甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年5月12日

(平成27年5月12日(火) 9:02~9:21  於:合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。私からは特にありません。

2.質疑応答

(問)TPPについてお伺いいたします。先週、西村副大臣が国会議員の方への閲覧を認めるかどうかについて、発言を撤回されたことで、野党からの反発が強まっております。これについてどう受け止めていらっしゃるか。また、国会議員への閲覧に関して、何か新たに検討していらっしゃることがあればお教えください。
(答)秘密保持契約を結んで参加するTPPの中で、どう情報開示をしていくかというのは、日本が参加して以来の悩みでありまして、それは日本だけではなくて、関係閣僚と話をしますと、各国ともどのようにしたらいいのだろうかという、悩ましい問題でありました。
 そして、日本のマスコミに交渉内容が掲載されるたびに、アメリカから情報管理をきちんとしてくれというクレームが来まして、こちらはきちんとしている、アメリカ側ステークホルダーから出ているのではないかといったやりとりがよくありました。
 そこで各国、特にアメリカが非常にナーバスになっていたのでありまして、しかし、そのアメリカが国会議員に関して、ステークホルダーに関して、情報開示を一番しているではないかと言われつつ、しかし、それで関係周辺を調べてみると、むしろ議員から不満が出たりしていまして、事実上は少しもアクセスできないというような話が出たりしてきました。
 それがこの3月に、その議会の不満に対してUSTRが、議員全てがテキストを閲覧できるようにするという発言をしたものですから、関係国中が大騒ぎになったわけであります。
 ただ、前から申し上げていますとおり、日本とアメリカでは条約に関する役割分担、政府と議会の役割分担、憲法上の立て付けが全く違っておりまして、アメリカでは守秘義務も厳密にかかっています。刑事罰もあれば、議員資格剥奪というような項目があるやに聞いておりますが、これは同じ立て付けは日本ではできないわけであります。そういう中でどうしていくかということが悩ましいことでありました。
 私も国会の答弁で、その種の制約の中で一体何ができるのかを頭の体操をしてみたいということで、それを受けまして、概要を初めて開示したわけであります。
 今の議論はそれより更に踏み込んで、という要求が野党からなされているのだと思います。更に踏み越えて何ができるかというのは、これまた頭の痛い問題であります。
 西村副大臣の発言は、野党の要求にどこまで応えられるのか、真摯に検討してみたいという思いが、若干オーバーランしてしまったということだと思います。野党の皆さんにもできるだけ誠心誠意応えたいという思いが、若干、出過ぎてしまったという善意で御理解いただきたいと思います。副大臣から、関係者に対して釈明の機会があると承知いたしております。それをしっかり見守りたいと思います。
 先般のこと以上に何ができるかは、誠意を持って検討はしてみますが、必ずしも、野党議員の皆さんの期待に応えられるということは、制度上の違いからなかなか難しいという点は、御理解いただければと思っております。
(問)TPPのいわば議会の日程上の節目となる5月21日までに、もしTPA(貿易促進権限)法案が成立しなかった場合、その後のTPPの妥結に向けたスケジュールが相当厳しくなると思うのですけれども、大臣はこの場合、どういう評価をされるのか。かなりTPPの妥結は困難になると思われるのかどうか、その辺のところを教えてもらえますか。
(答)最終的な妥結というのは、TPP12か国の閣僚会議で妥結するということになります。ですから、この次のTPPの閣僚会議はどういう位置づけかというと、最終的な合意をするための閣僚会議であります。交渉を加速させるための閣僚会議ではないという位置づけでありますから、次の会議の意味合いを各国ともしっかり認識していると思います。
 そうしますと、閣僚会議で妥結に持ち込めるという見込みが立たないと、なかなか開催を強行しても、そこで進展を確認しましたというわけにはいかないのだと思います。そうしますと、12か国閣僚会議が妥結につながっていくためには、その前提としてやはりTPA法案の成立ということは必須要件だと思っております。
 今、オバマ大統領はじめアメリカ政府が、かつて取り組んだことがないくらいの情熱を持って、議会への働きかけをしていると仄聞いたしております。TPPというものは、単に関税を下げる、あるいはなくすということだけでなくて、もっと幅広い、大きな意味合いがある。言ってみれば新しい国際スタンダードを作っていくという大きな目標を掲げてスタートしていくということを、アメリカ議会も理解して、TPA法案の成立に向けての動きが加速することを期待いたしております。
 TPAの成立がずれてきますと、それに合わせて12か国の閣僚会議の日程がずれていくということを懸念いたしています。
(問)5月中に成立すれば、もちろんそのまま続けられるということですけれども、その後、大幅に遅れたとなると、その後でも可能性はまだあるとお考えですか。
(答)日程的にはタイトになってきますが、年内妥結、各国の議会スケジュールに全く間に合わなくなってしまうということではないと思います。ただ、この予定されている機会を逃すと、残されている日数は非常に少なくなってくるとは思っております。
