甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年5月8日

(平成27年5月8日(金) 9:15~9:36  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 私からは特にありません。

2.質疑応答

(問)TPPについてお伺いします。西村副大臣が、TPPのテキストについて、国会議員にアクセス、閲覧を認めるという発言を記者会見でなさいました。これについて何か検討されていることがあるのか、もし検討していらっしゃるのであれば、どのような範囲で閲覧を認めるのかなど、制度の内容について御検討されていることをお伺いします。
(答)御案内のとおりTPP交渉というのは、入会する際に秘密保持契約にサインし、誓約をして入るわけであります。でありますから、参加各国とも、この秘密保持と国内からの情報開示要求とのはざまで、悩んでいるわけであります。
 先般、衆議院内閣委・農水委連合審査の場におきまして、私がそういう誓約の中でどういうことができるのかを、少し頭の体操をしてみたいという答弁をいたしました。その結果、先般、概要というものを公表させていただいたわけであります。更にその後、西村副大臣が踏み込んだ発言をされたようでありますけれども、それは恐らく西村さんなりに野党に懇切丁寧に答えたいという思いから、言葉が走って、誤解を与える表現になったのだと思っております。
 政府としては、これ以上何をするかということについては、全く決まっておりません。
(問)現状においては、国会議員に閲覧を認めるということはないということでよろしいでしょうか。
(答)アメリカと日本は、内閣と国会との役割分担が憲法上、その立て付けが全く異なっております。日本は、条約締結権は内閣にあり、アメリカは議会にあるわけであります。そしてアメリカは情報漏えいに対して刑事罰もあり、上院に至っては、議員資格剥奪という項目まであるわけであります。日本では、とてもそのような立て付けはできないわけでありますから、同じことをせよと言っても、これはもともと憲法上の立て付けが全く違うわけですから、それは不可能であります。
 そういった中で更にということであれば、何ができるのかということを検討できるかどうかだと思います。何をする、しないということは全く決まっておりません。
(問)日銀の物価目標についてお伺いします。先週、日銀が2%という物価目標について、2016年度前半に先送りするという発表をされました。これについて、大臣のお受け止めをお願いいたします。
(答)3月時点の物価指数総合や、あるいはコアで2.2%や2.3%ということは、二つの要素を勘案しなければならないわけであります。
 一つは消費税率引上げの影響であります。これが4月以降剥落するわけでありますから、そうすると消費税率引上げの影響も2%ぐらいが剥落するわけです。加えて原油の価格の下落というのが消費者物価に与える影響が0.7%や0.8%などと試算されています。これがプラスになっていく要素であります。これらをプラス・マイナスしていくと、この二つの要素が剥落してくると、恐らく総合が1%弱になるのでしょうか。当初、日銀は「2015年度を中心」というような表現でありました。今回、日銀総裁は「2016年度前半」という表現をされています。この二つが全く違うかといえば、これは射程の範囲内だと思っております。
 いずれにいたしましても、日銀が、申し上げましたような原油価格の下落等を含む経済物価の状況を勘案しながら、具体的な射程について言及されたのだと思っております。日銀の金融手法により、目標を射程の範囲内に達成されることを期待いたしております。
(問)マーケットでは、この日銀の2%、2016年前半に達成というのは不可能もしくは絶望的という評価もありますけれども、今、2%という物価目標を掲げることが適切かどうか、大臣のお考えをお願いします。
(答)安倍内閣に絶望という言葉はありません。
(問)TPPに関連して質問です。米議会でTPPに為替条項を盛り込むことを求める声も出ていますが、関係国とそういった議論というのはされているのか。また日本はどのような立場でしょうか。
(答)全く議論はされておりません。本来、その種の話は出されるとしても、別次元の場で議論されるものであると理解いたしております。TPPに関して議論するものではないと理解しております。
(問)そうすると、これはやや筋違いの話なので、今後検討する余地があるとかないとか、そういうことではもうないという理解でいいですか。
(答)少なくともTPPの場で議論することではないと思います。議論されるとしても、IMFやあるいはG20など、その種の場であろうと思っております。
(問)TPPの情報公開について関連で質問したいのですけれども、アメリカと同じようにはできないということで、今後の対応は何も決まっていないということですけれども、現時点では先般発表した概要ペーパー以上の対応はなかなか難しいと考えていらっしゃるのか、あるいはこれから交渉が終局を迎えるにつれて、更に情報公開してほしいという声が強まると思うのですけれども、また何か新しい方策を、今後政府として検討することがあるのかどうか、もう一言お願いします。
(答)憲法上の制度の立て付けが違うところと同じ対応はできません。これははっきり申し上げます。各国とも、日米以外の国もいろいろと開示要求にどう対応していくかについては、悩ましいところだと思います。各国の状況も精査しながら、できることがあるのか、それともないのか、そこは各国の状況、アメリカ以外の国の状況も精査しながら、引き続き頭の体操はしていきたいと思います。
(問)先ほどの日銀の話ですけれども、2016年ということになりますと、2017年4月に消費税増税が確実に行われる方向だと思うのですけれども、デフレの脱却をいつ頃に見通しを持っていらっしゃるのか。消費税増税を成功させるためにはデフレの脱却が必要だと思うのですけれども、これ以上後ずれするとかなり厳しくなってくるのではないかという気もするのですが、その辺、大臣はどうお考えになっていらっしゃいますか。
