甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年8月15日

(平成25年8月15日(木) 14:56~15:26  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 2点の報告をさせていただきます。
 まず、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告させていただきます。
 景気の基調判断は、引き続き「景気は、着実に持ち直しており、自律的回復に向けた動きもみられる」といたしております。これは、輸出環境の改善であるとか、好調な内需を背景に、生産や収益が増加をし、雇用の改善も進んでいるということを踏まえたものであります。また、消費者物価は横ばいで推移をしておりまして、デフレ状況ではなくなりつつあります。ただし、物価の基調が上昇に転じ、そうした状況の持続が見込まれるという意味でのデフレ脱却はまだ道半ばであります。
 景気の先行きにつきましては、輸出が持ち直し、各種政策の効果が発現をする中で、企業収益の改善が家計所得や投資の増加につながり、回復へ向かうことが期待をされます。ただし、海外景気の下振れが、引き続きリスクとなっていることに注視が必要であります。政府といたしましては、「経済財政運営と改革の基本方針」に基づきまして経済財政運営を進めるとともに、「日本再興戦略」を着実に実施してまいります。また、日本銀行には、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということを期待いたしております。
 続きまして、TPP主要閣僚会議についてであります。
 TPPに関する主要閣僚会議を開催いたしまして、次回ブルネイ交渉会合のスケジュール等について、この場で報告がありました。8月22日から30日まで、ブルネイにおきまして、第19回TPP交渉会合が開催をされます。また、8月22日から23日にかけて、現地におきましてTPP関係閣僚会合が開催をされます。私がTPP担当大臣として参加をするということについて報告をいたしました。
 直前に茂木経済産業大臣が、ASEAN関連の会合で閣僚級とバイ会談をやっておりますので、現地での連絡、引継ぎをしっかりやろうということも確認をいたしました。
 それから、ブルネイ訪問に先立ちまして、来週の月曜日、19日でありますが、東京で、米国のUSTR代表、フローマン通商代表ともお会いをし、TPP交渉における日米協力について、率直に意見交換を行いたいと思っております。
 交渉はいよいよ正念場であります。政府一体となって交渉に臨みまして、国益を最大限に実現するよう、全力を挙げて交渉にあたってまいります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)デフレ状況ではなくなりつつあるということですけれども、デフレ脱却に向けた道のりの今はどれぐらいに来ていて、あと具体的に残り、何が脱却に必要かということと、これは消費増税に向けた環境整備が順調に進んでいるなという御認識か、聞かせてください。
(答)富士登山で言いますと、7合目ぐらいでありますね。しかし、富士登山は7合目からが大変なのでございます。大体5合目までは車で行きますから。各種指標はよくなってきております。消費が先行し、輸出がついていき、それから投資が若干まだ遅れをとっているということで、設備投資をしっかりしていくことが大事だというふうに思っております。先行指標たる機械受注はいい数字でありますけれども、これに油断をしてはいけないと思っておりまして、ここをしっかりと進めていく。設備投資を進めるということは、産業の競争力を強化していくということになるわけであります。
 それから、やはり好循環ができるということが大事だと思います。企業収益が賃金にはね返り、消費意欲にまた還元されるとか、企業収益が下請代金を適正水準にしていくことに貢献するとか、そういう好循環の輪が回り始めるということが一番大事で、そこを注視しております。
 消費増税の環境整備については、先般も申し上げましたけれども、2.6%という数字は悪い数字ではありません。ただ、世間一般には、3.4%の民間予測よりは低かったと、いいはいいけれども、予想したとおりか、それ以上ではなかったねというところだと思います。ですから、環境は整いつつあるのかもしれませんけれども、ここで手を抜いたら元の木阿弥という状況であろうというふうに思っております。でありますから、今月の最終週に行われますヒアリング、50人前後の方からお話を伺って、どういう認識であって、そして、リスクがあるとすればどのあたりにあるか、それを克服するにはどういう政策対応が必要かということをしっかり聴取して、その結果を総理の判断材料として提出したいというふうに思っております。
