甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年5月15日

(平成27年5月15日(金) 8:59~9:20  於:合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 私からは特にありません。

2.質疑応答

(問)TPPに関してお伺いします。TPA(貿易促進権限)法案が米国議会の上院で審議入りすることが決まりましたが、これの受け止めについてお願いします。
(答)TPPを妥結させるためには、アメリカのTPA法案が成立することが必須要件と申し上げてきました。議会に提出する手続上の工夫をして、審議入りすることが決まりました。民主党議員から13人が賛成に回ったようであります。上院においては圧倒的多数が審議入りを可としたわけであります。週明けにも具体的な審議が始まると思います。迅速な審議、そして可決されることを期待しております。TPA法案の可決がTPPの妥結に対して強い後押しになるということは間違いありません。
(問)今回、与野党が歩み寄ってほかの関連法案の審議入りも決まったようですけれども、今後のTPPの交渉にこれはどのように影響するでしょうか。
(答)関連3法案を先に審議する、あるいは一緒に提出するということがTPA法案を審議入りする前提となったわけであります。個々の法案については、アメリカ議会のことでありますからコメントは控えたいと思います。
(問)一部の報道で、昨日の経済財政諮問会議で、民間議員から財政再建に絡んだ歳出削減について、具体的な金額を指摘しながら、このくらいの削減が必要だろうという報道があったのですけれども、事実関係はいかがでしょうか。
(答)民間議員から私見として、削減額については5、6兆円という話があったのは事実です。議事要旨開示後に確認されることになるかと思います。この評価がいろいろと出ております。つまり16.4兆円のPBの赤字を、経済成長で7兆円分埋めて、残りの9.4兆円の対処を、財務省は、8兆円は歳出カットで埋めていきたい、いくべきではないかとしております。民間議員からは、実は歳出カットありきだと経済が失速する危険性がある。成長シナリオの上にも、単なる単純カットではなくて、そこから新たな産業が生まれ、そこから新たな税収が生まれてくるという工夫をしないと、財政再建が難しいという主張でありました。
 今回の民間議員の主張は大事な点が2点あろうかと思います。一つは、5、6兆円という評価について骨太2006、小泉内閣のときにかなり厳しいカットを行いました。途中で倒れてしまったわけであります。それと比べてどうかということであります。小泉内閣のときのカットは、その前提が歳出の伸びが名目成長率ではかっています。今回は名目成長率ではなくて、物価上昇率ではかっていますから、より伸びを抑えているわけであります。ですから、5、6兆円ということを名目換算、つまり骨太2006、小泉内閣のときの数字に置き換えていきますと、5、6兆円というのは13.4兆円から14.4兆円になります。これは小泉内閣のときに掲げた数字よりもっと大きいということであります。ですから、骨太2006に比べて甘いという指摘は、骨太2006に比べて実額で言えばもっと厳しいということになります。これが一つです。
 それから、もう1点は、先ほど言及しましたけれども、安倍内閣の経済再生、財政再建は何が大前提かと言いますと、経済再生なくして財政再建はできないということです。つまり財政再建はデフレ下ではできないということです。健全な経済成長の中で初めて財政再建ができるということでありまして、どうやってデフレから脱却した成長経済を確保していくか。今、デフレから脱却しつつあるさなかであります。そこに、単純カット方式でデフレに戻ってしまったら、これはもう最後のチャンスが失われるということでありまして、ですから成長を何がなんでも確保するということです。歳出カットも成長の足を引っ張らないような手法をとるという点を最大限重視していかないと、もう一度失敗する。ここで失敗すればもう最後のチャンスが失われるという点を、注視していかなければならない。その2点を民間議員の発言は示唆していると思っております。
(問)自民党の財政再建委員会が出したペーパーですけれども、これに対する評価と、その中で河野委員会の出した試算を是とするという表現がありまして、それの意味するところは、どうも中長期試算の現在の税収はこれ以上増えないという含意があるやに聞いています。要するにベースラインケースではなくて、経済再生ケースの税収以上には増えず、そこから社会保障の充実分を除いた15兆円のうち9.4兆円を歳出削減で実現しようという内容、この試算を一応是とするという表現になっています。この点についてどのようにお考えになっていますでしょうか。
(答)税収を体積に例えますと、体積というのは面積掛ける高さです。面積を大きくしていく、経済成長を図っていくということ、高さを増やしていく、税収弾性値をどうやって引き上げていくか、この二つを考える必要があると思います。
 経済成長で面積を拡大していく、税収弾性値を上げる工夫をすることによって、面積掛ける高さで税収自体の立体構造が生まれてくるわけであります。現状では、税収弾性値は1.0で置いてあります。この1.0という数字がどれくらい経済の実態を反映しているかというと、実はデフレ下では税収が上がりません。ですから、デフレを脱却しなければならないということを強く言っているわけであります。
 そして、健全な経済成長下においては、1.0ということはありません。もっと高い数字になります。ですから、面積を確保することと、高さを確保すること、つまり歳出カットも単純歳出カットではなくて、産業化やインセンティブ、イノベーションという三つの発想を折り込んでいって、歳出カットがそのまま経済の下押し圧力にならないという工夫が必要である。そうした工夫から税収弾性値も1.0から1.1や1.2などに上げていく努力が必要だということです。連立方程式で財政再建をやらなければならないと思っております。
