森内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年4月19日

(平成25年4月19日(金) 8:46~9:00  於:合同庁舎4号館6階605会見室)

1.発言要旨

<「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」の閣議決定について>
 おはようございます。
 本日、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」が閣議決定をされました。多くの消費者事件では、消費者と事業者との間の情報の質・量や交渉力における構造的な格差や訴訟に要する費用や労力のため、被害者が被害回復を諦めてしまう、いわゆる泣き寝入りの状態になっていることが多いと考えられます。本法案の意義は、同種被害が多発する事案において、内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体が多くの消費者に代わって手続を行うことで、消費者がより少ない労力や費用で被害を回復できる点にございます。
 具体的には二段階の訴訟手続を整備いたしまして、一段階目の手続では、特定適格消費者団体と事業者との間で、事業者の消費者に対する共通義務として金銭の支払い義務を負うことを確認する訴訟を行い、二段階目の手続では、団体が個々の消費者の債権を裁判所に届け出ることによって簡易な手続で被害回復を進めることとなっております。また、濫訴といった事態が起こることがないように、特定適格消費者団体の業務の適正性を担保するため、厳格な認定要件を定め、消費者庁による適合命令及び改善命令のほか、認定取消を含む所要の監督措置を規定しております。
 大事な点はここからですけれども、消費者の市場への信頼を高めるということは、消費が拡大し、ひいては経済成長につながるものであり、経済の成長戦略と消費者政策は車の両輪として同時に推進していくべきものと考えております。本法案の早期成立に向けて引き続き努力してまいります。

 