(問)報道もちょっと出たのですけれども、先ほどの設備投資の関係で、今、政府では投資減税について検討が進められているかと思いますが、これとは別に法人税の実効税率の引下げについては、大臣としてはどのような、順番としても検討としても、どのようにお考えでしょうか。
(答)減税をする原資が十二分にあれば、ベタで税を引下げるということもやるべきだと思います。国際標準にできるだけ近づけていくと。ただ、原資が厳しい中でのプライオリティで言えば、産業の、企業の競争力を強化するために使いたいというふうに思っております。順序としては、設備投資減税あるいは研究開発減税が先行ダッシュだというふうに思っています。
(問)今日のTPPの閣僚会議の中で、いわゆる市場アクセスの分野のオファーについては、どういった報告というか話があったのでしょうか。
(答)今日はそういう、その種の中身のことを云々する会合ではございません。具体的な日程の話をし、あるいは、どんな分野でこれから協議が行われていくかという程度の話であります。それから、とにかく現地の交渉班とそれから政務班がしっかり連携をとって、一丸となってやっていこうということを再度確認いたしました。
(問)今日ちょっと一部報道でありましたけれども、TPPの関連で、8月上旬の日米の二国間協議で、アメリカの方は、混合診療の全面解禁を議論の対象としない方針を伝えられたというふうに報じられておりまして、あと、アメリカ側は株式会社の病院経営参入も求めないというふうに報じられていますけれども、その辺の事実関係を教えていただきたいのですが。
(答)ちょっとこの点は私も承知しておりません。
(問)先日の厚生労働省の最低賃金に関する審議会で、最低賃金について全国平均で14円アップという答申が出ました。このことに対する受け止めと、景気の好循環への効果と影響について、お話をお願いします。
(答)最低賃金の話は、一番関わってくるのは中小・零細企業であります。大企業は、最低賃金の問題は企業側としてほとんど懸念することではないと思います。中小、特に零細企業が、底に張り付いている企業が多いと考えられますから、最低賃金の議論をする時には、中小、特に零細企業が対応できるかということが一番大事であります。久々の14円という極めて大きい引上げであります。でありますから、中小・零細企業がしっかりとついてこられるように、元請や大手企業は、ますます好循環へしっかり踏み出してもらいたいというふうに思っております。その賃上げ自身は、好循環を構成する重要な要素だというふうに理解をしております。
(問)今のお話にもありましたように、中小企業の方からは、なかなか対応を迫られて、経営を圧迫するというような声も出ているのですが、政府として何か対策をする必要、どんな対応をするべきかというふうにお考えでしょうか。
(答)最低賃金の引上げに対応する、それに絞った対応策というのは、特に承知をいたしておりませんが、今の経済の変化局面で、とにかくいろいろな、例えば燃油の高騰に対しての対策等々、個別分野ごとの対応は、各省別に対応しているところでありますが、対最低賃金に対して云々ということは承知をしておりません。いずれにいたしましても、政府がやるべきことは、利益が上がった企業は、それを抱え込むのではなくて、設備投資や研究開発投資、あるいは雇用者報酬の引上げ、下請代金の引上げに是非回して、好循環を加速する役をやってもらいたいというふうに思っておりますし、そういうことを政府として引き続き要請してまいります。
(問)朝方、麻生大臣が否定されたことで、大変失礼かもしれませんけれども、一部報道が出ていまして、法人税減税の引下げについて指示が来ているかどうか、そこについて確認をさせてください。それと、今後の課題としてはあり得るという判断なのか。原資が少ない中で、プライオリティは低いけれども、議論はしたいということなのか、当面ないということなのか、そこも含めて、お願いいたします。
(答)総理からの具体的指示はありません。
 それから、私は、この局面で何をすべきかということは、企業の競争力を高め、新陳代謝を促進していく、そのために、税が、まずプライオリティ第一として投入されるべきであるという考え方であります。
