甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年11月19日

(平成25年11月19日(火) 9:08~9:32  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 まず、私から報告を申し上げます。
 本日の閣僚懇におきまして、私から各閣僚に対しまして、12月上旬に策定をいたします新たな経済対策の考え方であるとか取りまとめに向けての協力をお願いしたい旨、発言をいたしました。
 具体的には、新たな経済対策は、消費税率を引き上げても景気を腰折れさせることなく日本経済を成長軌道に早期に復帰させることを目的といたしております。目先の景気を押し上げるための一過性のものではなくて、日本経済の成長力を高めて民需主導の力強い成長を実現させるためのもの、いわば「未来への投資」といたしております。
 このために経済対策の取りまとめに当たりましては、まず第一に、消費税率引上げに伴う駆け込み需要とその反動減を緩和するということ。第二に、経済の成長力を底上げし、未来につながる投資とすること。そして第三に、対象分野といたしましては3点、まず1として競争力強化策、2として高齢者・女性・若者向け施策、3として復興、防災・安全対策の加速を主な柱とすると。この3つの考えに基づきまして、策定をさせていただきます。
 今後、各府省庁からの提案につきまして、経済対策のこの趣旨に合ったものとなるように、財務大臣と協力をし、そして、与党の御意見も伺った上で、しっかりと取りまとめていきたいというふうに思っております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)TPPですけれども、今日19日、現地時間19日からソルトレイクシティの会合が始まりますけれども、最大の焦点と、関税撤廃協議においては日本が孤立化しているというような話がありますけれども、打開策がもしあるのであれば聞かせていただけますでしょうか。
(答)打開策、いいのがあったら教えてください。
 孤立化しているとは思いません。いよいよ12月妥結に向けての最終的な事務の詰め、最終ラウンドが始まったわけであります。残されている分野は、ルール、それから、関税はもちろんございます。次第にこの間合いが詰まってくるということは、それだけレッドラインになってくるということでありますから、当然交渉はタフになってくるというふうに思います。
 知的財産分野をはじめとして、重要な課題でそれぞれの国の利害が対立している部分がございます。関税もその通りです。各国のセンシティビティに配慮しつつ、できるだけ過去にないような野心の高いものにしていくという、いわば相反する課題の、まさによく私が言うことでありますが、最大公約数を求めていく作業が、大詰めに入ってきているわけであります。日本といたしましても、最後まで譲れない線はここだという絞り込みをかけつつ、その獲得にしっかりと取り組んでいきたいと思っております。
(問)冒頭の発言にあった経済対策についてお伺いしたいのですが、12月上旬に策定ということと各省の提案、もうちょっと細かいスケジュール、例えば各省からの提案を一時的にはどのあたりで締め切るのかとか、そのあたり、お考えがあったら教えてください。
(答)今日、各閣僚に協力要請をいたしました。既に何人かの閣僚からは、個別に私のところにいろいろな相談が来ております。各省とも12月上旬のスケジュール、彼らも予算編成のプロでありますから、自分なりにスケジュール感をしっかり持って、私どもの方に要請が上がってくると思います。その経過、過程で財務大臣と御相談をし、そして、党の政策関係者とも連絡を取りつつ、まとめていきたいというふうに思っております。
(問)TPPですけれども、農産品の重要項目の一部の関税を低くするといった検討であるとか、米のミニマムアクセスの現在の10トンというところの枠を広げるというようなことが今検討されていると一部報道があるのですが、政府としては、こういった選択肢も排除せずに今検討されているということでしょうか。
(答)細かな交渉作業について開示することができませんが、一番大事なことは、日本が抱えているセンシティビティについて、政治的にどれくらい厳しい状況であるかということを、関係国にまず理解をしてもらうということが大事であります。その厳しさの中で、各国がレッドラインの幅をどう詰めることができるかできないかと、この交渉に入ってくるわけであります。その政治的スタンスの厳しさが甘ければレッドラインの削減幅は多くなるでしょうし、厳しければ、それだけレッドラインの削減幅は小さくなるということであります。
 日本といたしましては、自民党選挙公約、それから、国会での決議の縛り、政治的な厳しさというのをしっかり訴えるというところから始めさせていただいております。
(問)軽減税率についてお聞きしたいのですが、公明党は消費税率10%に引上げる段階で導入するように強く求めています。一部報道で、昨日、安倍総理が野田税調会長に早期の検討を加速するように指示したという報道がありましたけれども、まずそうした事実関係とか総理の意向について大臣、御存じでしょうか。
