甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年1月21日

(平成26年1月21日(火) 10:51~11:12  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 私から1点報告がございます。
 本日、閣議の前に、第12回日本経済再生本部を開催いたしました。本日の会議では、「産業競争力の強化に関する実行計画案」につきまして御議論をいただくとともに、昨日の産業競争力会議で取りまとめました「成長戦略進化のための今後の検討方針」について報告を行いました。
 総理からは、関係大臣に対しまして、「実行計画に基づいて成長戦略関連施策をスケジュールどおり着実に実行していただきたい。それから検討方針に示された諸課題について、実現に向けて検討をいただきたい。閣僚自らがリーダーシップを発揮して更に前向きな取組を検討し、実効性のある政策の具体化を図り、年央の成長戦略の改定に反映をさせたい。」その旨の御発言がありました。
 実行計画につきましては、この後、与党での御議論を経まして、持ち回りで閣議決定をする予定であります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)昨日の米国USTRフローマン代表との電話会談について改めて聞かせていただきたいのですけれども、大臣はかつて、農産品5項目について1センチも譲らないというふうにおっしゃっていたと思うのですが、昨日の会談で日米双方が努力するというふうになったと思います。これは、最後の最後まとめるときには努力するというか一定程度譲る、歩み寄るという可能性もあるのかないのか、聞かせていただけますでしょうか。
(答)衆参の農水委員会で決議があります。決議の理念、決議の趣旨、それについて原則を曲げてしまうということはできませんよというお話をしました。双方具体的な技術的な中身について、日米のスタンスの幅があるわけです。一方が一方にだけ歩み寄るということではなくて、双方が同じように歩み寄るということによって初めて妥結の道が開ける、このことは、私は再三再四申し上げたつもりであります。その意味において、1センチもというのは考え方、理念、哲学はしっかり保つ。そしてお互いが努力をするということは、お互いが同じように歩み寄る努力ということになるわけでありますが、それは技術的な問題等々あろうかと思います。基本的な考え方についてはしっかり踏まえつつ、妥結のための技術的な作業を行うということだと御理解いただきたいと思います。
(問)昨日の経済財政諮問会議後の記者会見で、対日直接投資を増やすために、外国企業への意見を聞いていきたいということで御発言をされたかと思うのですけれども、具体的にどれくらいの時期に、どういった企業を対象に、どれくらいの期間でそういうことを開催されるか、もしもアイデアがあれば教えてください。
(答)対日投資を行っている外国経済団体があります。在日全米商工会議所というのは有名でありますけれども、それ以外にもEU系とかアジア系の関係者から幅広く意見を伺って、現場で取り組んでいらっしゃる経営陣の方々から見てどういう障害があるのか、プライオリティはどういうものであるのか、それをしっかり聴取をしたいと思います。日程についてはまだ確定をしておりませんが、総理からの御下問もあり、できるだけ早急に段取りを進めていきたいと思います。
(問)成長戦略の実行計画と検討方針についてお伺いしたいのですが、検討方針、これから検討していきますよという項目については結構新しい項目もあっておもしろいなと思ったのですが、省庁側と合意が成立したところというのは、減反の見直しが目新しいぐらいで、成長戦略の最初の半年間、成長戦略が決まった昨年6月までの半年間に比べると、その後の半年間は、やや議論のスピードが落ちているのではないかなという感じもするのですが、後半の半年間の甘利大臣の評価というのは、いかがでしょうか。
(答)プランを決めて実行していくまでの間には手続が必要です。総理大臣が決めて、明日からやるというわけにはいきませんから。つまり、環境整備のための税制とか規制改革とか制度改革、それを実行あらしめるような法律化をして提出するということであります。