 それから、法人税の減税は、あと1年半たちますと、東日本震災支援の分の法人税は返ってくるわけでありますから、それは間違いなく下がるわけであります。それ以上に踏み込んでいって、国際標準にできるだけ近づけていくという際には、財政再建から成長戦略、そして社会保障など、いろいろなマトリックスがありますから、それをしっかり、つじつまが合うようにする中で考えていくべきだというふうに思っております。
(問)TPPのスケジュールについてですけれども、年内妥結という前提で、残りのスケジュールの中でしっかりとした交渉ができるのかというのと、その年内妥結ということに関して、日本政府としてはこだわってやっていくのかということを、ちょっとお聞かせいただけますか。
(答)交渉は、かなり、もちろん厳しい交渉が続くと思いますが、年内に妥結をするということを目標として掲げて進んでいくということは、日本を含めて全12か国が共有している意識であります。その可能性については、なかなか容易でないとは思いますが、それに向かって最大限の努力を日本もしてまいります。
(問)デフレ状況ですけれども、デフレ状況ではなくなりつつあるということは、デフレ状況から脱しそうなのだけれども、まだ若干デフレっぽいということだと思うのですが、この「デフレ」という言葉がなくなるための条件というのは、どういうことを考えていらっしゃるのでしょうか。
(答)デフレにいつから入ったかということも、後で判断をできるものであって、デフレからの脱却というのも、若干時間を置いて後で判断できるのだと思います。
 というのは、デフレというのは持続的に物価が下がり続けることをいいます。そうならない場合でも、瞬間風速で今がデフレではないという意味合いのことは言えるかもしれませんけれども、すぐ、一月でまた元へ戻るという事態はあるわけであります。デフレからの脱却というのは、多少のショックがあっても、そういう持続的に物価が下がるという状況に陥らない、それだけしっかりした足取りになっているということなのだというふうに思っております。
 また、内在する要因からそういうことを誘発する原因が出てこないということも、デフレ脱却についての重要な要素だというふうに思っています。つまり経済の足腰がしっかり強くなって、堅調に経済成長していく中で、軽度のインフレ状態が続いていくという状況が後に確認されて、この時点あたりで脱却をしたということになるのではないかというふうに思っています。
(問)先週、同様の質問が出ていて大変恐縮ですが、8月15日、終戦記念の当日ということで改めてお伺いしたいと思います。今日、既に安倍内閣の中からも参拝を済ませた閣僚の方が数人いらっしゃいます。それから甘利大臣におかれましても、過去に遡ると、1999年の労働大臣時代に参拝の御経験があるかと思うのですが、この後、8月15日、今日、当日中に参拝の御予定はあるのかないのかと、その判断の理由についてお願いします。
(答)労働大臣のときに参拝をしたのは事実であります。当時は、総理、外務大臣、官房長官の3人は、いろいろな政治的な議論を呼び起こすということであったと思います。それ以外についてどうこう言われることはありませんでした。私は今、その三閣僚ではありませんが、閣僚在任中に参拝をすることは控えたいと思っております。
 基本的な認識でありますけれども、日本、外国を問わず、その国のために命を賭した人に対して、心からなる冥福を祈るという行為は、世界共通の道徳であると思います。ただし、その純粋な行為が、政治的な議論を巻き起こす、政争の具になってしまうということは極力避けたいと。純粋な気持ちを純粋な気持ちとして理解してもらえる環境を作りたいというふうに思っております。
 以上が私の思いです。
(問)法人税減税について、また関連でお伺いしたいのですが、先ほど原資というお話もあったのですけれども、法人税を減税すれば景気がよくなって税収が増えるのではないかという見方もあるようですけれども、やはり大臣としては原資といいますか、代替財源が減税のためには必要というお考えということでよろしいのでしょうか。
(答)私の考え方は、費用対効果のことを言っています。コストパフォーマンスです。例えば減税原資が1兆円あるとしたら、それを最大効果、景気対策の効果に使うためにはどうしたらいいかと。法人税の減税というのは、一般的に景気の回復に寄与するものというふうに思いますけれども、しかしながら、日本経済の競争力を強化することに対して非常に力強く関与している産業もあれば、余り関係ないなど、いろいろ濃淡があると思います。コストパフォーマンスの高いように税金を使いたいというのが私の思いでありまして、一般的な法人税減税を否定するものではありません。ありませんが、極力費用対効果の高い順番に使っていきたいという思いから申し上げているところであります。
