山本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年5月7日

(平成25年5月7日(火) 10:41~10:58  於:合同庁舎4号館7階742会議室)

1.発言要旨

 まず、閣議についてですが、ワシントンに出張した出張報告のメモといいますか、出張報告を配布させていただきました。閣議については以上です。
 今日は、ワシントン出張について少し簡単に皆さんに御説明したいと思います。
 第12回の日米科学技術協力合同高級委員会に行ってまいりました。アメリカ側の議長がホルドレン大統領補佐官ということで、日本側から下村大臣と私が参加いたしました。安倍政権の経済再生に向けた取組についていろいろと発信をさせていただきました。科学技術イノベーション政策についての取組も説明し、両国のそれぞれ科学技術政策の担当者からプレゼンがあって、非常にハイレベルなよい意見交換ができたと思います。
 それから、2泊5日の強行日程でしたけれども、滞在中に、NIH、今、「日本版NIH」のことも話題になっていますので、アメリカの国立衛生研究所を視察してまいりました。ゴッテスマンNIH副長官と意見交換をし、いろいろNIHの運営体制、予算配分方式について意見交換をさせていただきました。それから、今回は、NIHの日本人研究者の方々15名との懇談会をさせていただきました。
 実は、日本人研究者が300人いるんですけれども、特に活躍をされている世代横断で15人の方に集まっていただいて、意見交換をさせていただきました。かなりブログに詳細に書いたんですけれども、それぞれ皆さん日本に貢献したいという思いを持っておられて、こうやって本当に海外で活躍されている日本人の研究者がやはり日本に戻って研究したいというような研究環境・機関を作っていかなければいけないということを痛感いたしました。
 NIHで活躍する日本人研究者のラボも視察させていただきまして、小林先生(米国国立癌研究所CCR癌研究センター小林久隆研究員)、こういう方々が日本を出てアメリカに来ている。そういう理由を少し聞いてきてくれという安倍総理からのお話もあって、小林先生のラボ、向山先生(米国国立心臓・肺・血液研究所向山洋介研究員)のラボを拝見させていただきました。アメリカは優秀な頭脳を惹きつける自由な研究環境が魅力だということだと思います。
 ジァネリア・ファームリサーチキャンパスでは、アメリカの研究開発を支える多層的な仕組みを痛感しました。これ実はOIST、沖縄科学技術大学院大学のモデルになったんですけれども、非常に理想的な研究環境というかアメリカの底力みたいなものを感じました。
 それから、COC、これは米国産業競争力会議の会長、あるいはAAAS(米国科学振興協会)、「サイエンス」の発行元なんですけれども、アラン・レシュナー総裁たちともいろいろ会合をさせていただきました。やはり、COC、これは米国産業競争力会議というんですが、このCOCの中で、アメリカの大学の学長とそれからアメリカの経済界のトップがコミュニケーションを取る場所なんですが、これは非常にバランスよくできています。労働組合も入っているんですが、こういう仕組みをうまく日本に取り入れられないのかなと思ったんですが、例えばアメリカの大学の学長にとってはこのCOCはアメリカの経済界のトップマネジメントと人脈を作る場所であり、しかも自分たちの研究のスポンサーを探す場所にもなっているということで、これこそまさに産官学の連携が非常にうまくできているということで、その辺のところを少し聞いてきました。
 それから、このAAAS、これは「サイエンス」の発行元なんですが、実は研究者、技術者にとって画期的な研修制度みたいなものがあって、これは研究者、技術者をアメリカ議会に派遣するという制度があって、科学技術というものを政策に反映させるための仕組みがあるということで、これは科学技術フェローシップというんですけれども、これについて少しこれから総合科学技術会議の事務局の機能を強化する上で参考にできるのではないかと思いました。以上です。
 今回は、領土担当大臣としての仕事もありまして、ワシントン滞在中にワシントン・ポスト紙とウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューも受けてきました。これは、日本の主張を少しでも内外に発信しようということで、領土担当大臣としての最初の試みだと思っています。更には、アメリカの有識者、ハドレー元国家安全保障担当大統領補佐官、これも相当ブログに詳細に書いたんですが、その方々と日米関係、今の安倍内閣に対する評価等々についてかなり率直な意見交換をしてまいりました。ワシントン出張の話は以上です。
 それから、この間の記者会見の時に、福井県鯖江市のデータシティ鯖江の取組事例について、こういうものを参考にしていくのかというお話があったので、ちょっと調べてみたんですが、鯖江市もなかなかよい取組をしていまして、オープンデータを公開して、二次利用しやすい形で公開しているというのは、非常に参考になると思っています。それから、例えば民間の企業がどういう情報を組み合わせて、どんな試みをしているかということ、アプリケーションについてもこれを公開しているということで、例えばWi-Fiがきく地域、そういうことを紹介したりして、こういう地方自治体の取組もこれからオープンデータのルールを作っていく上では、参考にさせていただきたいと思っています。
 それから、論文のオープンアクセスについても、質問があったと覚えているんですが、欧米で進んでいるけれども、日本ではちょっと遅れているのではないかという話だったので、これも調べてみました。これは研究機関、大学や公的研究機関の「機関リポジトリ」という構築を行っていまして、これについては278の大学等が構築、運用を行っているということで、収録コンテンツも142万件あって、アクセスも8,300万件ありますので、これは国際的に見ても遅れているという感じはないと思います。
 それから、科研費(科学研究費助成事業)、これは最大の中核的な研究資金ですけれども、科学研究費の助成事業の成果もKAKENというサイトで一般にも公開されていますし、約78万件の研究実績報告書の概要が掲載されているということで、論文のオープンアクセスについて、諸外国に比べてすごく遅れているということはないと思います。しかしながら例えば大学等も278ですから、まだまだこれは大学側が登録しないと仕方がないので、ここら辺は大学は800か900ぐらいあるんでしょうか、もう少しこれは広げていかなければいけないと思いますし、更に広げる工夫をいろいろしていかなければいけないと思っております。
 今日は、以上です。何か御質問があればお受けしたいと思います。