 さきの臨時国会では、成長戦略関連9本の法案を出させていただきました。法案の中に、更に細目が書いてあるわけであります。それを具体的な実行ということで、今国会には30本程度の法案で、これには当面3年以内に行うものが対象になっているわけでありますが、そこでは誰が、いつまでに何を行うものかということが明示をされるわけであります。
 いろいろな場面で私は申し上げていますが、アベノミクスの成長戦略と過去の成長戦略の大きな違いは、でき上がったところがゴールか、でき上がったところがスタートかの違いです。考え方をまとめて、後は各省庁で、それぞれ皆さんやってくださいねというやり方か、でき上がったところから工程表で、いつまでに誰が責任を持ってやるか。今日も総理から、「関係大臣は、自分の担当するところを責任を持って履行してもらいたい。」という指示が出ております。そういった作業、つまりプランを作る。そこで終わってしまわないで、それを実行に移すための工程表を今作っているところであります。ですから、プランを作るところまではもちろん目覚ましいことを掲げるわけでありますけれども、ただ掲げ続けるだけでは何の意味もないと思います。掲げたものをいつまでに、誰が責任を持つかという工程表を細かく作って、それを法案化して今国会に出すということであります。
 あわせて、年央の更にバージョンアップに向けて大胆な取組を掲げさせていただきました。これは、これから成長戦略、「日本再興戦略」のバージョンアップに組み込めるように、これは各大臣が覚悟を決めて省内、それから省外調整をしてもらうということになります。
(問)日銀が2%の物価安定目標を掲げて明日で1年になるようなのですけれども、この1年の評価を聞かせていただきたいのと、消費増税で更に今後物価が上がっていき、消費者の負担は更に増えていくと思うのですけれども、そのあたりも改めてお考えを聞かせていただいてよろしいでしょうか。
(答)物価の安定目標を2%としてあります。まず第1弾として、今日の時点で言えば、デフレは脱したということが言えるわけであります。ただ、課題は、再びその状況に戻らないことが担保されているかというと、そこまではまだできていない。ですから、デフレではないけれども、デフレ状況を完全に脱却できたかというと、また戻るリスクはまだ残っているということであります。次の段階は、デフレを脱却し、再びデフレ状況に戻らない環境ができるということだと思います。
 物価に関して言いますと、来年度2014年度は、物価上昇率が3.2%、そして消費税の効果を除くと、たしか1.2%だったというふうに記憶しております。2%に向かって順調に歩みを進めていると思います。
 そこで肝心なことは、物価の上昇を超える賃金上昇、これがきちんと路線が引かれますと、好循環が自動的に回り出すということになります。もちろん企業は、それ以降、競争力強化、イノベーション力を上げていくための投資を行っていくということが、好循環を回していく企業側の課題になっていくわけでありますが、少なくとも最初の雪だるまのひと転がしは、条件が少しずつ整いつつあると思います。3月上旬に一斉回答となる春闘の行く末を注目していきたいと思っております。
(問)昨日の経済財政諮問会議の際に、「選択する未来」委員会の設置についてという報告があったと思うのですけど、経済財政諮問会議本体との役割の違いと、あと設置の狙いみたいなのを教えていただきたいのですけれども。文章を拝見すると、人口減少などに対応するこれからの未来の日本の構造変化について対応できるようにというふうに読み取れるのですけれども、そういう御趣旨でしょうか。
(答)アベノミクスは、当面の課題、それから近未来の課題について、経済財政について言えばですね、模索、提示をしているわけであります。そのアベノミクスを、それから先の日本が抱える構造問題、人口減少、少子高齢化というのは、その最たるものでありますけれども、それから先の課題解決に向けてどうつなげていくかということが大事な視点になってきます。つまり、日本という国が、50年後も世界に冠たる経済立国として立っていくために、アベノミクスを長期に向けてどうつなげていくかということが大事な課題になります。もちろん安倍総理は2050年先までやられるおつもりは多分ないと思いますが、安倍政権の後にも、アベノミクスの更に進化したものが日本の経済財政を支えていくということに関して、長期的な課題を洗い出して、それへの解決の糸口を見つけ、そこへとアベノミクスをつないでいくということをやっていくということで、経済財政諮問会議の下に設置をするわけであります。精鋭を集めて設置をいたしますし、そこでの成果は、50年先を見越して、2020年までに何を取り組むべきかということを出していただくわけでありますから、順次、「骨太方針」に織り込めるものについては順次織り込んでいきたいというふうに思っております。
