甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年3月11日

(平成26年3月11日(火) 9:52~10:10  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 私から1点、報告がございます。
 本日、株式会社地域経済活性化支援機構法の一部を改正する法律案が閣議決定されました。本法律案は、中小企業等の事業再生及び地域経済の活性化に資する事業活動の支援を一層強化するために、ファンドに対する出資機能や経営者保証付債権等の買取り機能などの機能の拡充を図るというものであります。今後、国会の御審議を経まして、法律案の早期成立及び施行が図られることによりまして、地域経済の活性化に貢献していくことを期待いたしております。
 なお、法案の詳細につきましては事務方にお問い合わせをいただきたいと思います。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今日、東日本大震災から3年がたちました。被災地の経済再生は遅れているという声は多いのですけれども、何が問題となっていて、どうすればスピーディーに進められると大臣はお考えでしょうか。
(答)具体的な進捗の数字の幾つかをお示ししますと、政権交代によりまして、かなりスピードアップをしたということは御理解いただけるかと思います。がれき処理につきましては、政権交代前が43%、これが95%終わっております。それから、高台移転の工事の着工について、政権交代前は12%、これが88%に進んでおります。それから、大事な生活・経済のインフラでありました常磐道でありますけれども、来年のゴールデンウイークをメドに、全線開通というメドも立っております。
 いろいろと進捗をしていく中で、住民の方々の要望がかなり細分化してくるということで、意見集約をしていくということに時間がかかってきているのかなということもあります。権限を現場地域に移していますけれども、更にどういうことが必要かということを、地元と連絡をとりながらニーズを把握して、国としてやるべきことをやっていくということに尽きると思っております。
(問)春闘の関連でお聞きしたいのですけれども、電機、自動車、流通業界でも、ベアについて、かなり方針が固まってきています。現状、まだ集中回答日ではないですが、大臣としては、経済の好循環に向けて、どう受け止めていらっしゃいますでしょうか。
(答)政労使の会議で、政府側、経営側、そして労働側、それぞれが経済の好循環のために必要な共通認識を持ちました。それに沿ってやるべきことをやっていくということが、やがてそれぞれ自身に返ってくるということを認識しつつ、やるべきことをやっていこうということになったわけであります。
 その意を受けて、もちろん利益が上がっていない会社にやれと言っているわけではありませんけれども、利益が上がっている企業については、この好循環を回すことの大事さを認識して、企業であればベアを初めとする賃金改定を行ってくださいということに応えていただいているわけであります。利益が上がっているにもかかわらず、そして政府が行った環境整備、法人税減税を前倒しして、原資はお渡ししているわけであります。にもかかわらず、何の対応もしていただけないということであるならば、そういう企業については、経済の好循環に関して非協力ということで、経済産業省から何らかの対応があるのだと思います。
(問)ベアの話で、安倍政権におけるこの春闘の大切さ、位置付けを改めてお願いします。
(答)景気を回復させるに当たり、まず、スターター役というのは政府がやるわけです。環境を整備する。これは、デフレ環境を改善するために、異次元の金融緩和を行って、まず、見える景色を変えていったわけであります。併せて、スターター役を回す、種火をつけるということで財政出動をいたしました。
 これはあくまでも民間経済に火をつけるための種火であります。民間経済に火をつけるということは、政府の予算規模で経済を回していくということではなくて、GDPで経済を回していくということになるわけであります。そのためには、本体であります民間経済が一歩を踏み出すということが大事なわけでありまして、消費を拡大するために賃金の改善をしていく、将来を拘束するベアについても思い切って踏み込みをしていく。これは決断であります。そういうことを通じて消費が拡大し、投資が拡大し、生産が拡大し、企業収益が更に拡大しという循環になってくるわけです。ですから、消費環境、投資環境を整えるということは極めて大事な一歩だと思っております。
(問)先程、ベアなどに関して非協力的な企業に対しては経済産業省から何らかの対応というお話がありましたけれども、何らかの対応というのは、以前から企業名の公表みたいなお話はあったかと思いますけれども、それ以外にも何かお考えがあるのでしょうか。
(答)いや、日本は自由主義、市場経済の国でありますから、本来、政府の役割は民間の自主的な活動を後押しするということに限られているわけであります。
 ただ、デフレからの脱却には相当なパワーが必要になってきます。それは他人ごとではなくて自分ごとなのです。経済界の構成員一人一人が、自分にその力がありながら非協力ということは、結局、自分に返ってきませんよということをしっかり認識してもらうということが大事なのです。今回、政府のやり方は、平時にとるやり方ではありません。言ってみれば、デフレという引力を脱出するための推進力が必要なわけでありますから、そこは他人ごとではなくて自分ごととして捉えてほしいという、この認識を経営者はきちんと持っているかどうかということが日本経済にとって極めて大事な点であります。それを喚起するような対応を経済産業省がとるのだと思います。