(答)いつも申し上げておりますけれども、デフレかどうかということと、デフレを脱却したかどうかということは別な話であります。既にデフレ状況ではないと思いますが、脱却したか、それだけの経済の足腰の強化ができたかというと、まだその途上にあろうかと思います。できるだけ早期にデフレ脱却、つまり多少のことがあろうと、その状態に戻らないという経済状況を作り出すために、全力を挙げていきたいと思います。この時点で何年何月頃ということは、まだ申し上げづらいのでありますけれども、できるだけ早期にそれを図りたいと思います。
(問)TPPについてお伺いします。閣僚会合の見通しについて、大臣はどのようにお考えでしょうか。
(答)閣僚会合は、TPA(貿易促進権限)法案が成立するというめどとの兼ね合いで確定していくのではないかと思います。会合を開こうと思えばいつでも開けますけれども、そこは合意ということを作っていかなければなりません。各国が合意するためにはやはりTPA法案が未成立の中では、各国の最終合意が図れるとは思いませんので、ひとえにTPA法案の行方が閣僚会合妥結のスケジュールにかかってくるのではないかと思います。
(問)関連しましてTPA法案が来週にも上院の本会議で審議に入ると見通しになったということですけれども、それに対しての受け止めをお願いします。
(答)TPA法案の成立スケジュールの予測の範囲内だとは思います。ただ当初、最速であれば、とされていたスケジュールよりは若干ずれているということは少し心配いたしております。アメリカ政府が総力を挙げて議会の了解を得るべく努力中でありますから、それに期待したいと思います。
(問)先ほど為替の件で、別次元と御説明されておりましたが、この話は昔からあって、当然そういったものを議論する場というのが、もう既にIMFなりG20なりに設定されていると、状況では当然そういうことだと思うのですが、改めてこれは別次元である、TPPという場で話すにはそぐわないトピックであるという点を説明する際には、どのような説明のされ方をするのでしょうか。
(答)これは、金融政策としてとっているわけでありまして、各国が貿易政策上、自国の通貨を有利に運んでいくと思ってやっていくということではありませんから、いろいろな政策の自由度、あるいは制限度については、TPP国以外にも当然関わってくる話でありますから、それはそのルールの中で議論していくべきだと思っております。TPPはあくまでも物・人・資本の、あるいは情報の移動の自由を通じて経済の活性化を図っていくということであります。
(問)TPPの日米協議についてですけれども、4月のCN(首席交渉官)会合後も、大江首席交渉官代理は事務レベル協議を続けていましたが、その進展度合いと、それによって日米閣僚協議を開く可能性というのはあるのかどうか、まだ正式に開催が決まっていませんけれども、12か国閣僚会合までに日米合意ができそうな状況になりそうなのか、見通しも含めて認識をお伺いしたい。
(答)日米首脳会談後もこれとかかわらず、その前後に事務折衝は続けてきております。結論から言えば、進展は順調に図られているということであります。ただ、まだ完全に決着はしておりません。引き続き12か国の会合まで、事務折衝で詰めるところは詰める。つまり12か国の大臣会合はなぜ開くかというと、最後に残った部分を、閣僚が決めなければならないという部分を決める会合であります。そして、12か国の会合が開かれる見通しは、そこで決着がつくということまで事務折衝あるいはバイの大臣折衝で話を詰め切るということが必要です。12か国の会合を、出たとこ勝負というような場面では、危険で開くことができません。
 12か国の会合では、12か国の大臣折衝あるいはその間にバイがあると思います。そのバイで決着をつけられるまで詰められたら、12か国会合でのバイ会談以外に、事前にやるという必要性はないのかもしれません。ただ12か国の会合中のバイ会談でも詰め切れないぐらいの大きな差が残った場合には、それ以前に二国間の閣僚のバイ会談というのが必要になってくると思います。現時点では何ともまだ言えません。ただ、順調に進んでいることは確かであります。
(問)景気の現状についてお伺いします。昨日、連休明けの株価が大きく下がって、一度2万円を超えた後、少し2万円から離れているようですけれども、海外要因などいろいろ言われていますけれども、大臣はどのように見ていらっしゃるでしょうか。
(答)アメリカ要因が一番大きいと思います。市場予測をかなり下回った数値だったと思います。残念ながら外的要因に全く左右されないという日本の市場ではありませんから、これは仕方がないことであります。ただ、経済指標は順調に推移していると思います。消費の動向がセンセーショナルに報じられましたけれども、あれは消費税率引上げに伴う駆け込み需要との比較であり、来月になればそれが剥落しますから、その部分はカウントされなくなってくるわけでありますし、月次でいいますと3月は2.4%伸びているわけであります。3月の鉱工業生産指数は前月と比べほぼ横ばいでありますけれども、市場予測よりは改善しているところであります。堅調に推移している、その範囲内であると理解いたしております。
(問)TPPの国有企業についてお尋ねします。本日、一部報道で、日本政府が株式の50%超を保有する日本郵政や成田国際空港会社なども規制の対象に入るという報道がありましたが、これまで我々が受けている事務方によるブリーフィングでは、日本の規制以上のものはTPPの協議では出てきていないので、全く問題ないと伺っておりますが、大臣の御認識をお尋ねしたいと思います。
(答)なぜあのような報道が突然されているのかよく分かりませんけれども、基本的にWTOのポジションよりマイナスになるということはないのがTPPの基本スタンスであります。WTO上の政府調達協定にTPP参加国のうちの4か国は入っているわけであります。恐らく、子細に調べてはいませんけれども、WTO上で既に日本がコミットしている案件が単に外に出たということだけではないでしょうか。TPPで新たにというよりも、WTO上でもう既にそれは約束しているということではないかと思います。

(以上)