甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年2月12日

(平成27年2月12日(木) 10:07~10:27  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 1月12日に閣議了解いたしました「平成27年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に関しまして、予算案等を踏まえ、政府支出に係る計数の追加等を行い、本日閣議決定を行いました。
 政府は、政労使の合意を踏まえた取組や成長戦略を着実に実行することにより、経済の好循環の更なる拡大を実現するとともに、経済の脆弱な部分に的を絞り、スピード感を持って「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を実施し、地方にアベノミクスの成果を広く行き渡らせていく。
 平成27年度の我が国経済は、こうした各種政策の推進等によりまして、実質雇用者報酬の伸びがプラスと見込まれる。野党からは唯一この点が、アベノミクスがうまくいっていない点と指摘されていました。それ以外の経済指標は全てよくなっていたわけでありますが、ついにこの野党が指摘されている実質雇用者報酬もいよいよプラス、27年度についてはプラスと見込まれることになるわけです。雇用・所得環境が引き続き改善し、好循環が更に進展するとともに、原油価格低下等により交易条件も改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる。
 この結果、平成27年度の国内総生産の実質成長率は1.5%程度、名目成長率は2.7%程度と見込んでおります。また、物価につきましては、原油価格低下の影響はあるものの、デフレ脱却に向け着実な進展が見込まれる。
 今後は、この基本的態度に沿って経済財政運営に万全を期していく。
 また、「中長期の経済財政に関する試算」を閣議にて配布いたしました。
 平成27年度、すなわち2015年度の国・地方の基礎的財政収支の対GDP比は、予算案や政府経済見通し等の下で、3.3%程度の赤字となり、2010年度に比べて半減するという目標を達成する見込みとなりました。
 2020年度の国・地方の基礎的財政収支の対GDP比は、ベースラインケースにおいては、3.0%程度の赤字となるものの、経済再生ケースにおいては、成長に伴う税収増によって、1.6%程度まで改善することが見込まれます。
 2020年度の財政健全化目標の達成に向けては、具体的な計画を夏までに策定することとしております。経済再生と財政健全化の両立を実現すべく、経済財政諮問会議を中心に検討を進めてまいります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)中長期試算についてですが、夏の試算に比べては、2020年度のPB(基礎的財政収支)はやや赤字は縮小しておりますが、それでも9兆円の赤字ということで、まだまだ巨額の赤字があるわけですが、これを歳出改革だけで埋めることが可能かどうか、改めて御所見を伺いたいと思います。
(答)その前に、2015年度のPB赤字半減目標達成見込み、ここは消費税率を10%に今年の10月から引き上げることにしておりました。ですから、それ以降の税収が入るわけでありますけれども、実際にはそれを延期した。引き上げることを織り込んで達成するということですから、織り込まなかったら本来達成できなかったものが達成できる見通しとなった。それは何かといえば、歳出改革努力とアベノミクスによる税収増の合せ技で対応ができたということであります。
 2020年度に向かって、やみくもに歳出カットだけでこれを達成しようとすると、相当副作用が出る。税収全体そのものの増収が図れない場合もあるかもしれません。そこで、引き続き2015年度のPB赤字半減目標の達成を可能にしたような経済の再生と歳出カットにより、財政の健全化を達成していく。やはり引き続き合せ技、総合的にやっていかなければならないと思っております。
(問)先ほど冒頭発言のところで、2020年度の財政健全化に向けての具体的な案とおっしゃいましたけれども、2020年度の基礎的財政収支の黒字化に向けた具体的な案をつくると私は理解したのですけれども、そうではないということなのでしょうか。
(答)いいえ。財政健全化目標というのは2015年度、それから2020年度とありますから、その健全化目標に向けて具体的なプランをつくっていくということで間違いありません。
(問)財政健全化を歳出カットと経済再生で実現していくことを目指すとしても、最終的に消費税かどうかはともかく、何らかの増収策を図るという必要性が出てこないのかどうか。そこのところはどう見ていらっしゃるのか教えてもらえますか。
(答)基本的には、今後5年間の中に消費税イベントが一つ入ってくるわけであります。8%から10%への消費税率引上げという話が入ってきます。もう一つイベントを入れるのかということだと思いますけれども、基本的には8%から10%への消費税率引上げによる税収増、それから経済成長をアベノミクスでどこまで更に加速できるかという税収増、それから聖域なき歳出カットを行っていく。特にロットの大きい部分については、いろいろな構造改革的手法を使う。社会保障や地方財政のロットの大きい部分です。従来のように頭からカットするという方法ではなくて、ITを駆使して重複を省く、事前に健康づくり・病気にかからない体をつくっていくなど、健康長寿戦略というのが当然あります。あるいは、公的部分を産業化していくという手法。従来にはないような構造改革手法を使って歳出の効率化を図っていくということであります。 そして、ある時点、5年間の中間地点で一回検証する必要があろうかと思います。そこで歳出カット、歳入増の手法について、どういう選択があるのかということをしっかり検証する必要があろうかと思います。
