甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年9月3日

(平成26年9月3日(水) 21:08~21:31  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 引き続き、経済再生担当並びに社会保障・税一体改革担当並びに経済財政政策担当並びにTPP担当大臣を拝命いたしました。変わったことと言えば、総理に代行する順位が第4位から第3位に上がったぐらいのことでございまして、引き続き今までの政策を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いします。

2.質疑応答

(問)引き続きよろしくお願いいたします。
 2点聞かせてください。1つ目は、先ほど官邸でもお話になられました、成長戦略を今後どうするかというお話ですが、実行工程を点検していくとおっしゃいましたけれども、岩盤規制とされる雇用、農業、医療の3分野については、改革の更なる深化が必要になってくるかと思います。産業競争力会議や経済財政諮問会議を通じて、具体的にどのような議題を検討していくお考えなのかを教えてください。
 もう一点については、法人実効税率の引下げについて、骨太方針には考えは盛り込まれましたけれども、年末の税制改正大綱に向けて、これから大詰めの議論が始まると思われます。経済再生相として、これからどのようにこの分野に関与していくお考えなのかというのを教えてください。
(答)まず、成長戦略を具体的にどう実行していくか、その工程をどう管理していくかに関連しまして、岩盤分野とされる雇用、医療、農業について、具体的にどういうアクションを起こしていくかという御質問であります。内閣改造後、総理と相談し、経済財政諮問会議並びに産業競争力会議の陣容をかなり入れ替えるという予定になっております。
 そこで、この3分野をより意識して、しっかりとした人材構成もしていきたいと思っておりますし、具体的な作業、例えば農業については、農業法人改革から農協改革に向けて議論が進んでいくわけでありますし、医療につきましては、いわゆる混合診療の枠が3分野に広がっていったわけであります。この具体的な混合診療をどう進めていくかと併せて、医療についても上流から下流まで、独立行政法人の法律が成立いたしまして、ファンディングを行う機構が4月1日から活動を始めるわけであります。そういう実施体制の整備と、制度改革等をしっかり見ながら、進めていきたいと思っております。
 雇用につきましても、一定の提言をさせていただきました。別に恒常的な機関として行うということではありませんが、これから政労使の会議を必要あらばもう一度開催したいと思っております。そこでは労働生産性に対して対価として報酬が支払われることと、休み方、ワーク・ライフ・バランス等々をしっかり組み合わせていきたいと思います。
 前内閣の時点で、秋の連休を作るための有給休暇をきちっと消化するということについて、若干前触れがありました。ただ、これはやみくもに休みだけ増やすのではなくて、しっかり効率的に集中的に働き、しっかり休むという一環で、ワーク・ライフ・バランスをきちっととっていくということであろうと思います。
 ある地域の企業は、週休3日制にしていまして、それは1日休みを増やすというよりも、1日の労働時間を8時間から10時間にして、集中的に働き、そしてまとまって休むという方式をとっております。それがその地域のスタンダードになりつつあります。あるいはかねてから言われていることは、完全年功賃金では、一番支出の多いときに収入が増えて来ない。支出が減ってくるに従って、収入が増えていく。これは所帯を持って子どもができ、その子が学校に通い、教育費等で一番支出がピークになるときには、収入が実はピークになっておらず、収入のピークがどんどん定年の方に近づいています。これは過去のデータと比較してみますと、収入の山がどんどん定年の方に近づいていっています。これは本当は支出が必要なときにしっかり対応できるような給与体系を研究した方がいいのではないかということも言われているわけであります。つまり、そこは少子化と関連してきます。子どもは欲しいけれども、収入がない。余裕ができたときには子どもをつくる年齢ではないという、この不一致がありますから、その辺も含めて、いろいろ問題提起していく必要があるのではないかと、雇用の面では考えております。
