甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年2月16日

(平成27年2月16日(月) 9:18~9:41  於:合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 本日公表しました2014年10-12月期GDP速報では、実質成長率は前期比年率2.2%と、3四半期ぶりのプラスとなりました。
 今回、10-12月期の実質GDP成長率がプラスになった要因といたしましては、雇用・所得環境の改善傾向を背景とした個人消費や、アメリカや中国向けの輸出などがプラスに寄与していることが挙げられます。
 また、GDPデフレーターは、前年比で2.3%上昇し、前期よりもプラス幅が拡大しております。これは、デフレ脱却に向けた好ましい状況であると思われます。
 先行きにつきましては、各政策の推進等によりまして、雇用・所得環境が引き続き改善し、好循環が更に進展するとともに、原油価格低下等により交易条件も改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれます。
 政府といたしましては、経済の好循環を確かなものとするために、昨年末に閣議決定いたしました「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」及びこれを具体化する平成26年度補正予算を迅速かつ着実に実行するとともに、平成27年度予算及び関連法案の早期成立に努めてまいります。
 また、過去最高水準の企業収益、上場企業の利益額は2年連続過去最高を更新いたしました。その過去最高水準の企業収益を賃金の上昇につなげていくことが重要でありまして、昨年の政労使会議の合意に沿いまして、今年も賃上げをしっかりと実現するということを期待いたしております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)個人消費について見方をお伺いします。消費増税後かなり落ち込んだ後に、7-9月期、10-12月期と伸び率はそれほど高くない。7-9月期は天候要因があったという認識だったと思いますが、10-12月期の伸び率も余り変わらない。こういった伸び悩みについて、その原因と今後の展望というのをどのように大臣が見ておられるのか教えてください。
(答)今般発表いたしましたのは10-12月期であります。まだ10、11月あたりですと、消費者マインドの調査をいたしますとそう上がっていない。ところが、12月になりますと、消費動向調査、それから、景気ウォッチャー調査もかなり上昇してきております。要は、実質賃金がプラスになっていくということと、それからマインドが上向きに上がっていくこと、これが消費を拡大するバックボーンになっていくわけであります。まだ10、11月の時点ではそこまでいっていない。12月の時点で、実質総雇用者所得がプラスになっています。それから、消費者マインドもかなり上がってきております。それから先行きがどのような見通しかというと、そこはまたかなり上がってきていますから、大事なことは、今年の春闘でも、過去最高を更新した企業業績を後ろ楯にして、しっかりと賃金を引き上げていくということが大事です。
 名目賃金の上昇はずっと続いております。実質賃金をプラスにしていくことが非常に肝要かと思っております。
(問)大臣の率直な受け止めを伺いたいのですけれども、今回の数字を見て、順調に推移していると受け止めたのか、それとも、思ったより伸び悩んだと受け止められましたでしょうか。
(答)民間が期待値を上げてくれましたから、そこまでは届かないということはあります。しかし、消費者マインドもかなり上がってきているようでありますから、将来に向けては期待が持てるのではないかと思っています。
(問)11月ごろから消費者マインドが少しずつ改善ということで、当然そのころには総理が消費増税先送りを決断された時期でもあるのですが、やはりそこがきっかけとなって消費者マインドが回復しているということなのか、財政再建もやらなければいけないという状況ではあるかと思いますけれども、ボーナスなどもあるかとは思いますが、今のところはやはり先送りしたということが、消費者マインド改善の大事なポイントになっていると、そのようにお考えでしょうか。