(問)そうなると、この秋に投資減税とセットで法人税率の引下げも議論するというのは、まだ時期尚早ということでよろしいのでしょうか。
(答)とにかくどれくらいの許容範囲を日本経済が持っているかという中で、いろいろなメニューを決めていくべきだというふうに思っております。その中でプライオリティが高いのは、やはり設備投資減税であり研究開発投資減税であり、あるいは人材投資減税であるというふうに思っています。
(問)TPPの関係閣僚会合に戻ってしまうのですが、ちょっと細かい話かもしれないですが、先ほど御紹介いただいた話以外に、出席した閣僚から出された意見があれば、それを御紹介いただきたいのと、先ほど大臣のお話の中でも、今後のスケジュールを確認したと、どのような分野で交渉していくかということを確認したということなのですが、具体的にどのような分野になっていくかということと、あと22日、23日に各国との閣僚会合がありますが、その中で議題となるものの見通しについて、大臣はどのように考えられているか教えてください。
(答)今日の閣僚会合で他の閣僚から出た質問は、手続上の問題、例えばいろいろ政治判断を要するような場面の時に、私に連絡が来るけれども、それは直ちに関係大臣と相談してもらえるのか、というような話で、それはもちろんそういう手順を踏んでやりますよということであります。
 どういう分野について話し合われるかということについては、政治的にしこっている分野、問題のない分野はかなり解決されている分野もあるでしょうから、交渉がしこっている分野について、政治的な前進をかける会になるということであります。具体的にどことどこというのは、ちょっと控えさせていただきます。
(問)各国との閣僚会合ではどんな感じになると大臣はお考えでしょうか。22、23のテーマということで、言える範囲で教えていただければと思います。
(答)これからこれ以降、作戦を練りたいと思っていますけれども、いずれにしても政治的に後押しをするために閣僚会合がここで開かれるのだと思いますし、フローマン氏が就任後初めての会でありますから、相当エネルギッシュに推し進めたいと思っておられるのだというふうに思います。日本としては、このブルネイ、そしてその次あたりにどこかで開かれるであろう会合、この2つが大きな山になろうかというふうに考えています。
(問)TPPの関連で伺います。ブルネイ交渉で関税交渉が本格化していきます。関税についてのバイの協議もセットされていくことになると思うのですが、今回の期間中で11か国の中でバイの日程が組まれていない国はありますでしょうか。
(答)全ての国にバイ会談のオファーを出しております、アメリカも含めて。アメリカとは事前に19日に個別の会談をしますけれども、それも含めて一応オファーは出しております。まだ全てから返ってきてはおりません。
(問)自由化率の話は今日の閣僚会合では出ていないということをおっしゃっていましたが、日本はブルネイ交渉で自由化率を提示していくのでしょうか。
(答)ブルネイでは、各国とも当然、自由化交渉を始めていかなければ間に合わないわけであります。具体的にどのくらいということは申し上げられませんけれども、いずれにいたしましても、ブルネイ会合では、どの場面かで各国がいろいろと話し合っていくと…。
(問)今具体的な数字は申し上げられないということですが、これまで日本が結んできたFTA、EPA以上の数字を出すということは、交渉の戦略上考えられるのでしょうか。
(答)具体的な数字は申し上げられませんけれども、一般的に、各国とも恐らくそれぞれの国が乗ってこられるような緩い数値から、次第に絞り込んでいくという交渉になっていくのではないかと思います。
(問)一部報道で、来月大臣が、デンマーク、オランダに行かれるとありましたけれども、それはいかがなのでしょうか。
(答)実は、この秋の国会に間に合えばということ、まあ、間に合わせなければいけないかもしれませんけれども、国家戦略特区の議論になろうかと思います。そこで、オランダであれはフードバレー、デンマークでありますとライフサイエンスのメディコンバレー、これが国家戦略として大変実績を上げております。その実態を視察して、それで国家戦略特区の具体化に資するようにしたいと考えています。

(以上)