甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年1月27日

(平成27年1月27日(火) 10:31~10:56  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 私からは特にありません。

2.質疑応答

(問)昨日から通常国会が開幕いたしましたけれども、今後本格的な論戦に臨むに当たっての御所感をお願いします。特に農業や雇用については、今後も議論が活発になると思いますけれども、今年はアベノミクスの正念場の年と位置づけておられて、特にそういった法律の動向は海外から見ても、アベノミクスが、成長戦略が成功するかどうかの注目点になると思いますが、そういったことも踏まえてお願いできればと思います。

(答)いよいよ今日から本会議での論戦がスタートいたします。構造改革に本格的に取り組んでいく国会になります。
 御指摘の農業、雇用については、改革というのはなぜやるかといえば、生き残るためにやるわけです。何もしなければ、手をこまねいていれば消滅してしまうという危機に向かって、生き残るために改革をするわけであります。改革は当然痛みを伴います。ですから、農業や雇用の改革をしていくと、既得権益に携わっている人にとっては、それは痛みとなるわけであります。しかし、それを乗り越えていかないと全体が消滅するという危機に入っていってしまうわけであります。そこを理解していただきたいと思います。痛みを乗り越えて改革をした結果、洋々たる未来が待っている、そのようにしていかなければならないわけであります。
 農業改革につきましては、日本の農業が生き残るために行っていく改革だということを、関係者にはしっかり受け止めていただきたいと思います。
 今年がアベノミクスにとっての正念場の一年になるというのは、そのとおりであります。アベノミクスは手法として「3本の矢」を矢継ぎ早に放つという、従来にない政策によってデフレを脱却し、健康な経済成長軌道に日本経済を乗せていくということであります。そして、政策の柱というのは、一つは好循環を実現していくということであります。そしてもう一つは、中長期的に日本を世界で最もイノベーティブな国にしていく、この二つであります。好循環は、マイナス循環、悪循環がデフレをつくったわけでありますから、デフレを脱却し、名目3%、実質2%のあらまほしき経済成長の姿へと導いていくためにやっていくわけであります。企業環境を整備し、日本を投資に適した国にしていく。事業を展開していくに当たっての障害物を取り除いていく。環境整備をして企業業績を上げていく。企業業績は、過去最高を記録しているわけであります。その業績を、好循環を回す原資として使っていく。一つは賃金の改善に、一つは下請代金の改善に、そして一つは自身の競争力強化、研究開発投資、設備投資に向けていく。もちろん株主に対する配当という還元は当然あるわけでありますけれども、おろそかにされがちな三つについてしっかり取り組んでいく。それを通じて消費を活性化する、あるいは海外市場をとっていくということで、それが企業業績の更なる拡大につながっていくという、好循環を回していくわけであります。
 昨年、15年ぶりの賃上げにつながりました。そして今年は、経団連会長が、昨年以上の賃上げをという要請を経営側全体にしているわけであります。経済界のトップが自ら、前年以上の賃上げをというようなことは過去に例がありません。そして、このもとになりますのは、政労使会議でありました。選挙が終わって新内閣が組閣される間を待つことなく、いっときたりとも安倍内閣はとどまってはいないということで、総理の号令一下で、選挙の2日後に政労使会議を開きました。そこで政労使のそれぞれがなすべきことについて、取り組んでいくということの共通認識を確認したわけであります。
 経営側がしっかり応えようとしています。いろいろな声はありましたけれども、政府は、そのための環境整備、賃上げに資する税制、あるいは法人税本体の減税について踏み込んだ結論を出していったわけであります。そして労働側も、単に賃上げ要求をするだけではなくて、労働生産性を上げていくために新たな働き方、これも最終的に労働者に資する改革です。一時的に関係者にとって痛みと感じるところがあるのかもしれません。しかし、それは結局労働者に資するような付加価値、労働生産性としてはね返ってくるわけであります。それぞれがなすべきことを認識して、共通認識として作業したわけでありますから、それに向かって三者が取り組んでいけば、必ず全てにとってあらまほしき姿の日本経済社会が生まれてくると認識いたしております。
