甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年6月14日

(平成25年6月14日(金) 9:36~10:01  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 本日、「経済財政運営と改革の基本方針」を閣議決定いたしました。本基本方針は、「再生の10年」に向けた処方箋を提示し、安倍内閣が取り組むべき経済財政運営の道筋を明らかにしたものであります。「三本の矢」を一体的に推進をするとともに、経済再生と財政健全化の両立に向けた取組みを通じまして、デフレから早期に脱却をして、日本経済を再生をさせ、本基本方針で示した目指すべき経済社会やマクロ経済の姿を実現していきたいと考えております。
 本日、「日本再興戦略」を、日本経済再生本部で決定した後に閣議決定をいたしました。安倍内閣発足以降、第一の矢である大胆な金融政策でデフレマインドを一掃して、第二の矢であります機動的な財政政策で、湿った経済を発火させたわけであります。そして第三の矢である「日本再興戦略」によりまして、次の3つの基本方針にのっとって、間断なく政策を打ち続け、日本経済をゆるぎなき成長軌道へと乗せていきたいと考えております。
 第一に、産業の新陳代謝、規制・制度改革、官業開放によりまして、民間の活力を最大限に引き出してまいります。第二に、女性が働きやすい環境を整え、若者の能力を引き出して、全員参加の総力戦、これを盛り上げていきます。そして第三に、日本の科学技術力を総結集をしまして、社会課題の解決に取り組み、それを世界市場に展開をして、新しいフロンティアを創り出していきたいと考えております。
 「日本再興戦略」は、長年の懸案でありました、待機児童解消策、研究開発の司令塔機能の強化、そして国立大学改革、さらに農地の集約化、そして保険外併用療養の拡大などにつきましても、抜本的な対策を大胆に決断し、実行をするものとなっております。つまり、懸案であることが指摘をされながら、遅々として解決をしてこなかった課題、5つも6つもありますけれども、これを5カ月という短期間に一挙に解決をしたということであります。
 成長戦略は、これからが本当のスタートであります。この戦略に盛り込まれた施策を、これまでにない異次元のスピードで実行に移してまいります。まずは、民間投資を引き出していきたいと考えております。総理も、与党の協力も得て、秋にも投資減税をはじめとする税制改正の議論を進めていく、また、成長戦略推進のための関連法案を準備をいたしまして、秋の臨時国会を「成長戦略実行国会」と位置付けまして、成果を出していくと、総理ご自身言われております。政府を挙げて、しっかりと対応してまいります。また、残された検討課題につきましても、しっかりと対応してまいります。
 戦略に盛り込まれた成果目標、KPI、Key Performance Indicatorに基づき、しっかり検証してまいります。見直すべきものは見直して、必要に応じ、追加の政策を導入をしていきます。この「日本再興戦略」は、常に進化をし続ける成長戦略でありまして、終わりなき改革にまい進をしていく所存であります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)川崎重工と三井造船の統合交渉が、急きょ白紙になりました。政府内では、業界内の再編を促すような施策を現在検討中と思いますけれども、この率直な受けとめを聞かせていただきたいのと、競争力の観点から、再編というのがどうプラスになっていくのか、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)業界再編というのは、新陳代謝に資することであります。もちろん再編してさらに国際競争力が高まる、市場支配も高まって、価格支配力が高まっていくということは大事なことであります。秋の臨時国会に、この再編を促すような環境整備のための法律を出す予定にもいたしております。個別案件、この2社のことに関しましては、恐らく両者で再編の結果の評価が多分違うのだと思います。競争に資するという思いを持っているところと、あるいは救済をするという結果になってしまうということ、社内的な評価も多分分かれたのではないかと思っております。個別案件云々については、それ以上余り踏み込んだコメントは控えたいと思います。
(問)今日で三本の矢、出そろったことになるわけですけれども、とりわけ今、成長戦略、今後その実行体制をどのように作っていくのか、現段階でのお考えをお願いします。
(答)この成長戦略の全体像が発表されて以来、評価がプラスになってきているようであります。マスコミ各社の報道も、当初よりも評価が高い方に動いている。これはありがたいことだと思います。三木谷さんも75点から、今日は90点に変更されておられましたし、要はいろいろなところでここが大事と言われていることは、プランはいいとして、その実行がなされれば、これは高得点になるという話であります。そして安倍政権でも、掲げただけではなくて、むしろこれからがスタートでありまして、実行に向けてどうこれを担保していくかということが大事だと思います。
