甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年5月27日

(平成26年5月27日(火) 8:51~9:18  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 私からは特にありません。どうぞ。

2.質疑応答

(問)労働時間規制の緩和を巡る調整の現状について、対象となる年収ですとか職種についての考え方など、状況を聞かせていただけますでしょうか。
(答)今、現場のニーズと厚生労働省の考え方とのすり合わせをしているところです。厚生労働省としては、労働者の労働基準を守るとりででありますから、当然、労働基準を侵食するようなことがないように、万全の注意を払っているわけです。そういう中で、働き方にいろいろなニーズが出てきていること、それから、全員参加型社会を作っていかなければ労働力が確保できないという日本の直面する現実との、いわばすり合わせであります。私の方からは、厚生労働省として、柔軟な働き方で、厚生労働省が考えつつある労働基準をしっかり守って、巷間言われているような残業代ゼロ法案というような汚名を着せられないように、どう柔軟化していくかということ、そして、現場のニーズをそれで吸収し切れるかどうかを検討してもらいたいということであります。
 産業競争力会議からの話は、残業代ゼロ法案ではなくて、残業代先取り、残業代込み法案というようなものであるということであって、時間対賃金という関係がとりづらい職種、例えば企画立案、自己管理型、つまり、成果を出してもらうということが期待されているような職種、働く時間と給与が対比しづらい、与えられた使命に対して給与が対比されるというような職種があると。それについて労働環境をしっかり守りながら、それに見合った働き方ができないかということだと思います。
 生産ラインに入っている働き方というのは、当然、時間によって生産物が生み出されるわけでありますから、これは当然対象外であります。いろいろな企画立案、プランをいついつまでに出してほしいというのは、出てくるプランに対して対価が払われるという職種であります。人によっては、夜遅い方が頭がさえるという人もいらっしゃると思います。閣内では、茂木大臣は午前零時を過ぎると頭がさえると言っています。いろいろな人がいますからね。自分の得意な働き方に従って、自己管理、労働時間管理ができるという人は、そういう働き方があっていいのではないかということだと思います。
(問)大臣のおっしゃる全員参加型の社会への一環だと思いますが、政府が上場企業に対して有価証券報告書へ女性の役員比率を開示するよう義務付けるという検討をしているという報道が幾つかあります。この報道の事実関係もあるのですが、もしその検討が本当であるならば、そうしたものの有効性を大臣はどのようにとらえていらっしゃいますでしょうか。お聞かせください。
(答)女性の社会参加、特に経済活動への参加ということは、日本にとっては必須要件であります。と同時に、女性が経済社会にどんどんその力を発揮していくためには、指導者側に回っていただいて、その人が持っている能力を発揮してもらう。あるいは、場合によっては、女性であるがゆえの感性が企業に必要な場合が出てくる。それが企業の活性化につながることもありますから、経営側に回っていただく。
 なかなか従来の慣行を破ることができないとすると、例えばこういう官職、ポストにはこのぐらいを目標にやってほしいというような、そういう壁を破っていく一つの目安になるのではないかということだと思っております。なかなか強制はできませんから、掲げる目標としてやっていただくということは、結果的には登用して良かったということになるのではないかと期待をするということです。
(問)労働時間のことに関連するのですけれども、年収の話で、民間議員からの提案というのは、年収1,000万円程度という要件が一つ例示されていたと思うのですけれども、田村厚生労働大臣は、例えばファンドマネジャーというような職業を例に挙げておられまして、これは年収数千万と通常言われますけれども、大臣として適当な年収要件というのはどの辺りにあるとお考えでしょうか。
(答)Aタイプ、BタイプのそれはBタイプを指しているのだと思います。まだ年収要件を具体的に線引きするというところまでいっておりません。
 ファンドマネジャーというのは、そもそも深夜労働はダメということにしてしまったら、世界を相手にしていることでありますから、業が成り立たないのではないかと思うのですけれども。最初から枠をはめたらかえって業が成り立たないということではなくて、その方がその人にとってより生産効率が上がる、そういう視点で見ていった方がいいのかなと思います。
 とにかく、現場にどういうニーズがあるか、これは働かせる方というよりも、働く方を重視したいと思うのですけれども、働く方の側にどういうニーズがあるか。それを産業競争力会議ではどの点を指摘しているのかを、もっと厚生労働省とすり合わせをするように指示を出しております。厚生労働大臣は、柔軟な働き方にいろいろなアプローチがあるということをおっしゃっているわけでありますから、そのアプローチの仕方で現場のニーズが吸収できるのかどうかをすり合わせをしていくということがまず第一だと思って、そういうふうに今要請をしているところです。