(問)先ほどのお答えの中で、改革は痛みが伴うという例として、農業と雇用を例示されましたけれども、もう少しどういった法案と狙いを持って改革の痛みというふうに触れられたのか、御説明をお願いします。
(答)農業でいえば、今、農水省、あるいは規制改革会議を中心に、そして関連する部署として産業競争力会議が関連してきますけれども、従来の形態を変えようとしているわけです。組織的にも意識的にも変えていくわけです。どうしても既存の枠内でこの業に取り組んできた人にとっては、それ自身が変わっていくことは、言ってみれば、新しい挑戦になるわけです。新しい挑戦は当然ストレスになってくるわけでありますから、それは痛みと感ずると思います。
 しかし、私は農業関係者にも申し上げているのですけれども、現状が現状のままで輝かしい未来が開けていくのであるならば、何もしなくてもいいと思います。しかし、農業生産額がどんどん落ちていっているわけです。一方で、日本の農業にポテンシャルがないかといえば、これは品質のすばらしさや、その安全性や味覚等々、価格以外をとってみれば大変高い評価になっているのです。これは国外も含めた評価です。とすると、価格だけで勝負するのではないというマーケットを開いて、そこにアクセスしていくという方法が当然あるわけです。それに向けて形態も変えていかなければならないわけですし、もっと自身が自立するという意識を持ってもらわなければならない。それは現状を変えていくわけですから、当然、不都合と映る人はいるわけです。しかし、それは当事者にとっていいことである。ですから、改革をしようとする政府側、党側は、これは閉塞感を打破して、可能性のある未来を開いていくために必要だということを、何のためにやるのか、そしてその先にどういう未来が待っているのかをしっかり説明して、それを共有する必要があると思います。
 雇用改革についても、従来は、雇用を移動させないということについて最大の努力を図ってきたわけです。一つで言えば、雇用調整助成金は、そこにとどまるためのお金です。でも、とどまるところ自身が既に、成熟産業から、むしろ時代の要請を受けない産業になりつつあるときに、付加価値の高いところに変わっていく、あるいは生産性の高いところに労働者がスキルアップ・スキルチェンジをして移っていかなければならない、そうしないと全体が生き残れないという場面では、雇用を何が何でもとどめさせるという政策はプラスに働かないわけです。そこでスキルアップをするための支援やスキルチェンジをするための支援、あるいは失業という形態を経ずに次代を担うところに、次代を担う企業に、あるいは企業内でも次代を担う部署に異動していくということが、全体が生き残れる道であります。新たなスキルを身につけるための努力というのは、一つは苦痛になるかもしれません。そういう意味で、苦痛が伴うけれども、しかし、現状維持では生き残れないという以上、変革をしていかなければならないわけであります。変革をするための努力は一時的な痛みかもしれませんけれども、より可能性の高い未来が待っているということであると思います。
(問)雇用については、今国会で新しい労働時間制度の法案も提出予定ですけれども、これについての言及ということではなくて、改革の痛みについて触れられたということでよろしいのでしょうか。
(答)新しい労働時間制度が痛みそのものというのではなくて、現状から変わっていくときに、ある種の努力が必要だということです。それは、現状にいる人にとっては痛みと映るかもしれませんけれども、それは実は痛みでは本当はないのでありまして、よりよい形態へ移るためにかく汗であり、努力であると思います。
(問)先週、月例経済報告が出まして、その中の政策態度において、日本銀行の政策に対して、「経済・物価の情勢は踏まえつつ」という文章に微妙に変えられております。それまでは「できるだけ早期に」という言葉を続けてきたわけですけれども、これが意味するところを文字どおりとれば、昨今の円安や原油安等々を踏まえれば、そんなに急いで、2%を何がなんでも達成しなくてもよい、というメッセージとして受け取ってよろしいでしょうか。
(答)具体的にいつまでに2%を達成するのかという厳格な期限を、政府も日銀もコミットしているわけではありません。できるだけ早期に実現するということです。そして、日銀が、2年程度を中心的な位置づけにしていくということは、2年を超えるということも含めて中心線を2年程度ということで表現されているのだと思います。その最中に、原油安により、国内CPIにとって相当大きな要素となり得る原油の価格が半分になりました。それらを勘案すると、大体いつぐらいまでにという幅の中心線よりももっとアローワンスをとっていいのではないかということであります。従来、中心線となる2年程度については、そこに向かう環境が、CPI総合を構成する大きな要素が当初の予測よりも極めて大きく変化をしているということを勘案しなければならないと思います。
