甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年11月17日

(平成26年11月17日(月) 9:18~9:49  於:合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 本日公表いたしました2014年7~9月期のGDP速報、1次QEでありますが、実質成長率は前期比年率マイナス1.6%となりまして、2四半期連続のマイナスとなりました。駆け込み需要と反動減をならすために、1~9月期の平均で見ますと前年比プラスとなっております。
 今回、マイナス成長となりました最大の要因は、在庫調整が進展したことがGDPにはマイナスに大きく影響したことが挙げられます。在庫調整には前向きの面もあります。つまり、生産と消費との乖離が在庫として積み上がっていくということです。在庫調整をするということは、前向きに向けて動きが始まるという意味もあります。ただ、統計上は、在庫が増えるとプラスに働き、減るとマイナスに働くという、少し不思議な統計上のロジックがございます。
 それから、消費税率引上げや制度変更に伴う駆け込み需要の反動等の影響によりまして、住宅投資、設備投資がマイナスとなりました。
 個人消費につきましては、前期比でプラスにはなっておりますが、前回の大幅なマイナスの後としては、小幅な伸びにとどまっているということであります。これは、消費者マインドの低下や、夏の天候不順の影響によるものと考えられ、個人消費に足踏みが見られております。
 ただ、名目雇用者報酬につきましては、前年同期比で2.6%の増となっております。この2.6%の増というのは17年ぶりの高い伸び率であります。
 平成25年度補正予算及び平成26年度予算の早期実施の取組の効果により、公共投資はプラス寄与となっております。
 今後につきましては、引き続き内外の動向を注視しつつ、適時適切に対応してまいりたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)大臣は、かねがね、法律に定められている消費増税に向けて、それはできるよう環境づくりをすることが重要だと御発言されていたと思いますけれども、今回の結果を受けまして、それができたのかどうか。また、できないとするならば、どこに問題があったのか。その辺の御認識をお聞かせください。
(答)消費増税について、一番大事なことは、消費増税を導入することによって景気が失速し、デフレに戻ってしまってはいけないということであります。名目経済規模掛ける税率イコール税収でありますから、そこのところを慎重に判断することが、今後、総理を中心になされると思います。デフレマインドを払拭し切れない中で消費税率を引上げるということのインパクトが、想定より大きいということであります。
 ただ、大事なことは、好循環がしっかり回っているかということです。プラス材料としては、企業収益は過去に例がないくらい好業績を上げています。企業収益がそのまま内部留保にとどまって外に出ていかないとしたら好循環は動きません。それが、下請代金の改善や、あるいは雇用者報酬に反映されるということが一番大事です。
 それが、いきなり1年で企業収益が全て隅々まで行き渡るかというと、これはもちろんタイムラグがございます。下請代金の改善について、まだまだ中小企業者は実感いたしておりません。ただし、一部改善しつつあるという回答もあります。
 もう一方の雇用者報酬であります。雇用者報酬は、名目値は改善を続けております。先ほど申し上げましたように、7~9月期で前年同期比を比較しますとプラスの2.6%。これは97年以来だそうですから、17年ぶりの改善幅であります。ですから、企業収益の拡大したものが雇用者報酬に反映しつつあることは事実です。
 ただ、物価安定目標プラス、ワンショットの消費税率の3%引上げが物価に影響しています。それを乗り越えるだけの力にはまだなっていないということです。ですから、名目でプラスの2.6%でありますけれども、実質ではかりますとマイナスの0.6%であります。実質でもプラスに持っていくことが大事なことでありまして、企業収益、史上最高益の企業収益を賃金改善に回していくという2巡目、3巡目の見通しができるかどうか。それによって消費マインドが改善されてくる。つまり、消費マインドがデフレ脱却されていないと、生活防衛に入っていくわけでありますから、消費は停滞する。将来にわたって企業業績の改善が賃金改善につながって、連続的につながっていくという環境を作るということが大事なことです。