 一つ、従来のボトムアップ型もそれなりの実行体制はあるのでしょうけれども、私どもはKPIという達成度指標を政策ごとに掲げておりまして、それをいわば指標として、年次ごとの進捗状況をはかっていくという手法をとります。ある種、最終着地点からバックキャストしていくという、トップダウン方式をとってまいります。これは達成度に届かない場合の原因を究明をし、達成させるための政策を追加していくという手法であります。このフォローアップ体制のために、日本経済再生本部では、総理以下、全省庁体制、つまり、全閣僚体制でやっていくという宣言がなされています。執行を担保するために総理が指示を出し、担当閣僚が進捗管理のために責任を持っていくというやり方であります。もちろん、そのためには1年で政権が終わっては、なかなか進捗管理ができないと思います。安倍政権は、安定的に長期にわたって進捗管理をできるような体制を、しっかりとっていきたいというふうに思います。
(問)今日の閣議決定で、安倍政権としての経済政策、財政政策というのが出そろったわけですけれども、これが足元で混乱している市場の安定に寄与するかどうかというのは、どう見ていらっしゃいますでしょうか。
(答)市場というのは、いろいろな思惑が交錯するところだと思います。短期資金の思いと中長期資金の思いは、全く別なことがあります。それについて、いい悪いというコメントはいたしませんけれども、要は、大事なことは、短期の資金を引きつけることももちろん大事なのでありますけれども、中長期資金をしっかり引きつけられる市場であることが必要であります。そして、中長期資金、これはその資金がもとで、そこにイノベーションが起きるかどうかというのがとても大事なことだと思います。本当の意味で、付加価値を創造していくということが市場機能として大事であります。この成長戦略というのは、まさに付加価値を創造していくということを第一主眼に置いているプランであります。このプランが、実際実行に、進捗管理の中で1年1年実行されていくということになりますと、これは、市場としては中期・長期の資金を引きつける魅力になっていくかと思っております。私どもは成長戦略をしっかり意識して、そして成果を上げていけば、つまり実体経済を改善させていけば、市場はおのずとついてくるという信念でやっていきたいというふうに思っております。
(問)今日は都議選の告示です。それについて、7月に参院選を控える中での選挙をどう位置づけているかということですね。今、お話がありましたが、円高株安が進んでいる中で、経済政策というのも一つ争点になると思いますが、これをどう説明していくお考えでしょうか。
(答)4年前、私どもは、もちろん私どもの不徳からではありますけれども、都議選でかなり議席を失いました。そして、続く選挙で政権を失ったわけであります。この成長戦略を実行していく上で大事なことは、個別政策を実施に移していく法律案や税制改正案が、遅滞なく成立をしていくことだと思います。やはりそのためには、その政権が安定した基盤を衆参にわたって持つことが必須課題であります。異次元の実行スピードに高まってくるわけであります。そこで、参議院の前哨戦としての首都決戦であります。ここできちんと私どものこの半年間の成果というのを、しっかり有権者の皆さんにお届けをして、審判を仰ぎたいというふうに思っております。
 実体経済の指標は、ほぼ全てが好転をしています。GDPの四半期ごと、年率換算の数字も、V字回復をしております。所定内賃金、所定外賃金とも上がっています。パートタイマーの賃金も上がっているわけであります。あるいは消費、そして唯一心配されていました設備投資も下げ幅が極端に小さくなってきて、底打ち感が出つつあります。こうした実体経済の指標を有権者にお知らせすることを通じて、わずか半年の間にこれだけ急激な転換を日本経済はしてきているということを、数字でもってしっかり届けたいというふうに思っております。
 最後のてこ入れ策とも言える設備投資を喚起する施策は、具体的に、次なる臨時国会が開かれれば、そこで遅滞なく成立をさせて実行していきたいというふうに考えております。消費が牽引し、設備投資が牽引をし、そして内需を喚起し、輸出も先導していくと。バランスのとれた経済を実現をしていきたいと考えております。
(問)骨太方針と成長戦略では、ともに民間の資金とかノウハウを活用する、PPPとかPFIが、柱として掲げられておりますけれども、国とか地方の財政が厳しい中、民間の資金の活用とかノウハウの活用というのは、財政状況を立て直す切り札になるというふうにお考えなのか、改めて聞かせていただいてよろしいでしょうか。