(問)いろいろな報道で、今日の経済財政諮問会議で、民間議員が財政再建計画についてのペーパーを出すという報道がありまして、2018年度に中間的なチェックといいますか、中二階みたいなものが作られて、そこでプライマリーバランスの赤字について、GDP比1%を目標にされるという報道もあるのですが、この真偽と、それからこの民間議員の提案をどのように思っていらっしゃるかということを教えてください。
(答)民間議員提案は、5年間の後にプライマリーバランスの黒字化を図るということは、今現在のプライマリーバランスの赤字幅を均等割していくと、一定の数字が出てくる。2年前にどこまでいっているかと逆算すると、そういう数字になるというだけの話です。極めて単純な話です。
 ただ、民間議員側が非常に神経を使い、強調しているのは、財政再建プラン単独ではなくて、経済・財政一体改革プランでないと成功しないという点です。つまり税収の上昇が確保されるということが前提で、残りの部分の削減についてのプランが出てくる。そうすると、経済構造改革でしっかりデフレを脱却して、デフレに二度と戻らないという体制ができて、安定的な経済成長を確保するということが大前提なので、これを忘れてはいけない。単に、一律カットのような方法をとると、単なる我慢比べが何年続くかということになってしまって、ある一定年度を過ぎると、それが暴発するおそれがある。そうすると財政再建は失敗する。ですから、経済をしっかり成長させていく中で、メリハリの効いたカットを行う。つまり一律カットというよりも、知恵を出し、工夫を出しているカットをする。それが公的支出、公共サービスの産業化や、公的支出で経済成長を支えるという発想ではなくて、民間投資が成長を支えるという発想など、つまり成長と一体となった財政再建でなければ、絶対に成功しないというところが、民間議員側の強い主張であり、それがなされない場合、強い懸念を持っているということであります。
 でありますから、スタート時点で民間議員の提案と財務当局の考え方に幅があるのは当然のことだと思いますが、その議論をしていく中で、両者の知恵を合わせた最適プランが完成していくと思っております。
(問)前回の衆議院解散のときに、総理は2020年のプライマリーバランス黒字に向けて、具体的な道筋を示すつもりである、夏までに作るのであるとおっしゃったのですけれども、計画がお題目にならないようにするには、おそらく経済前提がいろいろ変わるわけですから、何らかの数値試算なり、中長期試算の9.4兆円という数字の前提が変わるということであれば、何らかそういうものを示す必要があるとお考えになるのか。その辺、どういう示し方を考えているのか教えてもらえますか。
(答)5年間というプランは、プランとしては1年ごとに細目を決めてというよりも、次第にフォーカスが絞られてきて、最終的には、具体的な項目が全部落とし込まれていくということになると思います。
 ただ一方で、財政当局は予算編成をしなければなりません。来年度の予算編成は、具体的に方針を踏まえて、数字を作っていかなければならないということになります。一方で大きな目標を決めて、それを次第に、フォーカスを絞っていって、具体的に落とし込んでいくという作業があります。一方では、予算編成はもう来年度から数字に表れてくるということになるわけです。そこのすり合わせを、これからしていきたいと思っております。
(問)新たな財政計画では数値目標を定めることも鍵になるとは思うのですが、現時点での考えをお聞かせいただければと思います。
(答)ここで私が「こうです」と言っては、経済財政諮問会議の意味がなくなるのですが、民間議員からは、とにかく経済財政改革、つまりデフレ脱却、安定的な経済成長があって初めて財政再建ができるのであって、一律歳出カット型から入ったら必ず失敗する。一律歳出カットというのは我慢比べであって、それ自身が成長を押し下げる効果になってしまいますから、そこを多分強調されてくると思います。
 一方で財政当局は、さはさりながら、自分たちとしては、具体的に来年度からもう既に数字を作らなければならないことになってきます。それで、数字を作るためには、具体的な歳出の姿が見えてこないと、予算の編成のしようがないという議論になろうかと思います。まず成長が前提であるということと、しかしながら、支出の数字を組み立てていかなければならないということを、どううまくすり合わせていくかというのが、今日からのスタートになります。
 私が最終的な姿を提示してしまうと、多分、経済財政諮問会議は開かれないのではないかと思います。
(問)TPPについて確認ですけれども、先ほどの大臣の発言を踏まえると、TPAの法律が5月22日、23日までに成立するというのはかなり厳しいのではないかという見方も出ているのですけれども、そうすると一部報道されているように、首席交渉官会合後の26日から全体の会合を開くというのは、TPAが成立していなければ日本は反対するという立場でよろしいのでしょうか。
(答)TPA法案は、非常に厳しい中で、アメリカ政府が最大限の努力をしていると思います。ですからその努力を、あるいは議会との協力に期待して、スケジュールどおり成立するのを願っております。
 日本が、TPAがないと賛成だ、反対だということではなくて、各国とも最後のセンシティビティーについて、結論を出さなければいけないわけであります。それがカードを切った後に、もう一回仕切り直しということになっては、その後のTPPの成立がかえって困難になってしまうわけであります。
 でありますから、日本が、これがないとやる、やらないというよりも、全体の会議として、TPAがないと最終決着に至らないと思っています。各国とも一番嫌なのは、自分のセンシティビティーに対して、最終的な決断をするといったときに、それでまとまったものがもう一回仕切り直しされるとなると、次のまとまりは無理になりますから、それをみんな懸念しているということです。

(以上)