(答)その要素はあるのだと思います。消費が落ち込みましたときに、どこが落ち込んでいるかというと、低所得者世帯、それから若い世帯、そこが落ち込んでいる。そして、かなり生活防衛に入っています。その理由を尋ねるときに、賃金が上がったのは一回きりで終わってしまうのではないかという不安と、それから、その上でたちまち2回目の消費税増税がやってくる。であるがゆえに、生活防衛をしていかなければというふうに働いたようであります。その不安、実質賃金が回復しないうちに消費税増税の2回目がやってくるという不安を払拭するということが大事であります。それで、総理がそういう判断をされたということと、それから、選挙から2日後に政労使会議を直ちに開いて、そして、次の春闘のときにも賃金を引き上げていくということを政労使で共通認識を持った。つまり二つの不安に直ちに対処したということはプラスに働いていると思います。
(問)消費ですけれども、低所得者あるいは若者の消費者マインドも上がってきているというふうにお感じでしょうか。
(答)消費者マインド全体が、景気ウォッチャー調査、これはありとあらゆる街角景気感覚ですが、これがかなり上がってきておりますから、全体的に消費者マインドが改善しているということは言えるのではないかと思います。
(問)住宅投資ですけれども、やはりかなり耐久財の消費は消費増税後、回復していない、特に住宅に顕著にあらわれている感じがするのですけれども、これは住宅ローン減税や、それから給付金を行っていたにもかかわらず、こういう状況だというのは、どういう原因だとお考えになっていらっしゃいますか。
(答)政府の政策の利点が完全に浸透し切っていないという点はあるのかもしれません。住宅購入はお買い得ですということを、しっかり関係業界を通じてさらに徹底していきたいと思っております。
 それから、実際にこの春闘を通じて賃金が上がってくるという2回連続のファクトが示されるということが重要かと思います。
(問)住宅投資は多分二つの点があって、消費税増税の影響でかなり大きな金額の消費税が乗っかってくるというのが一つですけれども、もう一つは、空き家の話の議論が最近出ておりまして、将来的な人口減少みたいなものが住宅の値下がり等々を予想させてしまうという面もあったりするのかなと思うのですが、そういう意味で、経済を上向かせていくためには、やはり人口減とかそういったことにしっかり対処していかなければいけないと思います。要するに、構造問題に切り込んでいかなければいけないと思うのですが、その辺どうお考えになっていらっしゃいますか。
(答)それは、中長期的には、まさに人口減というのが全ての経済に与える影響のベースになっています。空き家をどう利用するか、これも経済対策として、古民家を改築して簡易型旅館にする等々の工夫が一部で行われています。それ以外でこのリフォームをどう活用していくか、あるいは空き家自身を、店舗住宅のようなものは商店街振興のある種の拠点として再利用するなど、総合的な政策で人口減が即住宅需要の減少ということにダイレクトにつながっていかないように工夫を凝らすことが重要かと思います。
(問)株価がこれだけ高い中で2.2%にとどまったというのは、やはり意外感があって、期待にまだ届いていないという面があるかと思うのですが、これは懸念すべき状況なのでしょうか。低空飛行のように見える、大分何か水面に近いような感じもするのですが、景気は腰折れしないで、先行きはそんなに心配することはないのか、この後きちんと上向いていってくれるのか、心配しなくて大丈夫なのか、そこはどうでしょうか。
(答)株価と成長率の関係で言えば、1万8,000円をつけたのに民間より低かったと見るのか、民間より低いのに1万8,000円をつけたと見るのか、評価はいろいろだと思います。民間より低いのに1万8,000円をつけたということは、つまり景気が上昇していく環境が整いつつある。上昇気流が吹きつつあるということを反映しているかと思います。いろいろ政府の施策が具体的な経済指標として全てよくなってきました。
 野党が指摘をするアベノミクスの問題点は二つしかありません。一つは、実質賃金がマイナスで続いてきたではないかということと、もう一つは、格差が拡大しているのではないかということです。しかしながら、実質総雇用者所得はいよいよ12月はプラスに転じてきました。やがてこの基調が定着していくことが期待されます。