 でありますから、先ほどの質問にお答えするとしたら、好循環を作っていく環境整備は、間違いなくスタートしています。これを継続していくことが何より大事だと思います。
(問)今回のGDPの値は民間予測よりかなり下回っているということですけれども、これについての率直な大臣の受け止めをよろしくお願いします。
(答)民間予測値の平均値はプラス2.1%でありました。今回公表値は年率換算ベースでマイナスの1.6%であります。民間値に近いことを期待しておりましたけれども、実体はこういう数字になりました。
 大きい要因は消費がプラスでありましたけれども、民間予測の半分であったということと、申し上げましたように、在庫が減っているということであります。
 私はかねがね、在庫の増減とGDPの関係というのは、少し整合性がとれないのではないかということを、問題提起しておりました。在庫が増えれば増えるほどGDPにはプラスです。在庫が増えれば増えるということは、作ったものがそれだけ売れないから在庫になっていくわけであります。ただし、在庫が増えるとGDPはプラスになります。在庫が減るとGDPはマイナスになるのであります。
 もちろん、在庫には前向きの点、将来の消費が旺盛であるから生産を拡大して、それに備えて在庫が増えていくという前向きの面があります。ただし、生産したものが売れないから在庫が増えていくというマイナス面もあります。在庫が減るということは、その裏返しでありますから、プラスとマイナスの面があります。前向きの在庫の減になっていくための在庫調整であるとしたら、これからに備えた前向きの成果だと思います。プラス、マイナス、両方を評価することが大事だと思います。
(問)エコノミストの反応も、増税延期は決定的というコメントなども出てきているのですけれども、ここまでマイナスになってしまうと、解散よりも景気対策を打ってほしいという声も結構上がってくると思うのですが、もしそういう声が上がってきた場合の大臣のお考えと、先ほど、3%の増税を乗り切るほどのというコメントもございましたが、そもそも消費税率の8%への引き上げの是非も、これだと言われてしまうのではないかという懸念もあるのですけれども、お聞かせください。
(答)消費税をどうするか、景気対策をどうするか、そして解散がどう絡むか、最終的には総理の御判断であります。三つに対して、別々にやるのか、連動してやるのか、どうするのかも含めて、総理が今日帰国されますから、明日以降、何らかの判断が出るのではないかと思っております。
 今までのところ我々が学ぶことは、この消費税率引上げをデフレ下でやるのか、インフレ下でやるのか。デフレ下でやることの影響はかなり大きいということが学べたことであろうと思います。
 一方で、消費税率をなぜ引き上げるのかということについては、識者を中心に理解は広がっています。連合も、いろいろな前提要件はあるけれども、引上げについてはやるべきだということをおっしゃいました。
 それは社会保障の安定財源を充当するということであって、社会保障の将来、持続可能性が確保されるということは安心につながっていくことであるから、中長期的に見れば、それは消費につながっていくことだという理屈もあるわけであります。社会保障の半分を借金で賄うということ自体が異常事態でありますから、そこは説明をすると、国民はしっかり理解すると。だから消費税を、先進国では、例がないくらい低い割合で、先進国で最も高度な充実した社会保障を賄っていくということは当然無理があるわけでありますから、この充実した、安定した社会保障を続けていくために、安定した財源が必要であるということまでは理解が浸透しつつあると思います。
 ただ、いつやるのかというタイミングです。名目経済規模が小さくなってしまっては元も子もないということも、次第に共有化されつつあると思います。名目を大きくしていく。つまり、デフレからの脱却についての環境整備をしていく。その先にしっかり財源を確保するということがあるということです。安倍総理は、デフレの脱却が全ての前提であるということをおっしゃっておられました。それは正しい判断だと思います。
 それに向けて、現状がどのポジションにあるのかということを精査する必要がある。いずれにしても、消費税は引上げないと社会保障の持続可能性、安定性というのは担保されないわけでありますから、要はどのタイミングでやるかということと、そのためにどういう環境整備をするかということだと思います。それは総理が帰国されて、迅速に、そして慎重に判断されると思います。
