落の影響によりまして輸入デフレーターが大幅に低下し、GDPデフレーターが上昇した結果、前期比年率7.7%と2011年7-9月期以来14四半期ぶりの高い伸びとなりました。
 実質雇用者報酬は前期比0.6%のプラスとなりました。
 2014年度の実質GDP成長率は前年比1%のマイナスとなりましたが、この背景には、年度前半におきまして、個人消費や住宅投資に消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減があったことに加え、消費税率引上げ等の影響を含めた物価の上昇に家計の所得が追いついていないこと等によりまして、個人消費に弱さが見られたことなどが考えられます。
 先行きにつきましては、雇用・所得環境の改善傾向が続いていく中で、原油価格下落の影響や各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待されます。ただし、海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要があります。
 政府といたしましては、経済の好循環を確かなものにするために、昨年末に閣議決定いたしました緊急経済対策及びこれを具体化する平成26年度補正予算を迅速かつ着実に実行するとともに、平成27年度予算を円滑かつ着実に実施してまいります。
 また、本年6月末頃までに取りまとめます「骨太方針2015」の中で、2020年度の財政健全化目標を達成するための計画を策定してまいります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)個人消費についてお伺いしますけれども、2014年度については弱さが見られたということですが、2015年1-3月期に限ってはもう弱さは見られない、もう回復したのだと言い切ってよいかということについて、どのようにご覧になっているでしょうか。
(答)まず、デフレマインドが払拭されていく過程にある。そういう中で、物価の上昇を賃金上昇が超えていく過程にあるということだと思います。この二つが達成された時点で、堅実な、我々が目指す方向性が確定してくると思います。今はまだその過程にあろうかと思います。
(問)先行きについての質問をさせてください。今の景況感の指標は、プラスになったりマイナスになったりしていて、はっきりとした改善傾向が出ていない状況だと思うのですけれども、今後の先行きについて、このまま順調に回復していると大臣が見ていらっしゃるのかという点がまず1点。あともう一つは、順調な経済回復を前提とした財政再建計画を立てているわけですけれども、それについて、着実な経済成長が進む、進まないによって財政再建が順調に進む可能性もあるわけですけども、進まない可能性も出てくるので、GDPとの関連性についてコメントいただければと思います。
(答)大事なことは、まず、好循環がしっかり回っていくということであります。企業業績が改善し、収益が上がり、それが経済を回していく、つまり消費や設備投資、下請代金に還元されていく、その循環が連続して起きているかどうかということです。2巡目が今起きているわけであります。そして、その原資たる企業収益は過去最高を更新し、次年度もそれを更に上回っていくであろうという見通しがあるわけです。つまり、好循環を回していく原資はそろっているわけであります。あとはマインドだと思います。企業経営者は、デフレマインドから脱して、思い切って攻めの経営に入っていけるかどうかだと思います。これは、賃金改善の好循環は回りつつありますけれども、設備投資がまだ弱さが見られます。ここは古い設備を使って一時しのぎ的に利益率を上げていくのか、この時期に攻めの経営に転じて生産性を上げるための投資、あるいは新分野での投資を思い切って踏み出していくかどうか、経営者の決断が問われているところであります。我々としては、その背中をしっかり押していきたいと思います。
(問)財政再建との関連についてもう一度お願いします。
(答)財政再建は、成長シナリオで描いているわけでありますから、基本的に経済が巡航速度として好循環に入っていくことを前提といたしております。そして、中間地点で、ある目標を決めて、それが達成できているかどうかで、更に残りの年度に政策追加をしていくかということを図っていくわけであります。でありますから、途中で検証しつつ、場合によっては政策追加をしていくという設計になってまいります。
(問)この前提としての成長率ですけれども、財政健全化計画の中では、名目GDP3%が目標だと思うのですけれども、そこまで押し上げていけるかどうかという点について、いかがでしょうか。
(答)この1-3月期の数字が、実質で2.4%、名目で7.7%。名目が7.7%というのは、原油価格の下落で輸入デフレーターの影響がGDPデフレーターに跳ね返っている分があります。多分その7.7%のうち4%前後かと思われます。これは正確な数字をはじきたいと思います。そうしますと、このスピードが巡航速度になっていけば、名目3%、実質2%をオーバーライドしていけるわけであります。もちろん10年平均でありますから、それから先のことを勘案していくことがありますけれども、比較的初期段階において、この数字が確保できれば、目標以上に経済が回復してくると思っております。この状況をできるだけ巡航速度にしていくために好循環をしっかり回していく。それから、中長期の課題として新たなフロンティアをつくり、そこの環境整備を、投資への環境整備をしていくということであります。これらは骨太を中心に経済財政諮問会議と産業競争力会議で基本設計、そして具体的な実施設計を、しっかりしてお示しをしていきたいと思っています。
