甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年8月13日

(平成26年8月13日(水) 9:22~9:47  於:合同庁舎8号館1階S101・S103会見室)

1.発言要旨

 本日公表しました2014年4~6月期のGDP速報値は、前期の1~3月期における消費税率引上げ前の駆け込み需要であるとか、パソコンソフトのサポート切れ等に伴う更新投資増からの反動により、個人消費、住宅投資、設備投資が前期に比べましてマイナスとなったことなどから、実質成長率は、民間予測平均よりはマイナス幅が小さい数字になりましたが、前期比年率マイナス6.8%となり、2四半期ぶりのマイナスとなりました。2四半期前がわずかなプラスでしたけれども、改定値でわずかなマイナスになったということでありますので、2四半期ぶりということであります。
 1~3月期の駆け込み需要と4~6月期の反動減という今回の消費税に伴う上下の振れの影響を除いて、経済全体の趨勢を見るということが大事だと思います。そこで、1~3月期の駆け込み需要、それから4~6月期の反動減、この2期の実質GDPを平均して見ることが重要であります。この2期の平均、つまり通しですね。1月から6月期までの通しを見ますと、前年同期はもとより、直近、つまり昨年の10~12月、この消費税の影響が比較的少ないと言われる期であると思いますが、その水準も上回っているということになります。
 また、4~6月期の期間の動きを月次統計で確認いたしますと、個人消費に関連する家電販売、あるいは百貨店売上げ等は、4月には大きく減少いたしましたが、持ち直しの動きが見られます。また、雇用情勢は着実に改善してきております。こうした月次の経済指標等も踏まえますと、景気は緩やかに回復が続いておりまして、消費税引上げに伴う駆け込み需要の反動も和らぎつつあると考えられます。
 政府の正式な景気判断につきましては、従来より月例経済報告におきましてお示しをしてきているところでありますが、現時点において、これまで示してきた景気認識に変わりはございません。
 先行きにつきましては、景気動向指数の先行指標であるとか、あるいは消費者マインド、そして設備投資計画、これらが改善してきていること等も踏まえますと、当面、反動減等により一部に弱さが残るものの、次第にその影響が薄れて、各種政策効果が発現をする中で、緩やかな景気回復が進むと見込まれております。海外経済の動きを含めまして、引き続き今後の動向を注視してまいりたいと考えております。
 政府といたしましては、経済を成長軌道に早期に復帰させるために、引き続き平成25年度補正予算であるとか平成26年度予算の早期実施に取り組みますとともに、必要と判断される場合には機動的な対応を行うなど、経済運営に万全を期してまいりたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今回のQEの結果を見まして、ならして見ることが重要だということですけれども、大臣としては、あくまでこれは駆け込み・反動減の影響でこういう数字になったと見ておられるのか、それとは別に、所得の目減り等々の影響で個人消費が下押しされている要因があると見ているのか。この認識をひとつ教えてください。
 それを踏まえた上で、年末には消費税再増税の判断が控えているわけですけれども、その判断に今回の結果というのはどのような影響を与えると見ておられるか、この2点を教えてください。
(答)過去の消費税導入の前後の経済の動向と比較しましても、駆け込み需要に若干プラスして反動減があるということであります。今回も、駆け込み需要の四半期は、改定値でプラスの6.1でありました。それを受けて反動減がマイナスの6.8ということでありますが、これは過去の統計からすれば正常な反応であると思っております。
 97年と比べて、駆け込み需要も反動減ももちろん大きいわけでありますけれども、これは税率の引上げ幅が違うということです。それから、消費税以外の要因がございます。典型的なのはパソコンソフトのサポート切れで、駆け込み重要がそこに発生をしているということ。それから、いわゆるオフロード法と言われまして、建設機械の排ガス規制が強化をされまして、それに伴う駆け込み需要というものが生じております。それらが97年の要素と違う、消費税以外の部分の指標に与える影響ということがあろうかと思います。それらを勘案しますと、従来の駆け込み需要、それによる反動減という、この範囲の中かなと思っております。
 消費税判断は、今後、7~9月期の状況を含めて、できる限り経済指標、あるいは雇用統計等々、そろえられる指標をそろえて、最終的に政府、そして総理が判断をされるということになります。