(答)これは税制抜本改革法で、軽減税率ないし給付付税額控除を検討する、それまでの間は簡素な給付措置を行うという法律上の要請に従って作業が進んでいるわけであります。公明党さんとしては、生活必需品の軽減税率に関して強い意思をお持ちであります。これは党税調、与党税調の方で、そういう法律上の縛り、それから、与党間での調整、公明党の思い等々を受け止められて、対応策を協議していかれるのだというふうに思っております。
 総理が野田税調会長に対してどういう要請、指示をされたかということはお二人の間のことでありますし、承知をいたしておりません。
(問)甘利大臣自身は、消費税を10%に引き上げる段階で導入するということについては、どのような所見をお持ちでしょうか。
(答)税制抜本改革法に記載していること、何らかの対応を法律が要求していることに対して、いろいろ検討していくということであろうと思います。具体的にどの手法がいいかというのは、それぞれ関係者の協議によるものだと思っております。
(問)経済対策ですけれども、規模に関するお話がなかったのですけれども、5兆円規模と当初の予定通りでよろしいのかということと、その財源ですけれども、国債を発行しないかどうかということは、今年度の税収の伸びにもかかわってくるかと思うのですが、確保できるメドが立ったのかどうかも教えてください。
(答)予算規模はおおよそ5兆円であります。これは細かく政策を精査して積上げておりませんので、おおよそその程度になろうかというふうに思っております。これ以外に税制措置が1兆円強あるということでありますから、経済対策全体を俯瞰してみると6兆円前後の規模になろうかというふうに思います。
 5兆円の予算の財源につきましては、極力国債発行をしないという方針を当初から掲げました。税収の伸び、それから、24年度の決算剰余金、それから、本年度の不用等々、積み増していきますと、国債発行せずに対応ができる見通しが立ちつつあるのではないかと思っております。
(問)経済対策の先ほどのお話の点でちょっと確認したいのですけれども、各省からの提案があるのは12月上旬にはあるというふうな見方でよろしいでしょうか。
(答)もっと早い時からいろいろお話があろうかと思います。もう既に今日の時点で何人かの閣僚からは相談が来ております。
(問)大臣からいつまでにはというふうな期限は設けていらっしゃらないのでしょうか。
(答)12月上旬に策定をします。そのスケジュール感をもって、関係大臣は必要な項目を要請、取りまとめしてほしいという要請をいたしました。
(問)経済対策で確認をさせていただきたいのですけれども、10月の段階で総理がもう既に消費増税に伴う経済対策ということで、5兆円についてはしっかりやるようにということで指示があったと思うのですけれども、今回の協力要請の位置づけとしては、この競争力強化策など3分野に重点配分をしますということで協力を要請したという理解でよろしいのでしょうか。
(答)基本的に各省庁から補正予算の編成に我が省のこういう政策を入れてほしいという要望が上がってくるわけですね。それを私のところで財務大臣と相談しながら、具体的にまとめ上げていくわけです。もちろん与党の意見を聞きながらということになります。その際に、ただやみくもに各省が年度予算でとれない部分をどんどん補正予算に入れていこうみたいな要求をされてもはじかれますよと。この補正予算というのは、消費税導入に伴い、駆け込み需要と反動減を平準化してしっかり支えるということと、成長力自身を押し上げるということ、つまり一過性のものにならないように成長軌道にしっかり乗せていくための予算ですよということを申し上げているわけです。そこで、今申し上げた消費税にかかわる影響と、それから、経済力、成長力の底上げ、それから、それらに基づいて対象分野は3点、競争力の強化に資するとか、高齢者・女性・若者に対する施策、そして、復興、防災・安全対策、こういった柱に沿ったもの以外は認めませんというお話をしているわけであります。そういう枠組みで、具体的な要望が関係各省から上がってくるということになります。
(問)昨日、楽天の三木谷さんが一転発言を撤回されまして、競争力会議の委員を続けられることになりました。この受止めがあれば教えていただきたいのと、その際に総理とのお話で何か対面販売とネット販売を網羅的に、薬を含めてという意味だと思うのですけれども、何か検討する会議を立上げてほしいとおっしゃって、それを検討するとおっしゃったのですが、会議はできるという理解なのかどうか、ちょっとその辺も教えてください。
(答)三木谷さんから、辞退を辞退するというお話が来たようでございます。私からは、何もお辞めになる必要はないと思いますということを当初から申し上げておりました。大人の対応をされたのだというふうに思っております。