 総額としてこれだけカットしていくのを是とする党のプランでありますが、議事録を読んでいますと、各論になると、いや実は反対だというのがいっぱい出てくるわけであります。財政再建で、財政健全化で一番やってはいけないのは、総論賛成、各論反対であります。総論で目標を決めたら、各論でそれを積み上げなければならないわけであります。ですから、党が総論で決意を述べられたというのは、それは評価したいと思います。
 後は、各論は政府でやってくれということにならないように、各論でもきちんと責任を持って詰めていただくプランを出していただけることを期待します。
(問)そうすると税収に関して、弾性値は、経済再生ケースの数字以上には伸びる可能性はあるとお考えになっているということでいいということですか。
(答)税収弾性値というのは、経済のバックグラウンドによって変わります。デフレ下では税収の伸びは非常に低いですし、成長がない中にあっては、そう高い数字は見込まれない。しかし、名目3%、実質2%というのは、比較的堅調な経済成長の中にあっては、1.0より高いというのがこれまでの例になっています。
 ですから、量を確保するということと質を変えるということを通じて、質を変えるということを通じて、弾性値を引き上げるという努力もしていかないと、経済再生、財政再建の道は厳しくなると思います。
(問)先ほどのTPPに関する御発言に関連して追加でお伺いさせていただきたいのですが、一つは大筋合意を目指した交渉から少し先の話ですが、批准の時期ですけれども、アメリカ議会での法案の審議がなかなか手間取る中で、実際に妥結したとしても、それが批准されるのはもしかしたら随分先のことになってしまうかもしれません。例えば、夏までにTPPが大筋合意できても、実際の批准は随分先のことになってしまうかもしれないなど、そういう見方もあったりするのですが、そういったことが、実際の交渉に影響を与えることはあり得るのか、それとも批准のタイミングというのはとりあえず気にしないで、まず交渉をまとめることにフォーカスするのか、そこはどうでしょうか。
(答)従来から大筋合意、12か国閣僚合意のタイムリミットが議論されているのは、米議会が議会承認するのに必要な日数があります。それは90日ルールで、署名の90日前に議会に対して通知しなければならない。ということは、大筋合意がなってないと通知ができないわけです。そうしますと、年が明けると大統領選予備選モードに入っていくわけでありますから、その前に議会で批准手続が処理されないと、それ自身が壊れるということではないのですけれども、期間がずっと先伸ばしされる危険性があるということであります。
 それから、逆算をしていくと巷間言われている春の終わりから夏の初めということにフォーカスが当たってくるわけであります。そういうタイムラインを各国が共有しているものでありますから、12か国の閣僚会議の日程、それの前提となるTPA法案の可決を加盟国がかなり緊張感を持って見つめているということになります。
(問)来週にももしかしたら上院で、TPA法案が可決されるにしても、今後まだ下院も残っているわけですが、マニラで閣僚会合という話もこれまで出ているわけですけれども、見通しはいかがでしょうか。
(答)マニラでは別な会合があって、貿易大臣が集まります。その延長線上に、TPP閣僚会議を開こうという話なのだと思います。ほとんどの国は貿易大臣がTPP閣僚を兼務いたしております。唯一兼務していないのは日本だけでございまして、私が行かないと12か国閣僚会議が始まらないということになりますから、私が行くのかどうかをよく見ておいていただければと思います。
(問)TPAと関連して関連3法案も出ており、その中には為替操作国への制裁条項というのも残っているわけですが、これについて、大臣は特に懸念とかされておりますでしょうか。
(答)TPPとは別にアメリカがいろいろな懸念を持って、そういう議論をされる、それはアメリカ議会のことでありますから、それによってTPP自身がまとまらないということにはならないと思っております。TPPに、いろいろ妥結に対して障害になるようなことにならないように注視していきたいと思っています。
(問)TPPについては、大臣はかねてから「春の早いうち」や、「春のうちには」と、時期については変遷してきましたけれども、改めてこのタイミングで、TPAは来週上院が通る、下院はなかなか難しいという見方が強い中で、来週閣僚会議をやるかどうかまだ決まっていないと思いますけれども、現状で大筋合意の見通しと、大臣としていつごろまでにやらないと厳しいと思っているのか、その理由について教えてください。
(答)春の終わりか夏の初めという話がありましたけれども、厳密にいつから夏の初めか、いろいろ議論がありまして、安倍内閣もクールビズは6月から始まったのが、いつの間にか5月から始まりました。グレーゾーンがあるわけであります。そのグレーゾーンの中で、明確にこれはもう既に盛夏であるとなる前に決められればいいと思っております。アメリカ議会も柔軟性を発揮して、何とかオバマ政権が動いている中で、オバマ政権のレガシーとしてしっかり成果を出すということが大事だと思います。
(問)関連ですけれども、来週から上院の審議が始まるわけですけれども、仮に上院が本会議通って、難しいと言われている下院がまだ残っているという状態で、閣僚会議をやることの意義についてはどのようにお考えですか。
(答)各国とも上院だけ通ったからいいですという具合になかなかいかないと思います。ただ下院も見通しが出てくるという中で、仮に開かれるとしたらどのような位置づけができるのか。各国ともいろいろ思惑があろうかと思います。いずれにいたしましても、上院が通って、下院も可決される見通しが出てこないと、なかなか最終的に決着していくという行程には入りづらいのではないかと思います。
 最終的には、少なくともTPA成立よりも大筋合意の方が先に出るということはなかなか厳しいのではないかと思います。

(以上)