(答)量自身はPPP、PFI、いろいろなフェーズを通じて12兆円というプラン、もちろんこれ自身が大きいのです。先行事例のイギリスでも、2兆か3兆だったと思いますが、この挑戦は世界的にも注目をされていく量であることは確かです。ただ、それが全て国家経済を救うとまでは思っておりません。ただ、新しい手法で、この発想の転換ですね、公共事業と言えば、イコール国が100%やる、自治体がやる、公共が100%やるという発想というか、当然の考え方でした。そこを打破していく。民間資金によって公共事業が進んでいくという、従来にない発想を実現するということは、新たな可能性を拓いていくと思います。
 そして、政府といたしましては、成長戦略で、産業の足腰を強化すると同時に、産業の足元の産業インフラを強化するということを、成長戦略で掲げています。それをもとに、国内のフロンティア、海外のフロンティアは拓いていくということになるわけですね。産業の足腰を強くするということは、まさに新陳代謝を進める、古い設備を生産性の高い、省エネ性能の高い設備に入れかえるということだけで競争力はついてくるわけであります。あわせて、新陳代謝が、事業再編、つまり不採算部門を切り出して、それぞれライバル会社同士の不採算部門を切り出して、それを効率よくまとめると、不採算部門が採算部門に変わるわけであります。元の会社も荷物が外せるということになります。この種の企業単独、あるいは産業界全体の新陳代謝を通じていくということが、足腰を強化することになります。
 そして産業基盤のインフラの強化というのは、人材の基盤強化であるとか、あるいは科学技術基盤の強化であるとか、あるいはIT基盤の強化が考えられるわけであります。人材は、国内外の企業が日本に立地したとき、国際人材をすぐに採用できるという環境を整えたいと思っております。そこで大学改革に着手をしたわけであります。大学改革にも関連をしてくる、いわゆる国家公務員、キャリア職にTOEFL、実用英語を導入していく。同時に経済界の主な企業も同様の対応をしてくる。ということは、高校からその対応がスタートする。それにあわせて小学校3年から実用英語教育の導入をスタートしていく。これは産業基盤の強化であります。
 あるいは人材移動に向けて、フレキシブルに対応できるように、ハローワークの求人情報を開放いたします。民間にお渡しをする。そうするとマッチングがもっと進んでいくわけであります。これも人材基盤の強化です。
 IT基盤の強化に関しましては、政府CIOを法律によって各省事務次官の上に位置づけました。これは、政府の電子化、電子政府、私も遅々として進まない電子政府にちょっと怒り心頭になったときがありますけれども、これはなぜできないかというと、政府CIOがきちんと電子化の意味をわかっている人、つまり、民間の経験者を充て、その人に権限を持たせるということが大事であります。法律で次官級以上に位置づけた。これもIT基盤を強化をしていくということであります。あわせて、公の統計情報を開放いたします。民間に。これも、公が持っている情報を民間で使ってもらうということであります。あるいはもっと進んで、ビッグデータの活用についても成長戦略の中で進めていくわけであります。匿名性をつければ、ビッグデータは無限の可能性があるわけであります。あるいはIT基盤で言えば、医療情報はまずレセプト、レセプトの電子化というのは進んでいるのでありますけれども、ただ紙が電子にかわっただけで活用ができておりません。ここは活用を推進していく。これは効率化とともに財政再建にも資するということになっていくわけでありますし、そこから産業の芽も出てくるかもしれません。
 情報基盤を整備する。そして科学技術基盤を整備をする。企業は超長期の科学技術開発、研究開発に資金は投じられません。10年を超える研究開発は国がやるということでありまして、この10年を超える国の研究開発と、5年内をターゲットに置いた市場を見据えた民間企業の研究開発をどうつなげていくかということと、その方向性をどう出すか。科学技術の司令塔に、産業化という視点を持たせる。これも、かつてできなかったことを、権限と予算を来年度からつけるということは、もうこれは決定をいたしました。それらを通じて、産業の足腰を鍛えるとともに、そのよって立つ基盤もアップデートしていくということを進めていきます。それをもって、国内のフロンティア、そして国外のフロンティアを切り拓いていく。国内のフロンティアに関しましては、日本が抱えている課題を逆手にとって、そのソリューションに向けて取り組んでいく。幾つかの項目がありますけれども、日本が抱える少子高齢化、目指すべき社会は、健康長寿社会、健康寿命の延伸であります。そのために、ライフサイエンス分野の圧倒的な推進をしていく。医薬品の開発、技術で勝ってビジネスで負けるということがないように、圧倒的スピードで製品化に向けての取り組みを進めていく。医療費もそうです。もう法律は出しました。そして、iPS細胞については、この商品化、製品化に向けては100兆円市場になります。この基礎研究、技術で勝ちながら、製品化、市場化、ビジネス化で負けることがないように、これも圧倒的なスピードで製品化できるようにしていく。このための法案も、もう国会に出しているわけであります。子細に検討していただきますと、今までの成長戦略と次元が違うということは、ご理解いただけるかというふうに思っております。

(以上)