甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年3月31日

(平成27年3月31日(火) 9:02~9:19  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日付で私の大臣補佐官として自由民主党衆議院議員の福田峰之氏が任命されました。福田氏は自由民主党のIT戦略特命委員会事務局長、マイナンバー利活用推進小委員長を務めるなど、マイナンバー制度に関しまして広範な知識・見識・経験を有しておられることから、「社会保障・税番号制度に関する重要政策」を担当していただくこととしております。
 私からは、以上です。

2.質疑応答

(問)財政再建の計画について、債務残高対GDP比について、この前の経済財政諮問会議後の大臣会見で「バランスが大事」、「目標にするにはバランスが大事だ」というお話でしたけれども、一部の報道で計画の中に踏まえていくというものがありました。
 現時点での大臣の考え方と、経済財政諮問会議の民間議員の皆さんで検討が進められていると思うのですけれども、そちらの進捗等を教えていただけますか。
(答)2015年度にPBの対GDP比赤字半減、2020年度に黒字化という目標については変わることはありません。ただ、PB黒字化を達成した後にどういう目標設定をするかというと、債務残高を対GDP比で減らしていくということに具体的にはなっていくのではないかと思います。つまり、そういう中長期的な視点を踏まえつつ、2020年度まではPBの黒字化を図っていくという考え方であります。2020年度PB黒字化という目標自体を変えることではありません。
 かねてから申し上げていますとおり、財政の健全化と経済の成長は、ともに好循環を構成するもの、つまり経済成長が財政の健全化を促し、財政の健全化が経済成長を促していくという関係にあるということでありますから、PBの黒字化だけ、収支の改善だけでやっていくと成長がおろそかになるということを念頭に置くということであります。
 大きな図式で言えば、分母を経済成長、分子をPBの黒字化という設計であります。2つの目標を同時進行させていくということではありません。
(問)明日で消費税率が引き上げられて1年がたちます。足元の景気について、消費がもたつき、生産が回復傾向と言われますけれども、足元の状況と見通しについて教えてください。
(答)消費税率を5%から8%に引き上げました。駆け込み需要と反動減が想定したものよりもかなり大きいものになりました。それからの消費を中心とする回復が若干もたついてきたというのは、御承知のとおりであります。
 しかしながら、ようやく全体として緩やかな回復基調を取り戻しつつあります。大事なことは、好循環の2巡目をしっかり回していくことだと思います。
 賃金改善につきましては、直近の情報では昨年を上回るといういい数字が出ております。近々、選挙後2回目の政労使会議を開催いたします。ここでは、好循環が中小零細企業にまで行き渡っていくように、背中を政府として押していくということになろうかと思っております。
 好循環が2巡をして、実質賃金のプラスということが見込まれてくれば、見通しがたってくれば、更に消費は力強くなってくると思っております。それを期待いたしております。
 政府といたしましては、好循環が2巡、3巡、4巡としていくように、最終的には自律軌道に乗っていくということでありますが、しっかりとした軌道に乗っていくまで政府が後押しをしていく。次第に政府がそういう意味で介入するのはフェードアウトしていくという形になっていくかと思います。
(問)本日、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の参加申請の期限が来ます。報道ベースではありますけれども、大臣も今まで言われておりますが、日本はガバナンスの話が不透明なので、慎重姿勢を貫くなど、いろいろ報道されております。
 今朝の麻生財務大臣の会見では、「公平なガバナンスの確保、条件確保されないと参加には慎重な立場」という発言が出ております。改めて日本の立場についてお伺いできますでしょうか。
(答)この種の国際金融機関、金融機関に限らず、各国が協調して取り組んでいく機関は、しっかりしたガバナンスと透明性ということが重要だと思っております。新たな国際金融機関が設立されて、それが途上国の発展に資するということは悪いことではないと思います。
 日本はアジア開発銀行を中心に、日米連携をしてアジアの発展に貢献してきております。アジア開発銀行と中国が主催される新しい組織との連携も将来、可能性としてはあるのかと思いますが、その際にもしっかりしたガバナンスで、きちんとしたプランのもとに、開発援助が行われることが望ましいと思っております。
 日本政府としてのスタンスは変わらないと承知いたしております。
(問)TPPですけれども、自動車の日米の事務レベル交渉が終わりましたが、その結果に対する受けとめと、今後の見通しについてお聞かせください。