(問)先ほどの質問で、解散する状況ではないのではないかということもあり得ると、そういう議論の声も出るのではないかという点について、コメントを改めていただければと思います。もう一つは、2四半期連続でマイナスというのは、内閣府にはいろいろな専門的な判断の仕方があるとは思いますが、よく一般的にリセッションとか景気後退とか、そういう言葉を使われたりすることもあるのですが、そのことについてはどう評価すべきでしょうか。
(答)解散についての是非論、いろいろおっしゃいます。何を問うかということです。それで、解散はもちろんこれから総理が判断されることであり、そして何をもって民意を問うのかということも総理がおっしゃることでありますから、私がここで申し上げることではないと思いますが、あえて申し上げるならば、消費税は法律で1年半のインターバルを置いて8%から0%に上げるという、法律は成立しているわけであります。それで、もちろん景気動向はありますけれども、それを変更する場合には法律の改正を必要とします。幾つもの法律改正をするわけであります。そして、なぜそれを変えたかということも、大きな法律改正に伴って、説明しなければなりません。つまり、方針転換をするわけですから、こういう方針で我々は行きたいと考えている。それはまさに国政を預かっていく方向性を示して、国民に理解を求めるということにつながっていくと思います。ただ、どういう判断をされるかは総理の判断であります。
 それから、景気後退かどうかということについて。これは好循環が動かずにこういう数字が出てくるということであれば、そういうことが言えるかもしれません。しかし、申し上げていますように、デフレを脱却させるためには、まず牽引役の企業の収益を改善していくということです。雇用者はほとんどが何らかの法人に所属をしているわけであります。その法人の企業業績を上げなければ全ては始まらないと。そして企業業績が史上最高になったということはまぎれもない事実です。そして名目報酬が17年ぶりに改善していることもまぎれもない事実です。ただ、順序として、消費税を上げる。デフレを脱却するための物価安定目標に向けて物価を上げていく。平時の物価上昇とワンショットの物価上昇が重なっている時に、実質がそれをオーバーライドするということはなかなかできません。ただ、複数年かけてオーバーライドしていくということは、政府は明確に宣言しているわけでありますし、それに向かっての動きが始まっているということも事実であります。そういうことを勘案しますと、景気後退という一言で片づけることはできないと思います。
(問)4月に消費税率を5%から8%に引き上げると決めたのを踏まえて、25年度補正では5.5兆円の経済対策を打ち出して、景気を下支えするという狙いがあったと思います。それにもかかわらず、消費を含めマイナス成長になっている最大の要因はどこにあるか。また、経済対策をまた総理が指示するのではないかということがありますけれども、今回の5.5兆円が、効きにくかったというところでどういう教訓があるのでしょうか。その辺をどう考えているか教えてください。
(答)デフレを脱却して、そして社会保障の安定財源を求めるという行為に移っていく。デフレを脱却しつつあるということは申し上げましたけれども、デフレマインドが消費者心理から払拭されているかというと、そうではないということが今回の一連の事象で確認ができると思います。デフレマインドが払拭されていない中で消費税率を引き上げるということが、消費に与える影響というのはかなり大きいということだと思います。かつての消費税引上げの中では、賃金が名目も含めて上がった中で、消費税を導入していくということであった場合は、過去の例から見て、衝撃はそれほど大きくないということであります。ですから、賃金が上がっていくという確信を消費者の皆さんに持っていただくということが大事だと思います。
(問)率直に今回のマイナス成長を大臣は想定されていたのか、それとも想定外だったのか教えてください。
(答)こんな場合、マイナスになるのではないかという観測はありました。民間の中にもそういう観測をする方もいらっしゃいました。もちろん経済財政運営担当としては、民間値に近い数字であってほしいとは思っておりました。ただし、こういう数字になりましたけれども、我々がかねてから主張して、説明していましたとおり、好循環が始まっているのか、好循環が動かないのか。つまり、企業収益は上がったけれども、そこにとどまって、一歩も出ていないのか、それとも、賃金に跳ね返り、それが消費を刺激し、企業収益のさらなる改善につながるという循環が全く動いていないのかといえば、賃金のかつてない、名目賃金の上昇にはつながっている。ただし、実質の改善にまでまだ届いていませんから、それが消費者心理をマイナスに刺激して、生活防衛に入ってしまっているという点はあると思います。ですから、政府としては、これからもきちんと好循環を回していって、賃金の改善に連続的につながっていく、そして、できるだけ短い複数年のうちに実質もプラスにしていくと。そういう見通しを示すことが何より大事かというふうに思います。