 基本的には、この5年間で消費税率引上げイベントは1回ということを基本に作業を進めていきたいと思います。
(問)大臣の御回答の中で、5年間の中間地点で検証する必要があるというお話があったのですが、一応具体化の計画は5年分つくるけれども、途中で1回見直して、状況によってはそれをまた直す必要性もあるという認識でしょうか。
(答)そうです。アベノミクスは、すべからく達成度指標を用いていろいろな成長戦略に取り組んでいます。この財政再建目標の達成度指標というわけでもないのですけれども、プランをつくって、プランが順調に進んでいるかどうかを中間地点で検証する必要があろうかと思います。
(問)2020年度のPBを黒字化するという目標は堅持するという理解でよろしいのでしょうか。
(答)そうです。3.3%改善をするということですから、2020年度目標は従来から、その時点でPBが黒字化するということであります。具体的な数字を持って、その数字を成長と歳出の効率化の合せ技で達成していくということを申し上げています。
(問)マーケットですけれども、為替が久しぶりに120円台に入って、一方で株も今は1万8,000円近くですが、その辺について、どのように御覧になっていますか。
(答)円安を好感してということだと思います。円安は、アメリカの出口戦略が着実に進んでいることを受けての円安ということになるのだと思います。株価は低いより高い方がいいと思いますが、しかし、それは実体経済とかけ離れてということではいけないわけであります。実体経済を反映して高い株価がついている。その実体経済は将来見通しも織り込んでいるわけであります。
 アベノミクスは、今日まで各種経済・雇用指標はほぼ全てと言っていいほど改善してきました。野党が唯一指摘をされていたのは、実質賃金がマイナスではないかということです。消費税率を引き上げた分だけ物価が上がりますが、消費税率を引き上げるときに、自動的にその分だけ賃金が上がるということにはなかなかなりませんので、消費税率を引き上げていく過程においては、当然ある段階で実質がマイナスになっていくのです。ただ、賃金は後追いでありますけれども、ベースラインが上がっていけば、これは発射台が上がるということになります。そして、この消費税率引上げによる物価への影響というのはワンショットでありますから、連続した賃上げがあれば必ずクライムオーバーできるわけであります。それをいよいよ平成27年度中には達成できる見通しということを申し上げているわけであります。野党の唯一アベノミクスがうまくいっていないという御指摘の実質賃金をプラスにできる見通しということは、極めて大きなトピックだと思います。
(問)原油安や円安の影響もかなり日本経済にとっては追い風になっていると思いますが、逆に言うと、外的要因で変動が激しいものですから、これは少し政府としてもコントロールしにくい部分だと思いますけれども、これが今、どれほど日本経済を後押ししているか。若しくは、これがなくなったときに目標に対しての影響というのは、どれぐらいのインパクトがあるとお感じになっていらっしゃいますか。
(答)日本経済にどれぐらい貢献しているかというと、原油価格が半分になれば支払い代金が半分、7兆円分貢献するということは申し上げております。ただ、これがどれぐらい続くのか、続かないのか、あるいは乱高下するのかということは全く分かりませんから、原油価格は物価要因にはなっていきますので、安定的に経済の底上げを図るという努力、不断の努力を続けていく、構造改革を続けていくということが大事だと思います。しばらくは原油安状況が続くと市場では見られているようでありますけれども、この機会に交易条件も改善をするわけでありますから、輸出の力もついてくるかと思います。要は、日本の経済体質を原油の上がり下がりによって交易条件が振り回されるということではなくて、構造改革を通じて構造的に交易条件を改善していくという努力が必要だと思っています。
 それから、歳出構造改善が手ぬるいという御指摘をどこかがされていますけれども、注視していただきたいのは、例えば社会保障支出等についてであります。
 従来、社会保障は自然増8,000億円から1兆円というのが相場であります。そうすると、この3年間で自然増が3兆円ぐらいというのが従来相場のはずです。この3年間での社会保障支出は、多分それを切っていると思います。2兆5,000億円ぐらいです。 そこで注目することは、社会保障の強化というのを行っています。それが1兆円ですから、つまり自然増は3年間で1兆5,000億円、年平均5,000億円ということです。これは自然増を相当切り込んでいる。診療報酬改定など、新年度予算もかなり批判を受けましたけれども、介護の改定、これは介護の21業種の平均内部留保率の平均値が収支差8%と言われている中で、適正に改善していったということであります。介護士の給与を引き上げながら全体の改定をしていく。全体の平均収支差は8%、日本の中小企業でも、なかなか8%の利益率を上げている企業というのはないと思います。そういう点で、もちろん介護業種によってこれは違いがあります。居宅介護の支援や複合サービスというのは収支差がマイナスになっています。あるいは認知症グループホームやデイサービスというのは10%以上の収支差ということが言われています。各サービスにきちんとメリハリをつけて対応はしていきますけれども、平均収支差8%の中でどう対処するかということは、実情をしっかり精査して予算に反映したいと思っております。

(以上)