(問)先週末に田村大臣が御講演の中で、「甘利大臣とお話をしたけれども、年収の低い人たちの残業代をゼロにはしないと確認した」というふうに述べられているとニュースが流れておりますが、実際そういうお話をされたのかどうか、その辺をお伺いしたいのですけれども。
(答)新しい働き方によって労働者を虐待するようなことは絶対にありませんし、あってはならないし、そんなことはしません。もともとかつてのホワイトカラーエグゼンプションは、どちらかというと使う側に意思決定権があったように思われます。今度の新しい働き方は、働く側からの要望が前提であります。そうはいっても、使う側と使われる側では、どうしても使う方が立場が強いのではないかということがあります。それも踏まえて、一部報道されているような残業代をなくす仕組みということには絶対ならないように、周到なすり合わせをしていきたいと思っております。
 あくまでも全員参加しやすいと。それから、時間対賃金という関係が希薄であるという、現場からの働く側のニーズにどれだけ環境整備ができるかということであろうと思っております。それ自身が生産性の向上につながっていくということになります。日本経済全体として生産性を上げていかなければなりません。労働生産性を上げていくということは、その人が最も生産性を上げやすい環境を作ってあげるということだというふうに思っております。
(問)甘利大臣と話した結果、年収の低い人はやらないというふうにおっしゃったと田村大臣はおっしゃっていて、それはA案は諦めたのかというふうにもとれるのですけれども、そういうことではないのですか。
(答)いやいや、そういうことではありません。Aタイプをどういう人たちにあてはめるか。これは新入社員で自己管理ができないとか、あるいはラインに入っている現場で時間が生産と密接にリンクしている、そういうのは全部外れてくるわけであります。自分の企画力を使っていろいろな提案をしていくという人は、時間だけ机に座っていれば成果が出るということではありませんから、そういう時間対成果物との因果関係が希薄であるという職種、働き方に対して、本人からの要望ということに対する選択肢を設けるということであります。ですから、極めて所得の低い層の人たちがそれにあてはまるとは思っておりません。
(問)関連ですが、少し乱暴な伺い方かもしれないのですけれども、残業を先取りなり残業込みという話だと、自分たちのことを考えても、要は残業代100時間とか休日出勤20~30時間とか、それが恒常的に最初から先取りさせてもらえるのだったら、それはそれでみんなのむでしょうと。それを逆に30時間とか40時間で頭打ちにしようとするから、いろいろ労使でもめるわけで、やはり十分な給与を支払うという姿勢が経営側にあれば、それはそんなに難しい話ではないのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
(答)成果に対してどういう評価をするかということです。その成果に対してきちっとした対価が払われる。その成果の出し方は、成果を出しやすいように本人に委ねると。ただし、働き過ぎにならないように、天井、何らかの制約を国の方で考えなければならないと思っております。休みについても、休日なく働いたら、ある一定のインタバールでは強制的に休みをとるというような仕組みとか、そういう働き過ぎ防止に対する縛りはかけながら、その中での働き方は本人の選択に任せるということになるのではないかと思います。
(問)法人税の話で二つお伺いします。一つは、これまで大臣は、骨太の方針でかなり具体的な年限とか幅とかを書きたいということをおっしゃっていましたけれども、現在、財務省、自民党税調との調整状況について教えてください。もう一点は、党税調の方で、財源確保策で外形標準課税について今検討するやに聞いていますが、その財源確保策についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)法人税の実効税率を引き下げるということを、どう具体的に表現していくかということでありますが、今まで特に党税調は、方向性はともかく、具体的に書くのはだめという姿勢が強かったと思われます。総理御自身は、かなり意欲的に取り組んでいくという意思表示をされているわけであります。総理のリーダーシップで、これが実現するかどうかということになろうかと思います。私としては総理の思いを税調会長にお伝えするということをやっているわけであります。税調会長も、総理の思いを受け止めて、どこまでなら党として協力ができるかということを今検討いただいているものと思います。
 外形標準についてのお話であります。この詳細は党税調に伺っていただきたいと思うのですが、私が漏れ聞くところによりますと、とにかく払うべき対象者が応益、益を受けながら、それに対する対価を払ってなさ過ぎるのではないかという認識は、税調会長、党税調の幹部、インナーメンバーは強くお持ちのようであります。法人税全体の改革の中で、実効税率の引下げをどうとらえていくかということだと聞いております。