(問)いわゆる量的緩和、世界中の中央銀行がやっていますけれども、その効果についてはよくわかりませんが、一つ明らかなことは、ECBの場合もそうでしたけれども、その国の通貨を弱くする。日本でいうと円安になるという効果がある、これははっきりしていると思うのですが、ここから更に円安になるということに対して、政府としてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
(答)そこについて、この時点で言及することは適切ではないと思います。物価と金融緩和については、日銀が具体的手法を選択して対応されることであります。政府としては、経済実体に見合った諸指標になるべく、日本経済を強化していくということであります。限りなく円安になる、限りなく円高になる、双方とも適切でないことは言うまでもありません。
(問)昨日から労使フォーラムが始まりまして、事実上の春闘の交渉スタートという感じですけれど、昨日、古賀会長が、昨年よりも一層の月例賃金の引上げが求められていると思うと御挨拶なさっていたのですが、経済の好循環の2巡目のためには、去年の大手の賃上げ率の平均が2.28ですけれども、今年はそれを上回る賃上げが必要だとお考えでしょうか。
(答)企業業績を無視した賃金を望んでいるわけではありませんし、そして、その手法は、ベアはもちろん労働側にとっては一番好ましい選択肢だと思いますが、経営側にとってはベアというのは将来の人件費を、将来にわたって固定費を引き上げるということでありますから、経営者にとっては不安材料になりかねない。ですから、自身の体力と自身の企業の経営見通しの中で、可能な限り賃上げをするための選択肢は、そこに任せてしかるべきだと思います。労働側が昨年以上の、政府としても賃上げは企業の体力の範囲で、可能な限り高い方が好循環に資すると考えております。昨年並みの賃上げがあれば、今年度中に実質賃金をプラスにすることは可能ではないかと考えております。あわせて、政労使の共通認識というのは、ただ相手に要求するのではなくて、自身が何をやるかということを認識したわけです。ですから、政府も汗をかく、賃上げに資するような環境整備のために、いろいろな批判ありましたけれども、それを乗り越えて環境をつくったわけです。そして経営側もそれに応えたわけです。やはり労働側にも応えてもらいたいと思います。
(問)TPPについてお聞きしたいのですが、まず、日曜日に一部報道で、日本がアメリカからの主食用米の輸入を数万トン程度で検討しており、日米両政府で調整しているという報道がありました。これに関してどうですかというのをお聞きしたいのと、日本政府は米の輸入に関して、今回のTPP交渉でどのような態度で臨まれているのかというのがお聞きしたいことの一つです。
 もう一つは、今日、豚肉に関して、アメリカの豚肉の団体が、日米で重要な進展があったので、TPAを大統領に与えるように求めるという書簡を各議員に出されたようですが、食肉関係もひとつ課題になっていましたが、現状で重要な進展があったのかどうか、また今後の日米の交渉全体にどのような影響を与えるのか、お考えを教えてください。
(答)まず米に関して、報道のような事実はありません。まだ日米間で米に関して具体的な協議ができる状況ではありません。非常にとれる選択肢は小さいということだけしか申し上げていません。
 それから、豚肉やその他に関して、確かに日米間で農産品5品目について間合いはかなり狭まってきております。ただ、御理解いただきたいのは、TPPはパッケージ合意ですから、どことどこがコンクリートされて、それが絶対動かないという話ではなくて、残された部分の対応によっては、収れんしたと理解している部分、あるいは収れんしつつあると理解している部分もリセットされる危険性があるということであります。ですから、この時点で私から、どことどこは完全にコンクリートして、全く絶対に動きませんということは言えません。
(問)米ですけれども、取り得る選択肢は非常に少ないものであるというお話ですが、与党の議員の中には、一粒も入れるなと、増やすなということを求める方も多いと思います。現状で主食用米に関しては、10万トンほど輸入量がありますけれど、それを全く増やさないというのは難しい状況なのでしょうか。
(答)一粒も増やすなということは不可能です。

(以上)