 あわせて、格差の問題について言えば、トマ・ピケティ氏が来日して、格差問題が注目を浴びていますけれども、実際、格差を表現するデータとして、ジニ係数と相対的貧困率がありますが、ジニ係数は、再分配後で比較をするとかなり前から全く数値は変わっていないのです。ですから、再分配機能はきちんと働いている。あわせて、安倍内閣では再分配機能を社会保障の強化や、あるいは所得税の最高税率を引き上げる、相続税率を引き上げる。そして、最低賃金を2年連続、15円、16円と引き上げています。前政権の民主党政権下の最低賃金は、3年間平均で12円です。むしろそのときよりも更に最低賃金を引き上げているわけです。そして、企業収益は2年連続、統計を取り始めて以来の過去最高値をつけている。2014年は最高値を更に更新しているわけです。それを好循環に回していくような仕組みもつくりました。政労使の会議をつくり、環境整備をするという仕組みもつくりました。つまり、装置は皆そろっているわけです。装置に入れる原数値も全部よくなってきているわけであります。ですから、格差の問題、ジニ係数の問題も、再分配後は変化していない。これはいいほうに変化をしていくと思います。
 さらに、相対的貧困率であります。相対的貧困率は絶対貧困と違いますから、これも格差を示す数値と言われていますけれども、この中央値というのは平均値ではありません。100人並べると、所得の高い人を1番から100番まで並べて50番目の人が中央値ですから、平均値の半分以下の所得の人が何%いるかという統計と違って、中央値の半分以下の所得の人の数字です。OECD統計では、3万サンプルの厚生労働省統計を使っています。この統計ですとOECD主要国ワースト6になります。しかし、もう一つ、6万サンプルを使っている総務省統計というのがあります。これですと、相対的貧困率はOECD平均より下で、より相対的貧困率は低いのです。
 この原因は、厚生労働省は3万サンプルを、福祉事務所を通じて取っています。そうすると世帯収入が300万円未満の世帯が多く出ます。一方、総務省統計は市町村に委託してつくっています。これは6万サンプルとサンプル数は多く、300万円未満世帯数はより少なく出る。統計の取り方によって違います。福祉事務所を使うとどうしても300万円未満層の方が多く出る。サンプル対象として多くなるということになりますから。総務省統計を使って、OECD統計に当てはめていくと、OECDの貧困率よりもっと低く出ます。これは事実としてそうなっています。真実は間にあると思いますから、その格差が拡大しているということも当たらない。格差と実質賃金の問題に、今年はしっかりと対応できると思います。
(問)改めて、個人消費の伸び悩みと捉えているのか、それとも徐々に回復していると捉えているのか、個人消費をどう捉えられているかということと、大きく言うと、富裕層は消費が回復しているけれども、なかなかデパートや流通業者の話だと、中間層の伸び悩みというのがあるということです。その辺をどう受け止められているのかというのをお聞きかせ下さい。もう一点は、企業業績が非常によくなってきていて、その中で、設備投資が思ったより伸びていないという印象もあるのですけれども、この伸びについてはどうお考えでしょうか。
(答)個人消費も設備投資も、その原資がなければなりません。それから将来見通しです。消費で言えば、将来にわたって給与が上がっていくということに懐疑的な空気があって、それが消費を下押ししていました。これを取り除いていくということと、雰囲気を変えていくということと実態を変えていくということになります。設備投資もその原資が必要です。企業は、今まで内部留保が積み上がってきました。328兆円と言われています。このうち使える内部留保、つまり現預金と、保有期間1年未満と考えている有価証券等々は、その総計が201兆円あります。要は、今までは一生懸命稼いだお金を好循環に使わないで、バランスシート改善に必死に充ててきた。そのマインドがずっと残っていて、本来の経済の好循環に使っていくという行動心理がなかなか醸成されてこなかったわけです。我々は、それをこのように使っていけば、自動回転していって、好循環は循環していく、つまり、瞬間的には企業単体、経営者としては損をしたように映るかもしれないけれども、得をとる素地をつくっていくのだということを懸命に説得してきたわけです。しかも、そのための環境を整備してきたわけです。投資の減税や、あるいは給与減税等々をやってきたわけです。それが少しずつ浸透してきていって、企業が持っている資金をどのように使っていくかという使い先が変わりつつあるのだと思っております。ですから、今は消費の状況は賃金上昇が2年連続して、あるいは3年連続して、あるいはこれから未来へ向かってずっとという素地を今つくっているところだと理解いただきたいと思います。
 2回目の賃上げが行われる。しかも、一部輸送機械業界等々では、昨年を上回る賃上げというような予測も出ています。こういう雰囲気が広がっていくことが、将来に対して一過性のものではないのだという雰囲気、環境を醸成していくのだと思います。そこが一番大事ではないかと思っています。

(以上)