<「アンテナショップふくしま市場」等の視察について>
 2点目でございますけれども、本日午後、「アンテナショップふくしま市場」を視察いたします。小売店における風評被害の防止のため、リスクコミュニケーションの取組や店頭での風評被害の現状について確認をしたいと思います。
 御存じのとおり、消費者庁では、食と放射能に関する消費者理解の増進チームが全国の消費者の意識について調査を終え、そして現在、生産者の意識の調査を行っているところでございまして、今月中には風評被害対策施策を取りまとめ、発表したいと思いますが、私自身もこちらの小売店に行きまして、風評被害の実態を視察してまいろうと思っているところでございます。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)2点、集団訴訟の件でお尋ねさせてください。繰り返させて大変恐縮なのですが、この法案で消費者がどう助かるのか。それから、法案成立、制度実施に向けた大臣の御意欲を、被害に遭われた方や、おじいちゃん、おばあちゃんでも伝わるよう、分かりやすくなるように、もう一度御説明いただけませんでしょうか。
(答)お買物をするときにだまされたり、多額の金銭をだまし取られたなどの被害者が、一人ひとり弁護士を雇って裁判所を相手に裁判を起こすということは非常に難しいです。弁護士費用もなかなか準備できませんし、そもそも弁護士さんを知りませんので、そういった消費者が企業を相手に被害を回復しようとするときに、知識もなかなかない、専門性もない、そして費用も負担が困難です。そういった方々を救済するために、同じような被害がたくさん起きているという場合には、そのような被害者がまとまって裁判を起こすことができれば大変便利です。そういう制度をこの訴訟法案は可能にいたしました。
 まず、国のほうで認めました特定適格消費者団体というところが裁判を起こしまして、このような被害について確認できるとした上で、一人ひとりの被害者がそこに参加できるようにするということで、一人ひとりの弱い消費者が泣き寝入りをすることがないように、簡単な手続で裁判をして被害の金額を取り戻すことができるようにした制度です。
 2点目の法案成立へ向けての意欲でございますけれども、消費者庁を設立しましたときの消費者庁設置法、この附則に書き込まれておりました制度でございますので、ほぼ4年越しの実現ということに向けてしっかり取り組んでまいりたいと思います。この点について、日本版クラスアクションなどということも言われましたけれども、全く違いまして、アメリカで行われているクラスアクションとは違って、良質な健全な企業には関係ありませんので、悪質な企業に対して弱い消費者が裁判をするための制度であるということを経済界の皆様にも認識をしていただいて、より早い成立を目指していこうと思います。
(問)すみません、もう一点だけ確認します。今お話にもありましたが、懸念を示している事業者さん側への周知の説明といいますか、消費者庁としての今後の取組についても一言お願いできますか。
(答)この間、本日の閣議決定に至るまでの間に懸念を示されている経済界の皆様に対しては、丁寧な説明をしてまいりました。私も含め、消費者庁の職員が、この法案の意義、それから健全な企業には恐れるに足りない法案であると。もっと言えば、健全な企業にとってウエルカムの法案である。なぜなら、悪質な企業が市場の中にいたら、消費者が食われてしまいまして、良質な企業のお客様がいなくなってしまうのです。また、企業、市場に対する消費者全般の信頼が低下をすると消費活動が非常に停滞してしまいます。そういう意味で、悪質な企業は市場の外に出ていただいて、そしてお客様第一で真っ当な商売をしている企業が市場の中に残ることによって、企業のお客様も増える、そして消費活動も活発になることで、経済成長が活発になるのですということをしっかり説明しました。
 また、濫訴については、この法案については、アメリカでよく問題になっておりますPL関係も対象に入っておりませんし、それから、アメリカでは個々の消費者誰でも起こせるわけでございますが、特定適格消費者団体が起こすということで、この点もきちんと限定をしています。特定適格消費者団体には消費者庁がきちんと監督をしていくということで、いたずらに訴訟を起こさないよう、濫訴が起きないようにという仕組みが二重、三重にも施されております。
 また、訴訟の金額が大変高額なものを起こされるのではないかという懸念をお示しの方については、拡大損害でありますとか、それからアメリカのように重畳的損害賠償ということで2倍返し、3倍返し、こういう制度は、この本法案の中には入れておりません。そういう意味では、売った商品の値段だけということですから、心配することはありませんとしっかり説明をして、納得をいただけたと思っております。
(問)同じく法案についてなのですけれども、消費者団体から、制約が逆に厳し過ぎて、実際運用できるのかという不安の声もあって、法案の中に見直し規定というのが設けられたと思うのですけれども、5年後に見直すと。ここで若干、今の制度、制約というのを緩和したり、実際にあまり訴訟が起こされなかったという事態をうけて見直して緩和したりとか、そういうことは考えられているのでしょうか。
(答)ほとんどの法律というのは見直し規定が置かれておりますので、それは社会情勢の変化によって見直し時期が来たら見直すということであろうと思います。5年間の間に、この訴訟法案がどのように運用されるのかというのを見極めた上で見直しの方向が決まるものだ思っています。
 経済団体も消費者団体もそうなのですが、今まで4年間かけてしっかりと両方の意見をお聞きした上で、発言する機会も場所もしっかり確保した上で、皆で知恵を出し合ってきてでき上がった法案でございますので、ぜひ成立をさせて、そして、よりよい方向に運用できるように、行政も消費者も経済界も努力をしていくということが、この法案を真の意味で成立をさせるということになるのではないかと思っております。
(問)一部報道で、今日、経済団体に、首相が育児休業を3年まで取れるように要請されるというような話が出ているんですけれども、これは森大臣の下で進めていかれるということでしょうか。
(答)本日、官邸で行われます総理と経済団体の意見交換会、12時からですか。私も同席をすることになっております。その場において総理が内閣としての方針をお示しになりまして、経済団体に協力を呼びかけるということになっております。その内容はここでは申し上げることは控えたいと思いますけれども、誰が担当するかということではなくて、少子化担当大臣である私や、田村厚労大臣など、様々な閣僚が知恵を絞って、そして最終的には総理が御判断して経済団体に協力を呼びかけるということです。詳細な内容は言えませんけれども、方向性としては、子育て中の世代を手厚く支援する内容になるものと思っております。
(問)昨日、総理が日本テレビの番組の中で、待機児童を5年間で解消していきたいというふうに発言されていましたが、これはどのように進めていきたいというような考えなのかと、これは所管はどちらになるのかということを併せてお願いします。
(答)御指摘の番組の発言については、その詳細をちょっと承知をしておりませんので、どのように進めていくかということは、もしその内容が本当であれば、総理からまた御指示があると思っております。いずれにしても、待機児童の解消については、早ければ27年度から子ども・子育て支援制度がスタートする中で盛り込まれておりますが、それでは間に合わないということで、それを前倒しをして先取り的な取組を厚労省のほうで行っているということでございますので、私としては、この段階では関係省庁と連携しながらしっかりと取り組んでまいると、こういうことを申し上げたいと思います。

(以上)