(問)夏に内閣府が年央試算で、今年度1.2%に達する予定だということを言っていたにもかかわらず、恐らくこれはもう達成不可能であろうと思います。これを去年の消費税判断も含め、アベノミクスの失敗ではないかと野党は言う可能性があると思いますが、これに対してどうお考えになるかということが1点。それから、先ほど教訓としなければいけないのは、デフレ下の消費増税であるとおっしゃいましたが、そうすると、消費増税を次にする場合には、その前にデフレ脱却宣言が前提となるのかどうか、そこについて、大臣がどうお考えになっているか教えてください。
(答)アベノミクスが成功したか失敗したかについては、これは失敗していないと思います。そして、4月の消費税判断が正しかったのかどうなのかということでありますけれども、振り返ってみて、ほとんどの識者の方は引き上げるべきであるということをおっしゃいました。4月とそれから10月、半年たったところでは、有識者、専門家の方々、市場関係者の景色が変わりつつあるということは、私は以前申し上げたと思います。今年4月の8%引き上げを判断した時点で、引上げを延期すべきだとおっしゃった方はほとんどいらっしゃらない。安倍総理としては、それでもやっぱり慎重に考えたいということをおっしゃっていました。そして、各方面から意見を聞いた結果、圧倒的多数が引き上げるべきだと、むしろ法律を成立させているのに、引き上げないということになると、一体いつ引き上げるのだ、永遠に引き上げる機会はないのではないかとまで言われました。ただ、今回、市場関係者、あるいは識者の中にも、慎重に考えるべきである、あるいは、引上げは当然やるべきであるけれども、そのタイミングについては環境整備をしっかりやるべきだという声がかなり大きくなってきたわけであります。今回の数字を見て、さらにどういう変化があるかということはしっかりと見ていかなければならないと思っております。ただ、野党が、アベノミクスが失敗だ云々と言われても、これは野党の政権下に消費税率引上げをお決めになったわけです。もちろん我々は賛成しました。そして、4月の時点でも引き上げるべきというのは大勢だったと思います。そういう環境下で、ではあの時点で引上げをしないという時には、野党はどういう評価をされたのかと思います。それで、再三再四申し上げていますけれども、デフレを脱却していくには順序があります。経済環境をよくして、企業業績を伸ばしていく。その伸ばした企業業績が賃金に反映されるようにしていく。そして、その賃金の反映が消費の後押しをしていくという、その循環を考えていたわけであります。それは失敗したかといえば、成功しているわけであります。ただ、何巡かしないと完成形に至らないということでありますから、仮に総理が消費税判断を、消費税引上げを先にされると、仮にお考えなら、それは何巡かするまでの時間を与えてもらいたいということだと思います。
(問)先ほどの質問で大臣は、景気後退とかリセッションと、一言で片づけてはいけないということだったのですけれども、足元の景気の認識と、先行きについてはどのようにお考えなのか。消費税率引上げの反動減が予想よりも少し長引いているという局面が今回の数字に出ているのか、10-12月期や来年の1-3月期あたりに向けた、また基調として回復に戻るという、一時的な踊り場みたいな感じが少し長引いているという認識なのかお聞かせください。
(答)一時的な踊り場か、あるいはそうではないかというのは、一時的な踊り場にするために、我々はやるべきことはやらなければいけないと思います。そこはやっぱり消費マインドが委縮してしまうということが一番いけないことであります。それで、この雇用者報酬は改善に向かっていることは間違いありません。7-9月期がプラス2.6%と17年ぶりのいい数字であるということ、そして、この冬のボーナスにも、経団連の一次集計はプラス5%を上回っています。昨年の12月、今年の12月、年末一時金が、経団連一次回答、一次集計で5%以上に、2期連続、2年連続なっているというのはバブル以降、二十数年ぶりのことであります。ですから、所得環境は間違いなくいいほうに行っています。ですから、それをこれからも続けていきます、過度に生活防衛策に走ると、それがさらなる生活防衛を呼んでしまうということを、しっかり理解していただくことが必要だと思います。将来にわたって、所得環境が改善していくという安心感と安定感を政府が与えていくことが、これからの仕事だと思います。

(以上)