(答)森経済外交担当大使は今夜半に帰国されます。明日、私に報告があろうかと思います。
 現段階では、交渉は前進したけれども、まだ重要な部分については未解決のまま残っているということ、そしてTPA(貿易促進権限)の取得について明確な見通しができてこないと、日米を含め12か国の会合は最終着地点まで行かないという認識であります。
 米国政府には、TPA取得がいよいよ最終局面で大きな鍵になってきているという認識のもとに、政府・議会とも最大の努力をしていただきたいと思います。
(問)財政再建の話ですが、大臣の説明は2020年までにPB黒字化を達成し、その後、順次、債務残高対GDP比を下げていくという、この姿勢は変わらないということだと思うのですが、2020年PB黒字化を達成するために、今のところ、現段階では9兆円近い赤字がありまして、大臣はやみくもにカットできない、カットすべきではないとおっしゃるのですが、やみくもにカットしないと厳しいのではないかという気もするのですけれども、その辺どうお考えになっていらっしゃるのでしょうか。もう一回、6月、夏の段階で試算を出し直せば、少しは黒字になる絵がきっちり描けるというお考えなのでしょうか。
(答)現状でSNAベース、国民経済計算ベース、日本全体のベースで言うと、乖離は16.4兆円あります。経済の成長ケース、順調に経済が成長軌道に回復していくケースではじいてみても、残されている削減幅が9.4兆円残るわけであります。そうしますと、成長戦略に取り組んできているので、残りは全て増税か、あるいは歳出カットか、そのどちらか、あるいはその一方で埋め合わせなければならないという論理になるということは承知いたしております。しかしながら、現状で組み込まれている成長プラン以外に、公的サービスの産業化、あるいはインセンティブ措置等々、あるいはいろいろな情報の見える化を通じて、無理なく無駄を、あるいは重複を省いていくという方法はあるわけであります。やみくもにということではないと申し上げていますけれども、やみくもにやらなければ到達ができないのではないかと。やり方によっては、やみくもに見えないやり方がございます。
 それから、申し上げていますように、9.4兆円を歳出カットでやったとしますと、それがGDP的に言えば下押し圧力になります。成長が落ちるという部分がありますので、やみくもカットが9.4兆円で済まなくなるということになります。
 カットが成長に資するという工夫は大事であります。つまり、公がやっていたものを民の事業化をしていくということで、そこからGDPが生まれていくという発想も必要なわけでありまして、ここがまさに安倍内閣の知恵の発揮のしどころでありまして、カットが成長に資するというようなウルトラCも含めて取り組んでいきたいと思っております。
 ただ、いずれにいたしましても、それは財政再建の手綱を緩めるということにはなりません。目標をしっかり達成していくということであります。
 財務大臣がよくおっしゃっていますけれども、2015年度のPBの赤字半減というのは、本来、消費税率を10%に引き上げることを見込んで、それをカウントして設計されていた。だから10%の引上げが1年半見送られたことによって、本来ならば設計上はPBの赤字半減が達成できないことになっていたはずだけれども、それが達成できました。
 それは何かといいますと、アベノミクスの税収上振れ効果であります。税収が上振れてくれば、次の予算はそこが発射台になるわけであります。成長を加速する、それから歳出カットを成長のエネルギーにできないか。あらゆる知恵を絞りたいと思います。
 いずれにいたしましても、2020年度PB黒字というのは揺るぎない目標として取り組んでいきます。
(問)最初に発表あった福田峰之氏の件ですけれども、なぜ今のタイミングで任命されたのかということと、期待することを一言お願いします。
(答)これから社会保障・税番号制度がいよいよスタートいたします。10月1日に個人、そして企業にそれぞれ固有のナンバーが割り振られるわけであります。これは社会保障と税を効率的に推進していくための重要なインフラであります。同時に、どのように生活の利便性や経済の発展に、あるいは更に行政効率を上げていくために使えるかということは、これから研究していかなければなりませんし、その際に懸念される危惧をあらかじめ払拭していく努力が必要であります。
 自由民主党の方で、この社会保障・税番号制度についての将来展望等々を検討しております。その事務局長的な役割を担ってきたのが福田峰之氏であります。
 党と政府の連携、平仄を合わせるということもありますし、政治家が関係方面とのすり合わせに政府としての政治力を発揮していくということも大事になってきます。それを福田氏に期待しているわけであります。
 党の考え方、それから福田氏の基本的な考え方というのを政府側から聴取させていただきました。そして、我々が考えている方向と軌を一にしているということが確認されましたので、政治家として各方面の調整に当たってもらいたいという思いで選任をしたわけであります。

(以上)