 それから法人税について、年末に向けてどうハンドリングしていくかということであります。数年間で20%台へということはもう掲げてあるわけであります。数年間というのは、常識的に言えば、5年基軸ということも申し上げてまいりました。その5年間で、6%弱近い割り振りをどうやっていくか。これはやはり経済の成長と、横にらみでやっていかなければならないと思っております。一律でも、あるいは財政に変形を与えても実施するというやり方よりも、経済成長をにらみながら、とにかく副作用が一番少ないやり方で効果的にやっていくということを研究する必要があろうかと思います。
(問)「地方、まち、ひと、しごと」というのが今回、目玉の一つということで、今回の概算要求でも地方の関係で、各省からいろいろ出されて、本日の発表でも概算要求で100兆円を初めて超えたわけですけれども、ばらまきの対策には大臣自身、非常に批判的であると私は認識しておりますが、こういう地方の創生ということで、どんどんそちらのほうに予算が拡大していって、財政規律とか、そういう面が少しおろそかになってしまわないかと思います。そのあたりは経済財政担当大臣として、どういうお考えで取り組んでいかれるのでしょうか。
(答)そこは一番厳しい目で見るべきだと思います。大体、特別枠のようなものを設けたり、あるいは何とか本部というのをつくりますと、タイトルをつけただけの旧態依然とした予算を、まるで様変わりしたように、名前だけ変えて要求してくるということがあります。これは厳に慎ませたいというふうに思っております。財務省主計局長にもはっきり言いましたけれども、財務省にはタイトルだけ頭につけて出してくる予算については、厳しい目を持って対応してほしいと言っております。そこは私も財務大臣と連携して、本当に効果的な、1投じて3とか5返ってくるような政策に絞り込みたいと思っております。
(問)1年半ほどアベノミクスの成果で景気回復に向けた道のりは確実になっておりますが、一方で景気回復の結果、見えてきた、例えば人手不足であるとか、あるいは円安ですがなかなか輸出が増えないであるとか、企業の生産活動がそこまで伸びてこないであるとか、そういう景気が良くなったがゆえに見えてきた問題というのも、新たに出てくると思いますが、改めてこれから経済財政担当大臣として、取り組むべき新しいテーマについては、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。
(答)アベノミクスの3本の矢の順、あるいは3本目の成長戦略についても、どこに日本経済は問題があって、どういう手順で処方箋を書いていけばいいかということを、きっちり精査する必要があろうかと思います。
 改訂版の再興戦略では、まず最初のタイトルに、日本経済の「稼ぐ力=収益力」を上げるというタイトルがついてあります。これは何を意味するかというと、まず需給ギャップを縮める作業が行われました。これは金融政策や、財政政策の効果で、需給ギャップが埋まりつつあります。需給ギャップが埋まった時点であればこそ、今度は供給側の効率を上げていく、生産性を上げていくということが必要になります。つまり、需要と供給がぴったり合いましたと。それはデフレ脱却の第一歩です。需要と供給が合っている中で、それでは同じ売上の中で生産性を上げると、利益率が上がってくるわけです。上がった利益率、増えた利益は、給与とか、更なる生産性向上投資に向かわせるわけです。つまり、供給と消費がぴったり合っている。その同じ供給力の中で、利益が1%だったと。これを10%にして、需給がぴったりしている中で10%にすれば、そしてその利益が消費、給料に変われば、消費行動で更に今度は需要の方が上がってくるわけです。生産に投じれば、更に生産効率が上がっていく。更に利幅が上がってくるわけです。ここから好循環が始まるわけです。ですから、次なる手だては、生産性を上げるためにどう供給側に働きかけるかということだと思います。