2.質疑応答

(問)日経BPの河野です。NⅠHの研究者との懇談ですが、日本の科学技術政策とかアカデミアが抱える問題であるとか、課題解決の点について、いろいろと感じられるところがあったのではないかと想像するんですが、いくつかあったら教えてください。
(答)さき程申し上げたとおり、NIHには約300人ぐらいの日本人がいると。しかも、NIHで活躍しておられる方も大勢おられるわけですが、既に自分の研究室を持ってNIHの中で実績を確立している方々とか、もう少し若い人たち、あるいはいろいろNIHの中で今頑張っている中堅の方々、いろいろな方々とお話をしてみたんですけれども、皆さんの共通の思いは、やはりどこかで自分たちの知識、専門性を日本に貢献したいという気持ちを持っておられるということがわかって非常にうれしく思いました。
 ですから、大学もそうなんですけれども、研究者もそうなんですが、外に出る日本人が少ない。海外で研究をしたり、海外で勉強したりするという若手の間の機運があまり高まっていないというのは、やはり外に出た後、どういうキャリアパスを積んでいけばよいのかということがはっきり見えないというところがあると思います。ですから、NIHの方々とお話をして思ったことは、こうやって外で本当に活躍をしている国際的なネットワークもある、ハイレベルな日本人の研究者の方々が、やはり日本で活躍する、そういう機会をもっと増やしていくべきではないかなということを強く感じました。
 それから、NIHについては、日本の仕組みについて参考にできるところとやはり日本の仕組みとは違うところと2通りあるのかなと思いましたけれども、いずれにせよ優秀な研究者が、日本人に限らないんですけれども、日本に集まってくる、そういう環境を作るということが、科学技術イノベーションを進める上で大事だということを強く感じました。
(問)そのためには今後どういう点を解決しなければいけない、あるいは課題があると考えていますか。
(答)ですから、研究者のキャリアパスというものをもう少し多様的にしていくということだと思います。もう少し幅広く言うと日本の文化とか、社会の仕組み全体につながるところなので、なかなか簡単な解決策はないと思います。ただ、例えば海外で活躍している人たちが日本でキャリアを積めるような、日本で研究したいと思うような仕組みを作っていかなければいけない。そのためには大学の改革も必要だと思いますし、研究機関の体制も整えていかなければいけないのかなと、そう思います。
(問)ライターの藤井と申します。IT戦略起草委員会の第3回が近々開催されると思うんですけれども、こちらは具体的な施策が盛り込まれるとお伺いしていますが、そこの具体的なというのはどういうふうなことになりますか。
(答)これは今議論している最中なので、あまり具体的なことを今申し上げることは、これは起草委員会の中で議論していますから、オープンデータ、ビックデータ、当然これは大きなアイテムになると思いますし、私の方からもかなり強く申し上げたIT活用の裾野の拡大、こういうことも入ると思いますし、更にはおそらくIT利用に関する基本法の検討みたいなものも入ってくると思います。いずれにせよ、いろいろな各省の考え方をホチキス止めみたいにするものではなくて、やはり未来のIT社会をにらんだ安倍ビジョンにしていきたいと思います。