 三木谷さんの思いというのは私もよくわかっておりまして、薬のネット販売がネットの経済上の損失がどうこうという話ではなくて、ネット社会が新しい生活経済ツールとして、インフラとして定着するということが大事だという御主張であります。これは私もよく理解をいたします。ただ、今回は安全上の問題で専門家がこういう手順をとってほしいという諮問に対して答申をされたわけでありますから、政府としては国民の安全を無視するわけにはいきませんということであります。
 なお、その上で安全性を確保しながら、このインターネットというものが社会のツールとして定着していくようにいろいろと検討する、これは日本再興戦略の中にも位置づけられていますし、IT担当大臣の山本大臣がそれについて検討していくということになっております。総理からそういうお話が三木谷さんにあったということでありますので、私から山本大臣に対して、インターネットが社会のインフラとしてより定着していくように、そのための検討を加速するように、私から担当大臣には要請をしたいと思います。
(問)薬の問題を一からやるということはないという理解でよろしいのですよね。
(答)ええ、薬の問題はもう決着をしていることです。三木谷氏の昔からの問題提起というのは、インターネットを社会の新しいインフラとして定着させていくことが大事だと、それはその通りであります。そのために、どういう検討が必要か、抜本的な問題ですね、それは山本大臣のところで検討することになっておりますから、総理からそういうお話があったということを受けて、それを加速するように私から山本大臣に要請をしたいと思っております。
(問)要請をされたのではなくて、これからされるということでしょうか。
(答)これからしていきます。先般そういう指示が総理から、そういうお話が三木谷さんにあったということを報道で承知いたしましたから。
(問)いつ頃立上がるかというメドみたいなものは……
(答)いやいや、もう検討しているはずですから、それを加速させるということです。新しい仕組みを作るかどうかというよりも、山本大臣が担当としてそれを検討していくということはもう既に再興戦略の中で書いてあることであります。
(問)では、会議体という形にはならないのでしょうか。
(答)会議体という形になるかどうか、山本大臣に検討状況を確認して、それを加速させるためにどういう手だてが必要かということを確認していきたいと思います。
(問)TPPに話は戻るのですが、まずTPPのやり方として、市場アクセスなのですけれども、全ての物品をテーブルの上に上げて全部自由化しますということを言ってから、どれを例外にしていこうという議論の進め方というのが原則だと思うのですけれども、今回の交渉の中で、まず最初に日本が100%自由化しますと宣言した段階で、それはもう公約違反なり国会決議に反すると、そういうことになってしまうという理解でよろしいのでしょうか。
(答)日本がTPPに加入する時に、アメリカと協議をして幾つかの確認をいたしました。それは、100%関税撤廃をするということを宣言して入るものではないということは確認しているわけです。各国にはセンシティビティがあると。ただし、それは議論の俎上にはのせるけれども、最終的に協議の中でどれが譲れないということの結果が出るものですよ、という確認がなされているわけです。最初から全部なくしますと宣言して入るのであれば、交渉の必要なんかないのです。最初からないのですから。そうではなくて、最初から全てを撤廃するということを前提に始まるのではないと。ただし、議論にはのせますけれども、何を残すかというのは、交渉の過程の中で結論が出てくるものです、ということを確認しているわけです。そこのところを取り違えると、TPPという交渉のあり方自身が曲解をされてしまうわけです。
 日本には農産品の一部、アメリカには工業製品の一部がありますということをお互いが認識して文書に書いたわけです。ただし、それは交渉の中で勝ち取ることですよということが確認されているわけです。最初からこれはなくすということを前提に入りますよということではないですと。お互いセンシティビティは日米間でもあるし、それ以外の国でもありますと。それを認識しつつ、しかしそれは、最初からこれは例外ですという交渉ではなくて、最後にこれが例外ですと残るのは、交渉の過程で勝ち取っていくものですねということを確認しているわけです。その作業を我々はやっているわけです。
(問)先ほどのTPPの御説明で、「孤立していない」というのはどういう意味合いでおっしゃったのかという説明を追加でお願いします。
(答)各国には譲れない線があるわけですね。日本だけではないです。アメリカだって譲れない線はあるわけであります。かなりたくさんあると私は認識していますけれども、では、それをもって孤立しているかというと、これはまた別問題であります。それぞれ守るべき分野が違うと。その分野においてはその国は孤立しているかもしれません。しかし、別の分野については攻めているわけであります。我々はルールの分野については、世界で一番孤立していないわけでありまして、これは攻めているわけであります。

(以上)