甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年5月21日

(平成25年5月21日(火) 8:48~9:09  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 改めて御紹介を申し上げますが、今月の30、31日、アベノミクスに関する国際コンファレンスを三田の共用会議所において開催いたします。本会議には、世界的に高名な経済学者を招聘しております。2001年に情報の経済学を築き上げた功績によりましてノーベル経済学賞を受賞し、米国大統領経済諮問委員会委員長、世銀副総裁を務めたジョセフ・E・スティグリッツ・コロンビア大学教授、そしてマクロ経済学、開発経済学などで顕著な功績を持たれ、ロシア、ポーランドの市場経済移行において政府アドバイザーを務めたジェフリー・サックス・コロンビア大学地球研究所所長、それから日本の経済政策について積極的な助言を行い、その経験も買われてイングランド銀行金融政策委員会委員の重責を担われたアダム・ポーゼン・ピーターソン国際経済研究所長、それから、国際金融経済学の分野を米国の国務次官を務めるなどの実績も含め、長い間リードしてきたリチャード・クーパー・ハーバード大学教授、そしてプローディEU委員会委員長の下でEUの経済成長に対して研究開発への資源投入を増やすべき等の重要な提言を行ってきたサピール報告で有名なアンドレ・サピール・ブリューゲル研究所上席フェロー、そして、タイの経済論壇におきまして資本規制への反対や海外からの投資自由化、域内独自通貨の必要性などを論じまして財務大臣も務めたチャロンポップ・スサンカーン・タイ開発研究所特別フェローなどをお呼びをいたしております。
 本コンファレンスは、このように世界で活躍する一線級の識者をお招きして開催をするものでありまして、今後の経済財政政策について貴重な検討素材を提供するものと期待をいたしております。
 それから、もうお知りになっていらっしゃると思いますけれども、イギリスの「エコノミスト」、有力誌でありますが、最新号の表紙に、安倍総理大臣がスーパーマンの格好をして飛んでいる写真が一面に掲載をされました。安倍政権の政策を論評して、日本に対する海外からの関心の高まりを改めてうかがわせているところであります。
 私が子供のころ、テレビでスーパーマンをやっていまして、皆さん御存じないかもしれませんが、皆さんは映画世代でしょうけれども、テレビでやっていて、エンパイア・ステート・ビルの上を飛行物体が飛び、そのときのテレビの始まりの文言は、「空を見ろ、鳥だ、飛行機だ、いや、スーパーマンだ」というやつですけれども、ここには「鳥か、飛行機か、いや、日本だ」というタイトルが書いてありまして、当時を懐かしく思い起こしますけれども、ここまで日本が、そしてアベノミクスが注目をされているということは、それの一翼を担う大臣として大変光栄に思っております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)経済界からは、成長戦略に法人税の減税が入っていないことに失望感が出ていますけれども、これについて大臣、どのようにお考えでしょうか。
(答)まず、法人税全体は、2年間の被災地支援の期間が終わりますと、本則に戻るわけであります。2.5%ぐらい戻り、25.5%になります。これが一つ。
 それから、法人税減税というのは、広く、あまねく、誰にでもというものであります。もちろん、財政的な余力があれば、全ての企業に恩恵がこうむるようにすればいいわけでありますけれども、財政的余力が極めて厳しい中で、成長戦略を進めていくためには、これは2年間の措置が終われば下がるという、これは広くあまねくでありますけれども、それ以外に、政策減税として、研究開発や設備投資を促進するような、つまり日本の競争力を支えていく成長戦略の中核となる当事者に減税が働くという、フォーカスを絞った政策が有効であるというふうに思っております。そういう政策を、財政余力の範囲内で行っていくというのが基本的な方針であります。
(問)今日、官邸に農業強化のチームができましたけれども、日本の農業の強いところ、弱いところ、全て加味した上で、大臣は、今農業の最も強くすべきところ、ポイントはどこにあるというふうにお考えでしょうか。あと、農業の規制緩和を今後進めるべきものというのは、どういうところをお考えでしょうか。
(答)今日の官邸の本部では、二つの視点、つまり産業政策としての農業、それから地域政策としての農業という議論でスタートするというお話がありました。
 産業政策としての農業という点で申し上げますと、これはまさに農業の産業化、企業的視点をどれくらい農業に持ち込めるかということが鍵だというふうに思っております。生産性を上げるということは農地を集約をするということであります。これに関しましては、中間管理機構、総理の言ですと、「農地バンク」ができまして、耕作放棄地を借り集める、あるいは買い集めて、農地バンクが一つにまとめ、それを整備するということも含めて、農地バンクができる。そして、借り手に貸す、あるいは譲渡するということを考えているわけであります。これが集約化を加速するわけであります。
 更に、農業に産業、工業の視点を持ち込むわけであります。産業視点、マーケティングや商品開発、あるいは市場戦略ということを盛り込んでいくわけであります。
 日本の農の特色は、価格は高いけれども品質が高い、そして品質、味覚、それから安全性について群を抜いている。そういうマーケットは、当然世界中に、ニッチマーケットとはいえ、世界規模でいえば日本の生産力をはるかに上回るだけの市場があるわけであります。そこにどうアクセスしていくかということであります。これは輸出戦略と絡まってくるわけでありますし、経済連携の中で非関税障壁の部分、検疫の部分で、検疫の合理的対応を通じて、そして輸出が入り口でストップされているものを、その門戸を開いていくという作業に繋がっていくのだというふうに思っております。