(問)大臣はこれまで想定より駆け込み需要は少し大きいようだとお話されていましたが、今日の数字を受けて、駆け込み需要と反動減が想定とどの程度ずれがあったかのか、想定の範囲内だったのか、その辺りの認識はいかがでしょうか。
(答)私の発言をつぶさに検証していただければ分かるのですけれども、民間予測はとか、地方の声はとか、そういうことで申し上げております。民間の肌感覚とか自治体からの声は、想定の範囲内であるという声がほとんどであったということであります。政府として、ここまでが想定内、これを超えたら想定外ということは規定いたしておりません。世の中の大勢としては、これを想定の範囲内と捉えていると申し上げてきたわけであります。
(問)先程の消費税判断の関係で、大臣が先程もおっしゃったのですけれども、特に7~9月期が年末の判断で重要な指標になると思いますが、成長率が具体的にどの程度ぐらいの水準まで達すれば増税環境が整うと大臣はお考えになられるかということが1点と、それから、今後の消費や景気の持ち直しの鍵を握るものというのは一体何なのか。更なる賃上げの必要性等あるかと思いますが、大臣のお考えを教えてください。
(答)7-9月期の数字がどれぐらいであればというのは、これは最終的に総理が判断をされるわけであります。私から言えるのは、高ければ高いほどいいということだと思います。
 それから、経済状況の持ち直しに向けて何が必要かということでありますが、好循環がしっかり回っていくということが大事であります。企業業績は過去最高値を更新しているようでありますが、この企業業績が賃金や投資に反映されていくという、いわゆる好循環が回っていくことが極めて大事だと思います。
 設備投資が何四半期かぶりにマイナスになっていますけれども、実は御案内のとおり、日銀短観6月の今年度の設備投資計画というのが相当大きいプラスの数字が出ております。製造業でいうとたしか10%を超えていると記憶をいたしておりますが、設備投資計画がかなり大幅なプラスに向かっておりますので、今後、設備投資も伸びていくだろうということが期待されますし、夏のボーナスの伸び率は、経団連の最終値でいいますと24年ぶりということでありますから、それらが反映されていく結果が出てくるであろうと期待いたしております。
(問)先ほど、必要と判断される場合には機動的な対応を行うという御発言があったのですけれども、これはつまりは、もし何か景気に不測の事態があった場合には今年度の補正予算も組んで対応を行うことを視野に入れていると理解してよろしいでしょうか。
(答)現時点でその必要性を感じているということではありませんが、今後の景気動向を見て必要なときには必要な手を打つ、適宜適切な対応をするということは、日本銀行、そして政府含めてかねてから申し上げているとおりであります。適切な手段というのは、あらゆる手当てを含むということであります。
(問)先ほどの好循環の関係でお聞きしたいのですけれども、物価の上昇がまだ賃金に追いついておらず、実質賃金の指数が下がっている状況が今後景気に及ぼす影響というのはどのようにお考えでしょうか。また、今後の見通しをお願いします。
(答)物価を引き上げていきます。あわせて、ワンショットでありますけれども消費税が引き上がります。その分が掛ける7割ぐらいで物価に乗っかっていきます。物価と賃金の関係は、いきなり初年度で物価をオーバーライドしていくことは、不可能だと思います。物価は基本的には毎年2%近い前後の上昇を続けている。最終的にこれを超える賃金改定があるということが重要なことであります。最終的に、消費税の引上げプラス物価の上昇を超えていく賃金改定ができるだけ短期間になされるということが大事だと思います。そういう道筋はたどっていると理解いたしております。
(問)少し気が早いですが、7-9月期のGDPの見通しについて、もし現時点であれば教えていただけますでしょうか。
(答)現時点では見通しはわかりません。これまで駆け込み需要で伸びて、反動減で下がっております。それを受けて次はかなり上昇するのは間違いないと思っておりますが、具体的な数字は現時点で断定はできないところであります。
 これから経済指標では、消費動向の先行指標であるとか、消費者マインドとか、あるいは先ほど申し上げました設備投資計画、これがかなりいい数字になってきております。ですから、先行きは明るいイメージになっていくと思っております。
(問)大臣が今言ったように、需要というのはかなり伸びている傾向にあるという御認識だと思いますけれども、それに対して供給する側、それに対するサービスを補うだけの人手がかなり不足しているという現状は今でも続いていると思います。このことが景気に与える影響というのをどのようにお考えでしょうか。