 振り返っていただければお分かりのとおり、今回の日本経済の再生というのは、従来パターンと違うのです。それは従来パターンでは輸出が牽引をしましたが、今度は消費が牽引をしております。大胆な金融政策や財政政策を機動的にやったおかげで、どういうことが起きたかというと、デフレ環境が変わって、資産効果が出てきているわけです。資産効果が出てきているということは、消費力につながるわけです。消費が増えると需給ギャップが減ってくる。次は需給が一致している中で利益率を上げるということは、労働生産性や技術開発により生産性を引き上げる。そこで、利潤が増えます。それが消費、投資に回っていくという循環なのです。そういう手順でやっていくということですから、改訂再興戦略の頭に掲げているのが、「稼ぐ力=収益力」を上げるということになっているわけであります。そこにしっかり焦点を当てながらやっていきたいと思っております。それはもちろん、研究開発や設備投資もありますし、労働生産性を引き上げるということにもつながっていくわけであります。
(問)先週の金曜日の会見で、経済財政諮問会議、産業競争力会議のメンバーの入れかえは小幅ではないというお話がありました。まさに大臣が再任されまして、その小幅ではないところをやっていくところだと思うのですけれども、先におっしゃった休暇とか、働き方の部分なんかは、大分民間企業の協力も必要になってくると思うのですけれども、民間議員の方への期待すること、どのような期待をされていくかということと、あと、今、名前が挙がっています経団連の榊原会長ですとか、サントリーの社長になられる新浪さんですとか、この方々の御評価をどんなふうにされていらっしゃるのか教えていただけますか。
(答)働き方は、従来の発想で言うと、二極対立で、働き方改革はすなわち使用者側にプラスになって、労働者側の条件を劣悪にすることなのだというこの図式から是非脱却してもらいたいと思います。日本の労働生産性は明確に低いのです。だからたくさん働くのではなくて、短い時間で生産性が上がるような工夫をするのです。ある会社の女性経営者は、労働生産性を上げるために何をやったかというと、残業を禁止したというのです。それで仕事を家に持ち帰ることも極力禁止しました。ということは、勤務時間内に仕事が終わらなければなりません。そのために自分で工夫するのです。そこから労働生産性というのは上がっていくのです。ただ、だらだらと時間外労働をして仕事を終わらせるというスタイルではなくて、残業ができないとしたら、どうやって工夫をして仕事をやっていくのか。そこが生産性上がるという秘訣です。
 時間をだらだら延長するのではなくて、これだけの仕事をもっと短い間に終わらせるためには、自分としてどういう工夫があるだろうかと。そういう視点から、働き方というのは、自分が最も労働生産性が上がるような工夫は、どういうことが加わればできるのかということ等々を考えていくことが必要だというふうに思っているということであります。
 榊原さんは、私が産業競争力会議の議員にお願いをしたときには倒産寸前の東レを立て直したと。もうこのまま行くと、日本全国津々浦々、名前が売れているこの会社ですら倒産になるのだという危機感を全員共有させて、そこからスタートして、様々な改革を行って、見事によみがえったわけです。大企業の中で改革志向が非常に高い人ということで、産業競争力会議の議員にお願いをいたしました。その後に、経済界を仕切る方になったわけでありますから、それでは全体を見る立場からやっていただく必要があるのではないかという議論がなされている。まだ、途中経過でございまして、いろいろと報道において発表していただいていますけれども、これは新内閣で協議をして、総理からこれで行くということになって、官房長官が会見して初めて公にされるものでありますので、そういう議論がなされているということだけ、御紹介いたします。
 名前が挙がっている新浪さんについても、いわば時の人でありますし、様々な企業の再建に取り組んで、見事実行された方であります。そういう方をしっかり見させていただいて、お願いしていく。その候補者の中にいらっしゃるということであります。
(問)TPPに関してですが、先ほど官邸で交渉の見通し等はお聞きしましたけれども、今回、大臣続投を命じられた背景の一つに、TPPの交渉の継続性という部分があるかと思います。先のフロマン代表との長い長い会談等の後に、会見で二度とやりたくないとおっしゃっていた経緯がございましたが、結局、続投ということになって、その辺、いかがでしょうか。
(答)もう一度やりたいかどうかということと、もう一度やらねばならないということは、本質が違うわけであります。前者は願望であり、後者は使命であります。課せられた使命は全力で果たしていきたいと思っております。一言で言うと、痛いの好きってなってしまったのかというところですね。

(以上)