(問)アベノミクスと東京都知事選挙についてお聞きしたいのですが、細川さんは、いわゆるオリンピックの撤退というのを以前言っていたり、TPPについても慎重な見解を示されたこともあったようですけれども、東京都知事選挙の結果がアベノミクスの今後の進展に影響を与えることというのはあり得るか、見解をお聞かせください。
(答)細川元総理は、オリンピックは返上すべきだと明確に著書の中でおっしゃっておられます。しかし、政府として、国民各界各層を挙げた運動を展開してようやくかち取ったこの明るい目標を、この時点で手放すことは全く考えておりません。細川さん御自身の御持論で、TPPについてもネガティブな視点をお持ちだそうでありますけれども、アベノミクスにおけるTPPは重要な柱であります。TPPはTPPで完結するということを考えているわけではなくて、更に大きな経済枠組みへの一里塚だというふうに我々は認識しているわけでありますし、主要国たるアメリカもそう考えているはずであります。そこに向けて我々はしっかりと各国とネゴシエーションしながら、いい形に持っていきたいと思っております。
 大事なことは、経済連携の枠組みの中でバリューチェーンが形成されるということであります。つまり、域内のA国、B国、C国でそれぞれ付加価値が加算されてくる。それについては、域内の優遇された対応をとるということでありますから、そこから外れるということは、バリューチェーンに日本が参加できないということになります。つまり日本で部分的に付加価値が造成されたものについては、日本が入っていない限りは域内扱いをされないということになりますから、私はTPPについて大事なことは二つあると申し上げております。一つは、物の貿易以外のルール化の問題に大胆に取り組む初めての国際条約であるということ。それからもう一つは、今申し上げた域内で形成される付加価値の加算について。域内加算については域内の取扱いをするけれども、そこから外れたものについては、その取扱いをしないということでありますから、バリューチェーンに日本が参加できるかできないかということは、経済上大きな視点になろうかと思っております。よって、我々は、日本の努力によって積み上げられた付加価値が、経済上不利を被るというようなことに加担する細川さんの考え方にはくみしないというところであります。
(問)今日午後からダボスへ出発なさいますけれども、意気込みといいますかセッションに向けてお考えがあればお願いします。
(答)私のセッションでは、グローバリゼーションに対するある種アンチテーゼというものが世界で提言されている。グローバリゼーションに対して、それの懐疑的な考え方についてどう捉えるかということであります。私は、安倍総理が掲げる「瑞穂の国の資本主義」についてしっかりとPRをしていきたいと思っております。それは、資本主義が本来の理念、哲学を忘れてしまっているところからいろいろな問題提起が来ているということだと思います。資本主義市場経済というのは、業を起こしたいけれどもお金がない人、お金はあるけれどもそういうつもりはない人をつないでいくわけであります。つまり、投資というのが基本的な理念に立っているわけであります。私は、投機経済を否定するものではありません。日本は投機経済、つまり超短期の資金を否定していることはありません。ここはメッセージが間違って伝わってはいけないもので、強調しておきます。それと同時に、本来、資本市場がよって立つ責任というのは、投資を推進していくということが使命だと思います。この資本主義市場経済の原点を忘れてしまってはだめであります。投資はイノベーションを起こします。イノベーションは世界中に幸せを分かち合うわけでありますから、そこの視点、投機を否定するつもりはありませんが、本来の機能、投資をしっかりと促進をしていくことを忘れてはならない、それが総理がおっしゃる「瑞穂の国の資本主義」であります。つまり短期資金ももちろん大事ですけれども、中長期を支える忍耐強い資金の市場というものも、世界がしっかりと育成をしていかなければならないということの問題提起はしていきたいというふうに思っております。

(以上)