 今後とも総理のリーダーシップの下に、総理の思いをしっかりと党税調にお伝えしながらすり合わせをしていくのが、私の役目だと思っております。
(問)成長戦略に関して、党の方で、プロ野球の球団を12球団から16球団にしようという構想が一部であるみたいですけれども、これのメリットですとか、日本経済、地方経済の活性化につながるのか、あと、実行可能性について聞かせていただけますでしょうか。
(答)メリットとしては、Jリーグに見られますような地域振興策としては一つのアイデアかなと思います。懸念としては、自民党案については、全体を16にして、4チームずつ4リーグにすると。やはり、一つのリーグ、チーム数があまり減ってしまうと、醍醐味がないですね。今、6チームあるから、Aランク、Bランク、Cランクとか言えますけれども、数が4とか3とか2になってくると、例えば2になったら、1位か2位しかなくて永遠のバトルですね。だから、あまり少ないと、つまらなくなるのではないかなと思います。
 私は、1リーグ今の6チームは最低維持してもらいたいと思います。4リーグだとすると、24チームになるわけですが、それだけをサポーターが支え切れるかというのが課題です。主力選手が全員年俸1,000万円以下とかいうのだと、あまり夢がなくなりますから、やはり夢をしっかり持たせる、それから、リーグの優勝争いで、ダイナミズムを失わないということ、それを支えるサポーターが確保し得るかというところ等だと思います。
(問)これは党からの提言というか考えとして出てきたもので、政府としては活性化策とか成長戦略で今まで全くどこにおいてもこういう検討は、出てきてないと思うのですけれども、今後政府として何か考えるお考えはありますか。
(答)どうですかね。アイデアとしてはおもしろいなというぐらいで、政府が強引にかじを切るということでもないと思います。そういう感覚が地域から醸成されてきたときにどう対処するかということだと思いますけれども。個人的には私、巨人ファンでありますから、また優勝してもらいたいと思います。
(問)関連ですが、昨日、塩崎政調会長代理が総理にお渡しした後、おっしゃっていたのですけれども、総理も異常な反応を見せていらっしゃった、強い関心を示していらっしゃったということですけれども、その辺いかがでしょうか。
(答)総理は、地域振興策の一つとしてはおもしろいですねというところだと思います。前に総理と原監督と御一緒しましたときに、子供の頃はジャイアンツファンではなかったようでありますけれども、いろいろな地域ごとにサポーターが支える仕組みができるのは、悪いことではないと思います。要は、採算がとれるかということと、子供たちの夢の対象であり得るかということ、これはすごく大事だと思うのです。やはり、主力選手は年俸数億円をとってほしいですし、4番打者が年俸3,000万円というのでは、誰も野球選手になりたくないと思うでしょうしね。
(問)TPPに関してですが、今週、日米協議を再開するということで、これから始まる事務レベル協議ですけれども、これについて改めて日米協議の現状認識と、あと、今回の協議で目指すものと見通しというのをお話しいただけますか。
(答)シンガポール会合で事務協議を再開をいたしました。これは非常に大きな意義がありまして、東京で日米首脳会談、日米閣僚会議をやりまして、お互いのセンシティビティ項目について、解決する道筋をつけたわけであります。道筋をつけたら、その次は事務的に作業して、その道筋が本当の道筋になるようにする作業が待っているのですけれども、それが全くできませんでした。ベトナム・ホーチミンにおいても、日米の事務レベル折衝というのはできませんでした。それはアメリカも日本もステークホルダーが疑心暗鬼になって、相当テンションが上がってしまっているという状況で、双方とももう少しクールダウンする必要があるということだったと思うのですけれども。
 しかし、政治折衝、大臣折衝で道筋を特定して、それに従って事務折衝、その事務折衝が進まなければ、センシティビティ品目の着地点が完成しないわけであります。それがシンガポールで事務折衝がようやく再開をいたしました。その続きがワシントンで行われるということであります。これはアメリカから、是非ワシントンに来て続きの協議をしようという要請ですから、これは日米間の交渉を着地させるために重要な引き続きの事務折衝だと思っております。この種のことを、日米だけでなくて、他の国とも事務折衝を並行して進めていく、その結果、最終的に7月の首席交渉官会合で全体としてどこまでの整理ができるかできないかということが、それから先の日程を決めていくことになるのではないかと思っております。
 ですから、動いてなかった事務折衝がシンガポールで動き出した、その引き続きで、どこまで間合いを狭められるか、懸案項目が具体的にセットできるかということの大事な協議だと思っています。

(以上)