(問)ベアですけれども、例えば連合の要求どおり1%が達成されても、多分平均賃上げ率は2%ぐらいになるのではないかと思うのですが、消費増税も含めると物価上昇は3%以上になるわけです。これは、なかなかすぐに全部を賄うのは難しいと以前もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、このベアが与える影響についてはどう見ておられるでしょうか。
(答)1年ですぐ取り戻せるというのは理想かもしれませんけれども、それは体力との関係です。日本経済も病み上がりの状態で、軽いジョギングから始めようというのか、いきなり100メートルの記録を作れというのか。100メートルの記録を作れということになると、そこで倒れてしまうという危険性がありますから、そこは常識として、体力に見合いながら健康体を回復していくということであります。
 連合も、そういう良識、常識に従って要求をされているのだと思います。
(問)昨日のGDP2次速報で、設備投資が予想より少し落ち込んで、個人消費も少し落ち込んで、とうとう成長率が年率で1%台を割り込む形になりましたけれども、これの受け止めについて一言いただけますでしょうか。
(答)駆け込み需要がありますから、それを勘案すると、若干弱含みだと思っております。しかし、悲観的になる必要はないと思います。設備投資も、3年以内に63兆円から70兆円にという目標も、恐らく達成できると思います。基調、全体のトレンドはいい方に向かっておりますから、ここで、好循環をしっかり回していくという認識を持ってもらうことが大事な分かれ目になるのではないかと思っておりますから、その上でも、賃金への反映はしっかりしていただきたいと思います。
(問)内需は堅調な一方で、輸出が伸びずに、逆に個人消費の伸びが、海外に移転した生産拠点から輸入の伸びにつながっていて、それが固定化しているような状況ではないかと見ていらっしゃるエコノミストもいますけれども、輸出と輸入の差が赤字の方に、昨日公表された経常赤字も過去最大になりましたし、そういう状況が固定してしまっているのではないかという見方については、どのような対策が必要だと思われますでしょうか。
(答)12月あたりから、輸出の基調が少しずつ変わってきたという現場からの報告があります。Jカーブ効果が現れるのが遅いということでありますが、少しずつ発現してきているのではないかと思います。その際に、内需の好調が、本来輸出に回る国内生産の分まで吸収しているという報告がありました。生産力の強化とともに、国内で吸い取られるという部分を超えて輸出に向かっていくのではないかと思います。
 ただ、日本のかつての輸出産業の柱のうちの幾つかは、やはり競争力が落ちています。自動車は競争力があるのでしょうけれども、家電について、更なる新製品、新サービスの開発が必要かと思います。抜本的には、日本経済の競争力をイノベーション、イノベーションは技術革新だけではない、広範な意味での刷新ですけれども、ビジネスモデルも含めて刷新していくことを通じて競争力をつけていくということが必要だと思います。モノの競争力では、付加価値が高いのは製品開発の部分と、下流のサービスでどういう工夫をするかというところだと思いますし、付加価値も、従来型付加価値だけではなくて、ブランドの力をどうつけていくか、イメージをどうつけていくかということも付加価値の要素として大事になってきているわけであります。企業が自身の競争力をつけるために総合戦略をしていく。そして、政府がなすべきは、常にイノベーションは日本から発信されるようなナショナルシステムというのを作っていくことが大事でありまして、それは今後の日本再興戦略の改定に盛り込んでいきたいと思っております。
(問)TPPの関連で、大江首席交渉官代理が本日、カトラー次席通商代表代行と協議しに行くと思うのですが、この期待感を聞かせていただきたいのと、その一方で、自民党の西川TPP対策委員長がオーストラリアに行くと思うのですけれども、オーストラリアとの牛肉の関税交渉についての期待感も聞かせていただけますでしょうか。
(答)日米事務レベル協議が、従来とは違って、日米双方ともマンデートを与えられた者同士が協議をするということでありますから、私はかなりの前進を期待しますけれども、一定の前進があるのだと思います。日米双方が時間軸の概念を持って取り組んでいくということであります。
 日米間については、4月にオバマ大統領が訪日をされます。日米首脳会談があります。ここで具体的項目について首脳同士がかんかんがくがく議論するということはありません。ここは祝福の会になるか、あるいは、更に事務方へエンカレッジしようという会になるかのどちらかしかないはずであります。
 となれば、できるだけそれまでに日米間の間合いを詰めていきたいと思うのは双方の交渉責任者の思いだと思います。私はそう思っていますし、多分、フローマン代表もそう思っているはずであります。そういう思いを受けて、どこまで間合いが詰まっていくのか、期待して見守りたいと思っております。
 日豪につきましては、時期はたまたまTPPと重なっていますけれども、これは二国間のEPAの懸案事項でありました。オーストラリア政府は、前政権のときに、牛肉の問題を中心にスタックしていたわけであります。政権がかわりまして、オーストラリア側の政権も何とかまとめたいという思いを強く抱いたようでありますし、日豪間で首脳の来訪の日程が入っているわけでありますから、その日程に沿って作業を進めようという機運が双方にかなり出てきております。たまたまTPPとは重なっておりますけれども、TPPがあるなしにかかわらず、日豪間の懸案課題でありましたから、しっかり進めたいと思っております。

(以上)