(問)先ほど設備投資をしっかり後押ししていくということを御発言されましたが、それは今おっしゃられたような成長戦略をしっかりやっていくと、そういうことになるわけでしょうか。
(答)はい。好循環が回っていく要素は、賃金、下請代金、設備投資とあるわけであります。賃金は改善されつつあります。下請代金も前向きな姿勢が続いています。設備投資は動き出しましたけれども、まだ弱い点があります。そして一方で、内部留保は相変わらず積み上がっていくということでありますから、これの経済の好循環に対する有効活用を図っていく、それはやはり経営者のマインドが、まだデフレマインドから脱却し切っていない。とりあえず手堅い利益を確保していこうということで、まだ踏み出していないわけであります。そこを、背中をしっかり押していく。政府が掛け声をかけるだけではなくて、それ以外にいろいろな手だてがとれるか。強制的にさせるわけにもいきませんけれども、促すような手だてがとれるか、しっかり検討していきたいと思っています。
(問)海外リスク、下振れリスクのところですが、これは常に留意されているところだと思うのですけれども、その海外要因では、景気だけではなくて原油価格、為替など様々な要因があるかと思いますが、これまで同様の留意ということなのか、特に留意されているということなのか、どうなのでしょうか。
(答)原油につきましては、下落が日本経済にとってはプラスに働いているわけであります。しかし、やがて価格上昇へと転じてくると思いますが、そのときまでに日本経済の体質を強化していきたいと思っています。併せて、海外リスク要因は、やはりEUとギリシャとの関係がどう安定的に整理されていくのか、あるいは中国経済が若干下振れてきておりますけれども、それをどういう形に最終的に安定していくのか、それをしっかり注視していくことが必要だと思っております。
(問)GDPの消費のところについてお聞きしたいのですけれども、増税で落ち込んだ後の回復の段階としては弱い水準だという見方もあるかと思うのですけれども、10-12月期や1-3月期の段階で思ったより消費の回復というのは遅れているのでしょうか。何か相当違った点というのはあるのでしょうか。
(答)やはり消費税率引上げの影響が予想より大きかったということです。1997年の消費税率引上げ後の消費の回復と、今回の引上げ後の消費の低迷はよく比較されますけれども、最大の原因は、97年のときにはまだデフレ状態では、デフレにそこから先なりつつあるということで、マインドはデフレマインドが支配しているわけではありません。現在、2014年は、デフレから脱却しつつある中です。ですから、マインドは払拭されていません。ですから、デフレが経済に与える悪影響がいかに大きいか、消費に与える影響がいかに大きいかの証左がこの比較になろうかと思っております。今、瞬間風速でいえばデフレではありませんが、脱却まで至っていないわけであります。まして、マインドはまだ脱却していないというところです。デフレから脱却を実体経済としてするということと、マインドが脱却するということが極めて大事だと思っております。
(問)マインドとしてデフレを脱却するというのは難しいと思うのですけれども、どれくらい時間がかかりそうだと考えていますでしょうか。
(答)できるだけ早くしたいと思います。これは、まず企業経営トップが踏み出していくという勇気を持つことです。「守りの経営」から「攻めの経営」に転じていく今がチャンスだと思います。
(問)今回のGDPの実質成長率で、民間の予測を若干上回るような姿になったわけですが、甘利大臣から御覧になって、率直に良い結果だったと受け止めていらっしゃるか、そのあたり御評価はいかがですか。
(答)予測よりも上振れているのはいいことだと思います。民間との違いは、在庫の違いであります。在庫というのはいろいろな評価が分かれるのです。在庫が積み上がるのがプラスになり、減るのがマイナスになるというのがよく理解できないなどいろいろありますけれども、周辺を取り巻く環境が大事だと思います。今回は民間最終需要、消費や住宅投資など、あるいは設備投資、これが全てプラスになっています。民間最終需要が全てプラスになっていく中で、在庫としての減り方が減っているということは前向きに捉えていいのだと思っております。
(問)大臣は、先ほど、リスク要因としては、基本的に海外要因であるということをおっしゃっていましたが、国内は、この堅調な内需の姿が続いていくと、特に何かリスクは、デフレマインドというところもありましたが、どう御覧になっていますか。
(答)この時点で最大注視するのは、やはり企業経営者が「攻めの経営」に転ずることができるかどうかだと思います。なかなか各国とも、アメリカ、日本を除いていろいろな困難と今向かい合っているところであります。こういうときはやはりチャンスだと思います。攻めに転ずる原資は十分にある。そして、成長戦略で新たなフロンティアは開きつつある。こういうときに、「攻めの経営」をせずして、一体いつやるのですかということだと思っています。国際競争力、競争相手との差をつけるときが今だと思います。
(問)株価ですけれども、今日は順調に上昇しておりまして、取引時間中だと4月23日につけた2万252円があるのですが、2万207円まで取引時間中の最高値に迫っているのですけれども、できれば受け止めをお願いいたします。
(答)これはアメリカの市場が上げていること、そして今回のGDP速報値が民間予測を超えていること等が影響しているのだと思います。株価は低いより高い方がいいとは思いますが、それから先の具体的コメントは控えます。

(以上)