(問)IT戦略起草委員会の骨子イメージのところに、ワークライフバランスというところも盛り込まれているんですけれども、ちょっとイメージしづらいので、どのような内容になっているのか。
(答)ここは今議論している最中ですから、少し起草委員会の議論の中身を見ていきたいと思います。今の段階でどうということはなかなか言いにくいと思います。
(問)朝日新聞の大野です。小沢一郎さんが、北方領土に関することなんですけれども、対談の中で、1991年にゴルバチョフ氏から北方領土を返すとの話があったということを明らかにしたんですけれども、この話をお聞きになったことはありますか。もしくは初耳のお話でしょうか。
(答)いや、それはちょっと聞いたことないですね。
(問)もう一点なんですけれども、プーチン大統領が面積等分論に関して言及したという報道があるんですけれども、これに関して、大臣の、それがありなのか、なしなのかというところのお考えを。
(答)それは確か安倍総理の方からそういう発言はなかったと否定されていると思うので、なかったんだと思います。これは総理の外交戦略等々に関わることだと思いますけれども、日本政府としてはきちんと日本政府としての立場を維持して、突破口をしっかり見つけてもらいたい。これに尽きると思います。
(問)自民党の中からは、一部でそれも一部あり得るだろうと、等分論に関してですね、肯定的な考え方も出ているんですけれども、大臣、仮定の話なんですけれども、こういった論についてはいかがでしょうか。
(答)私は今の政府の芯をしっかりと持って交渉するべきだと思います。それについてコメントする立場にはありませんけれども。
(問)琉球新報の松堂と言います。領土についてインタビューとか、元高官の方と面談したということなんですけれども、大臣のほうからインタビューで、日本の主権についてどのように説明したのか。アメリカ側は主権については常に中立という立場だと思うんですが、日本の立場をどのように説明したかというのと、あと靖国参拝とか歴史認識の修正とか、そういうことについて何か大臣から説明したのか。アメリカ側から何か申入れとかそういうものがあったのかお聞かせください。
(答)まず、私が会ったのは、アメリカ政府でも何でもないので、アメリカ側というよりはアメリカのメディアとそれからワシントンにいる特に日米関係に詳しい有識者の方々ということで、アメリカ側という言い方は多分不正確だと思うんですが、まず有識者懇談会の詳しい中身については申し上げることは控えたいと思います。インタビューで言ったのは、まず安倍総理が中国に関しては戦略的互恵関係をしっかり作りたいと思っている。日韓関係についても韓国は戦略的に重要なパートナーだと思っている。そういうことをしっかりと強調した上で、つまり日本は力で今の現状を変えようとはしていないという話をしっかりしてきました。
 それから、当たり前のことですけれども、尖閣に領土問題はないんですけれども、竹島についても尖閣についても、特に尖閣について日本の主張が正しいという理由、それはしっかりと私の方から説明してきました。
 よろしいでしょうか、ありがとうございました。

・説明資料(PDF形式:260KB)

(以上)