 併せて、いろいろな提案がありますから、羽田と大田市場を繋いで、市場を青果物の見本市のようなことにして、バイヤーが集うというようなことにしてはどうかとか、輸出処理の、検疫を含めた処理の一元化を通じて、見本市会場から直ちに外国の市場に契約がなされるとか、いろいろなアイデアがあるわけであります。高いから売れないということじゃなくて、高いから売れるという商品開発、市場開発も随分可能性が開けてくるのだというふうに思っております。農業というのは、まさに新たなフロンティアになろうかと思います。
(問)先日、甘利大臣が週末の番組で、企業、労働者、あと政府の三者で賃金の引上げについて協議をする場を設けるというお話をされていらっしゃったと思うのですが、それに関して経済界の方から、「賃上げは個別企業の労使で決めるのが適切だ」とか、あるいは「政府が入ってくることはいかがなものか」といったような意見が出ているのですけれども、それについてのお受止めと、改めてどういうふうな協議の場というのを想定されているのかということをお聞かせいただければと思います。
(答)時間が制約されている中で、私の思いが正しく伝わらなかったというのは、こちらの説明不足でありました。賃上げ交渉の場として政府が設定するということではありません。その場でもたしか申し上げましたけれども、賃上げというのは民民の関係のことで、政府がそこに介入していって、こうしなさい、ああしなさいと決めることではありません。ただ、今までも経済の凍りついた歯車を回していくために、業績の上がった企業は一時的な措置であれ対応していくと、経済が回り始めて、その対応した企業にもすぐ好循環として跳ね返ってきますよ、ということで申し上げているという話をいたしました。
 労働側から政府側に対して、政労会見の申出もあります。つまり労働側としていろいろ言いたいこと、要望を伝える場を設定してほしいということであります。もちろん企業側からも、経営側からも失業なき円滑な労働移動という産業が抱えている大問題について、経営側も考えていることはあり、労働側も考えていることがあり、政府側も考えていることがある。この三者が集うて忌憚なく意見交換を交わせると、それらを通じて労働環境の整備、経営環境の整備、そして経済環境の整備、それぞれに資することができるような、忌憚なく意見交換ができる場があればいいのではないかという思いでお話をしたわけであります。
 かつて私が労働大臣をやっていたときに、政労使の場というのを作りました。そこはいろいろ労働市場を形成する個々が抱えている問題を忌憚なく話し合って、そして、それぞれが知恵を出し合って改善をしていくという場にしようとしたわけであります。そういうことも、私の過去の経験もイメージして、そういう場があってもいいのではないかということをお話ししたわけであります。政府による賃上げ交渉の場ではありません。
 もちろん政府として余力がある、アベノミクスによって経営が改善した企業が、経済の好循環、景気の好循環のシステムを回していくために貢献できるところは貢献してほしいというのは、政府側からの当然の要望でありまして、それは別に経営側が損することではなくて、結局、経済の循環を通じて業績に跳ね返ることである。つまり自らに資することであるということを理解してもらいたいというのは政府側から当然申し上げることであります。
(問)先ほどの農業の対策会議の方で2点お聞きしたいのですけれども、先ほど大臣が説明なさった様々なアイデアですね、御指摘ありましたけれども、それは今日の会議で出た話でしょうか。また、今日の会議でどんな意見が出たのか御紹介をお願いしたいというのが1点と、あと国内の農業対策については、参院選も控えて、これから歳出増の圧力が様々な点からかかると思うのですけれども、経済財政を担当されている大臣として、どのように国内の農業対策、TPPも控えてハンドリングしていかれるのかお願いします。
(答)今日の会議では、まず体制をこうやって作りますということと、基本的なテーマ、方向性についての説明、発表がありました。そして、各大臣から意見のある人ということで、数名の手が挙がったわけであります。各省の所掌に関して発言がありました。
 私が発言をさせていただいたのは、「競争力会議でも農業の産業としてのポテンシャルが語られています」と、併せて、「私のかねてからの持論というのは、土日のある農業、月給のある農業にしていかないと、若い人が集う魅力ある職場にはなっていかない。つまり、これは農業の産業化、農業の企業経営化ということで大事な視点であります。そういう視点もしっかり検討してほしい」ということを申し上げた次第であります。
 それから、TPPというのは、いきなり関税がゼロになるということでは基本的にはないはずでありまして、これは、仮に対策が必要になってくるとしても、年限をかけて対応していくということであります。ですから、いきなり来年度から突然大きな予算が出てくるという話ではないというふうに思いますし、まだ会議に入っておりませんから、これからの交渉でありますから、予断を与えるような発言は控えたいと思います。国内対策、やるべきことはしっかりやっていくという、今は定性的な発言とさせていただきます。
(問)為替相場に関してですけれども、今1ドル102円20銭ぐらいで動いているのですが、日曜日の番組の中で、大臣が「円高修正はかなりできた」と発言なさったことを手がかりに円が反発しているというふうに一部の外国通信社が伝えているのですけれども、御感想等があればお願いします。
(答)あの番組でも、為替については一切言及をいたしませんと、市場がお決めになることですからということ、これでお話をしました。その上で、過度な円高云々ということについて再質問が来たわけであります。過度な部分が修正されつつあるということに関しては、過去にも発言をしていることであります。では、修正されたのか、どこなら修正されるのか、終わるのかということに関しては言及をしないということになっております。
 いずれにいたしましても、日本経済の基礎体力に見合ったレベルで落ち着いて輸入、輸出の影響のバランスがとれる点を市場が探してくれることを期待をいたしております。

(以上)