(答)人手が景気の拡大に追いついていないということは事実だと思います。中長期的になすべきことと、当面短期的にとる手当てというのは当然違ってくるわけでありますが、短期的に言えば、労働市場に参画していない人たちに参画していただくということで、女性の力を投入していく。それから、元気なリタイヤ組に、この生産市場、経済活動に参画していただく。それから、若者、ニート、フリーターができるだけ就業できるようにしていくと、こういう手だてをとっていくことになろうと思います。
(問)何点か伺いたいのですが、1つは、先ほど労働力不足のところもあるんですけれども、要するに公共事業が本来景気を下支えするであろうと期待してやっていたはずだったのですけれども、結果はマイナスだったということについて、何が原因だったとお考えになっていらっしゃるか。
 それから2点目は、アベノミクス効果によって、双発エンジンと言われた個人消費と、それから輸出が増えるのではないかと言われておりましたけれども、結局今まではずっと個人消費の一本足打法だったと思います。今回、そこにまさに少し直撃した感じがあるなという印象を受けているのですが、その双発エンジンのもう一つの方の輸出が今後回復していく見通しがあるのかどうかということが2点目。これはちなみに、95年のときは4.2%輸出が伸びていまして、今回マイナスなので、そこのところを少し解説してほしいということです。
 もう一つは、97年との比較で、今回の方が状況はいいのか。1つ言えることは、海外の要因が非常にいろいろあると思うのですが、例えば地政学的なリスクが高まっているとか、戦争とかいろいろなことが起こっていて、輸出に不安要素、外需に不安要素も相当あるのではないかと思うのですけれども、その辺のところの見通しをどう見ていらっしゃるのか。この3点を教えてください。
(答)労働力不足で公共事業がマイナスになっていると。公共事業の実態を見ますと、公共投資というのは、いわゆる請負ベースではなく、出来高ベースでカウントしていきますが、請負金額は大幅増になっております。26%のプラスになっていますから、これは出来高ベースで来期には、このプラス26%が乗っかっていくということになります。ですから、かなり工事は伸びてくると思います。
 ただ、御指摘のとおり、一斉に公共、民間ともインフラ事業が、あるいは設備投資、ビルの建替え等々、新築等々が始まっています。そこで人件費高と資材高ということにはね返って、これが住宅需要を押し下げるという原因にもなっていますから、この資材価格の高騰と労働力不足の両方を早急に対処するということは必要かと思っています。
 それから、輸出が回復していない。確かに97年の時と今回を比べますと、違いは輸出がカバーしてきたのが97年です。今回はそれがないということがあります。そこがマイナス6.8の原因の一つにもなっているわけであります。これは、今、詳細に調べさせてはいますけれども、実は生産能力の海外移転ということがあるため、海外生産、海外消費という方向にかなり行っていると。ここで大事なのは、実は企業の内部留保が増えているといっても、現金が極端に積み上がっているわけではなく、内部留保の中には設備の部分が含まれています。この設備を分析しますと、海外設備が増えています。つまり、企業は内部留保を増やしていますが、現金も増えていますけれども、極端に増えておりません。設備部分が増えているのですけれども、それは海外設備がふえているということです。ということは、輸出にとって大事なことは、国内投資、国内設備投資環境を整えるということが重要な要素になってきます。ですから、設備投資の減税を深掘りし使いやすくするとか、あるいは研究開発投資環境をしっかり確保していくということが大事だと思っております。
 それから、外需の需要自身の問題。これはアジアの需要が少し落ちているということも輸出が伸びていかない原因になります。これは、なかなか日本一国だけで解決できない課題ではありますけれども、アジアにできる協力はしていく中で、アジアの成長をともに図っていくと、そういう中で需要地としてのアジアというパイを大きくしていく。こういう点では、経済連携協定等々、全体の市場を相互作用で大きくしていくということが大事だと思っております。日本は、いろいろな経済協力を行っていますけれども、これにより相手の市場を大きくしていくということは、日本の輸出を伸ばしていくということとパラレルな関係にあります。自分が伸びるためには輸出先の経済も大きくしていくという観点から、経済協力なり貿易連携協定なりをしっかり進めていくことが大事だと思っております。

(以上)